2020.6.23

マッチング精度を上げたい!オウンドメディアでの情報発信のコツ

読了まで約 5

情報発信の2つの柱

オウンドメディア採用を効果的に実践するためには、自社ブログやSNSを形だけ開設しても意味はない。
継続的にペルソナの役に立つ、興味を引く情報を発信していくことが求められる。
その際の基軸となるのがジョブディスクリプション(職務記述書)の詳細な記述と、シェアードバリューコンテンツ(求職者の共感を得るコンテンツ)の魅力的な発信だ。

関連記事:採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説

ジョブディスクリプション(職務記述書)

「ディスクリプション」(description)の日本語訳は「記述すること」であり、ジョブディスクリプションとは「職務記述書」のことである。ジョブディスクリプションは、職務ごとの目的や範囲、必要な資格や能力などが詳細に記述されたもので、ジョブ型雇用が定着している欧米では、採用にも雇用期間中の人事評価にもなくてはならないツールである。

なぜ日本で使われてこなかったかというと、「この職務を担当する人を採用する」という、職務と責任を明確にした雇用が少なかったからだ。
しかし近年は優秀なグローバル人材の確保に加え、日本の求職者も入社後の職務が明確な企業を志望する傾向が強まったため、これを用意する企業が増えている。

企業側はジョブディスクリプションに従って職務内容の達成度をはかれるので客観的な人事評価を行うことができ、ミスマッチの減少につながるというメリットがある。
求職者にとっても、職務内容や責任の範囲が明記されていることで、採用後の働く姿や自分の目指すキャリアの方向性が明確になり、より自分に合った仕事を選択できる。また、スペシャリストであれば入社直後から高い報酬を得ることも可能となる。

ジョブディスクリプションの項目には、職種、役職だけでなく、職務の目的、具体的な職務内容、責任の範囲、必要な資格、能力、経験など詳細な内容を記載することになる。
特に、職務内容・範囲については、できるだけ詳細に記述しておきたい。

シェアードバリューコンテンツ

「シェアードバリュー」(Shared Value)とは、共有すべき価値、すなわち企業が社会と共有すべきミッションや存在意義のこと。オウンドメディア採用におけるシェアードバリューコンテンツとは、求職者に自社のビジョンや目指すべき未来について理解と共感を得るためのコンテンツ、ということができる。

シェアードバリューコンテンツには「カルチャーコンテンツ」と「パーパスコンテンツ」の二つのカテゴリーがあり、これをバランス良く発信することが重要だ。

カルチャーコンテンツ

カルチャーコンテンツとは、企業独自の価値観や行動規範、いわゆる企業文化の発信を指す。カルチャー自体は目に見えないものだが、各人材にとっての働きやすさに直結する重要なファクターなので、丁寧に分かりやすく発信したい。
自社の社風や行動様式などが伝わるよう、経営哲学、社員紹介、社内制度、社内行事、キャリアパスなど、さまざまなコンテンツを組み合わせていくことになる。

パーパスコンテンツ

一方、パーパスコンテンツは、社会における存在価値の発信を意味するもので、企業理念、提供価値などの言葉で表される。自社のパーパス自体を明文化することはもちろん、そのパーパスから発生するあらゆる取り組みを折に触れて発信することが、パーパスコンテンツとなる。
経営者のメッセージ、自社の歴史、ミッションなどに加え、最近ではESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを紹介する企業も増えている。

読者はどんな情報が欲しいのか

競争の激しい採用マーケットで、自社が求める高付加価値人材から「選ばれる」会社になれるかどうかが、企業の成長と生存の重大なカギを握っている。
そのためには「社会に貢献できる仕事を、自分のスキルを最大限に活かし成長し続けていきたい」などといった、読者である高付加価値人材の価値観に応える情報を発信することが必要となる。
ではどんな情報発信が有効なのか、カルチャーコンテンツとパーパスコンテンツの二つに分けて考えてみよう。

カルチャーコンテンツの発信例

LINE社では自社の社内情報を発信する「LINE HR BLOG」を立ち上げ、この中で社内の様々な取り組みや実際の働き方を積極的に配信することで、自社の職場環境の魅力を効果的に伝えている。
またエンジニアやデザイナー、事業企画部など、普段はあまり表に出ることのない職種のメンバーが職場の紹介をすることなどで、同社のダイバーシティへの取り組みやどのような年齢層の社員が働いているのかを含めた職場の雰囲気がリアルに伝わるコンテンツとなっている。

その他、カルチャーコンテンツとして表現すべきものに、企業文化・社風・行動様式・行動規範、意思決定のルール、評価制度、ダイバーシティへの取り組み、研修制度、各種部活動、オフィスデザインや動線、社内行事、などがある。

関連記事:求職者が『見たい!』と思う、採用オウンドメディアのコンテンツ例を解説

パーパスコンテンツの伝え方

パーパスを普通に訳すと「目的」となるが、マーケティングの分野では「自分たちは何のために存在しているのか」という、企業の存在意義として使われることが多い。
近年注目されている概念で、ビジョンやミッションと混同されることもあるが、パーパスは「社会的な存在意義」「個人のパーパスと組織のパーパスの多くが重なり合う」という点で他の二つと異なっている。

特に採用活動では「パーパスの一致」を優先事項と捉える高付加価値人材が増加しているため、パーパスをしっかりと読者に伝え、共感を呼ぶことができるコンテンツの重要度が増しているのだ。
抽象的になりがちなパーパスは伝え方を工夫しないと求職者の心に届かないこともあるので、コンテンツにする際は、以下の観点で考案してみよう。

創業者・経営トップからのメッセージとして

パーパスそのものが明確に掲載されていることはもちろん、創業者・経営トップが、自らの思いと自社の目指す姿を、自身の声でメッセージとして語りかけることによって、より求職者に共感してもらいやすい形でパーパスを伝えることができる。

社員一人ひとりの目線から見た「ストーリー」として

先輩社員が自社のパーパスを理解し、自分ゴトとしてその実現に向けてやりがいを感じながら働く姿は、求職者が自社に共感することにつながり、自社で働く姿をリアルに想像することに効果がある。

動画やアニメーションで伝える

情報量が多い動画やアニメーションは抽象的な概念を伝えやすい。
BGMを配信したりストーリー性を持たせることなどによって、さらに分かりやすく親しみやすいコンテンツとすることも可能だ。
もちろん、トップメッセージや社員のストーリーも動画やアニメーションを駆使することでよりわかりやすく伝えることができる。

メディアミックスで成功に導く

サイボウズやKDDIなど、オウンドメディア採用の分野で成功しているとされる企業は、社員によるダイレクトな情報発信、公式アプリの活用、多彩な動画のアップなどさまざまなメディアを駆使している。
自社でメディアを運営している強みを活かして、大胆なメディアミックスでさまざまな角度から情報発信することでマッチングの精度は上がっていく。

サイボウズの例

採用オウンドメディアの実践をはじめとした人事施策により、最悪の時期には実に28%にも達した離職率をわずか5〜4%(2019年現在)まで抑えることに成功したサイボウズ。
採用サイトのほか、会社や組織のあり方、多様な働き方や生き方について発信する「サイボウズ式」の運営にも力を入れている。

折に触れて発信される働き方や生き方の投稿は、同社の持つ独特のカルチャーとパーパスが社員の目線で語られていて、企業理念である「チームワークあふれる社会を創る」が分かりやすく伝わって来る。
このコンテンツの読者となってサイボウズに共感し、応募する求職者も多い。

また、エンジニアが執筆する技術ブログ、デザイン&リサーチチームの活動内容やメンバーを紹介するサイト、営業職向けに社員インタビューなどを発信するサイトなど、分野ごとに詳しいカルチャーを紹介するサイトを用意しており、ミスマッチの減少に寄与している。

さらに、営業職向けには、現在活動している営業メンバーと求職者が直接対話できる「営業キャリアBAR」を開催。具体的な業務内容や、仕事のやりがい、他社からサイボウズに転職した背景など、カジュアルな雰囲気の中でざっくばらんな話が聞けると求職者から好評を得ている。
新型コロナへの感染対策として現在はWebのみの開催だが、イベントは活発に継続されている。

KDDIの例

KDDIでは、採用ポータルサイトのほかに、社員やカルチャー、独自の取り組みを紹介するオウンドメディアを開設している。社員へのインタビュー、データや福利厚生制度の紹介など多彩な記事によって、多様な働き方を認める同社のカルチャーへの理解と共感を高めることに成功している。

採用関連イベントも、コロナ禍ということもあり全てオンラインだが、会社説明会のライブ配信、社員とのオンライン交流会など、各種メディアの特性を活かしたイベントを行っている。
社員とのオンライン交流会も、座談会形式、パネルディスカッション形式など、異なる方式を組み合わせて、応募者とのコミュニケーションが深まるよう工夫が見られる。

また、KDDIでは、2019年から既存社員の人事制度としてジョブ型雇用を導入しているが、現在ではこれを採用時にも拡大している。
中途採用では、ポジションごとに詳細な職務内容、募集背景、必須のスキル、求める人物像などを明示している。また新卒採用においても一部ジョブ型雇用を開始している。

具体的には、募集コースを「OPENコース」と「WILLコース」に分け、WILLコースは初期配属領域を確約したコースとしている。
WILLコースは、自身の専門分野を活かし、その分野で経験を積み成長したい学生向けとして、12の職務に分けて募集。それぞれの募集職務には必要な経験や資格、初期配属時の業務が明示されており、ジョブディスクリプションとして機能している。

まとめ

・継続的にペルソナの役に立つ、興味を引く情報を発信するためには、ジョブディスクリプションの詳細な記述と、シェアードバリューコンテンツの魅力的な表現が軸となる。

・ジョブディスクリプションの明記によって、求職者は自分の能力に見合った希望の職種を選択でき、企業側もジョブディスクリプションに従って職務内容の達成度をはかれるため客観的な人事評価が可能となる。

・シェアードバリューコンテンツには企業文化にあたる「カルチャーコンテンツ」と企業理念にあたる「パーパスコンテンツ」の二つのカテゴリーがあり、これをバランス良く発信することが重要。

・カルチャーコンテンツには企業文化・社風・行動様式・行動規範、意思決定のルール、評価制度、ダイバーシティへの取り組み、研修制度、各種部活動、オフィスデザインや動線、社内行事、などがある。

・抽象的になりがちなパーパスは『創業者・経営トップからのメッセージとして』、『社員一人ひとりの目線から見た「ストーリー」として』、『動画やアニメーションで伝える』の三つの観点からコンテンツを考案すると良い。

・オウンドメディア採用の分野で成功している企業は、自社でメディアを運営している強みを活かして、大胆なメディアミックスでさまざまな角度から情報発信することでマッチングの精度を上げている。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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