2020.6.26

離職率が下がる?スキルよりもカルチャー重視の採用で気をつけることとは

読了まで約 4

なぜカルチャー重視で採用するのか

入社後に発覚する新入社員と会社間のミスマッチは、新入社員が居心地の悪さを感じたり、早期退職の原因となるなど、採用担当者を悩ませる大きな問題だ。
しかも企業のカルチャーと新入社員のカルチャーが異なるために引き起こされる問題はこれにとどまらない。

例えば、

→前提となる自社の行動原理が理解出来ず既存社員と新入社員双方にストレスが生じる、
→チームワークに問題があるため業務が非効率になり成果が出にくい、
→新入社員が環境に適応する前に低評価となり早期退職につながる、
→退職者が増えた結果、会社やチームの雰囲気が悪化する、

などといった負の連鎖を生みかねないのだ。

こうした問題を回避するため、スキル重視からカルチャー重視で採用活動を行うことに注目が集まっている。
採用活動で使われるカルチャー重視とは、社風や理念、価値観などといった企業カルチャーに求職者が共感しているかどうかを選考基準として重要視するということであり、そのカルチャーは企業の成長段階や社会的立場などによって変化していく。

しかも人の個性が千差万別なように、企業という組織も生き物であり、その文化や価値観には多様性がある。
そこで自社のカルチャーがどのようなものであるかを求職者に明確に発信し、そのカルチャーに共感してくれる人材を獲得しようというのがカルチャー重視の採用活動だ。

スキルなら入社後に教育して高めていくことができるが、カルチャーは互いにズレがあったらなかなか修復することは難しい。
そのため採用基準に自社のカルチャーへの理解度、共感度などを組み込み、スキルが高くてもカルチャーにフィットしない求職者は採用しない、という採用方針に転換する企業も出現しているのだ。

関連記事:カルチャーフィットとは?新卒・中途採用のミスマッチを防ぐポイントを解説

カルチャー重視で採用する時のポイント

実際にカルチャー重視で採用する際に抑えておきたいポイントはいくつかあるが、まず大前提として「自社のカルチャーを明確に定義する」必要がある。
そしてさらに重要なのは自社のカルチャーを面接官などの採用担当者が正しく理解しているかどうかという点だ。

自社のカルチャーが明確に定義され、採用担当者がそれを正しく理解できていれば、面接で求職者の価値観を確認した際に、双方がマッチしているかどうかを判断しやすくなり、自社のカルチャーのどの部分と応募者の価値観のどの部分がフィットしていないのかを明確にでき、採用を判断する根拠とすることができる。

反対に自社のカルチャーの定義があいまいで、採用担当者が自社のカルチャーに理解がないままカルチャー重視の採用に踏み切れば、採用担当者の感覚で「この人は違う気がする」「なんとなく我が社向きだ」などと判断してしまうことになる。
その結果、さらにミスマッチを増やしてしまうことになりかねない。

関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

自社のカルチャーをしっかりと定義することは採用に有効なだけではない。
自社の文化を言語化し、全社員に発信することによって、社員自身が明確に理解することができるため、ブランディングや社員同士の一体感、エンゲージメントの向上にもつながるのだ。

次のポイントとして、「求職者の価値観や行動特性を把握するためにどのように質問を設定するか」が大切だ。
例えば「仕事に何を求めているのか」を聞いたときに「やりがい」という回答があった場合、「ではあなたの考えるやりがいとはなにか」「あなたは過去、どのようなときにやりがいを感じたのか」など客観的に、事実に基づいて深堀りをして価値観にたどり着けるように質問を設定しておくのだ。

それでも事前に模範解答を用意されると採用後に実際の行動がともなわない可能性もあるので、「○○のような場合、あなたはどのように対処しますか」など、模範回答が用意できない仮定の質問なども組み込んでおくことがカルチャーの把握につながる。

その他、「できるだけ多くの面接を行うことで多面的に価値観を探る」、「自社ワークショップなどを開催して共に作業することで実像を引き出す」などのポイントがあるが、可能であれば「リファレンスチェックを行う」ことも有効だ。

リファレンスチェックとは、特に中途採用において、応募者の在籍年数や実績、人物像などを前職や現職で一緒に働いていた第三者にヒアリングすること。
書類や面接ではわからない客観的な情報を得ることで、有力な判断材料となる。

カルチャーは重要だが全てではない。多様性を持ちはじめたカルチャー採用

自社のカルチャーを明文化し、選考時に求職者とフィットしているのかを測るという採用方は、離職率の低下やエンゲージメントの向上につながると期待されている一方で、過度なカルチャー重視は組織の同質化を高め、多様性を失わせるという見方もある。
同じカルチャーの者だけでは組織は成長できないと考え、選考時にカルチャーフィットを評価の軸としないよう、ルールとして定めている企業もあるほどだ。

もちろん自社のカルチャーに過度にこだわる採用活動には無理があり、ミスマッチが増えるだけでなく「自社のカルチャーを押し付ける企業」として評価を下げることにもなりかねない。
しかし多くの場合、企業側と求職者がお互いのカルチャーを理解し、共感した上で採用に至ることで入社後の速やかな活躍を後押しすることは間違いない。

企業のカルチャーとは、経営層も含めた社員一人ひとりの性格や価値観の集合体であるとも言える。
つまり、新しくそこに入ってきた社員もその企業カルチャー形成の一要因となるのだ。
そうして入社した社員が今までにない別のカルチャーをもたらし、それが企業に受け入れられるのであれば、それが新たな企業カルチャーとして更新されるのだ。

ダイバーシティの観点からも、現有メンバーのカルチャーにフィットさせるだけでは、多様で優れた候補者を採用することができないだろう。
これからの採用活動はカルチャー重視の視点を持ちながらも、それが全てと考えず、カルチャーフィットとして許容できる範囲で常に新たな人材を採用し、多様性を維持しながら、自社のカルチャーをアップデートしていくことが望ましいと考えられる。

関連記事:インクルージョンとは?ダイバーシティとの関係や推進のためのポイント

まとめ

・自社の企業文化(価値観、ビジョン、雰囲気)と求職者の価値観がマッチしているかどうかを選考基準として重要視するのがカルチャー重視採用。

・カルチャー重視採用では自社のカルチャーがどのようなものであるかを求職者に明確に発信することが重要である。

・カルチャーを明文化し、採用担当者がそれを正しく理解できていれば、面接で求職者の価値観を確認した際に、双方がマッチしているかどうかを判断しやすくなる。

・自社のカルチャーをしっかりと定義することは、それを全社員に発信することによって、社員自身が明確に理解することができるため、ブランディングや社員同士の一体感、エンゲージメントの向上にもつながる。

・求職者のカルチャーを知るには「価値観を知るための質問の設定」、「できるだけ多くの面接を行うことで多面的に価値観を探る」、「自社ワークショップなどを開催して共に作業することで実像を引き出す」、「リファレンスチェックを行う」などのポイントがある。

・これからの採用活動ではカルチャー重視を全てと考えず、カルチャーフィットとして許容できる範囲で常に新たな人材を採用し、多様性を維持しながら、組織のカルチャーをアップデートしていくことが望ましい。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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