2020.6.2

採用マーケティングとは何か。必要とされる背景と考え方

読了まで約 4

・経団連による事実上の採用ルール廃止によって各企業の採用活動が大きく変化せざるを得ない理由。

・多くの企業が通年採用に踏み切るに至るであろう、企業側と学生側、双方のメリットとは。

・通年採用でますます人材の獲得競争は激化する。
その解決策のひとつに採用マーケティングがある。

・採用活動になぜマーケティングの概念を取り入れるのか、その意味と効果。

・採用マーケティングに取り組むことで期待できる二つのメリットとは。

通年採用の本格化で激化する採用競争

2019年に経団連と大学側とが合意した新卒の「通年採用」への移行により、従来の一括採用という枠組みを見直す企業も多い。2022年以降、採用活動はより複雑化し多様化することが予想されている。
すでに通年採用を導入している大手企業に続き、中堅企業や新興企業も、次々と通年採用への準備を進めつつある。
これは通年採用が、企業側にも学生側にもメリットが大きいと考えられているからだ。

企業側のメリットの第一は、人材不足への対応だ。少子化が進み、従来の新卒一括採用だけでは目標数を充足できない企業が増えている。通年採用では、採用活動の時期に制限がないため、早い時期からの学生への接触にはじまり、卒業直前の学生や第二新卒まで視野に入れた採用計画を立てることができ、優秀な人材の獲得に役立つ。

関連記事:通年採用とは?「新卒一括採用」との違いや近年広まる背景

メリットの第二は、グローバル人材にもアプローチできることだ。海外留学生や外国人は卒業時期が日本とは異なるため、一括採用ではそもそも募集対象から外れてしまうケースが多かった。留学生・外国人にも広く門戸を開いていることをアピールすることで、グローバルな企業活動に対応できる人材に出会えるチャンスが増大するメリットは大きい。留学生・外国人のために「秋入社」などの別枠を設けて採用活動を行う企業もあるが、通年採用では選考過程を一本化することができ、採用業務を効率化することにもつながる。

第三に、一括採用では固定化していたタイトな採用スケジュールから解放され、一人ひとりの学生と丁寧に向き合い、時間をかけて選考することが可能となる。一括採用では、面接が集中する時期には面接官のスケジュール調整に奔走することになるが、通年採用では面接時期が分散し、ゆとりをもった採用計画を組むことができる。

関連記事:新卒一括採用とは?日本特有の制度ができたきっかけやメリット、デメリット

一方、学生側のメリットとしては、少しでも早く動き出し、早期に内定を得たい学生は早い時期に、やりたいことを終えてから取り組みたい者は遅めの時期、あるいは卒業後にと、自分の希望する時期に就活を行えることが挙げられる。
海外留学生や外国人にとっても、一括採用では卒業時期のずれから不利とされていたが、その点が解消され、帰国後に落ち着いて取り組むことができる。
また、インターンシップをはじめ、時間的な余裕をもってじっくり検討することも可能となる。長期インターンシップでは一定期間、社員と同じように働き、仕事内容はもとより社風や人間関係の良しあしを肌で感じることでミスマッチを防ぐことができるため、希望する学生がいっそう増加するだろう。

さらに、大手メーカーが全社員のジョブ型雇用への切り替えを発表するなど、これまでは新興・ベンチャー企業で散見されていたジョブ型採用も、今後は広まっていくと見込まれる。

そのためこれからの採用活動がさらに複雑化していくことは確実だ。
その上、新型コロナウイルスの影響によりすべてのスケジュールが後ろ倒しとなった影響も計り知れない。
こうした様々な要因が重なり合い、今後は優秀な人材の獲得競争がさらに激化すると予想され、企業は新しい発想で採用活動を行わなければ目指す人材に辿り着けない時代に突入したと言える。

なぜ採用活動にマーケティングの概念が必要なのか

それでは、新型コロナの影響下で迎える新しい通年採用時代に、どのような採用活動が求められているのだろう。
その有力な答えの一つとして、採用マーケティングが注目されている。文字通り「採用活動においてマーケティングの考え方や手法を取り入れる」ことだが、そもそもマーケティングとはなにか? となると概念が幅広く、定義が難しい。

マーケティングの第一人者として有名なコトラーの定義を引用すれば「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること」となるが、これは実は採用における企業から人材へのアプローチに非常に似ている。
顧客を人材に置き換えるだけで、「獲得したい人材のニーズを探り、それを満足させる職場を作り、さまざまな手法でその価値を伝え、入社に至らせること」がそのまま採用マーケティングの定義となる。

消費者ニーズの変化にマーケティングが答えてきたように、採用にマーケティングの概念を取り入れることは自然であり、効果を生みやすい手法なのだ。
働き方や仕事に求める価値観が多様化したことにより、従来の求人媒体へ依存した「待ち」の採用活動では、優秀な人材を獲得することは難しい時代となった。
先進的な企業では、より積極的なアプローチを行うため、採用にマーケティングの概念を取り入れ始めている。
これからはインターネットユーザーである人材をターゲットに、デジタル技術を駆使したダイレクトな採用マーケティングがさらに活発化していくと考えられる。

採用マーケティングに取り組むメリットとは

では、採用マーケティングに取り組む具体的なメリットにはどこにあるのか。

まずあげられるのが比較的少ない予算で自社にマッチした人材を獲得できる可能性が高められるということ。
採用マーケティングの戦術にもよるが、自社にマッチしたターゲットを明確化した上でのダイレクトリクルーティングや、オウンドメディア、SNSなど自前の情報発信メディアを利用しての母集団形成などは、既存の求人媒体や紹介会社への依頼が必要ないため、従来の採用手法よりもコストを抑えられる。
当然オウンドメディア構築などには時間的コストや人件費が発生することもあるが、そこで発信・受信した情報は自社の資産として蓄積され、採用力の強化につながるため、長期的に見れば費用対効果が高い手法であるといえる。

もう一つ、採用マーケティングを継続していけば安定して人材を確保できる「採用に強い会社」になれることも大きなメリットだ。
採用マーケティングを行うことにより自社の風土・文化や働く社員の姿などを継続して発信することで、認知度・魅力度がアップし、求める人材とのマッチング度が高まり、潜在層のファン形成にもつながる。
さらには、自社の魅力や価値の発信により既存の社員のエンゲージメントも相乗的に向上し、モチベーションの向上・リテンションの低下(離職率防止)も得られる。その結果長期的に効率の良い採用活動が行え、「採用に強い会社」へと変貌することができるのだ。

まとめ

・新卒の「通年採用」により、従来の一括採用という枠組みは崩れ、採用活動はより複雑化し、企業は既存の採用活動の大きな見直しを迫られている。

・すでに多くの企業は通年採用を導入している。これは無理のない採用スケジュールと、双方の接触機会の増加によるミスマッチの低減という大きなメリットをもたらすから。

・人材の獲得競争はさらに激化し、企業は新しい発想で採用活動を行わなければ目指す人材に辿り着けない時代に突入した。その有力なソリューションのひとつが採用マーケティングである。

・採用マーケティングとは、「獲得したい人材のニーズを探り、それを満足させる職場を作り、さまざまな手法でその価値を伝え、入社に至らせること」。

・これからはインターネットユーザーである人材をターゲットに、デジタル技術を駆使したダイレクトな採用マーケティングがさらに活発化していく。

・採用マーケティングに取り組む具体的なメリットは、比較的少ない予算で自社にマッチした人材を獲得できることと、「採用に強い会社」になれることにある。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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