2021.8.4

KJ法とは?発想法としてのやり方やメリットを解説

読了まで約 7

■ブレインストーミングとKJ法とは?

■ブレインストーミングとKJ法の違い

■KJ法がもつ3つのメリット

■KJ法の考慮すべき3つの課題点

■KJ法における情報の収集と分類

■KJ法における情報の分析と出力

KJ法とはなにか?ブレインストーミングとの関係

目覚ましい技術革新と、次々に生み出されていくプロダクトやサービスとにより、日々大きく変化を遂げ続ける現代のビジネス環境。
いち早く新たな方向性を探り、斬新なアイディアを生み出すことは、いわば事業の将来を左右する重要な役割を果たすのみならず、企業の存続そのものに直結する。
しかし、客先との打ち合わせや社内ミーティングで合理的な意見が出てきたとしても、これらの情報を整理して、アクションアイテムとしてまとめていくことは決して容易ではない。せっかく良い意見が出ても、行動に結びつかないと意味を成さない。
このため、様々な意見を集約・整理する「収束技法」は、これからの業務において、ますます欠かせないものとなっていく。
この収束技法の中でも、本稿では「KJ法(読み:ケージェイほう)」に注目して紹介していきたい。
まずKJ法を説明する前提となる「ブレインストーミング」について確認し、そのあとKJ法について基本的な概念を中心に解説を行い、両者の違いなどについて確認していこう。
次に、KJ法を収束技法として取り入れることによってもたらされる数々のメリットについてと、同時に考慮されるべき課題やデメリットについて見ていく。
最後に、ブレインストーミングとKJ法の具体的な実践方法について、4つのステップに分けて解説を行っていく。
まずは、ブレインストーミングとKJ法について、基本的な考え方を確認していこう。

1. ブレインストーミング(BS法)
ブレインストーミング(brainstorming)とは、Alex F. Osborn氏が考案した会議方式とされており、ブレストやBS法など様々な呼称で知られる。
アイデアや情報を網羅的に抽出していくことを可能とする思考法だといえる。
一般的なブレインストーミングでは、予め決めた制限時間内で、ホワイトボードや模造紙などのスペース上に、参加者が次々と頭に浮かんだアイデアやキーワードを書き出していく。
また、基本的な4つの原則があり、下記の通りだ。
i. 批判を絶対にしないこと
ii. 自由であり奔放であること
iii. 質よりも、まず量があること
iv. 連想し、結合させ、便乗していくこと

2. KJ法(発想法)
川喜田二郎氏により1967年に発表された著書『発想法』の中で、著書名のとおり発想法として発表されたKJ法は、一か所に集中した情報に対して、グルーピングやラベリング、図解化、文章化などの手順を踏んでいくことで、問題の本質を特定し、新たなソリューションの発見に役立つとされている思考法だ。
考案者である川喜田氏のイニシャルから命名されたKJ法だが、当初は文化人類学のフィールドワークにより得られた膨大な情報を効率よくさばいていく方法として考案されている。
もともと情報の分析法として生まれたという背景を持つが、現場での実用を重ねるに従い、新たな発想やアイデアの創出にも有用であることが明らかになり、発想法として普及していった。
KJ法はこのように、情報の整理や分析・活用に長けた思考法のため、アイデアを抽出することに長けるブレインストーミングと組み合わせて用いられることが多い。

KJ法の実践時に情報整理や情報活用を前提として用いられることが多いブレインストーミングだが、KJ法では通常のブレインストーミングとは異なり、批判的思考も本質の特定に役立つという考えをとる。
このため、ネガティブ要素が強い情報も、ブレインストーミングの段階から意識的に取り上げていくことが求められる点で、「批判厳禁」の原則を有する通常のブレインストーミングとは大きく異なる。

KJ法のメリットと課題

これまで通常のブレインストーミングとKJ法それぞれの基本的な考え方と、両者の違いについて見てきた。
ここでは、KJ法を用いることで期待することができるメリットと、克服されるべき課題やデメリットなどについて、それぞれ確認していきたい。
まずは、収束技法としてKJ法を利用することで期待できる3つのメリットについて確認していこう。

1. 手軽さと自動化に優れていること
KJ法が有する最も大きなメリットは、まさしくその手軽さと自動化が容易なことにある。
まず、手軽さにおいては、ペンと紙さえあれば「誰でも」「いつでも」「どこでも」実施が可能である点において、汎用的で自由が利く発想法だといえる。
また、自動化に関してはKJ法に対応したソフトウェアなどが多くあることから、パソコン上でアイデアを具現化させるプロセスを完結させ、一部自動化させるといった使い方が効率的といえる。

2. 本質的な問題の洗い出しと新たなアイデアを創り出せること
KJ法の実践における各ステップは、ロジカルシンキングのそれと類似性が高い。
しかし、思考法としてのロジカルシンキングが一朝一夕では身につかないものであるものに対し、発想法であるKJ法は然るべきステップを理解することにより、容易に実践することができる点が異なる。
合理的に整理・分析されたアイデアから、問題の本質が見えてくること、そして新たなアイデアの創出に結びつくことが、発想法としてのKJ法のメリットだ。

3. 少数意見を尊重することができること
多くの共同作業では少数意見は議論が進むにつれて淘汰されてしまう傾向があり、これは共同作業の人数や規模が拡大するほど顕著だ。
しかしこれら淘汰された少数意見に本質的な示唆や新たなアイデアのヒントが隠れていることもある。
KJ法では、通常のブレインストーミングやその他の発想法では早期から除外されてしまうアイデアも、他の多数意見と同等に扱える。
このことから、少数意見を尊重できる点は、KJ法の大きなメリットだといえよう。

ここまで見てきたようにKJ法の実践によって享受することができるメリットは大きい。
しかし場合によって以下のようなデメリットや課題が存在することも事実だ。
ここでは主にデメリットとなり得る3つのケースを紹介する。

1. 状況によって実施が難しい場合やかえって非効率となること
メリットでも記載した「紙とペンさえあればできる」発想法は、逆にいえば紙とペンがないと難しいことでもある。
つまり、普段から脳内で情報整理や問題の本質見極めを行う習慣がある人が、個人作業へKJ法を持ち込む場合はかえって非効率となってしまう。
しかし、共同作業においては脳内で完結することが難しいため、記録を残す観点からもKJ法のような発想法は有用である。
このため、使用状況を見誤らないことが重要といえよう。

2. 発想や意見の偏りにより、弊害が生まれる可能性があること
KJ法は多くの情報を引き出し、集約し、分析していく上で優れた発想法だ。
しかし同時に、共同作業に参画するメンバー構成によって情報の網羅性や集団特性が大きく左右されるものでもある。
このため、時としてメンバー構成によって他のメンバーの顔色をうかがったり、マイノリティのアウトプットが少なくなってしまうなどの弊害が起きかねない。
この場合、共同作業前にあらかじめメンバー同士のパワーバランスの均衡を取っておくことが望ましい。

3. 実践方法に対する理解が不足しているとき、期待する効果が得られないこと
次項で詳述する通り、KJ法は図解化や文章化によって本領を発揮する発想法だ。
しかしKJ法を取り扱ったノウハウ本やソフトウェアには、これらのステップを省いているものも少なくない。
グルーピングとラベリングによる情報整理は多くの成果に繋がるひとつの要素だが、これらのみがKJ法を成すわけではないのだ。
KJ法に関する情報の正確性をよく吟味し、実践方法に対する理解を深め、KJ法から期待する効果を得られるようにしたい。

ブレインストーミングとKJ法の実施方法

既述の通り、KJ法を期待通りに発想法として用いるためには、これを正しく理解して実践していくことが求められる。
そこで本項では、より多くの成果や発見に結びつけるためのKJ法の実践に向けて、具体的な4ステップの構成と、それぞれのステップですべき内容について解説していく。

1. カードを作る:素材収集とカード化
1a. 素材収集
まず最初に行うのは、分析や活用あるいは新たな発想の元となる素材収集だ。
カードの素材となる情報やデータを集めるこの作業を「探検」という。
いわゆる「探検」には2種類あり、マーケティングや取材、実地調査などを通じた「外部探検」と、自身の経験や反省、所感などから情報を収集する「内部探検」となる。
ここで重要なのは、あらゆる角度から主題を観察したり、分析したりすること、そして、ネガティブ要素を含む情報を、可能な限りポジティブに捉えようとする意識だ。

1b. カード化
素材収集により集めた情報・データを、全てカード化していく。紙とペンで行う場合でも、ソフトウェアで行う場合でも、主題に関わる事実、意見、気づきなどありとあらゆる内容を次々と書き込み・入力していく。
ここで重要なのは、既成概念にとらわれない自由な発想や、カードの視認性の観点から見出しを付けること、過度に抽象的な見出しとしないこと、一枚ごとにひとつの情報のみ記載することなどだ。

2. グループの編成:グルーピングとラベリング
2a. グルーピング
グルーピングでは、多くのカードの中から関係性や関連性の深いと推察されるものをグループ化し、ペンと紙を使う場合は輪ゴムなどでまとめる。
ここで重要な点は、開始時に全てのカードが視界に入ること、ラベル名を考えてから分類するのではなく分類してからラベル名を考えるという順序を意識すること、そして共同作業で意見が分かれた場合は議論を重ねることだ。

2b. ラベリング
ラベリングでは、グルーピングでまとめた各グループの内容を適切に表すラベルを作っていく。
ここで作るラベルは中グループや大グループを作成する際の判断の基準にもなっていく。
このため、複数回ラベリングを行う場合は、まず1回目のグループ作成が終わってから1回目のラベル作成、という順序で行うとよい。
注意点は、紙とペンで行う場合に視認性を意識してラベルはアイデアの紙と別の色紙を使用すること、そしてグループに対してつけるラベルは表札に近いシンプルで明確なラベルと分かるものを使用することだ。

3. A型図解化:空間配置と図解化
3a. 空間配置
空間配置において、不規則に配置されているカードあるいはグループの位置関係の見直しを行っていく。
全てのカードは共通の主題の下書かれたものであるため、多少の相関性を持つ。
主題に近しいものや関連性が濃いものは近くに配置し、逆のものは遠くに配置するといった横一列の配置換えを行う。

3b. 図解化
図解化では、空間配置にて再配置を行ったカードあるいはグループの関連性を、「相関図」という形で見える化していく。
図解化は、次の流れで行われる。
①グループとしてまとめたカードを再展開する
②グループごとに四角で囲み、グループのラベル名を書き込む
③カードごと、あるいはグループごとの相関性を矢印などの関係線で示して(あるいは結び付けて)いく

4. B型文章化:B型叙述化
最後に全体の関係を言語化していくのが文章化(あるいは叙述化)という作業になる。
具体的な手順は次の通りだ。
①グループごとのカードに書かれた内容を、可能な限り多く使っていき、一つの文章を作っていく。
②グループ同士に多くの相関性が認められる場合、よりカードが多いグループ→カードが次に多いグループへと、それぞれの関係性を探っていく
③図解からどのグループが最重要か考慮した上で、共同作業である場合はこれについて十分な議論を行い、全体での理解と解釈の一致を図る

まとめ

・ブレインストーミングとは、アイデアや情報を網羅的に抽出していくことを可能とする思考法だ。
他方、KJ法は、一か所に集中した情報に対して、グルーピングやラベリング、図解化、文章化などの手順を踏んでいくことで、問題の本質特定新たなソリューションの発見に役立つとされている思考法だ。
KJ法では情報の分析に先立ち、素材収集が必要となることから、両者はしばしばセットで使われることが多い。

・KJ法では論理的思考を実践することで、物事の本質特定や新たな発想を生み出すことに有用だ。
しかしその過程で批判的思考も積極的にこれを取り入れる点がブレインストーミングと大きく異なるため、ネガティブ要素が強い情報も早期から取り入れていくことで、これをポジティブに捉えようとする点が、KJ法の特徴だ。

・KJ法のメリットは、大きく見て次の3つに集約できる。
①紙とペンから始められる手軽さと、多くのソフトウェアが容易されており、自動化が容易なこと
②ロジカルな実践ステップを背景としており、本質的な問題の洗い出しと新たなアイデアを創り出せること
③全てのアイデアや意見が対等に扱われるため、埋もれがちな少数意見を尊重することができること

・KJ法において克服すべき課題、あるいは注意しなければデメリットとなりかねない点は次の3つだ。
①状況によって実施が難しい場合や却って非効率となること
②発想や意見の偏りにより、弊害が生まれる可能性があること
③実践方法に対する理解が不足しているとき、期待する効果が得られないこと

・KJ法では、素材収集を「探検」と称することがあり、探検には次の2種類ある。
外部探検:マーケティングや取材、実地調査などを通じた素材収集
内部探検:自身の経験や反省、所感などからの素材収集
また、次ステップとして、これらにグルーピング(分類)とラベリング(名前付け)を行う。
グルーピングとラベリングは必ず分類後に名前付けを行う順序が重要で、既成概念に囚われないために、ラベル名ありきでグループ分けを行ってはならない。

・KJ法における最大の強みである分析とアウトプットは、図解化と文章化(叙述化)に支えられている。
グループ分けとラベル付けを終えた後、テーマに近しい順に配置換えを行い、その後グループ(あるいはカード)同士の相関性を矢印などの関係線で結んでいく。
最後に、全体の関係を言語化していくのが文章化(あるいは叙述化)だ。
文章化では、グループ内のカードの内容を可能な限り記述し、よりカードが多いグループから次に多いグループへと関係性を探る。
結果としてどのグループが一番テーマに重要となるかを、共同作業メンバーとしっかり議論することが要となる。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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