2020.7.28

ニューノーマル(新しい生活様式)時代。採用活動はどう変わるのか

読了まで約 5

・新型コロナウイルスの影響で、企業の採用マインドはどう変化したか?

・現時点での採用活動の感触は、順調? 苦戦?

・ニューノーマル時代の採用市場は売り手市場から変化するか?

・感染症対策としてのオンライン選考は普及するか?

・通年採用のメリットとデメリット。

・ニューノーマル時代の人材確保の鍵とは?

新型コロナで企業にも学生にも大きな変化が

6月には新型コロナウイルスによる感染拡大の大きな波はいったん収束し、感染状況は小康状態にあるかに見えたが、7月に入り東京を中心として感染は再び拡大に転じ、1日あたりの感染者数は過去最多を更新する日が相次いでいる。

現在、第2波を警戒しながら経済活動を再開する動きと、3蜜と不要不急の外出を避け、ソーシャルディスタンスを保つことで、感染拡大対策を行うという、相反する二つの動きのなかで国民の生活は揺らぎ、倒産を余儀なくされる企業も増加している。
このように企業活動に多大なる影響が出ている中、本来なら採用活動のただ中にあったはずの企業はどのような対策をとり、求職者のマインドや行動はどう変化したのだろうか。

まず、企業における「2021年入社採用計画の増減」については「HR総研」が2020年5月15日から5月20日を調査期間として実施した「緊急事態宣言の延長による新卒採用への影響」に関するアンケート(有効回答:224件)の結果を見てみると、「2021年入社採用計画の2020年4月入社者数に対する増減」についての設問に、「前年並み」との回答は58%で最多、次いで「減らす」が19%、「採用なし」が17%、「増やす」は7%にとどまっている。

 

3月に行った2021年新卒採用動向調査の結果と比較すると、「減らす」(3月時13%)は6ポイント増加、「採用なし」(同12%)は5ポイントの増加となっている。

一方、「増やす」は3月動向調査時(15%)より8ポイント減少しており、新型コロナウイルスの影響が深刻になるにつれ、企業の採用マインドはマイナスに傾き始めていると考えられる。(3月動向調査時の割合は「未定」を除外した数値)。
企業規模別に見ると、従業員数1001名以上の大企業と301〜1000名の中堅企業では「前年並み以上」(「増やす」と「前年並み」の合計)が6割を超えているものの、大企業では「減らす」が30%、中堅企業では21%を占めている。

また、従業員数300名以下の中小企業では「採用なし」が28%と3割近くを占めている。
これもコロナ禍による経済活動の停滞を見越しての対応といえるだろう。

 

一方、学生の側の動向としては、株式会社リクルートキャリアの「就職みらい研究所」が発表した「就職プロセス調査」の結果によれば、7月1日時点の大学生(大学院生除く)の内々定を含む就職内定率は73.2%であり、前年比マイナス11.9ポイントと低くなっているが、学生が6月中に行った活動の実施率を見ると、「面接など対面での選考を受けた」が40.0%と5月中と比べてプラス18.6ポイントと大きく増え、緊急事態宣言解除によって対面での面接が増加し、内定出しにつながっていることがうかがえる。

同調査によると、内定率は前年と比べて約1ヶ月遅れで推移しているので、今後も少しずつ増加いくとみられる。
また、今年は、感染防止への対応で、オンラインを中心とした選考をしていた企業もあり、内定が出ても企業の誰とも直接会えていないという声も多い。

企業側も、「オンライン面接のみを実施している」企業に対して「最終面接まですべてオンライン面接とする可能性」について聞いた設問では、「ある」という回答が57%と6割近くを占めているため、最終面接まで会社の人間と直接会わないまま、就職に至る学生も多く出そうだ。

 

ProFuture株式会社/HR総研

 

ニューノーマル時代の感染症対策がもたらす採用活動の変化

ここまで見てきたように、ニューノーマル時代を背景に、企業側の採用戦略にも、学生側の求職活動にも大きな変化が起きているのは確かだ。
売り手市場で学生有利と言われてきた状況も、長期化する新型コロナウィルスの影響で変わりつつあるように見える。
報道などによれば、観光業を中心に多くの企業が業績を大きく低下させる中で、店舗・支店の閉鎖や縮小、人員整理で苦境を打開しようとする動きが顕著になっているからだ。

この点について、株式会社ディスコの「キャリタスリサーチ」が主要企業に対して行った「2021年卒採用活動の感触等に関する緊急企業調査」(回答数:1,122社、調査時期:2020年5月20日~25日)の結果を見ると、「売り手市場」が変化するかどうかを企業に聞いた設問である「2021年卒者の就職環境の見方・変化」では、「売り手市場の傾向は変わらない」と考える企業が47.7%であるのに対して「買手市場に変化してきている」とする企業が50.5%であり、両者は拮抗している。

一方、同様の質問を学生に対して行った「2021年卒学生調査」では「もともと売り手市場であったが、買い手市場に変化してきている」という回答は7割を超えており(70.2%)、学生の側により一層「買い手市場」への危機感が強いことが伺える。
また、感染症対策として、採用活動における非対面・オンライン化が進んだかどうかを問う「オンラインでの採用活動」という設問では、全体で「自社セミナー(会社説明会)」(63.1%)、「個人面接」(61.6%)のオンラインでの実施が6割超と最も多く、「社員座談会・リクルーター面談」(41.1%)や「最終面接」(35.7%)などを含め、なんらかのオンラインでの採用活動を行っている企業は8割近くとなっている。
反対に「いずれもオンラインでは実施しない」という回答は全体の22.1%に止まり、ニューノーマル時代の感染症対策として、採用活動のオンライン化は急速に進んでいるといっていいだろう。

ただし、規模別にみると、従業員1000人以上の大企業では「いずれもオンラインでは実施しない」という回答は11.5%であり、従業員数300人未満の中小企業では32.5%にものぼるため、オンライン化への取り組みは中小企業において進んでおらず、この層でいかに普及するかが今後の課題といえる。

さらに夏以降の採用予定に関する「夏採用・秋採用実施予定」という設問では、夏採用について予定があると答えた企業は計37.7%で、このうち6.6%は「コロナの影響により追加で実施」すると回答している。
「実施しない予定」が25.6%あるが、全体の3分の1以上の36.8%の企業が「未定」と回答している。

また、「通年採用」に関する設問では、「もともと実施予定」(15.7%)、「コロナの影響により追加で実施」(2.3%)を合わせて2割弱が実施予定だが、「未定」という回答が54.7%と最も多くを占めており、新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、2021年卒の採用活動が長期化する可能性も増してくるに違いない。
2021年卒の採用活動に関する調査結果。新型コロナウイルス感染症の影響は

 

加速する通年採用への流れ

2019年4月に経団連と大学側が協議の結果、通年採用の拡大に合意。
それまでの春季一括採用に加えて、多彩な型の採用活動を推進することを発表した。
これにより企業の採用活動はさまざまな選択肢を持つこととなったが、中でも注目を集めているのが通年採用だ。
大手のソニーやファーストリテイリングなど、すでに導入している企業も多いが、前述の調査結果をみても、新型コロナウイルスの影響によってこの動きはさらに拡大するとみられる。
では、通年採用には企業にとってどのようなメリットとデメリットがあるのか、ここで整理しておこう。

・メリット

1.年間を通して人を採用することができる
春や秋など、決まったタイミングまで待つことなく、自社の都合でじっくりと採用活動を行い、最適なタイミングで入社させることが可能だ。

2.留学経験者・外国人などにもアプローチできる
既存の就活ルールでは選考時期が合わなかった9月卒業の留学経験者や外国人にもアプローチできるようになり、人材の多様化や高付加価値人材の採用への可能性も広がる。

3.余裕を持った選考過程
最終日程が決まっている一括採用のように、1日に何10人と選考することや、競合他社の選考状況をリサーチしながら、少しでも早く選考結果を出して人材を確保しようなどと焦ることなく、余裕を持って選考ができるようになる。
学生の能力や考え方を慎重に見極めれば、ミスマッチの低下にもつながる。

・デメリット

1.採用コストの増加
通年採用最大のデメリットは採用コスト増大の可能性が増すことだ。
選考が長期化することにより、求人媒体への出稿費用や、地方説明会への出張費、また入社時期を複数設ければ、入社研修などの教育もその度に行うことになるので、人事部の人件費などを含めて全体的に採用コストが増加することになる。
これを回避するためには、オンライン選考の導入や既存の採用メディからオウンドメディアへのシフト、教育制度の見直しなど、コスト削減策も同時に検討しておく必要がある。

以上、メリットもデメリットもある通年採用だが、デメリット部分は対応策をしっかりと立てておくことで克服できると考えられる。
前述の「HR総研」の調査結果のフリーコメントには、「21卒向け新卒採用活動の課題」として、「これから定期的に新型コロナウイルスの影響が出る場合、採用の在り方を抜本的に見直す必要がある」(301~1,000名 サービス)、「従来の枠にとらわれない通年採用がこれからの標準となる気がする」(300人以下 情報・通信)など、通年採用に期待する声が目立つ。
ニューノーマル時代を乗り切るためには、通年採用も視野に入れた柔軟な採用活動が人材確保の鍵となっていくだろう。

 

まとめ

・新型コロナウイルスの影響が深刻になるにつれ、企業の採用マインドはマイナスに傾き始めている。

・オンライン面接のみを実施している企業では、最終面接まですべてオンライン面接とする可能性がある企業が57%と6割近くあり、最終面接まで会社の人間と直接会わないまま、就職に至る学生も多く出る可能性がある。

・すでに導入している企業も多いが、新型コロナウイルスの影響によって通年採用の動きはさらに拡大するとみられる。

・通年採用を「もともと実施予定」(15.7%)、「コロナの影響により追加で実施」(2.3%)の合計が2割弱だが、「未定」が54.7%と最も多く、新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、2021年卒の採用活動が長期化する可能性もある。

・通年採用のメリットは年間を通して人を採用することができること、留学経験者・外国人などにもアプローチできること、余裕を持った選考過程を組めること。

・通年採用最大のデメリットは採用コスト増大の可能性が増すことだが、オンライン選考の導入や既存の採用メディからオウンドメディアへのシフト、教育制度の見直しなど、コスト削減策を講じることで回避することができる。

 

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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