2021.3.29

就活生に対して行う「面接フィードバック」の目的や具体的な方法・ポイントを解説

読了まで約 7

■採用難における切り札「モチベーティブコミュニケーション」

■フィードバックの基本と、面接フィードバックを行う主な目的

■面接フィードバックを実施することでもたらされる3つのメリット

■面接フィードバックを実施していない企業が感じる懸念点とは?

■面接フィードバックを最適化させながら、効率的に行うポイント

■面接フィードバックの「先」を見据えた「ブリッジング」

面接フィードバックとは何か、行う意義とは?

年々変化する採用市場の動向により、企業によっては優秀な人材を確保することが、今までになく困難になりつつある。

また、日々新しい採用マーケティング手法や採用ツールが市場に出てくる中で、どのようなツールやスキルを駆使していくのが自社にとってベストであるのか、迷ってしまう企業の採用担当者も多いことだろう。

2020年卒から2021年卒における採用市場は、コロナ禍の影響により応募率や内定率などの全体数値に多少の変動があったが、依然企業の採用意欲は高止まりを見せており、学生の就職意欲も旺盛だ。

学生の就職活動に対する、高い熱量に呼応するような採用戦略を組み立てていくことは、自社採用力の向上にも資することから、その中でも重要になってくる考え方が「モチベーティブコミュニケーション」だ。

これは、企業説明会や合同説明会の企業ブースで行われる「1対多」の一方的な情報伝達だけでなく、面接選考時における学生との「1対1」という点に注目し、これを学生の動機付けや志望度向上のために活用していくというコミュニケーション方法である。この方法は、採用において他社との差別化を考えている企業にとって、ブルーオーシャンとなる戦略だと言って良いだろう。

本稿では、新卒採用におけるモチベーティブコミュニケーションを実現していく上で、「入りたい人の中から選ぶ」ではなく、「取りたい人の中から選ぶ」という発想に基づき、選考施策として注目を集めている「面接フィードバック」について、フィードバックの基本的な考え方、面接フィードバックのメリットやデメリット、面接フィードバックを実施する際に気を付けるべき点や活用にあたってのポイントを紹介していく。

ここでは、まずフィードバックの基本的な考え方と、面接フィードバックを実施する目的について確認していこう。

そもそも、電子工学や解剖生理学などの学術用語に端を発した「フィードバック」という単語は、ビジネス用語としては「行動したことによる結果を伝える行為」を指して使われている単語である。その主たる目的は、設定された目標に向かって行動した結果を評価することや、フィードバックを通じて従業員の成長を促進させていくことにある。

良かった点や、長所などを褒めることで前向きな評価を伝えたり、至らなかった点や問題行動がもたらした好ましくない結果について振り返ることで、次回以降につなげていくための行為がフィードバックだ。

フィードバックには大きく分けて2種類あり、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックである。ポジティブフィードバックでは否定的な言い回しを避けることにより、前向きな印象の中で評価を与えていくものである。

対してネガティブフィードバックでは、課題点や改善を要求する点について、事実に基づき端的に評価とアドバイスを与えることを指している。

この2種類はフィードバックにおける評価対象者によって適宜その割合や内容を使い分けることが最も望ましく、対象者全員に対して画一的にどちらかのみ行われることは望ましくない。

これらを採用面接時にあてはめて考えた場合、主たる目的は、その面接において学生が繰り広げた応答の内容に基づいて評価を行うことを通じて、その評価内容を今後の採用選考における志望度向上につなげていくことにある。

最終的な目的は、早期段階でミスマッチを防止し、応募者の不安点を解消しながらリテンションを行うことにある。第3項で詳述することになるが、学生の経験や問答内容によってポジティブフィードバックとネガティブフィードバックを使い分けつつ、学生への面接フィードバックを自社の魅力訴求につなげる「ブリッジング」が最も重要になってくる。

関連記事:新卒・新人社員の意欲向上につながる「ポジティブフィードバック」とは?効果的に活用するポイント

面接におけるフィードバックの目的とメリットデメリット

中途採用では、キャリアエージェントなどを通してフィードバックが行われることが一般的な「面接フィードバック」だが、前項では、新卒採用において行われることの意義について、その種類について見てきた。

ここでは、新卒採用の面接フェーズにおいて、選考対象者にフィードバックを行うことのメリットやデメリットがどのような点にあるのか、それぞれ見ていく。

まずは、面接フィードバックがもたらす主なメリットといえる3つの点について確認していこう。

1. 応募者の志望度向上が期待できる点
応募者を評価し、改善すべき点があった場合、これをポジティブなかたちで選考対象者に伝えた場合、学生側に対して「しっかりと学生時代の活躍や、自分の考え方について見てくれており、丁寧な選考を行っている」という印象付けが可能だ。

志望度の高い応募者の場合、採用フェーズにおけるリテンションにもつながることから、企業側に大きなメリットがあるといって良い。

2. 選考段階でミスマッチを防止できる点
フィードバックを行うにあたり、応募してきた学生の魅力的な点、足りていない所感を持った点などを伝えることで、ある程度の社内における評価基準を学生に伝えることとなる。

いうまでもなく、社内の評価基準は企業カルチャーや企業の行動方針などと深く結びつく部分であり、これを伝えることは応募者に対して、企業とのミスマッチが生じる可能性を早い段階で気づかせることが可能なため、学生側にも大きなメリットがあるといって良い。

3. 面接の品質を上げ採用力向上が期待できる点
それぞれの面接官は、企業の「顔」として面接に臨むこととなる。面接時にフィードバックを実施するということは、法人としてフィードバックを行うということであり、それぞれの面接官に大きな品質差があってはならない。

このため、社内の採用基準、評価基準などを統一し、フィードバックを仕組み化することによって、結果的にミスマッチを減らし、逆に求める人材像へのリテンションに資するような採用力向上をもたらす点、企業にとってメリットの大きい施策であるといって良い。

上述の通り、面接フィードバックを学生へ行うことは、企業側と求職者の双方にとってメリットが認められるものだ。それでは、面接においてフィードバックを実施するにあたり、考えられるデメリットはどのような点にあるのか。以下で、企業側が懸念する3つのデメリットについて確認していこう。

1. 有限な時間の中で、工数が増えることへの懸念
採用担当者の実務は多岐にわたり、面接における工数が増えることは、懸念点のひとつとして当然の懸念だといえる。

しかし、近年続く若手人材不足と熾烈な採用競争において、企業に求められることは、より応募してくれた学生一人ひとりへ寄り添った姿勢を見せることにある。1つ目のメリットでも言及した通り、応募者の志望度向上にも資することが期待されるため、工数をかける価値のある施策のひとつだと考えてよいだろう。

2. 合否に係る自社の採用基準が伝わってしまう懸念
ここ数年で、面接内の逆質問において、自身へのフィードバックを求める学生が増えている。

応募する学生が面接の終わりにフィードバックを求める動機には、面接で自分がどのように映るのかという点と、改善点を教示してもらうことで今後の就職活動に活かしたいという点がある。

企業側からすれば、間接的に自社の採用基準や合否に係る部分を伝えることとなるため、フィードバックを行う準備ができていない場合、企業側にとって懸念点となり得るが、逆にこれを早期に伝えることは、2つ目のメリットで確認した通り、学生と企業のミスマッチを早期に防げる点で有利になるともいえるのだ。

3. フィードバックを言語化するスキル不足への懸念
学生へのフィードバックを行う準備が不足している間、あるいはそのような用意がない期間においては、フィードバックを行うスキルが足りておらず、これを実施することが自社の採用水準の担保の観点からデメリットであると感じる採用担当者もいることだろう。

しかし、3つ目のメリットとして挙げている採用力向上でも言及した通り、フィードバックを行うということは、採用に係る社内基準の統一を促すため、結果として企業にとって採用力向上につながると考えたほうが良いだろう。

面接フィードバック実施のポイント

ここまで面接フィードバックを行う意義と、面接フィードバックの実施にあたってのメリットや考えられる懸念などについて確認してきた。本項では、新卒採用の選考フェーズにおいて面接フィードバックを実施するにあたって気を付けたい点や、面接フィードバックを採用力向上につなげていくためのポイントについて解説していく。

1. 半ば言語化された面接評価シートを活用すること
面接フィードバックに関心を持っている企業や、これから面接フィードバックを行う意向を持つ企業などは、前出の通り懸念点のひとつに工数増加があった。この場合、面接評価シートを活用することが効果的であり、重要なポイントの1つとなる。

面接において、質問に対する学生の想定される反応や回答内容に基づいた評価基準や項目を記したシートを用意することで、面接フィードバックを導入した初期から、ある程度言語化された状態でフィードバックに臨むことができる。それにより、面接官にとってイチからそれぞれの学生へ言語化する手間が省け、工数削減と同時に評価基準の均一化に資することが期待できる。

2. 学生によってフィードバックの種類を使い分けること
そもそもビジネスシーンにおけるフィードバックとは、客観的な視点から設定された目標に対する行動の結果を伝える行為を通じて、部下の業務改善につなげていく点に狙いがあり、ポジティブなものとネガティブなものという2つの種類がある。この2種類を志望度や学生のタイプにあわせて適宜使い分けることで、効果的な面接フィードバックを行うことが可能だ。

i. ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、応募者の学生に対して、否定的な言い回しを一切せず、相手を褒めることで前向きな気持ちの中でフィードバックを行うことを指す。「前向きな評価」が中心となるため、まだ自身のポテンシャルに気づいていない学生などに有用だといえる。

自己評価向上や自信につながる内容でフィードバックを行うことで、「もっとも自分を高く評価してくれた企業」というイメージを根付かせることがポイントとなり、志望動機と志望度の向上に資することが期待されるフィードバック手法となる。

ii. ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、好ましくない点や改善を要求すべき点について、優先順位を付けた上で具体的に事実のみを端的に伝えるフィードバックを指す。

学生時代において、留学や海外インターンシップ、あるいはボランティアなど、ある程度の活動実績があり、自己評価が高い学生に対して行うことが有効であり、評価を受けることに慣れている学生に対して、あえて厳しい内容のフィードバックを行うことで、「面接時から改善点を共有してくれる、育成意識の高い企業」という印象付けが可能となる。

3. 評価と自社の価値を結びつける「ブリッジング」を行うこと
企業にとって面接フィードバックで最も重要なことは、学生に評価を伝えたり、学生に課題を見出させることではなく、フィードバック内容を自社志望度の向上へとつないでいくことであり、これをブリッジングと呼ぶ。

名称どおり、学生へのフィードバックから自社志望度アップへの橋渡しを行うこと「評価した部分を自社のどのような部分で活かすことができるか」を伝えたり、「自社ならこのように長所を伸ばしていくことができる」ということを学生に伝えた上で、フィードバックを自社の価値へつなげていくことが重要だ。

フィードバックを自社の価値と結び付けていくことで、学生の長所や良かった点などと紐づけた語り口で自社の魅力や価値を伝えることが可能となり、学生自身にとって、自身の経験がどのようなかたちで仕事に活かされていくのかイメージしやすくなるメリットがある。

さらに、企業にとっては志望度の高い優秀な学生のリテンションと、早期のミスマッチ防止と不安点解消に資するメリットのある施策だといえよう。

まとめ

・コロナ禍により多少の変動はあったが、新卒採用市場は依然売り手市場が続いており、中小企業を中心に今までにない人材難だ。日進月歩で新しい採用ツールや採用マーケティング手法が出てくる中、注目を集めているのが選考フェーズである面接が「1対1」のコミュニケーションであることに着目し、これを自社への志望度向上の機会として活用する「モチベーティブコミュニケーション」という考え方であり、実践方法としての「面接フィードバック」である。

・フィードバックは、ビジネス用語としては「行動したことによる結果を伝える行為」を指して使われている。その主たる目的は、設定された目標に向かって行動した結果を評価することと、フィードバックを通じて従業員の成長を促進させていくことにある。良かった点や、長所などを褒めることで前向きな内容としてフィードバックを行う方法と、至らなかった点や問題行動がもたらした好ましくない結果について振り返ることで、次回以降につなげていくためフィードバックがある。

・面接フィードバックを実施することにより得られるメリットは、次の3つである。まず、応募者の志望度向上が期待でき、志望度の高い応募者の場合、採用フェーズにおけるリテンションにもつながる点。次に、率直なフィードバックを通してある程度の社内の評価基準を伝え、応募者へ企業とのミスマッチが生じる可能性を早い段階で気づかせることで、早期にミスマッチを防げる点。最後に、社内の採用基準、評価基準などを統一し、フィードバックを仕組み化することで、企業の「顔」として面接に臨む面接官の品質差を均一化する点だ。

・メリットが多い面接フィードバックだが、企業が懸念するポイントは主に3つある。1つ目は、時間が有限の中、工数が増えることへの懸念、次に、間接的に自社の採用基準や合否に係る部分を伝えることへの懸念、最後に、フィードバックを言語化するスキル不足への懸念だ。しかし、近年の採用難で応募者をリテンションするためにはより一層、求職者への寄り添った対応が求められることに加え、面接フィードバックの実施は社内基準の統一に資する上、自社の評価基準は企業カルチャーと結び付く部分のため、これを伝えることで早期からミスマッチを防ぐ効果を期待できるものだ。

・面接フィードバックは、学生の反応や回答内容にあわせて、自身のポテンシャルに気づかせる必要がある学生なら、前向きな言い回しを多用するポジティブフィードバック、学生時代に多くの活動経験があり自己評価の高い学生なら、至らなかった点などを事実として敢えて厳しく指摘するネガティブフィードバックを使い分けることが効果的だ。どちらも自社への志望度向上を目的とすることから、面接官の工数削減と効率化のため、半ば言語化された面接評価シートを使い、社内の評価基準の均一化も行うと、より効果的だ。

・企業にとって面接フィードバックを行う最も大きな目的は、学生に評価を伝えたり、学生に課題を見出させることではない。フィードバック内容を自社志望度の醸成へとつないでいくことであり、不安点を解消しながら選考フェーズを進んでもらうことであり、最終的に自社へ入社してもらうことだ。これをブリッジングといい、語意どおり学生への評価内容と、自社の魅力や価値との橋渡しを行うことによって、学生にとって自身の経験がどのように企業で活きるのか想像しやすい機会創出となり、企業にとっても早期ミスマッチ防止と選考時のリテンションに資するメリットの大きい施策だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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