2021.3.11

ウェブ広告を活用した採用活動のポイントとは?採用マーケティングにおいての活用方法

読了まで約 8

■採用戦線におけるウェブ広告を取り巻く環境の変化

■求人広告でよく使われる7つのウェブ広告

■曖昧で不確実な時代のウェブ求人広告に求められること

■ウェブ求人広告の効果が伸び悩む4つの原因

■ウェブ求人広告を改善する5つのポイント

■求人広告はまさに「トライ・アンド・エラー」

採用市場のウェブ広告事情とウェブ広告の種類をご紹介

年々深刻となる企業の人材不足と採用難。これを背景に、さまざまな採用マーケティング手法や概念、付随したサービスやプロダクトが登場し、採用市場は大きな発展をみせている。

多くの新サービスが登場する中で、依然大きな影響力と存在感を持つのがウェブ広告である。

広告の性質上、マスに訴える力があることから、効率的な母集団形成を目的に「まずは採用広告を出してみて、人を集めてみよう」と考える企業も多い。

しかし新卒採用市場では、依然として大手企業への一極集中の傾向がある。そのため、採用広告を出すことで応募が自動的にくる、という時代ではないことも事実だ。むしろ採用広告を掲出したとしても、応募数が少なく、母集団形成という目的を果たせていないことに課題を感じる、企業の採用担当者も多いことだろう。

これは、自社の魅力が他社と比べて劣っている、あるいは掲載している媒体の力が足りないといった点に課題があるのではなく、適切に採用広告の訴求力を高める効果的なポイントを押さえられていないことが原因として考えられる。

そこで本稿では、まずウェブ広告について、その基本的な分類や仕様を確認する。そして、求人者を増やす上で大切な考え方である、ターゲットやペルソナの設定について整理し、最後にウェブ広告で効果的な採用活動を行うためのポイントについて押さえていきたい。

重要なことは、自社の採用課題解決に資するウェブ広告を運用することであり、決してウェブ広告を全体でひとくくりにするのではない。異なる種類のウェブ広告を運用するにあたり、特性や役割の違い、期待される効果などについて押さえながら運用していくことだ。

そのためにまず、自社採用サイトへの集客のために使える代表的な7種類のウェブ広告について、その特性を確認していこう。

<ウェブ広告の7種類>

1. 純広告
純広告とは、特定ウェブサイト上の特定の広告枠に配信されるテキストやバナー広告を指す。

集客力が認められる媒体へ一定期間掲載することで、自社を知らない層へのアプローチ、知ってもらうきっかけの創出などの効果が期待できる。一方で、転職を考えないユーザーや、関心がないユーザーなどへも無差別に配信されることから、必ずしも自社への関心拡大という効果に結びつかない可能性も存在する。

2. 記事広告
記事広告とは、ニュースメディアやポータルサイトなどで、企業PR用の記事を配信するかたちの広告だ。特定の媒体がもつブランド力や社会的信用に基づき、自社の仕事への理解を深める、あるいは自社ブランディング強化といった効果が期待できる。その反面、掲載までの取材や撮影などの工数が多いこと、掲載された広告の効果検証が難しいことなどがリスクとして考えられる。

3. DSP広告
DSP(Demand Side Platform)広告とは、Web広告を配信したい広告主側の広告効果を最適化・最大化するためのプラットフォームだ。

マスに訴えるマーケティングからOne to Oneマーケティングへのシフトを背景に、インターネット上でユーザーのCookie情報をもとに広告配信対象を限定することで、より転職意識の顕在なユーザー層へターゲットを絞ってアプローチすることを可能にする、複数媒体で配信される広告のことである。

さまざまな媒体へ配信されるため、より多くのユーザーへリーチすることが期待できる反面、自社が意図しない媒体への掲載や、ある程度の広告予算が必要となる点、留意が必要だ。

4. SNS広告
SNS広告は、昨今膨大な数のユーザーを抱える各種ソーシャルメディア媒体上で、さまざまな属性設定を行い配信される広告だ。

採用市場において、新卒や若手の多くへリーチすることが期待できる反面、SNSごとに利用されている性別や年代、地域などが異なるため、自社の採用ターゲット層と合致するSNS広告を運用することが求められる。また、「流し読み」される可能性も高いので、そうさせないための配信内容の工夫なども必要となってくる。

5. リターゲティング広告
リターゲティング広告は、過去に自社サイトへアクセスしたユーザーに対して「追いかけて」配信していく広告だ。

大手検索エンジンが保有する広告ネットワークを介して、自社採用サイト広告をユーザーへ届けるもので、ある程度自社に関心があるなど、顕在層への再訴求が可能である。反面、すでに一定数から自社サイトへのアクセスがあってからでないと、そもそも広告配信自体が成立しないというリスクも存在する。

6. リスティング広告
リスティング広告は、大手検索エンジンの結果画面に表示される広告だ。

特定のキーワードを検索したユーザーに対しての訴求が可能となり、広告配信方法の工夫により、優秀かつ転職意識が顕在な人材層へのアプローチが可能となる。一方で、求人系の主なキーワードだけでは、大手求人媒体や人材会社なども多数広告を掲載していることから、広告が埋もれてしまう可能性も高い。十分な自社露出を果たすには、キーワードだけなく掲載のタイミングなども精査する必要がある。そのため、ある程度の広告予算が必要となることは織り込んでおくべきだろう。

7. アフィリエイト広告
アフィリエイト広告は、掲載効果のリスクを可能な限り抑えつつ広告配信を行うことを可能とした、成果に対して報酬を支払うかたちの広告だ。

登録されたウェブサイトやブログなどのバナー欄に掲載された広告を経由し、ユーザーがエントリーやマイページ会員登録、あるいは面接など、事前に設定されている、報酬支払いの前提となる特定のアクションに至った場合に掲載主へ報酬を支払うという方式である。

広告主である採用を行いたい企業にとって、リスクが少なく始められるというメリットがある反面、報酬目的のユーザーからのアクセスや、自社の採用戦略にそぐわない紹介のされ方、あるいは意図していないウェブサイトなどへ広告が掲載されてしまう等のリスクも存在する。

求職者が集まらない原因とは?

コロナ禍に代表されるように、不確実で曖昧なVUCA時代へと突入しつつある現代では、加速する技術革新など、ビジネスを取り巻く環境は社会全体を巻き込むかたちで大きく変化している。

そのため、今の時代に求めるれる能力やスキルを有する人材は、多くの企業で引き合いがある。そのため、一部の職種や領域では、ここ数年人材不足が叫ばれている。このことから、前項で解説したウェブ広告を採用活動に用いたとしても、求職者からの応募につながっているという効果を実感できないという採用課題を抱えている企業も数多い。

「仕事意欲が旺盛な20代から30代の若手」などといった曖昧で画一的なターゲット設定では、自社の求める層への訴求が不十分、あるいは全く行えず、求人広告を掲載しても応募が集まらない可能性が高い。

そこで、「思うように応募数が増えない」「応募数は足りているが、求める人材像と合致していない」などといった課題の原因について、以下の4つの原因を見ていこう。

1. 採用ターゲットの設定が不明瞭である
後述する3つの原因の根源になり得る部分でもあるが、そもそも自社が採用したい人材像、ターゲット層などが明瞭に行われていないというケースだ。

どのような人材を求めているかが明確化されていない場合、自社の採用広告にもブレが生じるため、自社の求人像が求職者に伝わらず、結果として応募に繋がらないということになりかねない。このため、転職意欲が旺盛な求職者へのリーチを可能にすべく、とことん追求された採用成功のための求人像の構築を行うことが求められるだろう。

2. 求人ウェブ広告の媒体や手法がターゲット層と合っていない
求人広告を掲載したとしても、求職者からの反応が芳しくないという課題を抱える採用担当者も多いことだろう。この場合、アピールを行いたい求人ターゲット層と、自社が選定した採用広告メディアや採用ウェブ広告にミスマッチが起きている可能性がある。

求人媒体や広告にはさまざまな種類があるが、それぞれに雇用形態、職種、年齢層、地域などにおいて強みや特徴が異なるため、今一度、自社の求人ターゲット層へリーチするために適切な媒体と広告手法の選定が行えているかどうかを検証するべきだろう。

3. 広告自体に適切で十分な情報が掲載できていない
これは採用サイトと採用広告の双方に言えることだが、内容が薄く、求職者が希求する情報を用いた訴求が行えていない求人広告は成功しない。

情報量が少なすぎる、あるいは求職者が求めている情報ではないことが掲載されている場合、魅力的な求人として求職者の目に留まることは難しく、却って疑問や不安を生み出すきっかけになりかねない。

このため、求職者の頭の中に、「自社で働くイメージ」を醸成するきっかけを与えること、そしてこの気持ちを「応募したい」という動機に繋げることができる採用広告の作成・配信が検討されるべきだ。

4. 採用上の競合他社と比較して条件が見劣りしてしまう
同じ職種あるいは業界の求人広告を比較した場合、労働条件が見劣りするような求人広告では、多くの応募が集まるとは想定できない。

転職活動の大前提となってくるが、求職者は給与、職場環境、福利厚生など目に見える求人条件をもとに比較した上で応募をするものだ。無論、過度に誇張や脚色されたものである場合、コンプライアンスの問題はもちろん、法律の範囲内の表現であっても求人内容と応募者のミスマッチにつながりかねないため注意しなければならない。しかし、常に同業他社や同じ職種を募集している企業の条件や動向を注視、確認することで、自社の制度を見直しながら、よりよい自社の採用広告のあり方を検討することが望ましいといえよう。

ウェブ広告を効果的に活用するポイント

ここまで、採用広告において用いられるウェブ広告の種類、そして思い通りに広告配信の効果が表れていないと感じる場合の課題をいくつか紹介してきた。

この項では、ウェブ広告をより効果的に活用するための改善ポイントを5つ紹介していきたい。

1. 採用ターゲット層の明瞭化とペルソナ設定を行うことで自社求人像を明確化する
採用ターゲットを明瞭にしていくにあたって重要なことは、自社の募集する職種において求められるスキル、あるいは自社で働く従業員に求められる人物像を明確にしていくことだ。

ペルソナの設定とは、明瞭化された採用ターゲット層から仮想の人物像、例えば仮名、住所、学生時代から社会人までのキャリアパス、仕事に期待すること、ワークライフバランスに対する考え方などをプロフィールとして組み立てていくことで、検討可能な採用戦術を立案するために行われるものだ。

ペルソナ設定を行うことで、何を訴求しながら採用広告を配信するべきかが明確となる。

2. 採用サイト(オウンドメディア)を充実させることで採用ターゲット層へ訴求する
インターネットを利用して求人を検索することが当然となった現代では、採用ターゲット層へアプローチする上で、自社が用意する採用サイトを充実させることは欠くことができない採用活動における成功のための要素のひとつとなる。

求人媒体に自社採用広告を掲載しつつ、並行して自社採用サイト(オウンドメディア)を充実させることで、広告からの誘導という導線も構築可能な上、求職者との接点が増えることからプレゼンス向上にもつながるものとなる。また、応募意欲を高めるコンテンツを掲載しやすいことからも、メリットが大きいと言えるだろう。

【関連記事】
採用、従業員のエンゲージメントに効果が。採用オウンドメディアでできることとは 

3. 求人ターゲット層が求める情報を詳しく掲載することで自社の魅力を訴求する
求人広告から求めていた情報が十分に得られた場合、求職者の満足度は高くなる。このため、競合する同業他社などの採用広告と比較して、働くイメージがつきやすい広告を配信することが要となってくる。

給与や年間休日数などの文字情報に加えて、職場風景や従業員の働く姿などの写真情報を活用することで、求職者への自社の魅力訴求に向けて、具体的に自社で働くイメージの醸成に資する広告配信を目指すことが必要だ。

4. 常に競合他社の採用戦略や求人内容などを調査することで自社採用戦略を見直す
就活生や転職を希望する社会人など、求職者は求人を探す際に、必ず複数企業の求人広告を確認し、比較し、検討した上で応募するかどうかを決定する。

このため、同じ職種や同業の競合する他社が行っている採用施策の調査は、他社との差別化において極めて重要となる。例えば、新卒採用においては面接や内定者フォロー施策中などにおいて、同業他社の選考を受けている学生へ、同業他社の選考内容を訊いたり、なぜ自社を選んだのかをヒアリングしたりすることで、競合他社の戦略内情を調査し、より良い自社の採用広告や選考フロー構築に役立てることが可能となる。

5. KGI やKPIを設定して効果を検証しながらアジャイル型の修正と改善を積み重ねる
求人広告は掲載したら終わりではなく、掲載が正しく採用戦線の起点である。

このため、3年以内の新卒採用や中途採用の従業員定着率などから入社人数、内定出し人数などと逆算していった上で、KGI(Key Goal Indicator)やKPI(Key Performance Indicator)などの目標を設定し、前出の改善ポイントを反映させた採用広告戦略を実行しつつ、常に数値に基づいた効果測定と細やかな改善を行っていくことが重要となる。

例えば、求人広告を求人ナビの広告バナー欄へ掲載した場合、インプレッション数(検索結果への表示回数)やセッション数(自社企業ページの閲覧回数)、あるいはコンバージョン数(エントリーや面接日調整へ進んだ人数)などを測定しつつ、掲載している媒体が自社の求人像と合致しているかなどを見極めていく必要がある。

ここまでウェブ広告について見てきたが、総じて、大小さまざまな改善の積み重ねが、結果として大きな成果を生むことは間違いない。そのため、採用広告で成果を上げるには、「正しくトライ・アンド・エラーを行い続ける」ことが重要だといえる。

求人広告を掲載したが想定よりも応募数が増加しない場合、原因がどこにあり、どのように改善していくべきかというプロセスをしっかりとくり返していくことが、最も求められることである。また、多くの求人広告が立ち並ぶこととなるナビ媒体などにおいては、他社との差別化と自社魅力訴求の2点に大きく比重を置きPRしていくことが必要だといえよう。

まとめ

・深刻な人材不足と採用難が続く中、次々と新たな採用マーケティングの概念やサービスなどが登場し、採用市場が大きく活気づいている中で、依然大きな存在感を示しているのがウェブ広告だ。広告はマスに訴求する力に長けていることから「まずは採用広告を出して人を集める」と考える企業も一定数あるが、売り手市場ではウェブ求人広告を掲載するにしても、その内容をよく検討しなければ、母集団形成の強化は期待できないほど、世の中は空前の売り手市場である。このため、ポイントを押さえた高い訴求力を持つウェブ求人広告が求められている。

・採用広告に限らず、ウェブ広告には大きく分けて7種類あり、次のとおりだ。純広告(定めた媒体の定めたバナー欄やテキストなどで定めた期間掲出される広告)/記事広告(ニュースメディアや特定の媒体で記事形式でPRする広告)/DSP広告(複数媒体へ配信される広告)/SNS広告(SNSを用いた自社ブランディングや広告)/リターゲティング広告(一度自社採用サイトを訪れたユーザーを追いかけて配信される広告)/リスティング広告(大手検索エンジンの検索結果に表示される広告)/アフィリエイト広告(成果支払い型の広告)

・より不確実で曖昧なVUCA時代へと突入しつつある現代では、社会全体が加速しながら変化していく。社会情勢に加え、空前の売り手市場と採用難が続く求人市場においても変化が求められており、過去のような画一的で曖昧な人物像設定に基づく求人広告は、訴求力に欠けることから、ウェブ求人広告を掲載したとしても効果が出ず、十分な数の応募が集まらない可能性が高い。

・ウェブ求人広告を掲載しているが、「思うように応募数が増えない」、「応募数は足りているが、求める人材像と合致していない」などの課題を抱える企業の原因として主に4つの要素が考えられる。採用ターゲットの設定が不明瞭であること、求人ウェブ広告の媒体や手法がターゲット層と合っていないこと、広告自体に適切で十分な情報が掲載できていないこと、そして採用上の競合他社と比較して条件が見劣りしてしまうことである。

・ウェブ求人広告の訴求力を改善する5つのポイントは次のとおりだ。採用ターゲット層の明瞭化とペルソナ設定を行うことで自社求人像を明確化すること、採用サイト(オウンドメディア)を充実させることで採用ターゲット層へ訴求すること、求人ターゲット層が求める情報を詳しく掲載することで自社の魅力を訴求すること、常に競合他社の採用戦略や求人内容などを調査することで自社採用戦略を見直すこと、そしてKPIやKGIを設定して効果を検証しながらアジャイル型の修正と改善を積み重ねることである。

・大小さまざまな改善の絶え間ない積み重ねが、結果として採用において大きな成果を生む。人広告を掲載したが想定よりも応募数が増加しない場合、原因がどこにあり、どのように改善していくべきかというプロセスをしっかりとくり返していくことが肝心だ。多くの求人広告が立ち並ぶこととなるナビ媒体などにおいては、特筆して他社との差別化、そして自社の魅力をしっかり訴求することが自社PRにおける要となってくるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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