2021.2.25

コロナ禍でのオンライン採用2年目になる22卒はどうする?昨年のオンライン採用の課題と対策

読了まで約 8

■特異な採用スケジュールとなった2020年採用戦線

■調査データで振り返る2020年採用戦線3つのポイント

■オンライン化で様変わりした2021年卒者の採用活動

■リモート化・オンライン化選考活動のメリットとは?

■オンライン採用で見えてきた課題や不安とは?

■オンライン採用を成功させる4つのポイント

調査結果から2021年卒採用を振り返る

2020年卒学生の入社直前内定取り消しや、採用が最も活発化するはずだった時期の就活イベント中止、緊急事態宣言に端を発した選考活動の停滞など、2020年の採用戦線は、まさしく新型コロナウイルスの感染拡大とともに大きな「変化」を迫られた1年だった。

採用・選考活動も他の企業活動同様に、急激なリモート化・オンライン化を余儀なくされたといえよう。

HR総研の「2021年&2022年新卒採用動向調査 結果報告」(調査期間:2020年10月21日~27日/有効回答数:174件)によれば、2021年新卒採用活動で重視した施策については、「オンラインでの面接」が最多で46%、次いで「オンラインでの自社セミナー・説明会」が44%となっており、上位2項目をコロナ禍でのオンライン採用への対応に関する項目で占めている。

また、実際の「採用面接の形式」の傾向について見てみると、少なくとも一部はオンライン形式で実施した企業の割合は79%と8割にも及び、多くの企業が採用活動のオンライン化に対応したことが伺える。(ProFuture株式会社/HR総研

事実、採用活動のオンライン化を行ってきた2021年卒採用活動から、さまざまな課題やノウハウも企業採用担当者の中で蓄積され始めていることだろう。

ここではまず、2020年の採用戦線がどのような1年であったか、各社調査データから振り返ってみよう。

1. コロナ禍に終始した2020年の採用戦線
HR総研の2020年8月発表の動向調査によれば、2021年卒採用活動における「面接選考を開始した時期(予定含む)」を問う設問では、「8月以降」が最多回答(18%)となり、次いで「前年11月以前」が12%、「2月」ならびに「3月前半」がともに11%となったことから、新型コロナによる緊急事態宣言発令後から感染拡大第2波前後に至るまでの採用選考の動きが非常に鈍かったことを伺わせる。

これは、未曾有の事態により社会全体の活動が停滞したこともあるが、同時に企業としても諸対応が手探り状態であったことを伺わせる数値だといえよう。なお、コロナ禍にあるにも関わらず、「前年11月以前」から「2月」までを合計した「2月以前に開始した企業」の割合は1/3(33%)に上ることから、例年強まる採用活動の早期化が見て取れる結果となった。(ProFuture株式会社/HR総研

2. 高い終了率と充足率にある背景とは
他方、ディスコ社の「新卒採用に関する企業調査(2021年2月調査)」(調査期間:2021年1月27日~2021年2月5日/有効回答数:1,174社)によれば、2021年卒の採用活動を「終了した」と回答した企業は全体の85.9%に上り、1000名以上を擁する企業では9割近い数値(87.1%)であった。前年同期調査では全体として82.4%であったため、やや上回ることとなった。

また、採用予定者数に対する内定者の割合を示す、いわゆる充足率の平均は86.4%となり、前年同期調査(82.7%)を上回っている。

どちらも前年を上回る数値が出ているように見受けられるが、これらは新型コロナの影響によって採用計画を見直し、下方修正した企業もあったためだと考えられる。また、「有事の大手志向」と言わんばかりに大手企業充足率が9割を超す(92.1%)のに対して、中小企業平均では81.3%であることから、10ポイント以上の差が付いていることにも留意したい。

3. 今年の採用数の見通しと見えてきた課題とは
リクルート社の「2022年新卒者を対象 とした採用見通しに関する調査」(調査期間:2020年10月7日~2020年11月12日/有効回答数:4,516社)によれば、大学・大学院卒採用の「2022年卒者の新卒採用の見通し」という設問に対して「増える」見通しを示す企業が7.7%、「減る」見通しを示した企業が11.6%となり、増減足し合わせてマイナス3.9ポイントとなったことから、採用難を背景にここ10年間堅調に続いてきた採用数の増加傾向がひと段落した格好となった。

先が見通せないことを示唆する「わからない」と回答した企業が、前年調査(19.7%)を6.4ポイント上回る26.1%であったことから、長引くコロナ禍により、企業の採用計画策定に遅れが生じるという傾向が顕在化したかたちだ。

いずれにしても2022年卒採用に向けた2021年度の新卒採用戦線は、2020年から続く「変化」をキーワードとして解説するトピックに困ることのない1年となることだろう。

以下では、本格化して今年で2期目に入ったともいえる、オンライン採用活動の課題や実施におけるポイントについて考えていきたい。

2022卒採用の鍵を握るオンライン選考

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2021年卒採用活動では、テレワークなどの企業活動と同じく採用活動もオンライン化が進んだ。ここでは、改めて2021年卒採用活動での大きなトピックのひとつであった採用活動のオンライン化を、企業の実施割合やオンライン化のメリットなどから振り返ってみよう。

1. コロナ禍が推し進めた採用活動のオンライン化
ビズリーチ社の「採用活動のオンライン化に関するアンケート」(調査期間:2020年4月13日~2020年4月15日/有効回答数:664件)によれば、第一次緊急事態宣言が発出されていた2020年4月中旬時点で、71%の回答企業が「採用活動のオンライン化」に対応中あるいは対応検討中と回答していた。あわせて「いつからオンライン化対応を本格的に開始しましたか?」という設問に対して、65%もの企業が2020年2月からオンライン化対応を始めていたことが分かった。

ディスコ社の「新卒採用に関する企業調査(2020年10月調査)」(調査期間:2020年9月28日~2020年10月6日/有効回答数:1,220社)でも、感染第2波といわれた夏場を過ぎた秋口時点での調査結果で、「オンラインによる採用活動実施状況」を問う内容で、Webセミナーを「実施している」と回答した企業が約7割(68.6%)であり、Web面接についても73.4%もの企業が「実施している」と回答したことから、前年調査結果(11.3%)に比べて飛躍的にオンライン化が進んだことが分かる。

リクルート社のワークス研究所が刊行する機関誌『Works 161 オンライン元年』にて、新卒採用のオンライン化について、企業の採用活動支援などを行うエイムソウル社取締役である蛭田英樹氏は、母集団形成を目的とした単日インターンシップを多数実施していた企業は、施策のオンライン置換が容易だが、職業体験型の3日や5日あるいはこれ以上の長期インターンシップを行っていた企業は、採用戦略全体を練り直す必要性が生じる事態となっていることを指摘する。

このように、採用活動のオンライン化は、多くの企業にとって避けて通れないウィズコロナ時代の採用活動成功のカギとなるものだが、同時に採用計画の抜本的な見直しを迫られることを意味しており、決してオンラインツールを活用すれば簡単に従来の採用活動が置き換わるものではないことが分かる。

2. 選考活動のオンライン化によるメリット
必要に迫られてスタートした企業による採用活動のオンライン化であったが、企業と学生の双方に思わないメリットをもたらしたケースがある。

前出のビズリーチ社アンケート調査では、「採用活動をオンライン化したところによる、メリットとデメリットではどちらが大きいですか?」という設問に対して、「メリットが大きい」(12%)と「どちらかといえばメリットが大きい」(54%)の回答を合わせた場合、7割近くの回答企業がメリットの方が大きいとの所感をもっていることが分かる。

また、複数回答可とした「採用活動のオンライン化における、メリットについて教えてください」という設問では、最も多かった回答が「遠方の候補者との接点が増えた」で66%、次に「面接等の工数削減・選考のスピード向上につながった」(48%)と「候補者と気軽に接点を持つことができた」(43%)が同じく過半数近くの回答を集めている。

このことから、採用活動のオンライン化にメリットを感じている企業では、工数削減や面接でのフランクさ、そしてオフラインでは障壁が多い「遠方の候補者」のグリップに大きな力を発揮していることが分かる。

前出のディスコ社2021年2月の企業調査では、2021年卒採用活動において、前半戦ともいえるインターンシップを「実施した」と回答した企業が63.3%となり、前年の77.1%から13.8ポイント下げる結果となっている。しかし注目すべき数値も上がっており、インターンシップ実施の満足度については、「質・量ともに満足」と回答した企業が38.9%(前年比11.7ポイント増)、「質に満足、量に不満」と回答した企業が22.5%(前年比8.2ポイント減)となったことから、双方を足し合わせた結果も6割を超す61.4%となっており、前年同期調査と比べて3.5ポイント増となっている。

オンライン採用の課題とポイント

大幅なオンライン化を迎えた新卒採用活動だが、急激かつ強制的な側面が強かったこともあり、さまざまな課題が浮上している。ここでは、企業と学生双方が、インターンシップや選考活動において課題に感じたことを紹介しつつ、2022年卒者の採用活動に向けた対策を考えていこう。

1. 企業の抱える「難しさ」と学生の抱える「不安」
ディスコ社の「新卒採用に関する企業調査(2021年2月調査)」(調査期間:2021年1月27日~2021年2月5日/有効回答数:1,174社)によれば、これまでに経験のないオンライン化の波を受け、インターンシップの課題として最も多く企業から回答があったものは「適切なプログラムの構築」(50.6%)、次に「参加者の本選考までのつなぎ止め」(49.1%)、そしてコロナ禍における課題の本丸ともいえよう「オンラインでの実施」(45.6%)となった。どれもオンライン化による影響下で、より顕在化した課題であるといえる。

また、学生側としても抱える不安があることは間違いない。同社の「キャリタス就活2021 学生モニター調査結果(2020年7月発行)」によれば、「採用選考に動画やWebを用いることへの考え」という設問において、Web面接に「賛成」する声が52.1%、「どちらかといえば賛成」が32.4%であった一方で、自己PR動画の作成では「反対」が33.8%、「どちらかといえば反対」が28.4%で、6割を超す学生(計62.2%)が難色を示している。

録画面接も同様に学生の反応は芳しくなく、「反対」(39.8%)と「どちらかといえば反対」(31.5%)を合算すると、実に71.3%もの学生が難色を示したかたちだ。

2. オンライン化していく採用活動の「その後」
オンライン化の波及により課題を抱えているのは採用活動だけではない。

前出のディスコ企業調査では、2020年卒者の新人研修では、研修内容に何らかの変更を加えたと回答した企業が8割以上(81.5%)となり、具体的な変更点として挙がった変更点で最も多かったのは「オンライン化した」(44.5%)であった。

しかし研修内容変更により、配属後の活躍や定着に影響が出ているかを問う設問では、「かなり影響が出ている」(7.7%)と「やや出ている」(34.1%)を合わせると4割を超す企業が「影響が出ている」(計41.8%)と回答しており、採用活動の「その後」におけるオンライン化にも今後に向けた改善されるべき課題があることが分かった。

参照元:2022 年卒・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査(2021年2月)

では、オフラインでは容易だったが、採用活動のオンライン化により企業の採用担当者が困難に感じている点を、どのように対策していき、採用活動成功へと結び付けていくべきか。アフターコロナ時代を見据えたオンライン採用におけるポイントを確認しておこう。

1. 隔地の候補者と意思疎通できる仕組みを有すること
冒頭で紹介したHR総研の調査によると、就職ナビなどを活用してできるだけ多くの母集団形成を行う「マス型採用」と1対1のコミュニケーションでより確度の高い採用を行う「個別採用型」とでは、2022年新卒採用では「個別採用」への取組みが増加する傾向がある。(ProFuture株式会社/HR総研

コロナ禍以前より、海外にいる留学生などを対象とした個別採用や、採用に特化した自社オウンドメディアなどを通じて優秀な学生と接点を持つ企業は一定数存在していた。

しかし、新型コロナの影響でオンサイトの選考活動が大幅に制限されている状況下において、どうやってより遠方の学生とより多くの接点を持っていくかが、これからの採用活動における大きなポイントとなる。そのため、広範な求職者と接点を持つことができる「個別採用」に取り組むことは、採用での「質と量」の向上に資するものだ。

2. 再設計されたオンライン専用選考フローがあること
ウィズコロナ時代の採用活動オンライン化の経験を踏まえた上で、急ごしらえではない、アフターコロナ時代を見据えたオンラインを想定した採用活動における選考フローを設計することが求められる。

例えば、これまで紙で提出させていた履歴書を自社採用サイト上へ記入してもらう形として、動画での自己PRを行ってもらう、あるいは集団面接やグループワークが難しくなることから、ウェブ上で完結する課題を解いてもらうなど、創意工夫と戦略性が必要とされるだろう。

3. オンライン採用でのブランディング戦略があること
企業側が採用活動をオンライン化するということは、求職者である学生側もオンラインでの就職活動を活発化させるということだ。そのため、これまでオンサイトでの採用広報を行っていた企業は、あらためてオンラインでの露出などを検討していく必要に迫られるだろう。

口コミサイト対策や、SNS運用、あるいはリクルーティング・ウェブサイト上のコンテンツを充実させるなど、状況に応じて企業のPR部門とも協働しながら、オンラインでの採用広報戦略を立てて実行に移す必要がある。

4. オンライン採用に慣熟した面接官を用意できること
オンライン採用を行う上で、ウェブ面接などのオンライン環境に慣れていない面接官が担当することは望ましくない。面接を行うにあたり、機材トラブルや面接に用いるツールを慣れない様子で取扱うなどといった様子は、デジタルネイティブである学生へ良くない印象を与える可能性があり、場合によって不安を与えてしまうかもしれない。

同時に、オンサイトの面接と異なり、人となりや雰囲気などが伝わりにくいオンライン面接での微妙な塩梅が分かる面接官を用意あるいは育てることが望ましいといえよう。

まとめ

・コロナ禍により多くの企業が採用計画見直しを迫られ、選考活動を8月以降にずらしたり、急激なオンライン化が進むなど、2020年の採用戦線はここ数年では未聞のスケジュールとなった。3月後半から7月前後までに面接などの選考活動を行うと回答した企業が少なかったことからも、緊急事態宣言発令下およびその直後における企業の選考活動が手探り状態であったことを伺わせる結果となった。

・2021年卒採用活動を振り返る中で、重要な3つのポイントは、選考活動を前年11月以前から2月までと回答した企業が1/3に上り採用早期化の傾向が強まっていること、高い採用活動終了率と充足率の背景には企業規模による差が顕著である点と新型コロナの影響で採用計画自体を下方修正している企業が多いこと、そして採用活動における採用数の増減見通しが10年ぶりに減少した企業が増え、見通しが立たないと回答した企業も昨年に比べ増えたことだ。

・急激に普及が進んだオンライン選考活動だが、オンライン化の波はインターンシップなどを含め採用活動全体へ波及するとともに、新たな課題も出てきているのも事実だ。従来1Dayインターンシップなどを実施していた母集団形成を目的とする企業は比較的容易にオンライン化が進んだが、職業体験に軸を置いていた複数日程プログラムなどを組む企業などでは、採用活動全体の練り直しを迫られる格好となった。

・2021年卒者の採用活動を振り返ると、コロナ禍の影響を大きく受けつつも、急速かつ強制的に始まった採用活動のオンライン化による思いがけないメリットも出てきている。企業調査では7割近くの企業がメリットを認めており、最も大きなメリットとして挙げていたのは、通常では難しいことが多い隔地など遠方にいる候補者との接点が増えたことだ。

・急速かつ強制的に普及が進んだ採用活動のオンライン化だが、2020年採用戦線を振り返ると、今後に向けたいくつかの課題が浮上した。オンライン開催される企業インターンシップでは、これまでのようなオフラインではないため適切なプログラム内容の模索に苦慮する企業が目立ったほか、学生側からもウェブ面接には好意的な意見が多数を占めたが、自己PR動画や録画面接などに対して難色を示す声が多かった。また、入社後の新人研修をオンラインで実施した企業が多い中、配属後のパフォーマンスや定着度に不安を抱える企業の声も上がった。

・2021年採用戦線を勝ち抜き優秀な学生との接点を持つためには、オンライン採用を成功させることがカギとなる。オンライン採用を成功させるためのポイントとして挙げられるのは次の4つだ。まず、隔地の候補者と意思疎通できるダイレクトマーケティングなどの仕組みを有すること。次に、オンライン採用のために再設計された選考フローや採用施策があること。そして、オンライン採用を意識した採用広報や企業ブランディングができていること。最後に、オンライン採用を熟知した面接官が採用選考に携わることだ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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