2020.7.3

採用活動のオンライン化が加速。今後の動向は?

読了まで約 4

・緊急事態宣言中が採用活動期間に当たっていた企業はどう対応したか

・約6割の企業が採用活動において新型コロナウイルスの影響を受けている

・ニューノーマル時代の採用活動におけるキーワードは「来社をともなわない」

・オンライン化対応が遅れたために採用活動を断念するケースも

・採用活動における新型コロナ対策として、多くの企業が導入したセミナーや面接のオンライン化

・面接や面談のオンライン化をいち早く実施した企業の割合は?

 

採用活動に与えた新型コロナの影響

6月現在、新型コロナウイルスによる感染拡大の大きな波はいったん収束。
政府による緊急事態宣言も解除され、感染状況は小康状態にある。

しかし、東京都でクラスターがいまだに発生し続けるなど、依然として予断を許さない状況は続いている。
次の波への備えとして、ソーシャルディスタンスを保ち続けるなど、対策を怠ることはできない。
5月31日までの緊急事態宣言の延長は、この時期、本来なら採用活動のただ中にあったはずの企業にどのような影響を与え、企業はどのような対策をとったのだろうか。

「HR総研」は2月中旬から新型コロナウイルス感染拡大による企業活動等に関する緊急調査を実施しているが、今回は2020年5月15日から5月20日を調査期間として「緊急事態宣言の延長による新卒採用への影響」に関するアンケート(有効回答:224件)
を行い、その結果が発表された。
ProFuture株式会社/HR総研

そこから伺えるのは新型コロナウイルスが企業の採用活動に与えた影響の大きさと、先が見えない状況でも新しい日常の中での採用活動を模索する企業の姿だ。

まず、「新卒採用活動への影響」については「大きな影響が出ている」が25%、「まあまあ影響が出ている」は39%で、これらを合計した「影響が出ている」とする企業の割合は64%と全回答企業の6割を超えている。
一方で、「全く影響は出ていない」の12%と「あまり影響は出ていない」の9%を合わせても21%だ。
企業に何らかの影響があるという状況にあることがうかがえる。

 

 

「現在の採用活動」については、本年度採用活動の「目標採用人数を変更せず実施している」が最も多く58%であるが、次いで「停止中」が13%、「縮小して実施している」が11%、「中止」が3%ある。
この「停止」「縮小」「中止」で、3割近くが当初の目標よりマイナスの方向修正を行っている。
これは新型コロナウイルス対策が企業の採用活動に少なからずブレーキとして働いていることを物語っている。

 

採用活動のオンライン化、メリットと課題

このアンケートに「影響が出ている」と回答した企業に関して「影響が出ている採用業務の内容」を見ると、「対面での説明会を開催できない」が71%で最多となっており、次いで「対面での面接選考が実施できない」が69%、「採用スケジュールが遅延する」が60%などとなっている。

前回の調査では「採用スケジュールが遅延する」が66%で最も多く、次いで「対面での説明会を開催できない」の54%となっていたが、特定警戒都道府県において緊急事態宣言が延長中であった今回の調査対象期間では、実施しようとしていた説明会や面接選考等が対面で行えないために支障が出ている企業が増加していることがわかる。

また、新卒採用活動を「縮小」「停止」「中止した」と回答した企業の「理由」としては、「経営状況の悪化が予測される」が41%で最多となっており、次いで「採用コスト及び採用後の人件費を抑える」が30%、「オンライン化に対応できていない」「既に経営状況が悪化している」がともに20%となった。
特に企業規模別にみると、中小企業においては「オンライン化に対応できていない」が31%と大企業や中堅企業より高い水準にある。

 

 

対面が困難なニューノーマル時代における採用活動として、オンライン化への対応が必須の条件となりつつある現在、いかに迅速にオンライン化に対応した採用活動の体制を整えることができるかが、多くの中小企業における採用活動のカギを握っているといえる。

このことは「採用工程や手法を変更している(する予定)」とする企業に対しての「変更の内容」という項目でも裏付けられる。
変更の内容のうち、「来社を伴わない面接に変更」が最多で75%であり、次いで「来社を伴わない説明会に変更」が65%となっている。

つまり上位2項目はいずれも「来社を伴わない」ことが前提であり、「採用活動のオンライン化」を多くの企業が重要視していることを示している。

また、近年導入する企業が増加しているインターンシップについて、「2022年卒向けインターンシップ」の実施に関する設問では、「実施する予定」とする割合は41%で、「実施しない予定」が30%、「未定」が29%となり、実施に前向きな企業の割合は4割にとどまった。

 

これを2021年卒向けインターンシップの実施率と比較すると、21卒向け実施率の62%(2020年3月実績)から21ポイント下がっている。
「未定」と回答した3割の企業の動向次第では、22年卒向けを実施する企業は例年より大幅に減少する可能性もある。

また、開催を予定していると回答した企業に「開催方法の変更」について聞いた設問では、「オンライン開催」と「少人数制」がともに27%で最多となっており、次いで「実施期間を短縮」が9%などとなっている。

 

 

先日、経団連が、インターンシップを採用と結びつけることを解禁するよう政府に要請しているというニュースも流れるなど、企業側にも求職者側にも採用活動の新しいトレンドとして定着しつつあるインターンシップがニューノーマルの中、「オンライン」や「少人数制」などの工夫で、どう実施されていくのか注目したい。

これとは別に、「HRMOS採用」が5月に実施した「採用活動のオンライン化」に関するアンケート(回答:664件)では、7割の企業が「オンライン化への対応または検討を行っている」と答えている。

これによれば、回答者は遠方の候補者との接点が増えたことや、面接等の工数削減・選考のスピード向上につながったことなどをメリットとしてあげている。
一方で、職場の雰囲気を伝えることが難しい、候補者の印象を正確に把握しづらい、など、オンラインならではの課題も見えてきた。

 

今後、採用活動はオンライン中心に?

HRMOS採用のアンケートにおいて「採用活動のオンライン化に対応している・対応を検討中」という企業に対する設問で「採用から入社までの、どのプロセスをオンライン化したか」に対する回答は、「一部の面談・面接」が最も多く、63%。次いで「説明会等の採用イベント」が48%、「内定通知から入社までのフォロー」が33%となっている。

特徴的なのは「すべての面談・面接(最終面談やオファー面談も含む)」という回答も29%あり、すでに3割近くの企業で「すべての面談・面接」がオンライン化されているという事実だ。

これはすでにオンライン化(検討を含む)している企業への設問だが、HR総研による前述のアンケートでは、「オンライン面接のみを実施している」企業に対して今後、「最終面接まですべてオンライン面接とする可能性」について聞いたところ、「ある」が57%と6割近くを占め、「ない」が19%、「検討中」が24%となっている。

オンライン化への基盤ができていた大企業と、なかなか対応できない中小企業では対応度に差があるが、多くの企業が採用活動のオンライン化は課題よりもメリットが多いと判断していると考えられる。

特に、オンライン化の基盤整備が進んでいると思われる大企業では68%が「最終面接までオンラインのみの可能性がある」と回答していることから、オンライン面接を実施した結果、支障なく進めることができたか、むしろオンラインの方が効率的であると判断したと考えられ、この流れは今後も加速するに違いない。

 

まとめ

・「新卒採用活動への影響」について、影響がないと答える企業の3倍以上もの企業に何らかの影響がある

・「現在の採用活動」を「停止」「縮小」「中止」した企業は、3割近くになり、新型コロナウイルス対策は企業の採用活動に少なからずブレーキとして働いている。

・対面が困難なニューノーマル時代では、いかに迅速にオンライン化に対応した採用活動の体制を整えることができるかが、多くの中小企業における採用活動のカギを握っている。

・オンラインでは遠方の候補者との接点が増える、面接等の工数削減・選考のスピード向上などのメリットがある一方、職場の雰囲気を伝えることが難しい、候補者の印象を正確に把握しづらい、などの課題もある。

・「採用活動のオンライン化に対応している・対応を検討中」という企業の3割近くが「すべての面談・面接」をオンライン化している。

・特に、オンライン化の基盤整備が進んでいると思われる大企業では、オンライン面接を実施した結果、支障なく進めることができたか、むしろオンラインの方が効率的であると判断したと考えられ、この流れは今後も加速する。

 

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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