2023.5.9

36協定をわかりやすく解説!人事担当が理解するべき基礎知識を説明

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36(サブロク)協定とは、労働基準法第36条に基づく労使(労働者と使用者)協定のことだ。労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間、1週40時間以内を「法定労働時間」として定められているが、その労働時間の超過を認める制度として36協定が存在している。

ただし、36協定を締結すれば制限なく労働できるわけではない。36協定は長時間労働を抑制し、健全な企業経営ができる制度なのだ。企業は健全な企業経営をするためにも、36協定を理解し、管理体制を整える必要がある。

この記事では、36協定の概要や、関係する用語、締結時の注意点について解説する。

36協定とは?

36協定とは、時間外労働に関する労使協定のことだ。労働基準法第36条で規定されているため「サブロク協定」と呼ばれている。冒頭でも伝えたように、労働基準法では労働時間は原則「1日8時間、1週40時間以内」と定められている。

しかし、企業や業種によっては繁忙期と閑散期の業務量の差が大きく、繁忙期に法定労働時間を守ることが難しいケースもあるだろう。トラブルの発生により残業が必要なケースもある。そのような企業に対し、法定労働時間の超過を認める制度が36協定だ。

労働組合と企業で36協定を締結し「時間外・休日労働に関する協定届」を所轄労働基準監督署長に提出すれば、月45時間・年360時間までの時間外労働が認められる。これは、パートやアルバイトも対象だ。

ただし、36協定を締結すれば制限なく労働できるわけではない。2018年6月には働き方改革関連法が成立し、時間外労働の上限が厳格化された。原則として、時間外労働は月45時間・年360時間までと定められたのだ。

労働時間を制限すると、長時間労働を抑制できる。それにより、労働者の心身の健康やプライベートの時間を守るとともに、健全な企業経営にもつながるだろう。36協定は、企業と労働者の両方を守る制度なのだ。

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時間外労働とは?

時間外労働について理解するためには、以下の時間や休日について知る必要がある。

● 所定労働時間
● 法定労働時間
● 法定休日

労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」があり、この2つは必ずしも同じではない。企業における「残業」は、所定労働時間が基準となる一方、36協定はあくまでも法定労働時間が基準となる。所定労働時間と法定労働時間の違いや、法定休日の考え方を理解することにより、36協定における時間外労働が計算できるのだ。

所定労働時間と法定労働時間、そして法定休日について、詳しく見ていこう。

所定労働時間

所定労働時間とは、企業が定めた1日、または1週間に働く時間だ。企業には所定労働時間を明確にすることが求められており、就業規則と雇用契約書に所定労働時間を記載する必要がある。

ただし、就業規則と雇用契約書に記載があれば労働時間を自由に設定できるわけではない。法定労働時間の範囲内で所定労働時間を設定する必要がある。例えば、1日の労働時間を6時間とすることは問題ない。しかし、9時間とした場合は法定労働時間の範囲外となるため、見直す必要がある。

法定労働時間

法定労働時間とは、労働基準法32条1項2項で規定されている労働時間だ。具体的には1日8時間、1週間40時間が上限となっている。1日の労働時間が6時間超過の場合は休憩時間を45分以上、8時間超過の場合は1時間以上を労働者に与える必要がある。

36協定は、この法定労働時間が基準となっている。所定労働時間が法定労働時間より少ない場合、すべての残業時間が労働基準法における時間外労働に該当するわけではない。

例えば、所定労働時間が1日6時間の場合、2時間残業したとしても、1日の労働時間は8時間になり、法定労働時間の上限には達していないため、労働基準法上では時間外労働には該当しない。法定労働時間と所定労働時間が異なる場合は、法定労働時間を基準とした時間外労働時間の計算も必要だ。

法定休日

法定休日とは、労働基準法で定められた休日のことだ。労働基準法35条1項では、毎週少なくとも1日の休日を付与する必要があると定められている。

ただし、多くの会社では1日の労働時間を8時間としているため、週40時間の労働時間に当てはめると休日は2日間となる。その場合、2日間のうちのどちらかが「法定休日」扱いとなるのだ。

例えば土曜日と日曜日を休日としている場合、日曜日を「法定休日」としたのであれば、土曜日は「法定外休日」となる。また、法定休日と法定外休日では時間外労働時の割増賃金が異なる。そのため週休2日制度を採用する場合は、2日間の休日のうち、どちらが法定休日になるのかを明確にする必要があるのだ。

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特別条項付き36協定とは?

36協定には、特別条項が存在する。時間外労働時間は原則として月45時間、年360時間が上限となっている。しかし、企業や業種によっては、残業の上限規制を超過した労働が必要なケースもあるだろう。その場合、36協定の特別条項を締結すれば、所定の上限を超えた残業が可能になるのだ。

特別条項が認められる業務は以下の通りとなっている。

● 予算や決算に関する業務
● ボーナス商戦に伴う業務の繁忙
● 納期ひっ迫
● 大規模クレームへの対応
● 機械トラブルへの対応

ただし、特別条項を締結すれば無制限に残業ができるわけではない。特別条項にも以下の規制が存在する。

1. 時間外労働が年720時間以内
2. 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
3. 時間外労働と休日労働の合計が、どの月を基準にした場合でも2〜6カ月の平均が、1カ月当たり80時間以内
4. 時間外労働が月45時間を超過できるのは、年6カ月まで

なお、特別条項を締結しているかどうかに関わらず、1と2は36協定共通の制限である。

36協定手続を締結する際の注意点

36協定を締結する際は、注意が必要な事項がいくつか存在する。原則として、36協定は労働組合と企業の間などで締結する必要があり、事業場ごとに所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない。しかし、労働組合がない企業や、事業場の規模が小さい場合は例外だ。

ここでは、労働組合がない企業の締結手続きの方法や、事業場単位での締結の原則とその例外について解説する。

労働組合がない企業の締結手続き

36協定は原則として労働組合と企業とで締結するものだ。しかし、労働組合が存在しない企業もあるだろう。労働組合が存在しない企業の場合、従業員代表を選出したうえで、従業員代表と企業とで36協定を締結する。

ただし、従業員代表の選出方法や対象者には以下のような制限が設けられている。

<従業員代表者を選出する上での注意点>
● 支社や工場などの事業場単位で選出する
● 選出に際しては、その事業場の正社員からパートタイム、アルバイトなど、すべての労働者が投票する
● 労働基準法41条2号に規定する管理監督者は従業員代表の対象外とする
● 投票や立候補、労働者の話し合いといった民主的な方法で選出する
● 会社の意向によって選出しない

上記に示したように、パートタイムやアルバイトの労働者にも投票権限があることや、管理監督者が選出対象外であることは、見落とされがちだ。従業員代表者は労働組合と同等の立場となるため、会社の意向が入ることなく民主的に選出される必要がある。

事業場単位での締結の原則とその例外規定

前述したように、36協定は事業場単位で締結する必要がある。営業所や支店が複数存在する場合、事業場ごとに36協定を締結し、その事業場の管轄となる労働基準監督署長に届け出なければならない。すべての事業場での届出が原則となっているため、漏れがないよう手続きする必要がある。

ただし、各事業場の規模が小さい場合は、特例として本社が一括で届け出ることが認められている。人数や業務内容といった明確な定義はないものの、人数が少なく管理機能がない事業場であれば、本社一括届出ができるため、所轄の労働基準監督署に確認をとると良いだろう。

違反した場合の罰則と社会的な影響

労使間で36協定を締結せず、法定労働時間を超過する労働を労働者にさせた場合、労働基準法違反となり、企業は罰則の対象となる。労働基準法119条によると、6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金刑が科せられるとされている。

また、36協定違反の対象となるのは企業だけではない。労務管理を担当する責任者についても罰則の対象となるのだ。近年でも、大手企業の工場長が36協定違反で書類送検された事例がある。

テレビや新聞、ネットニュースなどで企業の36協定違反が報道された場合、罰則とともに社会的な信用も失ってしまうだろう。特に、近年では労働時間を重視して企業を選ぶ求職者も増加している。36協定違反が公になれば、採用にも悪影響を及ぼすことが想定できる。

36協定違反は企業経営に大きく影響する問題であることを理解し、管理体制を整える必要があるだろう。

まとめ:健康経営のためにも36協定を理解し管理しよう

36協定とは、時間外労働に関する労使協定のことで、労働基準法第36条で規定されているため「サブロク協定」と呼ばれている。労働基準法では、労働時間は「1日8時間、1週40時間以内」と定められているが、繁忙期には残業が必要なケースがある。

36協定は、そのような企業に対し、法定労働時間の超過を認める制度だ。労働組合や、あるいは従業員代表者と企業のあいだで36協定を締結し、所轄の労働基準監督署長に「時間外・休日労働に関する協定届」を提出すれば、月45時間・年360時間までの時間外労働が認められる。

36協定には、残業の上限規制を超過した労働が必要なケースに対応できる特別条項が存在する。繁忙期や納期がひっ迫した場合、トラブル対応時といった繁忙状態であれば、特別条項が認められる。ただし、特別条項を締結しても時間外労働時間には制限があるため注意が必要だ。

36協定を締結せずに法定労働時間を超過する労働をさせた場合、企業とともに労務管理を担当する責任者も罰則の対象だ。36協定違反は企業経営に大きく影響する問題になる。

健全な企業経営をするためにも、36協定を理解し、管理体制を整える必要があるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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