2021.6.14

「WOOPの法則」とは何か。目標設定で活かせる具体例も交えて解説

読了まで約 7

■目標管理におけるポジティブなアプローチの落とし穴

■ネガティブ要因を先に分析する「WOOPの法則」

■WOOPの法則で用いる目標管理の4ステップ

■4ステップを用いた目標達成の具体例 その1:5キロダイエットをする

■4ステップを用いた目標達成の具体例 その2:SNSのフォロワー数1000を獲得する

今注目されるWOOPの法則とは何か?

企業における組織運営では中長期的な視点を持ち、従業員を育成していくという計画が必要不可欠だ。
そのために設定されるのが人事評価制度であり、さまざまな手法やアプローチが開発されている。
しかし、多くの企業で成功事例が報告される一方、目標設定の手間を惜しみ、疎かにしている企業も決して少なくないのが現実である。
株式会社HR Brainが過去に行った「目標管理の実態と従業員の本音に関する意識調査」(サンプル数:600 調査期間:2018年8月18日~20日)というアンケート結果から、会社員の目標設定の実態が見えてくる。
これによると、2人に1人が個人の目標設定を行っている一方で、約8割の会社員が「その場しのぎ」の目標設定をしたことがあるという結果が出ている。
こうした実態に頭を悩ませている人事担当者がぜひ知っておきたいのが、「WOOPの法則」による目標管理だ。
これまでにもさまざまな目標達成のための理論が提唱され、中でもポジティブな思考による方法が有効と考えられてきた。
たとえば、自分にとって望ましい状態や願望を頭の中でイメージすることで、それらを引き寄せ、現実化しようとする「引き寄せの法則」などがあげられるだろう。
ポジティブなことに意識を向ければ、おのずとポジティブな結果が引き寄せられてくる、という法則であるが、この引き寄せの法則には願望を強くイメージすることによって、脳が「目標は達成された」と勘違いを起こしてしまい、かえって目標達成を遠ざけてしまうというリスクが存在する。
ポジティブなアプローチには、一時的なやる気やモチベーション向上の効果はあっても、長期的な維持にはつながりにくいのだ。
その代替案として生まれたのが、「WOOPの法則」である。
WOOPの法則とはアメリカの心理学者であるガブリエル・エッティンゲン博士の20年以上にわたる研究によって体系化された目標達成を円滑にするプロセスの法則であり、精神論だけでなく、起こり得るネガティブ要因を先に分析することで、その対処法までを計画しておくという点に特徴がある。
どちらかというとネガティブなアプローチであるWOOPの法則の方が目標管理をしやすく、結果が出やすいということで注目されているのだ。
本稿ではWOOPの法則について、用いる目標管理の4ステップや目標達成の具体例について解説していこう。

WOOPの法則で用いる目標管理の4ステップ

WOOPの法則では、目標の設定から達成までを「Wish(願望)」、「Outcome(結果)」、「Obstacle(障害)」、「Plan(計画)」の4つのステップに分割する。
WOOPとはこれらの頭文字を取った言葉であり、それぞれのステップに対してどうコミットすることで目標の達成率を高めることができるかに注目した考え方である。
以下では、WOOPの法則で用いる目標管理の4ステップについてそれぞれ解説しよう。

<WOOPの法則で用いる目標管理の4ステップ>
1. Wish(願望)
まずは、達成したい目標を定める。
ここでポイントとなるのは「簡単に達成できるものではないが、無謀なものではない」という適切な難易度の目標を設定することだ。
難易度の設定を誤ってしまうとモチベーションの維持が困難となってしまうため、現在の自分の能力で実現できることよりも少し高いレベルを目標とすることが望ましいだろう。
そのためにも、社員が自らの能力を客観的に知ることのできる機会を設けることが必要だ。
2. Outcome(結果)
目標を設定したら、それが達成できたときにどのような結果が得られるのかを想像し、書き出す。
目標を達成することでどのような自分が実現できるのかを具体的にイメージすることがポイントだ。
目標が抽象的すぎるなど、結果がうまく想像できない場合、達成に向けて行動するモチベーションを維持することができず、日々の業務に虚しさを感じたり、目標が意味のないスローガンとなってしまう可能性があるため、こうした事態を防ぐためにも結果をしっかりと想像し、見据えることが重要となる。
3. Obstacle(障害)
設定した目標とイメージした結果との間にどのようなギャップ(障害)があるのかを考える。
このステップはWOOPの大きな特徴であり、自分の能力より少し高いレベルで設定された目標には、考え・行動・思い込み・癖・感情など自分の中の課題として、必ず目標達成を阻む困難・障害が存在しているはずだ。
逆に言えば、これさえ解決することができれば目標達成が実現することを意味するため、設定した目標が適切なレベルであれば、自分自身を見つめ直すことによって、目標達成のために何をするべきかが具体的に見えてくる。
もし、「考えても本質的な問題点を見出せない」や「発見した障害がどう頑張っても解決することができない」などの壁にぶつかった場合は、そもそもの目標設定に問題あると考えられるため、最初の「Wish」のステップに戻って目標を再考した方が良いだろう。
4. Plan(計画)
「obstacle」のステップで想定した障害にぶつかったとき、自分にできる行動や考えによって、どのように回避・対処するのかを計画する。
ここで役に立つのが「if thenプランニング」だ。
if thenプランニングとは、「もし、〇〇な状態になったら、△△する」というプランを作成し、あらかじめ行動を決めておくテクニックである。
より具体的な対応策を考えておくことで、行動が明確化されているため、もしもの場合でも実効率があがるのだ。
そうして、行動の中で新たに生まれた細かな課題を解決していくことを継続できれば、目標は自然と達成されていくだろう。

WOOPの法則は1度行って終わりにするのではなく、何度も繰り返してブラッシュアップしていくことが大切だ。
実際に目標を達成するために行動していく過程で、想定外の障害や結果が見つかるなど、新たな発見や気づきを得ることができるからだ。
そういったことをどんどん取り入れてブラッシュアップしていくことによって、目標をより実現しやすくなるだろう。

4ステップを用いた目標達成の具体例

では、WOOPの法則の4ステップを用いて、具体的に目標達成に至る筋道を描いてみよう。
例として、個人的な目標「5キロダイエットをする」、企業としての目標「SNSのフォロワー数1000を獲得する」の2つを設定してみた。

<4ステップを用いた目標達成の具体例 その1:5キロダイエットをする>
1. Wish(願望)
ダイエットに関する目標を設定する際に重要なのは「いつまで」に「何キロ落とす」など達成可能な数字を具体的にイメージすることだ。
「モデルみたいな美しい体型になりたい!」といった抽象的で夢のような目標はモチベーションの維持が困難となるため、避けたい。
今回の場合は「5キロダイエットをする」であるため、どのくらいの期間でなら簡単ではないが、実現できそうかを考えてみよう。
2. Outcome(結果)
「Outcome」では目標で設定した、5キロのダイエットを実現した際にどのような結果が得られるのかを考え得る限りあげて書き出してみよう。
「かっこいい体が手に入ることで自分に自信がつく」、「憧れの洋服を着られるようになる」、「健康になる」など具体的にリアリティーのある現実をイメージしなら書くことが大切である。
「体が引き締まったことでモテるようになる」など、少し踏み込んだ結果を想像することもモチベーションアップに効果的だ。
目標を達成したときに、嬉しくなるような結果を現実のようにイメージしながら考えてみよう。
3. Obstacle(障害)
今回はダイエットにおいて障害と成り得る事柄を考えてみよう。
たとえば、次のような事態が想像できるだろう。
・平日は仕事で疲れてしまい、運動する時間がない
・残業でお腹がすいてしまい、遅い時間にたくさん食べてしまう
・ついつい間食をしてしまう
など、自分の中のダイエットにおける障害を具体的にイメージすることが大切だ。
4. Plan(計画)
想定したダイエットにおける障害に対して、どのように解決していくかを考えよう。
先ほど紹介したif thenプランニングに落とし込んでみると良いだろう。
今回の例で考えてみると、
・平日は仕事で帰宅が遅くなり、運動する時間がない
⇒出勤前に早起きしてランニングをする、帰宅後は自重トレーニングを30分だけやる など
・残業でお腹がすいてしまい、遅い時間にたくさん食べてしまう
⇒野菜やカロリーの低いものを食べる、18時頃にプロテインバーを食べて空腹感を補なう など
・ついつい間食をしてしまう
⇒どうしても我慢できなかったらナッツ類やスルメなどできるだけ太りにくいものを選ぶ など
自分に行動できる範囲のことで、より具体的な対策を用意しておくことが重要だ。

<4ステップを用いた目標達成の具体例 その2:SNSのフォロワー数1000を獲得する>
1. Wish(願望)
企業のSNSフォロワー数増加を目標に設定する場合に大切なことは、「どのSNSを利用」して「いつまで」に「どのようなターゲット」のフォロワーを「どのくらいの数」獲得したいのか実現可能な範囲で具体的にイメージすることだ。
企業の業種やサービス内容、規模などによって、想定されるターゲット層や獲得可能なフォロワー数も異なってくるだろう。
2. Outcome(結果)
今回目標に設定したSNSのフォロワー数1000獲得を実現した結果、企業にどのような効果がもたらされるだろうか。
「企業の知名度が上がる」、「新商品やサービスなどの情報発信がしやすくなる」、「広告費用が削減できる」、「消費者との直接的なやり取りから改善点が生まれる」などさまざまな方向からイメージすると良い。
実際にSNSを活用している企業のアカウントを見て、どのように活用しているのか研究することも現実的な結果の想像をしやすくする方法の1つとなり得るだろう。
3. Obstacle(障害)
SNSフォロワーを増やすうえで障害となる事柄を考えてみよう。
今回の目標においては、
・更新頻度が低くなってしまい、投稿を見てもらいにくい
・フォローしたくなるような魅力的な投稿内容が思いつかない
・そもそもアカウントの存在に気付いてもらえない
などがあげられるだろう。
4. Plan(計画)
想定した今回の課題について、どのように解決していくかをif thenプランニングに落とし込んで考えてみよう。
・更新頻度が低くなってしまい、投稿を見てもらいにくい
⇒ターゲット層がSNSを利用しやすい時間を想定して、毎日その時間には投稿するようにする など
・フォローしたくなるような魅力的な投稿内容が思いつかない
⇒フォローしてくれた人の中から当選者に自社商品などをプレゼントする企画を実施する、SNS内のアンケートやコメントなどでリサーチを行う など
・そもそもアカウントの存在に気付いてもらえない
⇒こちらからターゲット層や自社と相性の良さそうなアカウントをフォローすることでフォローバックを狙う、投稿にターゲット層が検索しそうなハッシュタグをつける など
SNSの種類によって、特徴や機能も変わってくるため、自社が利用するSNSをよく研究して行動プランを練っていくと良いだろう。

ここまでWOOPの法則について解説をしてきた。
WOOPの法則は起こり得るネガティブな要因を先に想定してその対処法までを計画しておく手法であり、心理学的な研究と実証の積み重ねから作られているため、より確実に目標を達成できる方法として評価を得ている。
人事評価においても、とりあえずその場しのぎの目標を立てるのではなく、目標達成においてどのようなことが障害になるのか、その障害を解決するにはどう行動したら良いのか、までを具体的に考えるようにする。
そうすることで従業員の目標への当事者意識がはっきりとし、パフォーマンスアップや業績の向上につなげることが期待できるだろう。

まとめ

・企業における組織運営では、中長期的な視点で従業員を育成していくために人事評価制度が設けられており、成功事例も多く報告される一方で、目標設定の手間を惜しみ、疎かにしている企業も少なくない。株式会社HR Brainが実施した調査でも、2人に1人が個人の目標設定を行っている一方で、約8割の会社員が「その場しのぎ」の目標設定をしたことがあるという結果が出ており、人事担当者の頭を悩ませている。

・これまでにも目標達成のためのさまざまな理論が提唱されており、中でも「引き寄せの法則」などポジティブな思考による方法が有効と考えられてきたが、引き寄せの法則には願望を強くイメージすることによって、脳が「目標は達成された」と勘違いを起こしてしまうことで、目標達成を遠ざけてしまうというリスクがあることが判明し、ポジティブなアプローチには、一時的なモチベーション向上の効果はあっても、長期的な維持にはつながりにくいということが広まり始めている。

・ポジティブなアプローチによる問題点が指摘された中で、その代替案として生まれたのが、「WOOPの法則」である。アメリカの心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士によって研究されたWOOPの法則は、起こり得るネガティブ要因を先に分析することで、その対処法までを計画しておくという点に特徴があり、ポジティブなアプローチよりも目標管理をしやすく、結果が出やすいということで注目を集めている。

・WOOPの法則では、目標の設定から達成までを4つのステップに分割しており、それは次のとおりだ。1.願望(Wish)、2.結果(Outcome)、3.障害(Obstacle)、4.計画(Plan)。WOOPとはこれらの頭文字を取った言葉であり、それぞれのステップに対してどうコミットすることで目標の達成を高めることができるかに注目した考え方だ。

・WOOPの法則の4ステップを用いた個人的な目標達成の具体例として、5キロダイエットをすることを目標とした場合、次のような筋道が描けるだろう。【1.Wish】「いつ」までに「何キロ」痩せるなど実現可能な具体的な数字を考える。【2.Outcome】「自分に自信がつく」、「健康になる」など嬉しくなるような結果をイメージする【3.Obstacle】「間食をしてしまう」などダイエットにおいて障害となる事柄を考える【4.Plan】「間食する際は太りにくいものを選ぶ」など想定した障害に対する解決方法をif thenプランニングに落とし込んで考える。

・WOOPの法則の4ステップを用いた企業としての目標達成の具体例として、SNSのフォロワー数1000を獲得することを設定した場合、次のような筋道が描けるだろう。【1.Wish】「SNSの種類」や「ターゲット層」など業種やサービス内容、規模によって具体的な目標を定める。【2.Outcome】「企業の知名度向上」や「広告費削減」などさまざまな方面からもたらされる結果をイメージする。【3.Obstacle】「投稿を見てもらいにくい」などフォロワー増加における障害を考える。【4.Plan】「ターゲット層がSNSを利用しやすい時間を想定して投稿する」など障害に対する解決方法を考える。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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