2021.9.15

ダニング=クルーガー効果とは?陥らないために対策できること

読了まで約 7

■ダニング=クルーガー効果とは何か?

■認知バイアスが引き起こす4つの支障とは?

■ダニング=クルーガー効果に陥る3つの要因

■ダニング=クルーガー効果に陥りやすい人の2つの特徴

■ダニング=クルーガー効果がもたらすたった1つのメリット

■ダニング=クルーガー効果を回避するための5つのポイント

ダニング=クルーガー効果とは何か

認知バイアスの一種である「ダニング=クルーガー効果」をご存知だろうか。
ダニング=クルーガー効果とはひとことで言えば、能力の低い人ほど、実際の評価と自己評価との間に大きなギャップが生じてしまうという状態だ。
自己評価を正しく認識できず、誤った状態で自身を過大評価してしまうという心理現象で、いわゆる認知バイアスの一種だ。

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本稿では、ダニング=クルーガー効果は誰の身にも起こり得ることであることと捉えて解説する。また、誰でもできる対策についても紹介してく。
まず、ここではダニング=クルーガー効果の定義と、認知バイアスに陥ることによって起きる4つの典型的な事例について見ていこう。
次に、なぜ人はダニング=クルーガー効果という認識バイアスに囚われてしまうのかについて確認していく。
最後に、ダニング=クルーガー効果に陥ることから回避あるいはこれをコントロールする上でのポイントについて、それぞれ見ていきたい。

ダニング=クルーガー効果とは、前述の通り「自分の能力を実際よりも過大評価してしまうこと」だ。
「優越の錯覚」と呼ばれることもあり、自分の能力を正しく認識できず、欠点を見つけられないために、自身が優秀であるという錯覚を起こしてしまうとされる。
そもそも人間とは自身を客観視することに長けているとは言い難く、このような優越の錯覚に関する認知バイアスは、歴史を通じて古くから言及されてきた。
しかし、1990年に米国コーネル大学のDavid DunningとJustin Krugerにより提唱された仮説により、メタ認知についての自己認識が不足している場合、人々は自分自身に対する適切な評価を下せず、認知バイアスに陥りやすいことが分かり、これをダニング=クルーガー効果と呼んでいる。
ダニング=クルーガー効果により、自身と他者との間で評価にズレが生じた場合、必然的にコミュニケーションに支障をきたすようになる。
ここではダニング=クルーガー効果によって引き起こされるとされる5つの事例について確認していこう。

1. 自身を過大評価してしまう
運転免許証を取ったばかりの新米ドライバーは、自身の能力の低さを見極めて、慎重に自動車の運転に臨むだろう。
しかし、調査結果によれば免許取得3年から5年経過時点での「運転慣れ」により事故を引き起こすドライバーが多いことが分かっている。
自身が運転に「慣れてきた」ことを、自身の運転技術の向上と錯覚する認知バイアスといえる。

2. 知識不足に陥ってしまう
能力が低い者ほど、本質を捉える力や物事を判断するにあたっての知識の総量が足りないにも関わらず、自身は博識と錯覚し、知識をこれ以上増やす必要を感じない。
逆に能力のある者は、周囲が自身と同等の知識を持っていると仮定し、知識不足を認識する中でより多くの知識を求めようとするものだ。

3. 他者を適切に評価できなくなってしまう
自己評価とは、周囲からの反応や他者からの評価の上に成り立つといっても過言ではない。このため、自己評価にズレが大きい者は、周囲や他者に対する評価も誤っている可能性が大きい。
たとえば、自身の上長がダニング=クルーガー効果に陥っている場合、部下である自分に対する評価は、不当に低いか、根拠なく高い可能性があるわけだ。

4. 困難に対処できなくなってしまう
根拠なき自信をもった者は、困難や壁にも前向きに挑戦する傾向がみられる。
しかし、自己認識と直面した現実の壁とのギャップの大きさに、適応できなくなる傾向があるため、困難や壁に直面したときに対処できなくなることが多い。

ダニング=クルーガー効果はなぜ発生するのか

前項では、ダニング=クルーガー効果の基本的な概念と、認知バイアスに陥ることによって引き起こされる代表的なコミュニケーションエラーの事例について見てきた。
ここでは、そもそもなぜダニング=クルーガー効果のような認知バイアスに陥ってしまうのかについて、3つの要因を整理しておくこととする。そのうえで、認知バイアスに陥りやすい特徴を有する者について、2つのポイントを中心に確認していきたい。
まずは、ダニング=クルーガー効果に陥る3つの原因から見ていこう。

1. 原因を把握できていないこと
何か業務で過失を犯してしまったとき、あるいは失敗してしまったときなど、その発生原因は単純でないことが多く、複雑である場合が多い。
自分の過失を真摯に受け止め、再発防止と業務上必要な改善アクションを起こしていくためには、しっかりと自他の要因を分析していくことが重要となる。
しかし、人間はなにか問題が発生すると他者や外の環境に原因を求めがちなものでもある。
このため、ダニング=クルーガー効果に陥ってしまう原因の一つとして、問題の原因を泊することができず、安易に外的要因に注目しがちな姿勢があげられる。
外的要因のみに問題発生の要素を求めたとしても、真の自己改善には結びつかないため、ダニング=クルーガー効果に陥ってしまうのだ。

2. フィードバックを受け付けないこと
たとえば、業務を遂行する中で上長ないし部下からのフィードバックを受ける機会が少ない、あるいは自らこれらを拒んでしまうような状態・姿勢が続くと、ダニング=クルーガー効果に陥りやすくなるといえよう。
周囲からの声がない中で業務を続けても自分が失敗していたことや改善できるポイントに気づく機会を失ってしまうからだ。
まさしく周囲からの評価と自身の自己評価に乖離が生じる第一歩だといえる。
高評価だけでなく、ネガティブなフィードバックにも積極的に傾聴することで、自分自身の客観視を養うためにも有益であり、より正しく自身を評価する助けとなり、ダニング=クルーガー効果に陥りにくくなるといえよう。

3. 他者の能力を正しく評価できていないこと
人は他者の能力を見て、相対的に自身の能力を判断するものだ。
しかし判断基準となる他者への評価自体に偏りが生じた場合、当然自分自身の能力も正確に評価できないものとなる。
このため、他者を見くびったり過小評価してしまうことは、自分自身を能力以上に評価してしまい、ダニング=クルーガー効果に見られるような認知バイアスに陥る第一歩となってしまう。

また、ダニング=クルーガー効果に陥りやすい者には一定の特徴があるとされており、次の2つのポイントから紐解いていきたい。

1. 日ごろから他責の習慣が身についてしまっていること
たとえば、業務において壁にぶつかった時、あるいは何か上手くいかないことがあった際など、自分に原因があるのではないかと省みることで、自ら改善の働きかけができる者は、ダニング=クルーガー効果に陥りにくいものだ。
逆に言えば、日ごろから周りの環境や人間に原因があるのではないか、あるいはそれらへ責任を押し付ける習慣が身についている者は、ダニング=クルーガー効果に限らず認知バイアスに陥りやすい傾向にあるといえよう。
失敗や困難に直面した時に、まず自身の言動を反省したり分析したりすることは、自身を客観視する第一歩だ。

2. メタ認知(客観視)を行う能力が低いこと
メタ認知とは、自身の五感や思考、記憶、判断などを客観的に捉える能力だ。
メタ認知能力が低い場合、容易にさまざまな認知バイアスに陥りやすくなってしまう傾向にある。
これは、自分自身の能力を客観的に把握することができず、自身過剰になってしまうことに起因すると考えられている。
考える、感じる、記憶する、判断するといった部分に大きなズレが生じることで、自身を俯瞰して落ち着いた判断を下すことが難しくなってしまう者は、ダニング=クルーガー効果に陥りやすいといえよう。

ダニング=クルーガー効果を回避するには

前項までにダニング=クルーガー効果の概要、原因、そして認知バイアスに陥りやすい者の特徴について見てきた。
ここまで見ると悪いことだらけのように思えるダニング=クルーガー効果だが、実はメリットと捉えることができる面もある。
それは、「根拠なき自信」をもって臆することなく、何事にも取り組もうとする力や挑戦しようとする姿勢だ。
たとえば、就職活動で自身の専攻とは違う業種の企業へ就職する、あるいは転職活動で経験のない異業種へ飛び込むことなど、挑戦する姿勢は評価対象になるといえよう。
しかし、数少ないメリットがある一方で、やはり負の側面として目立つ部分が多いのがダニング=クルーガー効果だ。
ここでは、ダニング=クルーガー効果を回避するためにはどのような点に注意すべきかについて見ていきたいと思う。
日ごろから気を付けておきたいポイントは主に5つあり、次の通りだ。

1. ダニング=クルーガー効果の原因を知ること
既述した通り、ダニング=クルーガー効果の主な3つの要因は、「他責思考」、「フィードバック不足」、「自己評価の誤り」だ。
正しい自己評価を行っていく第一歩は、まず自分自身の状況を可能な限り正しく把握すること。
このためには、まず自分が認知バイアスの中でもどのような点に大きく課題を抱えているかについて、しっかり把握することが重要だ。
正しく自身の状態を把握することで、初めて効果的な認知バイアスの回避方法について取り組んでいくことが可能となる。
また同時に、他者と自分との評価にどのくらい差があるか、評価のギャップも認識しておくことが望ましい。

2. 多くの人と交流を持っていくこと
自分の意見が通りやすい環境、あるいは膠着していて新鮮さに欠ける人間関係の中では、新しい発見や自分自身を見直す機会が失われやすい。
多くの人と交流をもつことにより、さまざまな意見や考えを得ることができる。自身の考えに固執する状況を避けていくことは、ダニング=クルーガー効果に陥ることを回避することと同義である。
ポイントとなるのは、自分に都合の悪いことまで、真摯な姿勢で伝えてくれるような人と付き合っていくことにある。

3. 積極的に他者の意見に耳を傾けること
ダニング=クルーガー効果に陥らない最も効果的なポイントの一つが、一に傾聴、二に傾聴だ。
とにかく他者の意見を受け止め、しっかりと耳を傾けるということ。
周囲からのフィードバックや意見を参考としていくことで、自分自身を客観視する一助となるだけでなく、相対的でバランスの取れた自己評価を行うことを可能とする。
また、他者の意見から思いがけない自分の強みや新たな視野の広がりなどが期待できる。
常に他者の意見に耳を傾けることは、認知バイアスに陥ることを防ぐのみならず、より広い視野をもって物事に取り組めることが期待できよう。

4. 客観的な指標を考えてみること
自身の業務遂行力などを判断する際に、これを数値化できることはメリットが大きい。
自分自身のパフォーマンスを客観視した上で判断していく際に、大きな助けとなるだろう。
もちろん、全てを数値でガチガチに固めてしまう必要はない。
かえって自分で何かを生み出していく力という部分を削いでしまうことがない程度に、「数値化(=可視化)できる」自分自身の評価軸というものを持っておくことは、ダニング=クルーガー効果のような認知バイアスに陥らないために、とても役立つものだ。

5. 他者からの指摘を受け止める環境づくりを行うこと
心理学分野での研究により、他者からのフィードバックは「さらに知見を広げて能力を発揮させる」と実証されている。
逆に言えば、すでに見てきた通り適切なフィードバックを他者から得られない、あるいはフィードバックに耳を傾けようとしない姿勢は、偏った自己評価に依存した考え方に陥りやすくなってしますことを意味している。
たとえば、自社の中で、年次や役職を問わない相互フィードバックを自由に行う環境が不足している場合、評価制度や実施ルールなどの再検討から進めると良いだろう。

まとめ

・ダニング=クルーガー効果とは「自分の能力を実際よりも過大評価してしまう」認知バイアスの一種だ。
米国心理学研究者のダニングとクルーガーにより1990年に発表された考え方で、自己認識が不足している場合、人々は自分自身に対する適切な評価を下せず、コミュニケーションにおける多くの障壁を生むことを仮説として提唱した。

・ダニング=クルーガー効果、つまり認知バイアスに陥ることにより引き起こされる主な4つの事例は、次の通りだ。
1つ目に、正しく自分を認識できず、自身を過大評価してしまうこと。
2つ目に、自身が博識と錯覚し、知識不足に陥ってしまうこと。
3つ目に、自他に対する評価にズレがあるため、他者を適切に評価できなくなってしまうこと。
4つ目に、困難に対処した際に現実とのギャップに対処できず適応できなくなること。

・人がダニング=クルーガー効果に陥ってしまう主な原因は次の3つだ。
1つ目に、業務で過失や失敗をした際、再発防止や改善には自責も含めた分析が重要となるが、外的要因に注目してしまい自己分析ができなくなってしまうこと。
2つ目に、業務中に同僚などからのフィードバックを受ける機会が少なく、周囲の声なき状態で業務を続けた場合、周囲からの評価と自身の自己評価に乖離が生じてしまうこと。
3つ目に、自身の能力とは他者の能力を見て、相対的に判断されるべきだが、他者の能力を判断する基準がズレており、正しく自身の能力を認識できなくなってしまうこと。

・ダニング=クルーガー効果に陥りやすい人には次の2つの特徴を有する人が多いとされる。
1つ目に、業務などで上手くいかないことがあった時、自己原因について究明せず、日ごろから他責の習慣が身についてしまっていること。
2つ目に、自身の五感や思考、記憶、判断などを客観的に捉える(=メタ認知)能力が低く、自身を俯瞰して落ち着いた判断を下すことが難しくなってしまうこと。

・デメリットや支障が多いように見受けられるダニング=クルーガー効果だが、1つだけメリットも存在する。
それは、「根拠なき自信」をもって臆することなく何事にも取り組もうとする力がある点だ。
これは、就職活動で自身の専攻とは違う業種の企業へ就職する、あるいは転職活動で経験のない異業種へ飛び込むことなど、挑戦する姿勢をもっているということ。
しかし、数少ないメリットがある一方で、やはり負の側面として目立つ部分が多いのがダニング=クルーガー効果だといえる。

・ダニング=クルーガー効果のような認知バイアスに陥ることを回避するポイントは主に次の5つだ。
1つ目に、ダニング=クルーガー効果の原因をしっかり知り、自分自身の現状を正しく認識しようと努めること。
2つ目に、自分のコンフォートゾーンから抜け出して、より多くの人と交流を持っていくこと。
3つ目に、積極的に他者の意見に耳を傾け、より広い視野をもって物事に取り組んでいくこと。
4つ目に、自分自身を客観視できるような、数値化・可視化できる指標を考えてみること。
5つ目に、他者からのフィードバックや意見を受け止める環境づくりを行うこと。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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