2021.8.27

新社会人としての意識を醸成する「レディネス」とは?内定者に必要なフォローを解説

読了まで約 6

■レディネスとは何か?

■入社予定の学生が抱える不安とは?

■社会人として意識してもらうべき重要テーマ

■内定者が求めるフォローとは?

■内定者フォローのポイント

レディネスとは何か?

HR総研が発表した「【神戸大学・服部泰宏准教授監修】2021年入社予定者の入社前意識調査」の結果によると、「全体の40%ほどの学生が働くことに関する不安を抱えている」という。

図表:レディネスとは何か

業種によって、不安の度合いにかなりのばらつきがあるものの、最も多い「仕事についていけるか」という不安をはじめとして、入社予定者たちはさまざまな不安を抱えていることがわかる。(ProFuture株式会社/HR総研

図表:入社予定の学生が抱える不安

こうした不安を払拭するために、企業が行うべきことのひとつに「レディネス」がある。
レディネス(readiness)とは、「準備」という意味の英単語であり、「学習をするための心身の準備ができている状態」を指す心理学用語である。
1952年にアメリカの臨床心理学者であるアーノルド・ルシウス・ゲゼルによって提唱された概念で、もともとは子供の教育分野で使われていた。
教育分野では、主に子供の心身におけるさまざまな機能が知識を習得できる段階まで発達し、学ぶ準備が整った状態のことを指す。
近年では子供の教育分野だけでなく、「未経験の事柄に対する学習効率を左右する要素」として、新卒入社や中途採用、異動、職種転換などの、ビジネスにおける人材育成の分野でもレディネスが注目されるようになっている。
企業が行う人材育成の観点では、学生がスムーズに就業参加できる準備状態を「就業レディネス」と呼び、内定者が働くイメージをしっかりと描けている、つまり「就業レディネスの高い状態」にすることが、入社後の定着と活躍に大きく関わると考えられているのだ。
今回は、レディネスについて、学生の不安に対して企業ができることや、レディネスを高める内定者フォローのポイントについて解説をしていこう。

学生の不安に対して企業ができること

レディネスを高めるためには、学生たちの傾向や不安を知っておく必要がある。
先のHR総研「入社前意識調査」からどんな不安があるのかを見ていこう。
不安の内容について見てみると、最も多いのが先ほどにも紹介した「仕事についていけるか」、次いで「職場に馴染めるか」、「仕事で成果を出せるか」、「生活環境の変化に対応できるか」、という回答結果となっている。
ここからわかることは、半数以上の学生が、「仕事をきちんとこなし、成果を出せるか」という点について不安を抱えているということだ。
特に今期については、オンラインによるコミュニケーションが増加する中で、仕事内容や企業の雰囲気などについて、対面時に得られていたような深い理解と納得に至っていない学生が多く存在するといった事情がある。
このため、最も基本的で重要な諸点について大きな不安を抱えたまま入社に望まねばならない、という結果に現れていると考えられる。
内々定の「納得」に必要なコミュニケーションは、個人差はあるものの、大まかに言えば、やりとりにかける「時間」と、やりとりにおいてどこまで率直で、深い話ができるかの「密度」の積で決まると言える。
オンライン化によって密度が下がっているのならば時間を多くする、あるいは面談中にあえて雑談を挟むなど、密度を上げることで、納得度の総量をキープするという意識が重要になるだろう。
中には、この問題を踏まえて、内定後のフォローに割く人員を例年よりも多く配置することで対応している企業も存在する。
まだこのような対応ができていない企業についても、何らかのかたちで、これらの不安に対して寄り添うことが必要である。

関連記事:内定ブルーとは?内定ブルーが起こる理由と学生の不安に寄り添うためのヒント

また、レディネスを高めるといっても、どのような状態がそれを指すのか定義が曖昧なままでは的確な施策は行えない。
学生から社会人になる自覚を芽生えさせるには、学生と社会人の違いを本人にしっかりと理解してもらう必要がある。
社会人は上司や同僚、そしてお客様といった、さまざまなステークホルダーと関わりながら、課題や業務に取り組み、成果を生み出すことが求められる。
そのような観点から、レディネスを高めるために企業が行うべき施策についてテーマ別に解説しよう。

<社会人として意識してもらうべき重要テーマ>
1.目的観を持たせる
仕事には必ず目的があり、常に目的を意識しながら仕事に取り組むことが重要であると認識させる必要がある。そのため、あらゆる取り組みの前に目的や目標を明示することが必要となる。

2.顧客ファーストの姿勢
お客様に満足していただき、製品を購入してもらったり、サービス利用してもらわないことには利益は生まれない。
このようなビジネスの基本を意識させ、お客様のニーズは何か、どうすればお客様の期待を超えられるか、といった顧客ファーストの姿勢で常に考える癖をつけさせることが重要だ。

3.協働の大切さ
組織で仕事をする理由として、相乗効果によるパフォーマンス向上があげられる。
相乗効果を生むためにも、1人ひとりに良いチームワークで働くことの重要性を意識させることが必要だ。

4.改善とイノベーションへの意欲
現状に満足することなく、日々の業務の中に無駄な作業はないか、職場環境に改善すべき点はないかといったような意識を常に持つことが、企業としての成長や競争力の向上につながる。

5.品質へのこだわり
与えられた条件下で、より良い製品やサービスの提供を目指さなければ競争には勝てない。
作り手から見た品質の高さだけではなく、お客様から見て満足に値する品質であるのかを意識させることが重要だ。

6.コスト意識
企業が仕事に投入することができるリソース(ヒト・モノ・カネ)には限りがあるため、無駄なく、最小のリソースを投入して最大のパフォーマンスを生もうとする努力が必要であることを認識させる。

7.安全教育
会社での仕事には常になんらかの危険や危機がつきまとうことを意識させる必要がある。特に近年では身体的・物理的な危険だけでなく、データやネットワークに潜むリスクやコンプライアンスといった観点からの安全教育が重要となっている。

また、マネジメント手法の1つにPDSサイクルというものがある。
PDSサイクルとは、Plan(計画)、Do(実施)、See(検討、振り返り)という一連の流れを繰り返し、業務改善などを目指す手法だ。
PDSサイクルは、成長のためのツールとして活用することが可能であり、大きく成長をする社員は、自分の目標や課題を明確にした上で計画の立案、実施、そして結果や途中経過を振り返り、次の計画の立案に反映させていく。
このPDSサイクルを回しながら業務を行う中で、上述の重要テーマを意識させることで、社会人としての自覚を自然と芽生えさせることができるだろう。

レディネスを高める内定者フォローのポイント

ひとくちにレディネスを高めると行ってもその手法は多岐にわたる。
中でも欠かせないのが内定者フォローだろう。

関連記事:内定者フォローのポイントとは?コロナ禍でもオンラインで内定者との接点を強める方法

内定者フォローも企業によってフォロー実施の目的や目標が異なる。
そこで、ここではレディネスを高めるために、自社にとってふさわしい内定者フォローとは何かを考えてみたい。
具体的な4つのポイントを見ていこう。

<内定者フォローのポイント>
1.個別面談を設ける
内定を出した後に入社意志の確認をしたり、入社後のキャリアプランについて考えてもらうきっかけとして、個別面談を設けると良いだろう。
内定者にとっても、選考時には訊きにくい疑問や、入社にあたり不安な点などを質問できるため、大きなメリットがある。
会議ツールを使用してオンラインで対応することも可能であるし、内定者が望む場合、リアルに顔を合わせて面談を行っても良い。
ただし、個別面談の目的は、内定者との信頼関係を築くことであるため、企業側本位の面談や必要以上に長時間拘束してしまうことは、かえって内定者の心象を悪くし、逆効果となってしまうため注意したい。
具体的な内容として考えられるものは、
・選考時の評価できた点を伝える
・志望する職種を尋ねてその業務を行う先輩社員との面談につなげる
・入社までのスケジュールを共有する
などだ。

2.内定者同士のコミュニケーションを促進する
内定者にとって、入社してから同期として働くことになる仲間は気になるところであるだろう。
また、内定者同士がコミュニケーションを取ることができれば、共通する不安や悩みなども相談したり共有したりすることができ、入社後に向けてのモチベーション向上につながり、同時に内定辞退の抑止効果も期待できる。
具体的な内容としては、業務に関連する簡単なワークショップを行い、自社製品やサービスへの理解を深めてもらう、オンラインで自己紹介や交流する場を設ける、などがあげられる。

3.先輩社員と話す機会を設ける
現場でどのような先輩社員が働いているのか、という点は、前述のディスコ社調査の通り、内定者にとって最も大きな関心ごとだ。
企業についてわからないことや不安が多くある内定者にとって、頼れる先輩社員がいることは、不安を軽減できるだけでなく、入社後の自分の活躍をより具体的にイメージできることにつながる。
また、事前に仕事のミスマッチを抑止することで、入社後の定着率に影響を与えることから、企業にとってもメリットが大きい。
従来だと社員が直接内定者フォローを行っていたが、オンラインツールを用いることによって、これまで以上に時間の調整がしやすくなるため、より多くの先輩社員が内定者との接点を持てるようになる。
具体的な内容として考えられるのは、若手社員や中堅社員などさまざまな立場の社員との座談会でキャリアアッププランを考えるきっかけにしてもらう、現場社員に1日の流れや仕事のやりがいを説明してもらい入社後のイメージを具体的に持ってもらいやすくする、若手社員に自分たちが内定者だったころの話をしてもらい、内定者が持つ不安などに対してのアドバイスをしてもらう、などだ。

4.企業の魅力を定期的に発信する
今までの採用活動においても、内定者が、選考時と入社後で大きなギャップを感じてしまうことは珍しい課題ではなかった。
しかし、コロナ禍に伴う採用活動の急激なオンライン化により、企業と学生とのミスマッチがこれまでよりも多くなることが懸念される。
従来であれば、会社見学などを行うことで社内の雰囲気などを肌で感じてもらうことができたが、それを気軽に行えないコロナ禍の今だからこそ、会社の近況を伝えるメッセージを発信したり、配信ツールなどを用いて社内をバーチャル見学できるようにするなど、選考終了が終了した後も、入社時まで内定者に対して積極的なアピールを行う必要がある。

まとめ

・HR総研が発表した「【神戸大学・服部泰宏准教授監修】2021年入社予定者の入社前意識調査」の結果によると、「全体の40%ほどの学生が働くことに関する不安を抱えている」という。業種によって、不安の度合いにかなりのばらつきがあるものの、「仕事についていけるか」という不安をはじめとして、入社予定者たちはさまざまな不安を抱えていることが明らかとなった。こうした不安を払拭するために、企業が行うべきことのひとつに「レディネス」がある。

・レディネス(readiness)とは、「学習をするための心身の準備ができている状態」を指す心理学用語である。アメリカの臨床心理学者であるアーノルド・ルシウス・ゲゼルによって提唱された概念で、もともとは子供の教育分野で使われていたが、近年では、ビジネスにおける人材育成の分野でもレディネスが注目されるようになっている。人材育成の観点では、学生がスムーズに就業参加できる準備状態を「就業レディネス」と呼び、内定者が働くイメージをしっかりと描けている、つまり「就業レディネスの高い状態」にすることが、入社後の定着と活躍に大きく関わると考えられている。

・HR総研の「入社前意識調査」から、不安の内容について見てみると、最も多いのが「仕事についていけるか」、次いで「職場に馴染めるか」、「仕事で成果を出せるか」、となっており、半数以上の学生が、「仕事をきちんとこなし、成果出せるか」という点について不安を抱えていることがわかる。オンライン化が進むコミュニケーションの中で、仕事内容や企業の雰囲気などについて、深い理解と納得を得ることができていない学生が多く存在するといった事情が、結果に現れているのであろう。企業は、これらの不安に対して寄り添うことが必要である。

・レディネスを高めるといっても、その定義が曖昧なままでは的確な施策は行えない。学生から社会人になる自覚を芽生えさせるには、学生と社会人の違いを本人にしっかりと理解してもらう必要がある。社会人はさまざまなステークホルダーと関わりながら、課題や業務に取り組み、成果を生み出すことが求められる。そのような観点からレディネスを高めるために、社会人として意識してもらうべき重要テーマは次の項目があげられる。1.目的意識、2.顧客意識、3.協働意識、4.改善意識、5.品質意識、6.コスト意識。

・レディネスを高める手法の中で、欠かせないのが内定者フォローだ。具体的な4つのポイントは次のとおりだ。1.個別面談を設ける(志望する職種を尋ねてその業務を行う先輩社員との面談につなげる、入社までのスケジュールを共有する、など)2.内定者同士のコミュニケーションを促進する(オンラインで自己紹介や交流する場を設ける、など)3.先輩社員と話す機会を設ける(現場社員に1日の流れや仕事のやりがいを説明してもらい入社後のイメージを具体的に持ってもらいやすくする、など)4.企業の魅力を定期的に発信する(配信ツールなどを用いて社内をバーチャル見学できるようにする、など)。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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