2021.4.13

経営改革に必要な「全体最適」とは?求められる背景や「部分最適」との違い

読了まで約 6

■全体最適が注目されている背景とは

■部分最適によって生じる問題点

■全体最適化が組織にもたらす5つのメリット

■全体最適化における注意点

■組織を全体最適化するための4つのポイント

■全体最適と部分最適 使い分けの必要性

全体最適とは何か? 注目される背景

急速に進んでいる少子高齢化による労働人口の減少に伴い、日本企業では人材不足が大きな問題となっている。

そのため、人手不足を補いつつ業績を上げていくための施策として、多くの企業がコストの削減や業務の効率化を図ることを課題として生産性向上を目指す経営戦略に舵を切っている。

そのような経営課題を解決するために注目されているのが「全体最適」だ。

全体最適とは、英語で「Total Optimization」といい、チームやシステムなどの組織全体が最適である状態のことを指し、全体最適を達成することで、業務の効率アップやコスト削減、労働生産性の向上などさまざまなメリットが期待できる。

また、全体最適と対照的な考え方として「部分最適」がある。

組織全体を最適化する全体最適に対して、部分最適は、組織の一部または個人が最適な状態であることを示す言葉であるが、このような一部組織や個人での最適化は必ずしも組織全体の最適につながるわけではない。

では、部分最適では組織にとってどのような問題が生じるのだろう。

たとえば、営業部が工場の生産キャパシティを超えてしまうほどの受注を獲得してきた場合、営業部の側から見れば、たくさんの受注を勝ち取って営業数字を上げているため、最適な状態であるといえるが、工場側からしてみればキャパシティオーバーとなり、業務が破綻してしまう可能性がある。

このように部分最適だけを追求すると、各組織がそれぞれに意思決定を行うため、一部の視点から見るとプラスのことように感じられても、全体的な視点で捉えるとマイナスの影響を与えている可能性があるので、結果として企業全体の機能不全を起こしやすいという問題がある。

組織全体としてのパフォーマンスや収益を最大化するためには、この部分最適を脱却し、全体最適の考え方を組織全体に浸透させていくことが必要だ。

そのため、企業の経営層やリーダー層は全体最適とはどのような状態なのかを理解し、達成に向けて取り組んでいく必要があるといえるだろう。

そこで本稿では、全体最適化がもたらすメリットや注意点、組織を全体最適化するためのポイントなどを解説していこう。

全体最適化のメリットと注意すべき点

全体最適の概要について説明したところで、全体最適化を行う重要性をより理解するために、まずは全体最適化が組織にもたらすメリットについて整理しよう。

<全体最適化が組織にもたらす5つのメリット>

1. 役割が明確になり何をすべきかがわかりやすくなる
全体最適化に向けて組織の方向性を示すことによって、個人や各組織が何をするべきかの役割が明確になる。

また、全体最適化を意識したうえで明確な役割を与えることで、個々が部分最適を達成していくことによって全体最適の達成にもつながっていくようにコントロールすることも可能だ。

2. 無駄な業務を省けることでコスト削減や業務の効率化につながる
全体最適化によって個人や各組織の管理が見直されることで、業務の無駄が炙り出され、必要な業務のみを行うことができるため、コスト削減や業務の効率化につながる。

また、業務の効率化によって労働時間の減少や、全体最適化によってもたらされた利益を従業員へ還元することで、従業員の満足度や意欲の向上も見込めるだろう。

3. 組織間の連携が強まることによりミスが減少する
全体最適化を目指すために組織間での連携を強めることは、ミスを減少させる効果が期待できる。

意見交換や情報共有などを通じてコミュニケーションを取ることで、他の組織の状況を理解したうえで業務を進めることができるため、前項で例にあげたような工場で生産できる範囲を超えた受注をしてしまう、などの事態や、それに伴うクレームなどを受けることも防ぐことができるだろう。

4. 情報の有効活用が期待できる
全体最適化が進むことで組織間の連携が深まることは、結果として経営層やリーダー層にも正確な情報が集まりやすくなり、情報を有効活用することが期待できる。

すでに部分最適が行われている組織では、有益な情報や最新の情報が得られやすいため、全体最適化によってそれらの情報がまとまって集まることは、経営戦略を立てるうえで重要なポイントとなるだろう。

5. 各組織のパフォーマンスが高まり生産性の向上につながる
全体最適は、各組織において高いパフォーマンスが実現できている状態であるため、生産性向上や業績アップにつながる。

また、全体最適をコントロールすることで、今まで気づかれなかった組織間での業務内容の重複なども見つかる可能性があり、それらを修正していくことで、より効率的に業務を進めることが期待できるだろう。

このように全体最適は企業経営において多くのメリットをもたらすが、注意すべき点も存在する。 全体最適を効果的に達成するためにも、次は注意点について整理していこう。

<全体最適化における注意点>

1. 組織間の対立が生まれやすい
全体最適を行うことによって、有利となる組織と不利になる組織が発生するため、組織間の対立が起こりやすくなるという問題がある。

たとえば、全体最適を実施するために、工場の生産キャパシティに合わせて受注件数を制限することで、営業ノルマやインセンティブなどの面で不利となる営業部は、不満が募ってしまう恐れがあるだろう。

経営層やリーダー層はこの点をよく留意し、全体最適化のために的確な指示を出す必要がある。

2. 現場が即座に対応できない場合がある
経営層やリーダー層が全体最適を考慮した指示を行っても、現場の対応が追いつかないことも懸念される。

全体最適を行うめにトップが工場の生産量や在庫数などを調整しようとしても、取引先との契約や原材料の量、従業員の労働日数などの兼ね合いによって、現場では即座に指示通りに動くことができないことも多い。

組織全体に関わることであるから、導入に時間がかかることは想定したうえで取り組んでいく必要がある。

3. 導入に時間やコストがかかる
全体最適に取り組むにあたって、社内システムの再構築や業務における新たな役割を従業員に共有するための説明会や研修を実施するなど、莫大な時間やコストがかかる可能性がある。

また、大企業や大きな組織ほど、人材などの経営資源を多く持ち合わせているため全体最適達成の難易度が上がってくる。

組織が一丸となって取り組まない限り、全体最適の実現は難しいといえるだろう。

組織を全体最適化するためのポイント

前項では、組織を全体最適化するメリットと注意点について整理してきた。

では、実際に企業で全体最適化を行う際にはどのようなポイントに気を付ければいいのだろう。

以下、4つのポイントに整理して解説する。

<組織を全体最適化するための4つのポイント>

1. トップが中心となって全体最適化の方針を決める
全体最適を達成するためには経営層やリーダー層が積極的に動いていくことが必要不可欠となる。

部分最適が起こってしまう原因として、現場が企業の方向性を理解できていないことがあげられるため、まずはトップ自らが目指すべき方向性をしっかりと決定し、企業にとっての全体最適の位置付けを定めたうえで、具体的な行動計画を策定していく。

行動計画を考える際には、部分最適に陥らないように充分注意したい。

具体的な計画が定まったら、組織全体が理解できるよう繰り返し周知していくことが重要となる。

2. 従業員の理解を得て認識を合わせる
従業員の協力なしでは全体最適の成功はありえない。

全体最適とはどのような状態か、目指す理由、具体的な目標やメリットなどを従業員にきちんと説明をして、全体最適の状態の中で個々が与えられる役割と、自身の業務を全体に合わせる必要性についてしっかりと理解してもらったうえで、組織全体で取り組むことが重要だ。

3. 組織内の活発なコミュニケーションを促す
前項でも解説したように、全体最適を行う中での問題点として、組織間の対立が生まれやすいことがあげられる。

そのような事態を防ぎ、組織全体の最適化を目指すためにも、利益関係が一致しない組織とも普段からコミュニケーションを取ることで、配慮し合えるような環境を整えることが必要だ。

4. ITシステムを活用することで無駄をなくす
ITシステムを導入することで業務の効率化を図ることも全体最適のために効果的な方法である。

日常業務の中でITシステムを利用できるものがあれば活用することで、時間の無駄を省くことができ、業務の効率アップによる労働生産性の向上が見込める。

また、全体最適と部分最適の使い分けについても理解したいポイントだ。 従業員やそれぞれの組織の全員が全体最適を意識して行動することは困難であり、むしろパフォーマンスを低下させてしまう恐れがあるため、個々の部分最適の積み重ねによって全体最適が達成されるように、経営層やリーダー層が行動をコントロールしていく必要がある。

経営層やリーダー層は組織全体の活動を見ながら全体最適を目指し、現場で働く従業員は組織で共有されているそれぞれに与えられた役割に従って部分最適を目指す、といったような使い分けをしていくことが理想だ。

ここまで全体最適について解説をしてきた。

絶え間なく変化を続けるビジネスの環境において、部分最適から脱却できずに苦戦を強いられている日本企業が多く存在している。

そのような現状において全体最適は業務の効率アップや労働生産性の向上に欠かせない考え方であるが、意識して取り組まないと、かえって部分最適に陥ってしまう可能性も懸念される。

全体最適達成のために、それぞれの企業のトップが目指すべき全体最適を明確化し、意識をして取り組むことが必要不可欠となる。

まとめ

・少子高齢化に伴う労働人口減少が社会問題となっている現在、企業は人手不足を補いつつ業績アップを目指すために、コスト削減や業務の効率化を図ったうえで生産性を向上させるような運営が求められている。そのような課題を解決するために注目されている「全体最適」は、組織全体が最適である状態のことを意味する考え方だ。

・全体最適と対になる考え方として「部分最適」があり、組織の一部や個人が最適な状態であることを意味する。しかし、一部組織の最適化が組織全体の最適につながるわけではないため、全体的な視点で見るとマイナスの影響を与えてしまう可能性がある。組織全体としてのパフォーマンスや収益を最大化するためにも、経営層やリーダー層は全体最適達成に向けて取り組む必要がある。

・全体最適化が組織にもたらす5つのメリットは次のとおりだ。1.役割が明確になり何をすべきかがわかりやすくなる、2. 無駄な業務を省けることでコスト削減や業務の効率化につながる、3. 組織間の連携が強まることによりミスが減少する、4.情報の有効活用が期待できる、5. 各組織のパフォーマンスが高まり生産性の向上につながる。また、全体最適化における注意すべき点は次のとおりだ。1.組織間の対立が生まれやすい、2.現場が即座に対応できない場合がある、3. 導入に時間やコストがかかる。

・実際に企業で全体最適化を行う際のポイントを整理すると次の4つがあげられる。1.トップが中心となって全体最適化の方針を決める、2.従業員の理解を得て認識を合わせる、3.組織内の活発なコミュニケーションを促す、4.ITシステムを活用することで無駄をなくす。特に部分最適に陥らないようにするための施策である、企業の経営層やリーダー層が目指すべき全体最適の方向性を決定すること、具体的な行動計画を策定すること、計画を現場に周知すること、は有効な全体最適化導入における要となる。

・経営層やリーダー層は全体最適を目指し、従業員は部分最適達成を目指す、というような使い分けをすることも大切なポイントだ。全体最適を意識しながら動くことが困難な従業員に代わって、経営層やリーダー層が全体最適を意識して、従業員それぞれの部分最適の積み重ねが全体最適へとつながるようにコントロールをする必要がある。それぞれの企業の経営層やリーダー層が目指すべき全体最適を明確化し、意識をして取り組むことで全体最適を達成することができるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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