人口減でも進化する「5,000億円超え」の研修市場ーーIT・情報処理系資格の需要が牽引
――まずはTACの企業概要とともに、法人事業部の事業内容についてご紹介ください。
池亀:公認会計士の資格取得対策の学校としてスタートした弊社は、現在「個人教育事業」を中心に、「法人研修事業」「出版事業」「人材事業」という4つの事業を主に展開しております。
私たちがマーケティングを担当している法人研修事業においては、個人教育事業で培ってきた実務研修、資格試験対策研修、ヒューマンスキル研修、語学研修など、幅広い研修の企画から実施までをワンストップで企業様にご提供しています。金融、不動産、商社、IT業界などを中心に、直近の集計では年間およそ1,300社の企業様のご支援をさせていただいている状況です。
企業様によって研修プログラムのニーズはさまざまですが、新入社員や若手リーダー層からマネジメント層まで、数多くの方々に受講いただいております。
企業様のご要望はさまざまで、お持ちの課題と照らし合わせて「こんな研修はできないか?」などのご相談をいただき、個社ごとにプログラムの企画から携わらせていただくケースも多々あります。お客様のご要望に合わせて、取り扱う研修サービスをその都度増やしていっている状況です。
――お取引されているお客様からは、どのようなお悩みや課題感が聞かれますか?
柴田:例えば「FP2級までは順調に取得できているが、1級取得者をもっと増やしたい」など、難易度の高い資格に関するお悩みは多いですね。また最近では、新しい時代に対応できる人材を育てたいというニーズも高まってきており、例えば金融機関様がITパスポートの取得を推進したり、逆にIT企業様がコミュニケーション力の向上に力を入れたり、といったケースも増えてきました。
同時に人事の方からは、「リスキリングで何を学んでもらうべきか」「新たに勉強してもらうモチベーションをどのように高めたらいいのか」といったご相談もたびたび受けています。
――先ほど、研修プログラムの企画から携わることもあるとおっしゃっていましたが、企業のニーズに合わせて、講座内容をカスタマイズすることは多いのでしょうか?
池亀:そうですね。営業が企業様の課題をヒアリングしながら、その企業様に合った研修や試験などをご提案することもあります。また、人事の方から研修の具体的な進め方や研修回数などのご要望をお聞きすれば、講師と調整しながら講座内容をカスタマイズしてご提供することも多いです。
――研修事業のマーケット自体は現在どのような状況なのでしょうか?
柴田:2023年度のデータによると、研修事業全体のマーケットは5,370億円に上り、そのうち資格研修マーケットに限定すると、語学系を除いて270億円、語学系を含めると440億円となっています。資格研修関連の市場規模に大きな変動はありませんが、研修事業全体では拡大傾向にあります(※)。
そうした中で、近年は特にIT・情報処理関連の分野が伸びており、弊社においても、ITパスポートや情報処理技術者試験、CompTIA(コンプティア)認定資格などの人気が高まっています。
※出典:企業向け研修サービス市場に関する調査を実施(2023年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
Webセミナーやリアルイベントなど多様な施策でリード獲得を加速。HRプロ活用も欠かせない施策の一つ
――法人向けのマーケティング業務はどのような体制で行っているのでしょうか?
池亀:法人マーケティング部には現在4名が在籍しており、そのうち2名は法人向けECサイトの運営や、総合パンフレットの作成・改訂などを担当し、リード獲得やナーチャリング、社内外の連携強化といった実質的なマーケティング業務は、私と柴田の2名の体制で行っております。
具体的な業務としては、2年前に導入したMAを活用しつつ、イベントやセミナーの運営、メルマガ制作・配信などを実施し、潜在顧客の興味を惹きつけ、リードジェネレーションやナーチャリングに励んでいます。また、社内に対してはMAの活用方法を指導し、営業部門との連携を強化することで、より効率的な営業活動の促進を目指しています。
――社内向けの、マーケティング理解を促進する活動もされているのですね。
池亀:そうですね。一方で、もともと法人マーケティング部はクリエイティブの制作部隊が前身となっており、私も柴田もクリエイティブな業務を担ってきたという経緯があることから、現在もイラストレーターを使ってLPやパンフレットを作成するなど、業務範囲はとても幅広いです。
――少しお聞きしただけでも大変ご多忙な様子が伺えますね。そんなマーケティング活動の中で、特に力を入れている施策などがあればお聞かせください。
柴田:やはりKPIとしては獲得リード数というところを重視しておりますので、日々新たな施策を模索しています。その中でも注力しているのが、Webセミナー(ウェビナー)の運営です。弊社の強みである講師陣とのつながりと知見を活かし、質の高いコンテンツを提供することで、多くの参加者から高い評価を得ており、リード獲得にも大きく貢献しています。
さらに、リアルイベントの開催にも力を入れています。実際に講師の先生と参加者の方々が顔を合わせ、交流できる機会をご提供することで、より深い関係性を築くことができますし、参加者の皆さんからは、情報交換の場として非常に好評をいただいています。
また、HRプロさんも私たちのマーケティング活動において重要な位置づけであることは言うまでもありません。弊社で契約している先生方の対談記事の掲載や、資格関連のコラム、メルマガの定期的な配信、ホワイトペーパーの作成、HRサミットへの出展など、多様なコンテンツでリード獲得の活動を強化させてもらっています。
HRプロの強みは「大手企業様のリード獲得がしやすい」「伴走型のサポートときめ細かい提案」
――HRプロのご利用については、10年ほど前にトライアルでお試しいただいたのが最初だったと伺いました。その後、定期契約に至った経緯や決め手は何だったのでしょうか?
柴田:当時は私も池亀も直接関わっていなかったため詳細はわかりませんが、10年前というと、ちょうど本格的にWebマーケティングをスタートさせたばかりの頃で、「新しいお客様との接点をいかに生み出すか」が大きな課題になっていたようです。
そうした中でHRプロさんを何度か利用させていただき、着実な手ごたえを掴んだことが大きかったのでしょう。やはり新しいお客様との接点づくりという点では、こうしたプラットフォームを使わない選択肢はなかったのではないかと思います。
――これまで、さまざまなサービスや施策の実施経験がおありかと思います。他のマーケティング施策や競合サービスなどと比較して、HRプロにはどのような違いや強みを感じましたか?
池亀:例えばメルマガなどは、HRプロさんのほうが弊社のターゲットとしているエンタープライズ系の企業様のリードを多く獲得できる印象です。またイベントに関しても、HRサミットはオンライン開催のため、運営の手間がかからず、担当者としてとても楽に感じています。さらにコストの面でも、同様のサービスを受けたときのリード単価はHRプロさんのコスパが一番いいと思います。
――導入前後のサポートなど、サービス内容に関する満足度はいかがでしょうか?
池亀:「伴走していただいている」という表現がぴったりで、本当に助かっています。バタバタと手が回らない中、リマインドなどのご連絡を小まめにくださったり、細やかなフォローなどもしてくださったり、頼もしい限りです。また定期的に情報提供や施策の提案などもしていただけるので、とてもありがたく感じています。
――HRプロについて、良かった点や成果などがあればお聞かせください。
池亀:マーケティング施策全体の成果としては、MA導入から2年くらいで獲得したリード数が3倍くらいに増えており、ホワイトペーパー施策などを通じてコスパ良くリードが取れるHRプロさんの貢献も大きかったと感じています。
また、社内向けにマーケティング理解を促進する活動を行う中で、「HRプロで120件ものリードを獲得できたよ!」と、インパクトのある数字の報告ができることで、営業部門のメンバーと一緒に喜び合う場面が増えてきたと感じます。このような経験を通して、Webマーケティングの重要性が社内に浸透し、その成果を実感してもらえるのではないでしょうか。
顧客ニーズの変化に柔軟に対応し、多様な顧客層へのアプローチを目指す
――法人マーケティング部としては、今後どのような展望や課題をお持ちなのでしょうか?
池亀:法人事業部の営業体制は、金融・不動産関連企業の顧客を中心に担当するチームと、IT企業を主に担当するチームの2つに大きく分かれておりますが、昨今では金融機関にこそIT知識のブラッシュアップが求められたり、IT企業もITスキルだけではなく、簿記の知識やヒューマンスキルなど、さまざまな知識が必要だったりしますので、そういったクロスセルの強化が必要です。また、TACを使っていただくことで、さらにレベルの高い資格や知識が得られるような、アップセルの強化などにも努めていきたいですね。
人事の方々も日々忙しい中、自社に最適な教育体系を一から作り上げていくのは大変だと思いますので、そういったお悩みにお応えし、ご支援ができるように、今後もより良いコンテンツの企画や、社外への情報発信、そして営業部門がお客様の真のニーズをくみ取れるように社内への情報発信も強化していきたいと考えています。
柴田:一般的に企業の社員教育は人事部門が担っていることが多いため、現状、私たちのお客様も人事担当者がメインになっていますが、一方で最近は、事業部単位で教育を行うケースも増えてきています。DX推進などがまさにいい例です。また、教育の在り方もマスから個へシフトするなど、ますます多様化・複雑化が進んでおり、教育を提供する私たちの側にも発想の転換が求められています。そういう意味では、従来のように人事担当者の方だけでなく、例えばDX事業開発の方など、新たなお客様との接点を増やしていくことも今後の課題になります。
マーケティングにおいても「協創」が重要なキーワード
――最後に、MarkeTRUNKの読者であるマーケターに対して、メッセージをいただけますか?
柴田:弊社の事業は、お客様が学ぶことに対してワクワクし、生き生きと働けるようにサポートをすることです。研修を通じて、単に知識を伝えるだけではなく、それぞれの方の成長に伴走し、潜在能力を引き出すことだと考えています。そのためには、お客様の課題を深く理解し、その解決に繋がる最適な研修プランを提案することが必要不可欠です。
そして、私自身は改めて「協創」が重要なフェーズに来ていると感じています。お客様はもちろん、社内においても部署間をまたいで、仲間を信じて協力し合い、双方にとってより良いゴールをいっしょに目指していく、そんな気持ちで日々業務に取り組んでいます。
目の前のミッションに囚われすぎずに、お客様、社内のメンバー、それぞれと同じ視点に立ち、より良い選択を重ねることで、自ずと結果はついてくると思っています。
マーケティングの領域においても、変化の激しい難しい時代ですが、共にがんばっていきたいですね。