2021.2.4

新入社員の目標設定はどうする?OKR(目標と成果指標)の基本とポイントをご紹介!

読了まで約 7

■近年注目されるフレームワーク「OKR」

■OKRの基本的な考え方とは?

■新入社員から始めるOKRのメリット

■新入社員がOKRに取り組む5つのメリットとは?

■カンタン!OKR策定の3ステップとは?

■OKR取り組みが始まった後にすべきこととは?

新入社員の目標設定になぜOKR

近年は、官民で推し進められるダイバーシティ戦略もあり、これまでに比べてより多様な価値観や、バックグラウンドを持つ人がひとつの職場で協働する時代となっている。

従来の指揮命令系統のみに基づく上下関係ではなく、役職や部署を超えた交流や相互理解の重要性が浸透していく中で、企業にとっては配慮すべき社内の調整要素が複雑となり、かつ市場での競争環境はますます激しく変化しながら曖昧で予測が難しいVUCA時代へと突入しているからだ。

今、企業にとって厳しい競争環境を生き抜くためには、より効率的な経済活動を実現する目標達成の仕組み再考が迫られているといえる。

このような状況の下、注目を集めている目標達成の進捗評価マネジメント手法に「OKR」があげられる。

OKRとは、米インテル社が考案し、GAFA企業であるグーグル社やフェイスブック社などが採用する目標管理のフレームワークであり、「Objectives and Key Results」の略称だ。単語のとおり、目標(objectives)と、要(かなめ)となる成果群(key results)によって、高い目標を達成するための枠組みだ。企業の目標達成のため、働く個人一人ひとりからチーム、部署、組織全体に至るまで、階層ごとにそれぞれ目標を定めていき、組織内での活発なコミュニケーションにより、団結して企業目標の実現に向けて行動する点が特徴だ。

OKRは、企業全体や部署ごとの実務ベースでの目標設定に向けて有用なだけでなく、新入社員の教育や研修においても、明確な目標を設定することで、新入社員のすべき仕事やタスクが明瞭になり、モチベーション向上につながるなど、メリットは大きいといえる。

本稿では、新入社員の目標設定に資するOKRの基本を押さえつつ、OKRによる目標設定が新入社員にもたらすメリット、そしてOKR導入のステップとポイントについて見ていく。

まずは、OKRの基本的な考え方を見ていこう。

OKRを分解すると、一つの目標(O=objective)と複数の主要な結果(KR=key results)に分けることができ、それぞれの要素を紐解いていくことで、OKRの概念がわかりやすく理解できる。

1. Objectives
OKRにおけるOは、組織が達成することを目指す目標を指しており、シンプルであり覚えやすい目標であることがカギとなる。また、数値などで表すことが難しい定性的な性質を帯びてよいとされ、具体的な数値を目標に入れる必要はないとされている。数値目標がないが、チャレンジングであり組織として乗りこえ甲斐のある目標が良いとされ、取り組み期間としては、短くて1ヶ月から長くとも四半期(3ヶ月)で達成できるものが最適であるといえよう。

2. Key Results
OKRのKRは、組織が目標達成を図るために注視していく主要結果であり、ひとことで述べると指標だ。

指標というとおり、定量的で数値化が容易であることが必須である。前述のように、一つのOに対して複数のKRが存在することになるが、これは通常Oひとつ毎に2~5個のKRがあれば良いとされる。

なお、チャレンジングな目標に対しての進捗を視る指標となるため、60%前後の進捗度を成功と見なせるような少し厳しい数値目標を課すことが望ましい。

次に、OKRをチームや働く個人に課していく際に、面談などを行う中で、それぞれに課されるOKRに対する「自信度」をヒアリングする。

例えば、「自信が全くなく無理である」という水準を自信度1とし、「これは簡単すぎた」という水準を自身度10とした上で、OKRでは自信度5前後の目標を課していくことが望ましいとされる。

そして、目標への取り組み期間が終わった際にスコアリング、つまり採点を行うことによって、これを次のOKR設定への振り返りの機会とする。

スコアリングでは、一つひとつのKRに対して達成度を0.0~1.0の数値、またはパーセンテージにて採点を行い、このKR平均スコアが、Oのスコアとなるわけだ。ただし、スコアリングに関しては賛否両論の声があり、人事評価に結び付けるべきでないという声も根強い。しかし、ロジカルな目標設定を達成した従業員の達成感を作り出すことや、エンゲージメント向上を期待できる点はメリットであるといえよう。

OKRによる目標設定のメリット

OKRは前出のとおり、組織単位から個人単位まで、さまざまな階層で目標とこれを達成するための指標の結果設定を可能とする柔軟な目標管理制度だ。そのため、上手くこれを活用することにより、新入社員のモチベーションやエンゲージメントを向上させつつ、高いパフォーマンスを発揮してくれる可能性が期待できる。これらは企業の業績に直結していく要素であるといえよう。

ここでは、新人社員へのOKRによる目標設定を行うことのメリットについてみていこう。新人社員にOKRによる目標設定を行うことには、主に以下5つのメリットがあるといってよい。

1. 経営理念の浸透
企業のあらゆる目標は、経営理念や企業理念などに基づき、経営判断の指針として定められている。OKRもこれに同じく、新入社員の段階からOKRでの目標達成への取り組みを行っていくことで、自身が入社した企業が大切にしている考え方や価値観、コアバリューなどについて会得していくことを可能にするといえる。

また、マネージャー層は新入社員との目標のすり合わせや、目標達成に向けた取り組み進捗を細やかに把握しつつ、OKR振り返り面談時に自社が大事にしている理念やミッションステートメントなどを共有することで、今後の目標への取り組み時の行動指針に適応してもらうということも可能だ。

2. 従業員エンゲージメント
新人社員のOKR設定時も、全社レベルのOKRの流れを汲むような目標設定を行うことで、新入社員のうちから企業への貢献している達成感や、自身が企業活動に関わっているというオーナーシップ意識の醸成に役立つことから、従業員としてのエンゲージメント向上につながると考えられる。前提として重要になってくるのは、新人社員のOKRを設定する際に、全社の目標と同じ方向を見据えつつも、新人としての達成感を実感しやすいような、エンゲージメント向上に資するようなゴール設定を行うことだ。

3. 業務遂行の能率
設定されたOKRにおいて、目標(O)を達成するために主要な結果(KR)が用意されていることから、これを達成するために逆算して現在自身がとるべき行動を考えるというロジカルな考え方は、自身のこなすべきタスクを見える化するなどの努力が認められた場合、業務上の優先事項に基づく仕事能率の改善が期待できる。特にKR(主要結果)は数値目標のため、この数値達成のために今自分が何をすべきかということを常に考える思考を育む観点において、OKRは自主性を重んじつつ業務上の効率を上げることが可能というメリットを有する。

4. モチベーション
基本的なOKRのOは、自分より上層が策定した目標に基づいてシンプルに自分用にまとめるものだ。自主的に取り組むこととなる目標に対して、重みをもって行動ができる状態にある場合、目標達成のために何かができるかを常に考えるということで、仕事に対して高いモチベーションが維持されることに結びつくといってよい。 また、一度のOKRでの目標達成が新入社員自身の成功体験となれば、これがさらにプラスに働くことで、次のOKR以降、より高いパフォーマンスを発揮することが期待できる。

5. 課題を解決する力
OKRを新人社員に課すということは、目標に向かって指標数値を追っていくことを意味する。そのための行動をとっていく際のさまざまな障壁を乗り越えていくという行為自体は、OKRの目標設定に基づくアクションを起こしているというだけなのだが、自然に問題解決能力を強化していくのだといえる。

また、OKRの結果を糧に次のOKRを策定していくこともあり、自然とより良い解決方法を模索していくことが習慣化できれば、さらに新しい課題を発見し、それを解決する力がOKRへの取り組みを通して培われていくといってよい。

OKR導入のステップとポイント

ここまでOKRの基本的な概念と、その新入社員に有用なかたちでのメリットをみてきたが、実際にOKRを導入するにあたり、どのような段階をおさえていくべきか。闇雲に取り組みを始めると、計画倒れになるばかりか、企業の中長期的な経営計画に大きな影響を与えかねない。そのため、ある程度慎重に導入する必要があるといってよいだろう。以下では、OKR導入ステップについて解説していく。

1. 企業のOKRを定める
まず、企業全体としてのOKRを定める。

企業OKRは原則として一つのみだが、本業と新規事業分野の内容や性格があまりにも内容がかけ離れている、または社内カンパニー制を採用しているなどの場合は、事業ごとにOKRを定めても良い。

最も重要なことは、経営陣の判断のみで企業OKRを策定するのではなく、なるべく広範に従業員の意見を募集していくべきである。これはミッションステートメントの策定などにも通ずるものだが、最終的に目標達成のために業務に邁進するのは働く個人なので、できる限りボトムアップ型の意見集約モデルを用いて企業OKRを定めていくことが理想であることは間違いない。

2. 部門や部署ごとのOKRを定める
企業全体として設定されたOKRをもとに、これと連動するかたちで各部門・部署のOKRが作成される。

理想としては、やはりヒエラルキー型のトップダウンとはせず、策定される順番は企業から部門そして個人という順序だが、あくまで活発な意見が交わされるようなボトムアップ型のミーティングにおいてOKRを定めることがベストだといえよう。

それぞれの部門・部署がOKRを策定し終えた場合、それぞれのOKRと企業全体としてのOKRとで整合性がとれているかを確認した上で、これに取り組んでいく。この時、必要に応じて他の部門の目標設定などに対して意見を申し入れることができるエスカレーション環境が整っているとさらに良いだろう。

3, 個人単位のOKRを定める
ここでは、働く個人のOKRを定めていくことになるため、直属のマネージャーと面談を行いながら状況によっては同じチームのメンバーにもリバイスしてもらいながらOKRを設定していく。

たとえば新入社員であれば、マネージャーと話し合い、挑戦するという意味合いもこめて、達成が厳しいかもしれないくらいのKR数値結果と、大きなOをもって取り組んでもらう、といったアプローチも考えられる。

チーム内のOKR設定が完了したら、チーム内でそれぞれの個人OKRを確認することで、チームとしての整合性やそれぞれ個人の目標が不均衡になっていないかなどをチェック、必要に応じて修正していく。

これらを策定した段階で、実際の取り組みに入っていくわけであるが、取り組みでは週に1度ほどチェックイン(進捗確認)を行い、チーム内あるいは部門内などで進捗を確認していく。進捗確認では、ここまでのOKR進捗を確認しつつ、自身または自チームで設定した自信度の再確認や必要に応じて更新すること、そして進捗が芳しくない場合はその障壁や達成を阻止している要因を共有していくことで、次の施策を検討していくことを重要視していく。

その後、たとえば全体では四半期でOKRに取り組んでいる場合、1ヶ月半から2ヶ月経過時点で中間レビューを行い、必要に応じてドラスティックな目標変更も視野に入れつつ進捗を共有していく。最後に、各OKRの結果をスコアリングしていき、それぞれの数値について達成度の低すぎや高すぎなどを確認し、今後同じ水準での目標値を掲げるかどうかを振り返っていき、次のOKR取り組みへの糧としていくことになる。

まとめ

・社内で進む多様化と社外の厳しい市場競争環境を生き抜くため、近年企業で注目を集めているのが「OKR」という目標達成の進捗評価マネジメント手法。OKRは「Objectives and Key Results」の略で、単語のとおり、目標(objectives)と、要となる成果群(key results)によって、高い目標を達成するための枠組みであり、企業の目標達成のため、働く個人一人ひとりからチーム、部署、組織全体に至るまで、階層ごとにそれぞれ目標を定められることから、新人社員のモチベーション向上のための目標管理に有用な概念だ。

・OKRを分解してみると、OKRごとに一つのO(目標)と2~5個のKR(主要結果)に分かれる。目標はなるべき数値化しない定性的で、チャレンジングなものを1ヶ月~四半期程度で設定する。KRはこの目標達成のために進捗を管理するべく用意する指標となるため、可能な限り数値化した定量的なものが良いとされている。個人などのOKR設定には事前の従業員の「自信度」を数値で出してもらい、これの中間値をOKRとして設定すると良い。また、OKR終了後は振り返りと採点(スコアリング)を行う。

・柔軟に目標設定が行えるOKRは、適切なかたちで活かされた場合、新入社員のモチベーションを大きく向上させ、高いパフォーマンスを発揮してくれることが期待できる。これは企業の業績にも直結することと、エンゲージメント向上にも資することから人材リテンションの観点からもメリットが大きいことがわかる。

・新人社員へのOKRによる目標設定を行うことは、次の5つのメリットを有する。1.企業の大事にしている理念などの早期浸透が見込める 2.エンゲージメント向上を期待できる 3.タスク整理や仕事の能率向上が期待できる 4.仕事に対して常に高いモチベーションが維持される 5. 目標達成に向けて障壁を乗りこえることが、自ら課題を発見してこれを解決する力の強化に繋がる

・ OKRを定める順番は、1. 企業 2. 各部門・部署 3. 個人となっている。まずは企業としてのOKRを定め、各部門などは企業OKRや部署間のOKR整合性を確認しつつ、最終的には個人レベルのOKR作成まで落とし込んでいく。新入社員であれば、自身のマネージャーと面談を行う中で、少々チャレンジングな目標設定を行うことで挑戦するという意味合いもこめて、達成が厳しいかもしれあいくらいのKR数値結果と、大きなOをもって取り組んでもらう、といったかたちでも良い。

・例えばOKRを4半期(3ヶ月)で回している場合、週に1度チーム内で進捗確認(チェックイン)を行い、自身またはチームで設定した自信度や目標の再確認、または必要に応じて修正を行っていく。1ヶ月半から2ヶ月経過時点で、中間レビューを行い、部署間などでOKR進捗状況をシェアしつつ、それぞれの達成を困難にしている障壁などについて検討する場を設ける。最終的に3ヶ月経過時点で最終レビューを行い、目標値設定の妥当性も含めてスコアリングした後に次回OKRのベースとしていく。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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