2022.5.23

採用基準の決め方は?設定の流れ・ポイントを解説!

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そもそも採用基準とは、採用の判断に担当者ごとの個人差が出ないよう、選考基準を統一することを指している。今回は採用基準とはなにか、設定する目的などを紹介する。採用活動をするうえでの基準の決め方や、基準を決める際のポイントも併せてチェックしよう。

採用基準について

採用基準とは、採用活動における指標になるもので、採用後のミスマッチ防止や公平性の担保のために役立つものだ。まずはじめに、そもそも採用基準とはどのようなものか、基準を設定する目的についてさらに詳しくチェックしていこう。

採用基準とは

そもそも採用基準とは、採用するかどうかの判断に担当者ごとの個人差が出ないようにするための基準のことである。採用活動では複数の担当者がたくさんの求職者をチェックするが、判断するためのものさしが人によって異なる状態では、本当は手に入れたい人材でも不採用としてしまう恐れがあるだろう。

自社に合う人材を見極められる指標をあらかじめ設定しておくことにより、より公平な判断が可能になるうえ、採用後のミスマッチを防止し、自社で活躍する人材を採用できる。

関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

設定する目的

仕事内容や企業文化ごとに、自社で活躍できる人材は異なるものだ。採用基準を定める目的は、仕事内容か企業文化に合ったターゲティングをしたうえでの採用によって、入社後に活躍できるようにすることである。また、知りたいポイントを設定して面接を構造化することで、面接の精度を高める目的もある。

採用基準を設定するメリットは2つある。「面接官の主観や価値観で選考結果を左右させないようにすること」、「会社に合った人材を見極めて入社後のミスマッチを防ぎ、定着率を高めて活躍できるようにすること」だ。

採用基準の決め方

採用基準を決める際には、あらかじめ自社の採用ニーズや活躍できる人材の特徴を理解しておく必要がある。採用計画や人材ポートフォリオを固め、活躍している社員の共通項をチェックし、採用したい人材のペルソナを設計しよう。

そのうえで、採用の必須条件や十分条件などを洗い出し、書類選考や面接の評価項目に落とし込み、各項目の評価基準を設定するという流れをとるのがおすすめだ。それでは、採用基準を決める際のそれぞれの流れについて、詳しくチェックしていこう。

現場の採用ニーズをもとに採用計画や人材ポートフォリオを固める

まずは現場の採用ニーズを確認し、採用計画や人材ポートフォリオを固めていく。これにより、企業の事業計画との方向性を一致させた具体的な採用プロセスを設計できるうえ、現在の組織に足りない人材を把握できる。

採用計画とは採用活動をおこなううえでの指針であり、事業計画をもとに企業の目標を達成するための戦略的な計画を立てることである。採用計画を立てて採用することで、その場しのぎの採用ではなくなり、ミスマッチを防止しつつスムーズな採用活動が可能だ。

また人材ポートフォリオとは、どのような人材がどのタイミングでどの場所に何人必要かを分析したものである。これによって人材の能力や職種、性格など、現在の組織に足りていない必要な人材を理解し、効果的に採用活動を進められるようになる。

関連記事:採用戦略で不可欠な「人材ポートフォリオ」の概要、作り方を解説!

活躍している社員の共通項(コンピテンシー)を集める

採用基準を決める際には、どのような人材が自社で活躍できるのか、自社に合う人物像を明確にする必要がある。活躍している社員の共通項(コンピテンシー)を集め、それに基づいた採用基準を作るようにしよう。

コンピテンシーとは、成果を出して活躍する人材に共通する行動や思考特性のことである。成果そのものではなく、それにつながる行動や思考の特性を評価する。職種や役職、企業風土などによってなにを成果とするかは異なるため、自社に合うコンピテンシーを見極めることが重要だ。

採用したい人材のペルソナを設計する

自社に合うコンピテンシーを集められたならば、採用したい人材のペルソナを設計しよう。ペルソナとは、マーケティングにおいて架空の人物像を設定し、企業が提供する商品やサービスを効率的に販売することを目的に確立された概念である。採用マーケティングでは、採用したい人物像を明確に設定することを指す。

ペルソナを設計することで、経営と現場の意見を集約し、自社の課題を解決するために必要な人材像を把握できる。複数の面接官に共通した認識を持ってもらえ、わかりやすいイメージをもとに判断できるようになるだろう。また、自社に合うペルソナを設定したうえで採用活動をおこなうことで、採用した人材の早期離職を防げるようになる。

関連記事:採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説

採用の必須条件・十分条件などを洗い出す

どのような人材が自社にとって必要なのかを明確にできたならば、採用する条件について洗い出していこう。自社で採用したい人材の条件のうち、必須条件と十分条件の分類をしたり、洗い出した条件における優先順位付けをしたりする。採用の条件を絞ることによって基準が厳しくなりすぎないようにできるうえに、どちらを採用するかで悩んだ際の指標にできる。

また、自社に求める人物像のうち「どのような人材になってほしいか」と、「入社時点で求める能力や特性などの基準とすること」は異なるものである。最終的に自社で育てられる能力ではなく、入社後に育てられない資質や、最低限持っていてほしい能力などを採用する条件としておくといいだろう。

書類選考・面接の評価項目に落とし込む

採用したい人材の条件のうち、必須条件と十分条件の分類や、洗い出した条件における優先順位付けができたならば、書類選考や面接の評価項目に落とし込んでいく。コンピテンシーの内容を行動レベルに落とし込み、書類選考や面接で判断できる項目にしていこう。「ストレス耐性」や「適応性」、「戦略的思考」、「コミュニケーション能力」などが評価項目の例である。

なお、HR総研の『2023年新卒採用動向調査(3月)結果報告』によると、新卒採用の選考において企業が学生に求める能力として、「コミュニケーション能力」や「チームで働く力」、「適応力」が上位であった。

グラフ:企業が学生に求める能力

ProFuture株式会社/HR総研

関連記事:協調性とは?ある人を面接で見極めるには

各項目の評価基準を設定する

「ストレス耐性」や「チャレンジ精神」、「コミュニケーション能力」などの評価項目を作ったならば、それぞれの項目に対して評価基準を設定する。たとえば「チャレンジ精神」の項目では「あきらめずに最後までやり遂げるか」、「コミュニケーション能力」の項目では「ポジティブな印象を与えられるか」や「相手の真意や感情を推し図れるか」といったイメージしやすい基準を作ろう。

このとき、採用基準を言語化した時点で、現場や各部署の採用担当に内容を共有し、確認を取っておくのがおすすめだ。また、人材要件と合否判断の整合性が取れているかどうかをチェックしておこう。

また採用基準を作ったならば、社内に浸透させる努力をすることが重要だ。せっかく採用基準を明確にしていても、社内に浸透していないと効果が期待できないだろう。面接官一人ひとりが心理的バイアスを持っているため、それをなくして採用基準に沿う条件で選考してもらう必要がある。

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「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介

基準を設定するポイント

採用基準を設定するときに重要となるポイントは、「スキル面だけではなくカルチャーフィット面も意識すること」である。また「抽象的な基準になってしまうのを避けること」や、「厚労省が定める公正な採用選考の基本に配慮すること」もチェックするべきポイントだ。それぞれのポイントについて、詳しく確認していこう。

スキル面だけでなくカルチャーフィット面も意識する

スキル面のみを重視して採用判断をおこなうと、入社後に「自社の行動原理が理解できない」、「チームワークに問題が出る」、「早期退職につながる」などの問題が起きやすい。これらのトラブルを避けるためには、スキル面だけでなくカルチャーフィット面も意識して採用基準を設定するといいだろう。

カルチャーフィットとは、企業の社風や文化に社員が馴染めているかどうかを意味する。カルチャー重視で採用活動をするのであれば、自社のカルチャーを求職者に対して明確に発信し、共感してくれるような人材を獲得するのがおすすめである。

関連記事:カルチャーフィットとは?新卒・中途採用のミスマッチを防ぐポイントを解説

抽象的な基準は避ける

明確な採用基準を決めていないと評価があいまいになってしまい、面接官によって結果が変わってしまうだろう。面接官の価値観や主観で選考結果が変化してしまうと、選考の公平性を保てなくなる。

本来であれば自社で活躍できる人材であっても、面接官の判断で不採用となってしまったり、採用したもののミスマッチだったことで内定辞退や入社後の早期退職などを招いたりする可能性が上がってしまう。受け取る相手によって判断が変わるような抽象的な基準を避け、イメージを全員で共有できるような明確な判断基準を作ろう。

厚労省の「公正な採用選考の基本」に配慮する

厚生労働省は、公正な採用選考をおこなうことを各企業に求めている。公正な採用選考とは、求職者自身の適性や能力とは関係のない事柄で採否を決定しないことだ。本人に責任のない事項や個人の自由であるべき事項などで採用選考に影響があると、就職差別だと判断される恐れがあるため注意しよう。

たとえば「本人に責任のない事項」とは性別や出身地、家族など、「個人の自由であるべき事項」とは宗教や思想、支持政党、尊敬する人物などが該当する。これらの事項を判断基準にしないことはもちろんだが、応募用紙や面接で尋ねるだけでも「それによって採用が判断されたのでは?」と求職者側が感じてしまうことがある。本人に責任のない事項や個人の自由であるべき事項については尋ねないなど、採用選考時には配慮するようにしよう。

参考:厚生労働省「公正な採用選考の基本」

まとめ

採用基準とは、採用するかどうかの判断に、担当者ごとの個人差が出ないようにするための基準のことである。判断するものさしが採用担当者ごとに異なる状態では、本当は手に入れたい人材でも不採用としてしまう恐れがあるだろう。

自社に合う人材を見極められる指標をあらかじめ設定しておけば、より公平に判断し、採用後のミスマッチを防止できる。自社の採用ニーズや活躍できる人材の特徴を理解したうえで採用計画や人材ポートフォリオを固め、活躍している社員の共通項をチェックし、採用したい人材のペルソナを設計するなど工夫する。さらに基準を設定するポイントを理解し、自社で活躍する人材を採用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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