2022.6.17

ホーソン効果とは?ピグマリオン効果やプラセボ効果との違い、事例を解説

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心理行動の一つであるホーソン効果とは、他者に注目されることで意思決定に変化が生じ、良い結果が生み出される現象である。ビジネスシーンにおいてホーソン効果が発生すると、社員のモチベーションアップや集中力の継続が期待できる。

ホーソン効果には類似する心理行動がいくつかあるため、それぞれの特徴を理解しておこう。この記事では、ホーソン効果の仕組みや関連用語との違い、導入する際の事例などを解説する。

ホーソン効果とは?関連用語との違い

ホーソン効果とは、他者からの注目が原動力となり、良い結果を残そうとして力を発揮する心理行動である。社員のモチベーションアップや離職率の低下が期待できるため、ビジネスシーンで活用されるケースが多い。

関連する心理行動もいくつかあるため、それぞれの特徴や相違点を確認しておこう。ここでは、ホーソン効果の概要や関連用語との違いを解説する。

ホーソン効果とは

人は注目を浴びた際に、「相手の期待に応えたい」「他者に良く見られたい」と考えやすい。期待に応えたいという意識が実際の行動に作用し、結果として良い成果を生み出すことがある。このように、他者の注目によって意思決定に変化が生じ、好結果に結びつく現象をホーソン効果という。

ホーソン効果は、アメリカで行われた実験によって実証された現象である。生産性に関する実験を行ったところ、他者からの注目が意思決定に影響を及ぼすことが明らかになった。

ホーソン効果をビジネスシーンに取り入れると、社員のモチベーションや集中力の向上が期待できる。メンバー間で互いに注目し合う仕組みを整備すれば、仕事への意欲が高まり、より良い成果を生み出す好循環が実現するだろう。

関連記事:モチベーションとは?意味やアップさせる方法を分かりやすく解説

ピグマリオン効果との違い

ホーソン効果と類似する心理行動として、ピグマリオン効果が挙げられる。ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けた際に、期待に沿った結果を出すように行動する現象を指す。

アメリカの教育心理学者が提唱した教育心理学用語であり、主に教育現場で活用されるケースが多い。ピグマリオン効果以外に、ローゼンタール効果や教育期待効果と呼ばれることもある。

ホーソン効果とピグマリオン効果は、どちらも「他者からの期待」がトリガーである。ただし、前者の場合は「他者=第三者」、後者の場合は「他者=目上の人(教師など)」が成り立つ。

また、ホーソン効果は期待されることに限らず、他者からの注目や関心もトリガーとなりうる。行動の動機は似ているものの、両者には細かな違いがあると覚えておこう。

関連記事:ピグマリオン効果とは?ゴーレム効果との違いや人材育成に活かす方法

プラセボ効果との違い

プラセボ効果(プラシーボ効果/偽薬効果)とは、思い込みが身体や実力に影響を及ぼし、何らかの改善がみられる現象である。本来は薬としての効果がない偽薬を服用し、病気の症状が改善する状態を指すが、ビジネスシーンや恋愛などにも活用される。

ホーソン効果とプラセボ効果の共通点は、何かしらの要因によって状況が改善されることだ。ただし、ホーソン効果は他者からの期待によって引き起こされるが、プラセボ効果は本人の思い込みが影響をもたらすため、根本的な要因は大きく異なる。

ハロー効果との違い

ハロー効果(認知バイアス/ハローエラー)とは、一部の評価に引っ張られて総合的な評価に偏りが生じる現象だ。ハローは後輪や後光を意味しており、ポジティブ・ハロー効果とネガティブ・ハロー効果に分類される。

ポジティブ・ハロー効果は、際立った良い部分を総合的な特徴と錯覚し、実際よりも高く評価することだ。反対にネガティブ・ハロー効果が発生すると、一部の悪い面を引きずってしまい、全体評価を低くすることがある。

ホーソン効果は評価される側の心理行動であるのに対し、ハロー効果は評価する側に起こる現象である。どちらも心の動きを表す用語ではあるが、それぞれ構造が異なる点に注意しよう。

ホーソン効果の代表例

ホーソン効果を実践すると、社員のモチベーション向上や定着率アップが期待できる。実際に、多くの企業でホーソン効果を活用した取り組みが実践されている。

例えば、社員の表彰制度(=アワード)もホーソン効果を活用できる取り組みの一つだ。表彰制度の導入方法は後述するとして、ここでは代表的な企業の事例を3つ紹介する。

1. スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート
2. 楽天新人賞
3. LAWSON AWARD

スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート

東京ディズニーリゾートでは、表彰制度として「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」を実施している。キャスト同士がお互いの行動を称え合うことにより、全体の働く意欲を向上させることが目的だ。

表彰の仕組みはシンプルで、素晴らしいと思うキャストの名前やキャストへのメッセージをカードに記入し、キャスト同士で交換する。多くのメッセージを集めたキャストの中から受賞者が選出され、年に一度の「スピリット・アワード」で表彰される。

キャストにとってはスピリット・アワードの受賞が大きな目標となり、「他のキャストに評価されたい」という思いに火がつくだろう。認められたい気持ちが強まることによってモチベーションが刺激され、仕事に対する意欲の向上が期待できるのだ。

東京ディズニーリゾートではその他の表彰制度も実践しており、ホーソン効果の活用に優れた企業といえる。

参考:https://www.castingline.net/disney_benefits/reward.html

楽天新人賞

楽天株式会社の「楽天新人賞」は、新入社員を讃えるために月1回開催されるアワードだ。社内では「楽天賞」の通称で親しまれており、入社1年目の社員だけが受賞できる。世界中の社員が参加する朝会で発表されるため、受賞者にとっては大勢から讃えられる機会となる。

社内の人に認められる経験はモチベーションに大きく影響するだろう。実際に、受賞者からは「もっと貢献できるようになりたい」「業務に対する意欲が向上した」などのポジティブな意見があがっている。

アワードを設けて他者から注目される状況を作り出し、本人のやる気をアップさせる仕組みは、まさにホーソン効果の好事例といえる。

参考:https://corp.rakuten.co.jp/careers/graduates/award/

LAWSON AWARD

ホーソン効果の代表例として、株式会社ローソンの「LAWSON AWARD」もその一つだ。LAWSON AWARDは社内表彰制度のことで、2015年には「自律型挑戦大賞」に刷新された。

自律型挑戦大賞は、自発的なチャレンジによって業務や業績の改善に貢献した社員に贈られる賞だ。優秀な事例は表彰式で共有され、社員のモチベーション向上と業績アップの両方へのアプローチが期待できる。

2018年度には「ローソン・チャレンジ大賞(Lチャレ)」に生まれ変わり、自分の仕事の枠を超えて業務の改善に取り組むことを推進している。

また、社長賞や部門グッジョブ賞を設けるなど、社員の行動を奨励してやる気につなげる仕組みづくりは、「人財の育成」に注力するローソンならではといえるだろう。

参考:https://www.lawson.co.jp/company/activity/social/employee/training/

ホーソン効果を活かした施策

ここまでに述べたとおり、ホーソン効果は社員にも会社にも良い影響をもたらす。社員のやる気を引き出したいのであれば、ホーソン効果を積極的に活用すべきだ。他者から注目を浴びる機会を作り出し、社員のモチベーションアップにつなげよう。

とはいえ、ホーソン効果の実践に難しさを感じる人は少なくない。ホーソン効果の活用方法はさまざまあるが、ここでは導入しやすい施策を3つ紹介する。自社のケースに当てはめて、実践しやすいアイデアから取り組んでみてほしい。

1. 表彰制度
2. 目標を公言する「パブリックコミットメント」
3. チームビルディングの実施

表彰制度

ホーソン効果を自社で実践する際は、代表例で挙げた企業のように表彰制度を導入するのがおすすめだ。表彰制度はアワードともいい、優れた社員や良い成果を讃える取り組みを指す。

「自分の功績が認められ、他者の前で表彰されたい」という願望をもつ人は少なくないだろう。表彰制度によって受賞者を決め、他者からの評価を目に見える形で示すことは、社員のモチベーションアップに大きく影響する。

受賞後は「また表彰されるように頑張ろう」とやる気に火がつき、さらなる成果を挙げることも期待できる。また、「今度こそは自分が受賞したい」と受賞していない社員の競争心が刺激されることもあるだろう。

ホーソン効果を活用したい場合は、評価の仕組みづくりの一環として表彰制度を実践し、他者からの評価や注目を見える化するのが有効である。

目標を公言する「パブリックコミットメント」

評価する側の働きかけ以外では、パブリックコミットメントの機会を作るのも一つの方法だ。パブリックコミットメントとは、個人的な目標を公の場で発表することである。

他者に向かって宣言することで社会的なプレッシャーがかかり、目標達成へのモチベーション維持が期待できる。「今月は新規契約を◯件獲得します」などの目標を社員に設定してもらい、大勢の前で約束する場を設けてみよう。

パブリックコミットメントを導入する場合は、社員が「やったつもり」にならないように注意が必要だ。目標を宣言して取り組んでいても、他者に「頑張っているね」と褒められた途端、やったつもりになって進捗が悪くなることがある。

進捗が滞るリスクを防止するためには、定期的に報告の場を設けるのが得策だ。進捗に合わせて目標を再度宣言してもらったり、成果をその都度報告してもらったりと、宣言後のフォロー体制を考えておこう。

チームビルディングの実施

ホーソン効果を狙うためには、チームビルディングを実施してメンバー間の結びつきを強めることも有効である。チームビルディングとは、それぞれの社員がスキルや経験を生かし、目標を達成できるチームを作るための取り組みだ。

チームビルディングを実践するとメンバー間のコミュニケーションが活性化され、チームに貢献したいという意欲が高まりやすくなる。目標を達成した際にはモチベーションがさらに上がり、生産性や品質向上などの好循環を作り出せるだろう。

関連記事:テレワーク・リモートワーク時代のチームビルディングを進めるために大切なこととは

まとめ

ホーソン効果とは、他者からの注目や期待を原動力にして、良い結果を残すために力を発揮する現象である。似ている心理行動としてピグマリオン効果やプラセボ効果、ハロー効果が挙げられるが、それぞれ構造や根本的な要因が異なる。

社員のモチベーションアップや業績の向上など、ホーソン効果がもたらすメリットはさまざまだ。表彰制度やパブリックコミットメントなどの方法を活用し、ホーソン効果を取り入れてみてはいかがだろうか。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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