2022.6.22

サンクコスト効果とは。コンコルド効果と同じ?日常生活やビジネスシーンでの例

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サンクコスト効果とは、回収不可能なコストを心残りに感じ、より多くのコストをかけようとする心理傾向だ。日常生活やビジネスシーンにおいても、この心理傾向により合理的とはいえない判断をしているケースがある。本記事では、サンクコスト効果の事例や回避方法について解説する。

サンクコスト効果とは?コンコルド効果と同じ?

サンクコスト効果とは、すでに回収不可能となったコストを心残りに感じ、さらに多くのコストをかけようとする心理傾向のことだ。サンクコスト効果の状態に陥ると、とても合理的とは思えない判断をしてしまう。

同様の意味を指す言葉に「コンコルド効果」や「コンコルド誤謬(ごびゅう)」がある。ここでは、サンクコスト効果の心理傾向とコンコルド効果の由来について解説していく。

サンクコスト効果とは

前述したとおり、サンクコスト効果とはすでに回収不可能となったコストを心残りに感じ、さらに多くのコストをかけようとする心理傾向を指す。金銭や労力、時間といったコストを投資した結果、そのコストを回収できる見込みがなくなっていても「もったいない」と感じ、さらなる投資をしてしまう、いわば引き返せなくなる状態だ。

サンクコスト効果は人間の心理に根付いた心理傾向であるため、その状態に陥ると人はとても合理的とは思えない判断をしてしまう。合理的な判断をするためには、サンクコスト効果の仕組みを理解しなければならない。

コンコルド効果、「コンコルドの誤謬」とは?

サンクコスト効果と同様の意味を指す言葉に「コンコルド効果」や「コンコルド誤謬」がある。これは、超音速旅客機コンコルドの開発が由来だ。超音速民間旅客機プロジェクトとして注目を浴びていたコンコルドは、その開発費に約4,000億円をかけていたが、開発途中でこのままプロジェクトを継続しても採算が取れないことが判明した。

客観的に見れば、この時点でプロジェクトを中止にするのが合理的な判断だろう。しかし、すでに約4,000億円もの投資をしていたことから、経営陣はその投資を惜しみ、そのまま開発を続けた結果、数兆円もの赤字を出してしまった。

この事例を指し、かけてしまったコストを惜しんでさらに不利益を被る判断をしてしまう心理傾向を、コンコルド効果やコンコルド誤謬というようになったのだ。

サンクコスト効果の例

サンクコスト効果は、日常生活やビジネスシーンで発生している。日常生活で働くサンクコスト効果は、どの事例も「もったいない」や「次こそは」といった心理状態から悪循環に陥るのだ。

ビジネスシーン事例として挙げられるサブスクサービスやコレクション付録は、サンクコスト効果を狙ったビジネスモデルといえるだろう。ここでは、日常生活やビジネスシーンにおけるサンクコスト効果の事例について紹介する。

日常生活の身近な例

日常生活におけるサンクコスト効果の身近な事例として、恋愛や衣類整理、ゲームが挙げられる。どの事例も思い込みから悪循環に陥ってしまうのだ。ここでは、日常生活におけるサンクコスト効果の事例について紹介する。

恋愛「別れたいのに別れられない」

恋愛にもサンクコスト効果が見られることがある。いざ別れようとしても、交際中に使った時間や金額、感情を考えるとなかなか別れる判断ができないケースがそれに該当する。

パートナーに対して不満があるものの「時間が解決してくれるかもしれない」「一緒にいることで変わるかもしれない」と思い込み、なかなか別れを切り出せないケースや何年も交際したことでその時間をもったいなく感じ、そのままズルズル交際を続けるケースもサンクコスト効果の事例だ。

衣類や書籍整理「使っていないけど捨てられない」

衣類や書籍の整理においてもサンクコスト効果に陥るケースがある。クローゼットにある衣類が増加した、本棚に書籍がこれ以上入らない、と何年も着ていない衣類や読んでいない書籍の処分を考えた場合でも「いつか着るかもしれない」「また読み返す時がくるかもしれない」「値段が高額」といった理由で処分しないといったものだ。

合理的に考えれば、何年も着ていない、読んでいないこと、クローゼットや本棚の収納スペースを圧迫することから、処分するという判断が妥当だろう。しかしサンクコスト効果により、金額や感情を「もったいない」と感じ、処分できなくなるというわけだ。

ゲームやギャンブル「次は当たるかもしれない」

ゲームやギャンブルにもサンクコスト効果が影響する。クレーンゲームで景品を獲得するために何度も挑戦した結果、なかなかやめられない経験をした人もいるのではないか。ギャンブルで負けが続いても「次当たれば取り返せる」と思い、やめられなかった経験をした人もいるだろう。

クレーンゲームやギャンブルは、負けが先行する仕組みになっていることを頭では理解しているものの「次は当たるはず」「投資した金額を取り返したい」という感情から、なかなかやめられなくなるのだ。

課金システムが搭載されたスマホゲームも同様といえる。「レアアイテムを手に入れたい」「ランキングを上げたい」といった気持ちから課金してしまい、サンクコスト効果を発生させてしまう。

ゲームやギャンブルをやめられなくなる事例は、サンクコスト効果の典型といえるだろう。

ビジネスシーンにおける例

ビジネスシーンにおけるサンクコスト効果が働く事例には、サブスクサービスやコレクション付録、新規事業が挙げられる。サブスクサービスやコレクション付録に関しては、サンクコスト効果を狙ったビジネスモデルといえるだろう。

新規事業については、どんな企業でも発生しうることを理解しておく必要がある。ここでは、ビジネスシーンにおけるサンクコスト効果の事例について紹介する。

サブスクサービス「せっかく入会したのに解約するのはもったいない」

サブスクサービスは、ビジネスシーンにおけるサンクコスト効果の見られる事例だ。無料お試しキャンペーンにつられて入会した結果、申し込みの手間がサンクコストになり「せっかく入会したのに解約するのはもったいない」「利用したいときにいつでも利用できるのは便利」という心理が働いて解約できなくなる。

このケースは、まさにサンクコスト効果を狙ったビジネスモデルといえるだろう。

コレクション付録「全部集めたい」

コレクション付録にもサンクコスト効果が働く。数ヵ月や1年を通して集めることでコンプリートとなる雑誌付録では、雑誌を読むためではなく付録を集めることが目的となるケースがある。

「途中まで集めたから」「全部集めたい」といった心理状態から、雑誌の内容に関係なく購入を続けるのだ。このケースもサンクコスト効果を狙ったビジネスモデルといえるだろう。

新規事業「いつか収益が発生する」

新規事業にもサンクコスト効果が発生する。新規事業は投資が必要な反面、見通しが立たない場合には撤退する判断も必要とされている。しかし、サンクコスト効果により「投資金額を回収したい」「いつか収益が発生するはず」という心理状態に陥り、撤退が遅れるケースがある。

まさに「コンコルドの誤謬」といえる状況は、どんな企業でも発生しうるといえるだろう。

サンクコスト効果を避けるには

サンクコスト効果を回避するためには、サンクコスト効果による認知バイアスを理解し、サンクコストはなかったものと考えることがポイントだ。事業であれば目標や投資コストの上限を設定することで、撤退の判断に迷うことなく、損失も最小限に抑えられるだろう。

客観的な意見を取り入れることも有効な手段といえる。信頼できる相談相手から客観的な意見を聞くことで、ものごとを冷静に判断できるだろう。ここではサンクコスト効果を避ける方法について解説していく。

認知バイアスを理解し、サンクコストは0と仮定する

サンクコスト効果による認知バイアスを理解すれば、サンクコスト効果を回避できるだろう。「どのような状況で発生するのか」「どんな心理状態になるのか」を理解しているだけで、サンクコスト効果における認知のずれに気付ける。

また、サンクコストは0と仮定することも大切な回避方法だ。サンクコストは過去のものであり、その投資が未来の判断に影響することは少ないだろう。例えば、サブスクサービスを利用している場合でも「もしサブスクに加入していなければ」という前提で考えると「月額料金がもったいないから利用しない」といった判断ができるだろう。

サンクコスト効果による認知バイアスを理解し、サンクコストはなかったものと考えることで、サンクコスト効果を回避できる可能性は上がるはずだ。

陥りやすい認知バイアスは、他にも自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてそれを信じようとする「確証バイアス」や無意識のうちに持ってしまう偏見や、根拠のない思い込み「アンコンシャスバイアス」などもあるので把握しておこう。

関連記事:
「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介
アンコンシャスバイアスの具体例は?仕事上で気をつけたい対策

スタートする前に目標を決める

スタートする前に目標を決めることもポイントだ。事業であれば、定量的な目標を設定することで達成度が明確になる。目標未達の場合にどういった判断をするのかまで設定しておけば、目標に達しない場合の判断に迷うことはないだろう。

投資コストの上限設定も有効だ。サンクコスト効果が働いた場合、さらなる投資を続けることで悪循環に陥る。あらかじめ投資コストの上限を決めておけば、撤退の判断がしやすくなり、損失も最小限に抑えられるだろう。

客観的な意見を取り入れる

客観的な意見を取り入れることも有効だ。サンクコスト効果が働いたとき、その当事者は認知のずれを引き起こしており、主観的な判断を下しやすい状態といえる。その状態で合理的な判断を下すのは簡単ではないはずだ。

信頼できる第三者から客観的な意見を聞くことで、ものごとを冷静に判断できるだろう。関わっている事業の継続を判断したい場合、その事業に携わっていない社員や社外のアドバイザーから意見を聞くとよい。本や資料などの客観的な情報も有効だ。

真摯に相談に乗ってくれる信頼できる相談相手を見つけておくこともポイントといえるだろう。

まとめ

サンクコスト効果とは、回収不可能となったコストを心残りに感じ、さらに多くのコストをかけようとする心理傾向を指す。サンクコスト効果の状態に陥ると、とても合理的とは思えない判断をしてしまうだろう。

サンクコスト効果は、日常生活やビジネスシーンで発生している。どの事例も「もったいない」「次こそは」といった心理状態から悪循環に陥るのだ。サンクコスト効果を回避するためには、サンクコスト効果による認知バイアスを理解し、サンクコストはなかったものと考えることが必要といえる。

目標や投資コストの上限を設定することで、撤退の判断に迷うことなく、損失も最小限に抑えられるだろう。信頼できる相談相手から客観的な意見を聞くことも、冷静な判断をする方法のひとつだ。サンクコスト効果や対策を理解し、合理的な判断をしていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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