2023.12.8

休み方改革とは?実施するメリットや企業の事例などについて解説

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昨今では、労働時間や労働環境の改善に取り組む「働き方改革」が推進されているが、仕事以外の休暇に着目した「休み方改革」も話題になっている。休み方改革とは、働く人が休みやすい環境を作るため、休暇取得を推進する施策のことだ。

「業務が多く、仕事を休みづらい」といった職場環境により、有給取得に罪悪感を持つ人も多いだろう。しかし、長時間労働・休日出勤は疲労や心身の不調につながるため、働き方を考える必要がある。そのため、企業が率先して休み方改革を推進することが大切なのである。

この記事では、休み方改革の概要や背景、実施するメリットに加えて、企業事例などについても解説する。

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休み方改革とは

休み方改革とは、労働者が休みやすい環境を作るため、有給休暇取得の推進や休暇集中の見直しなどを行う施策である。

近年では、少子化の影響により、女性や高齢者の社会進出が進んでいる。それに伴って、共働き世帯も増えていることから、時代に適応した働き方が求められている。しかしそのような状況に対し、企業の勤務形態や労働者の意識はまだ完全に適応しておらず、仕事とプライベートが両立できない人が多くいるのだ。十分な休息を取らなければ、疲労が蓄積されてしまい、業務効率は低下するだろう。

仕事とプライベートの時間をバランス良く充実させる「ワークライフバランス」を実現することで、個人の業務効率化のみならず、企業の生産性向上も期待できる。そのため、政府主導で休暇の取得や長時間労働の改善を図り、ワークライフバランスの実現を目指しているのだ。

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働き方改革との違い

働き方改革と休み方改革の違いは、改善に取り組む対象が異なることである。働き方改革とは、働き方の改善に取り組む施策だ。正社員のみならず、契約社員やアルバイトなど多様な働き方に対応できるように配慮したり、フレックスタイム制やテレワークを導入したりなど、働きやすい体制を整えることが目的である。

一方、休み方改革とは、従業員の休暇取得方法の改善に取り組む施策だ。休暇の適切な取得を推進し、従業員のワークライフバランスの維持を目指している。疲労を回復したりプライベートを充実させたりすることで、仕事に向き合う姿勢も向上することが期待できるのだ。

なお、休み方改革と働き方改革には明確な違いがあるが、相互に関連性があるため、企業は平行して取り組む必要がある。休み方改革により休暇取得を推進しても、個人の業務量が集中していると簡単には休めないだろう。十分な休暇を取ることができるように、労働環境自体の見直しも大切なのである。

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休み方改革が推進されている背景

ここからは、休み方改革が推進されている背景を見てみよう。

有給取得率の改善

政府は、「2025年(令和7年)までに、有給休暇取得率を70%にする」という目標を掲げている。しかし、厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」によると、2021年(令和3年)の労働者の有給休暇取得率は58.3%だった。なお、有給休暇取得率とは、「全従業員が取得した1年間の有給休暇日数」を「会社が全従業員に付与した1年間の有給休暇日数」で割った数字である。

2019年4月から、労働者は年次有給休暇を年5日取得しなければならないと義務付けられた。その影響により、過去の有給取得率と比較すると向上している。しかし、政府の目標には現状まだ到達できておらず、業種により差が大きく、諸外国と比較すると日本の有給取得率は低い水準のままである。このような状況を改善していくためには、休み方改革の推進が必要なのだ。

参考
働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)
令和4年就労条件総合調査の概況(厚生労働省)

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過重労働や長時間労働の防止

過重労働や長時間労働を続けると、健康障害のリスクが高まる。厚生労働省は、時間外・休日労働時間が月100時間を超える、もしくは2~6ヶ月の平均が月80時間を超えると、脳疾患や心臓疾患のリスクが上昇すると発表した。なお、36協定では、時間外労働は月45時間・年間360時間を上限と決めている。健康障害のリスクを回避するためにも、休み方改革を推進しているのだ。

参考:過重労働による健康障害を防ぐために(厚生労働省)

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休日における消費行動の促進

休暇を取得できればプライベートの時間を確保でき、消費行動の活発化につながる。外出や旅行、趣味などにお金を使う機会が増え、経済効果に大きく貢献できるだろう。

また、休暇時期が分散されることで、サービス業や旅行業は繁忙期・閑散期の業務量を平準化できる。渋滞の緩和や交通機関の混雑解消にも役立つため、休み方改革はこのような社会的な問題の解決にも有効だ。

企業が休み方改革を実施するメリット

ここでは、休み方改革を実施するメリットを紹介する。

離職リスクを抑えられる

有給休暇取得率が低い会社では、離職率も高まる傾向がある。業種によっては対策が難しい場合もあるが、解決しなければ人材不足や業績悪化の原因になりかねない。休み方改革により働きやすい環境を整えられると、従業員の離職率を抑え、人材不足を防げるだろう。

関連記事:自社の離職率は高い?低い?日本の業界別離職率と下げる取り組みを解説

業務効率化を意識できる

休みやすい環境を作るためには、業務の効率化が必要だ。休み方改革が実施されれば、従業員も日頃から効率をより意識して業務に就くことができるだろう。生産性が向上することで、業務に影響を与えずに有給休暇を取得できる。また、従業員が心身を休められると、勤労意欲の向上も期待できるだろう。

長時間労働を防げる

休みが取りやすくなると、長時間労働の削減につながる。結果、仕事のストレスを軽減できたり心の余裕を持てたりするため、ワークライフバランスも保てるのだ。

関連記事:ストレスチェックの義務化とは?従業員数50人を超えそうな中小企業は必見!

企業の印象が良くなる

有給休暇取得率が高まれば、働きやすい職場環境であることを就職サイト、公式Webサイトなどでアピールできる。
また、外部からもホワイト企業と認知され、就職希望者にとって企業の魅力が高まるだろう。

関連記事:ホワイト500とは?健康経営優良法人のメリットや認定基準、ブライト500との違いについて解説

休み方改革を実施している企業の事例

ここからは、休み方改革を実施している企業の事例を見てみよう。

株式会社ZOZO

ファッションEC運営を行う株式会社ZOZOでは、カスタマーサポート業務を行うホスピタリティ本部において、変形労働時間制を活用し、2021年4月より「選択的週休3日制」を導入した。1日8時間×週5日勤務を基本とし、希望者は1日10時間×週4日勤務を選択できる制度だ。総勤務時間が変わらないため、給料や評価も変える必要がなく、導入はスムーズに行われた。

制度導入により、時間管理の意識が高まったことから残業時間が減った。また、週4日勤務の中でうまく業務を回せるようになり、有給休暇取得率も下がらず、むしろより取得しやすい環境になったのである。制度を利用した社員からの反応は、「今までできなかったことに時間を使える」「家族との時間が増えた」などと好評だったそうだ。

参考:取組・参考事例|働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)

関連記事:週休3日制のメリット・デメリットは?導入が進む5つの企業事例もご紹介

塩野義製薬株式会社

医薬品の製造・販売を行う塩野義製薬株式会社では、「スーパーフレックスタイム制度」や「在宅勤務制度」に加え、「選択週休制度(週休3日)」などを導入した。

選択週休制度の対象者は、入社3年未満およびマネージャー職以上を除く正社員だ。希望者が制度を利用しやすいよう、利用申請時はその理由を問わないことにしている。

この制度を導入する際、中でも製造職ではシフトなどの都合から、この制度を利用する従業員が多くなると業務遂行が難しくなると懸念された。しかし、現在では問題なく運用されており、選択週休制度への不満の声なども特にあがっていないそうだ。企業としては、この制度を社外での学びや成長の機会として活用し、またそこで得たものを仕事に活かして欲しいと考えている。

参考:取組・参考事例|働き方・休み方改善ポータルサイト(厚生労働省)

<参考>厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」

厚生労働省が運営する「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、上記以外にも企業事例が多数掲載されている。また、「働き方改革」「休み方改革」各種の情報や、働き方を把握できる自己診断ページも提供されているため、働きやすい職場づくりに役立てられるだろう。

まとめ

休み方改革とは、有給休暇取得の推進や休暇取得状況の見直しを行い、働く人にとって休みやすい環境づくりを目指した施策である。休暇を適切に取ることで、ワークライフバランスの実現や仕事に対するモチベーション向上、業務の効率化などが期待できる。しかし、有給休暇取得率は国の目標値に届いておらず、長時間労働・休日出勤を行う労働者がまだ多数いるのが現状だ。

休み方改革は、長時間労働の防止や離職リスクの回避など、従業員だけでなく企業もメリットを得られる。企業がより成長できるよう、休み方改革を推進してみてはいかがだろうか。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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