2023.2.22

成果主義を人事制度に導入するメリットとデメリット、注意点を解説!

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近年、成果主義は多くの企業で導入されている。今回は、成果主義の概要や多くの企業が導入している背景、メリット、デメリットなどを紹介する。さらに自社への導入の際に注意すべき点も解説するため、あわせてチェックしよう。

成果主義とは?

そもそも「成果主義」とは、昇進や昇給を決める際に、従業員の仕事上の成果に応じて処遇を決定する制度のことである。成果主義は、年齢や勤続年数を基準とする「年功序列」と対比されることの多い考え方だ。

欧米の企業では早くから成果主義が広く普及していたものの、かつての日本では年功序列が広く普及していた。しかし近年では、成果主義を基本とする人事制度が主流となりつつある。日本でも1990年代前半のバブル経済崩壊後に、年功序列から成果主義へとシフトする企業が多くなったのだ。

成果主義には、従業員のやる気を引き出す効果があるといわれている。一方で、評価の公平さや過程に対する判断などの面には、さまざまな問題があるともされている。成果主義を採用することによるメリットとデメリットについての詳細は後述する。

成果主義の採用の仕方は、目標達成度などを賞与に反映させる方法が一般的である。さらに、基本給でも成果主義を採用する動きも広がっているようだ。ただし、導入したものの、成果につながっていないケースがある。

成果主義と年功序列との違いは、評価の基準となるのが仕事上の成果なのか、年齢や勤続年数なのか、である。年功序列は年齢や勤続年数が基準となるため、長く勤めるほど賃金が上がっていく制度だ。終身雇用を前提とし、年齢が上がって勤続年数が増えるほど、個人の持つスキルも磨かれていくことを見越して考えられている。

「能力主義」という考え方もある。成果主義と同列に考えられやすいが、能力主義は成果ではなく個人の持つ能力を評価基準としている人事制度だ。

ここでいう能力とは、目標達成に向けて取り組む職務遂行能力を指す。能力は、成果として表れる潜在能力だけではない。

資格保持者としての知識や経験値など、それぞれの人材が持つ複数の要素をもとに評価するものだ。ただし、能力主義は成果主義とは違って、早期に賃金として反映させることが難しい評価基準でもある。

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成果主義が拡大した背景とは?

先述のとおり、日本ではもともと年功序列制度が普及していたが、その後成果主義が拡大していった。日本で成果主義が拡大した背景は、1990年代後半以降の日本経済の低迷による影響と、雇用形態が多様化したことが挙げられるだろう。

成果主義を採用しているのは、規模が大きい企業ほど割合が高いといわれている。それでは、成果主義が拡大した2つの要因をチェックしていこう。

(1)1990年代後半以降の日本経済の低迷

1990年代後半以降、長期間にわたって日本の経済は低迷した。この日本経済の長期低迷による企業の業績悪化が、成果主義の導入が広まった背景である。

バブル経済の崩壊までは、年功序列が一般的であった。戦後からしばらく、日本は高度経済成長によって業績を伸ばす企業が多かったため、年功序列によって人件費が高まることが許容できていたのだ。

しかしバブルが崩壊したことで、人件費のコストを下げたい企業が多くなった。年功序列では、成果にかかわらず年々人件費が上がっていくため、年長者が増えるほど支払う給与が高くなる仕組みだ。高い給与を支払うだけの理由がある優秀な人材であれば問題はないが、高い人件費に見合わないケースもあった。

また、企業の業績が悪化していても、年長者であれば高い給与を支払わなければならなかったことも問題だ。日本経済の低迷によって多くの企業の業績が悪化していたため、大きなコストを占めていた人件費の無駄をなくし、成果を上げた人材に高い給与を支払えるようにしたのである。

(2)雇用形態の多様化

終身雇用制度が崩れたことによる雇用形態の多様化も、成果主義が広まった背景である。以前の日本では終身雇用制度が基本であり、新卒で入社してそのまま定年まで勤めあげることが一般的だった。しかし、その後の経済状況の変化やテクノロジーの発展などによって、終身雇用制度が崩れていった。

これによって人材の流動化と働き方の多様化が進み、勤続年数や年齢を基準とした年功序列での評価が難しくなったのだ。そのため、公正な評価ができるように、業績を基準とする評価制度が必要とされ、成果主義を採用する企業が増えたのである。

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成果主義のメリット

成果主義のメリットは、大きく分けると以下のとおりだ。

● 従業員のモチベーション向上
● 人件費の適正化
● 優秀な人材を獲得できる

ほかにも、業務効率化による生産性の向上や、従業員の自発的な成長の促進といったメリットが期待できる。仕事の成果を高めるには、業務効率化や従業員の成長が必要である。成果主義を採用することで、どちらの要素も従業員が自発的に取り組むようにうながせるのだ。

それでは、成果主義のメリットを詳しくチェックしていこう。

(1)従業員のモチベーション向上

成果主義は、従業員のモチベーション向上につなげられる評価制度だ。業績をあげれば評価される仕組みが採用されることで、社員の意欲喚起につながる。

年功序列制度では頑張りが評価されにくかった若手社員でも、成果主義であれば頑張った成果がきちんと評価される。頑張りが評価されないと現状維持で満足してしまいやすくなる。しっかりと努力の結果を評価することで、モチベーションの向上につなげられるのだ。

(2)人件費の適正化

成果主義によって人件費の削減や適正化がもたらされることも、導入するメリットのひとつである。先述のとおり、以前の日本企業で多かった年功序列制度では、成果にかかわらず年長者が増えるほど支払う人件費が高くなってしまうというデメリットがあった。従業員が努力をしなくても給与が高くなることで、過剰な人件費を支払わなければならなかったのだ。

しかし成果主義であれば、成果を出す優秀な人材と、そうではない人材とで適切な人件費を設定できるため、無駄を省いた人件費の適正化をはかれる。

(3)優秀な人材を獲得できる

成果主義を活用することで、優秀な人材の採用や従業員全体のレベルの底上げにつながる点もメリットだ。年功序列では、中途採用や新人が昇進しにくいケースがあり、「この会社では正当な評価をしてもらえない」と感じてしまいやすい。その結果、やる気を削いでしまったり、会社への不満を持ってしまったりすることがあった。

しかし、成果主義であれば「正当な評価をしてもらえる会社だ」と感じてもらえ、優秀な人材の採用促進や流出の防止につなげられる。また、従業員自らが成果をあげようと取り組むため、全体のレベルの底上げになるのだ。

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成果主義のデメリット

さまざまなメリットがある成果主義ではあるが、その一方でデメリットにも注意が必要である。成果主義のデメリットは、大きく分けると以下のとおりだ。

● 短期的な成果への偏重
● チームワークの希薄化

また、短期間で昇格できるハイパフォーマーと、ずっとキャリアアップできない従業員との差がはっきりと出てしまうことも、デメリットになりうる。キャリアアップできずに負け組のようになってしまうと、会社に居づらくなってしまう恐れがあるのだ。さらに、成果が可視化しにくい部署は評価されにくいこともデメリットである。

それでは、デメリットを詳しくチェックしていこう。

(1)短期的な成果への偏重

目先の成果を達成することばかりに偏ってしまう恐れがあることが、成果主義のデメリットだ。評価されやすい目先のことを重視してしまい、中長期的な目標が軽視されることにつながりやすい。成果以外で得られる知識や経験などをおろそかにしてしまう可能性があるのだ。

中長期的な目標も評価基準に入れて、 短期的な成果ばかりを重視しない環境づくりをすると良いだろう。

(2)チームワークの希薄化

個人の成果が評価の対象となる結果、チームワークが希薄化する恐れがあることもデメリットだ。成果主義では、自分の成果ばかりを追ってしまうことで、同僚の業務に関心を持てなくなりやすい。

また、上司や同僚、部下をライバルと感じてしまいやすいために、チームとしてサポートしようという意識が低くなる可能性もある。
これにより、積極的に新人教育をしてくれる従業員が減ったり、チームワークが乱れてしまったりする恐れがあるだろう。

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自社に成果主義を導入する際の注意点

メリットもデメリットもある成果主義を自社に導入する際には、注意すべき点がある。とくに、「適正な評価基準の導入」と「評価者のトレーニング」に気をつけよう。

また、「チーム意識を持たせること」「成果主義にあうマネジメント体制の構築」「定量評価だけではなく、数値で表せない定性評価の設定」なども、気をつけるべきポイントだ。

それでは、成果主義導入の注意点を詳しくチェックしていこう。

(1)適正な評価基準の導入

成果主義の導入のためには、明確で適切な評価基準の設定が重要だ。たとえば、評価基準が公平ではない場合、評価された従業員が納得できなくなる恐れがあるだろう。そのため、評価基準の的確性の確保が必須である。

適正な評価基準のポイントは、「評価者が誰であっても似た評価になること」と「実現可能な基準であること」だ。また、設定した評価基準を周知し、社員に評価への不信感を抱かせないようにしよう。

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(2)評価者のトレーニング

評価者のトレーニングの実施にも注意が必要だ。評価者の練度を高めて、評価の平準化を行うことが、成果主義の導入のためには必須である。

成果主義では、成果を正しく評価しなければならない。そのため、評価の公正さを保つために、制度内容や評価方法などの理解を深めるトレーニングを定期的に行うことが重要である。また、従業員との面談などにリソースを割けるように、評価者のタスクを減らすことも気をつけるべきだ。

最後に

成果主義は、年齢や勤続年数を基準とする「年功序列」と対比されることの多い考え方だ。以前の日本では年功序列が広く普及していたものの、近年では成果主義を基本とする人事制度が主流となりつつある。

成果主義のメリットは、「従業員のモチベーション向上」「人件費の適正化」「優秀な人材を獲得できること」だ。ただしデメリットもあるため、導入する際は注意点などに気をつけるべきだ。

今回ご紹介した成果主義の概要や注意すべきポイントなどをしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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