2021.3.23

「ピアプレッシャー」とは?組織の成長に活かすための活用方法とポイント

読了まで約 7

■そもそもピアプレッシャーとは何か?

■いま、ピアプレッシャーが注目される背景と原因とは?

■過度なピアプレッシャーが職場に生み出す4つのデメリット

■不足するピアプレッシャーが引き起こす3つのデメリット

■適度なピアプレッシャーがもたらす2つの大きなメリット

■より良いピアプレッシャーのために、働く個人ができる3つのこと

なぜ今ピアプレッシャーなのか?

新型コロナウイルス感染症の影響で、短期間で様変わりしたといえる日本の働くかたち。未だに終息の見通しがつかない感染拡大の中で、我々の社会へどのような「働くことのニューノーマル」を提示するのか。

これからの時代における「働くこと」を考えるにあたり、組織を視ていく視点のひとつに、「ピアプレッシャー」というものがある。ピアプレッシャーとは、同僚や仲間を意味する「peer」と、圧力や圧迫感を意味する「pressure」が組み合わさった単語だ。語意のとおり、ともに働く同僚や上長などの監視や受ける圧力を指す言葉だ。

近年、大手や外資を中心とした一部の企業では、グローバル化に伴う人事評価制度の改革や、雇用のあり方が変化しつつあること、あるいは働き方や価値観の多様化が許容され始めていることを背景に、ピアプレッシャーの作用について注目する動きが活発となっている。

元来、日本企業では、集団の中で同調することや、「空気を読むこと」を自他に求めることが強い文化を有することから、海外企業と比べた場合、このピアプレッシャーが強いといわれていた。

これまで、終身雇用と年功序列の上に成立していた企業文化では通用していたピアプレッシャーが、ジョブ型採用や成果主義などの新しい企業文化に置換されつつある現代においては、「察すること」や「思いやる心」などといった日本の美徳と評される部分を含め、通用しにくくなっているのだ。

むしろ、これらが個人行動を極度に制約するという特性をもつことから、ピアプレッシャーの側面である同調圧力や相互監視などの企業カルチャーは、働き方改革などを論じる際に、真っ先に批判すべき悪習として槍玉に挙げられることが多い。

しかしピアプレッシャーを丁寧に紐解いていけば、相互監視などは決してデメリットのみということではない。グローバル化する企業や、海外型の経営方針を取り入れる企業などでも、大いに活かされるメリットが存在するという事実にも気づくだろう。

例えば、コロナ禍により急速に普及していったリモートワークのような働き方では、従来の「職場」において自然と存在していた、言語的かつ非言語的な「つながり」が希薄化していく懸念があり、今まさにピアプレッシャーに求められる役割が変化しつつあるといってよい。

ピアプレッシャーが強すぎた場合、これは働く個人に過度なストレスを招くことがデメリットとして存在する。 しかし、適度なピアプレッシャーが存在する職場とは、働く個人に緊張感を与えることで、業務の効率化や生産性の向上が期待できるものだ。

注目を集めているピアプレッシャーの役割は、もちろん後者である。このため過不足なく、ほど良いピアプレッシャーをつくり出すことが、企業に求められるといってよい。これらを実践していく前提として、ピアプレッシャーの持つメリットとデメリットを正しく理解した上で、自社での効果的な運用へ役立てていくことが重要だといえよう。

本稿では、企業活動における、「ほど良い緊張感」が適切なかたちで保たれ、従業員の能率向上に資すると期待されるピアプレッシャーについて、未だ予断を許さないコロナ禍により長期化する企業のリモートワーク環境などに鑑みつつ、組織活性化のためにピアプレッシャーの果たすことができる役割は何かという観点から考えていきたい。

以下、順を追ってピアプレッシャーの過不足によって引き起こされるさまざまなデメリット、また適度なピアプレッシャーによりもたらされるメリット、そしてピアプレッシャーを活用していく上でのポイントについて紹介していこう。

多くても少なくてもデメリットをもたらす

前項では、企業においてピアプレッシャーが必要とされている理由と役割の変化や、日本の文化的背景により、企業における懸念のひとつにもなり得ることについて見てきた。

さじ加減ひとつで、プラスにもマイナスにも転じることがあるピアプレッシャーは、過不足した場合に数々のデメリットを生み出し、時には国が推し進める働き方改革を阻害する主因のひとつといわれるほど、負の側面が多いことも事実である。

そこで本項では、過剰なピアプレッシャー、不足するピアプレッシャー、そして適度なピアプレッシャーが職場に与える影響について見ていきたい。

過剰なピアプレッシャーと不足するピアプレッシャーは、職場環境に大きなデメリットをもたらすことは、前項でも触れていることだが、ここでは2つの状態が職場環境に与えるデメリットを整理し、確認していこう。

1. 職場環境におけるピアプレッシャーが強すぎる場合の4つのデメリット
ピアプレッシャーには「相互監視」と「相互配慮」という2つの側面があり、主に前者が同調圧力、後者が助け合いという性質を有していると考えられるが、ここでいう過剰なピアプレッシャーは、両方が過度に作用している状態を指し、主に以下の4つのデメリットが生まれやすい環境を作り出す。

i.残業を断りづらい環境
働き方改革やダイバーシティの推進により、ワークライフバランスという考え方はこれまでになく浸透を見せており、企業経営においても重要視される項目のひとつだ。しかし、職場環境に過剰なピアプレッシャーが働く場合、作用する同調圧力により、定時を過ぎて自身の業務が完結していても同僚を気にして帰りづらくなるというデメリットが生じる。

ii. 相互監視によるストレス増加
ピアプレッシャーが強すぎる場合、過剰な相互監視が実施され、常に周囲の目が気になってしまうことで、業務に集中できず、ストレスによって業務の能率と生産性の低下を招く恐れがある。仮に、短期的にはピアプレッシャーが生産性向上に資する場合においても、周囲の目線を過度に気にする環境は、長期的に従業員へ必要以上のストレスを与える可能性がある。

iii.業務外の誘いを断りづらい環境
企業によって、社内の親睦を深める目的で打ち上げの宴会や慰労会などが、企業の福利厚生の一環として催されることがある。プライベートな時間を使ってまで、これらへの参加を求められることを快く思わない従業員も一定数いるのだが、そうした従業員が、労働時間外にも関わらず、職場のピアプレッシャーによって社内の催し事を断りづらい環境が生じることは、やる気やエンゲージメントを低下させる要因になりかねない。

iv.自己主張が難しい環境
自身の考えを述べ、建設的な議論を行うことは、企業活動を行う従業員として求められる当然の行動だが、行き過ぎたピアプレッシャーによる過度な同調圧力は、1人ひとりの自己主張を封じ込める環境を作り出しかねない。 同じチームで働くメンバーとの関係性が悪化することを恐れ、自らの意見を述べづらいという環境は、企業の健全な発展を阻害する要因となる。

2. 職場環境におけるピアプレッシャーが足りずに起きる3つのケース

i.緊張感が欠けている環境
ピアプレッシャーは、ほど良い緊張感を従業員に与えることを目的とするが、これが不足すると必然的に業務上のミスや、業務の生産性低下、最悪のケースではクライアントを巻き込んだ重過失に至る可能性もある。

ほど良い緊張感を作り出すことが難しい、コロナ禍での在宅勤務などにおいて、「生活の場」と「仕事場」の区別がつかなくなりやすく、このようなケースに至ることが多い。

ii.連帯感が欠けている環境
企業活動は従業員が連携してこそ真価を発揮する場面が数多い。

ピアプレッシャーが不足する環境では、同僚がある程度互いに目を配らせていないことに起因する連携不足や、非言語的なコミュニケーションをとれない昨今のリモートワーク環境で顕著となりつつある、チームとしての連帯感が欠ける環境では、生産性を悪化させる要因となりかねない。

iii.信頼感が欠けている環境
ピアプレッシャーが不足している職場では、行き過ぎた個人主義が横行することによって、同僚への相互配慮が極端に少なくなる可能性がある。

こうした配慮に欠けた環境下では、従業員同士の信頼関係が成立せず、部署や部門単位といったチーム単位でみた場合、チームワークが発揮できずに業務効率が低下することが懸念される。

このように見てきた場合、あたかもピアプレッシャーは百害あって一利なしのように思われるかもしれないが、くり返し述べているとおり、適度なピアプレッシャーは企業活動に一定のメリットをもたらすものだ。

次項では、適度に保たれたピアプレッシャーがどのようなメリットを生み出すのか、またメリットを生み出していくピアプレッシャー環境づくりのポイントについて見ていこう。

ピアプレッシャーを活かすポイント

前述のとおり、過不足ないピアプレッシャーは、企業活動に多くのメリットをもたらす。

ここでは2つのメリットと、ピアプレッシャーの適切化に向けた取り組みのポイント3つを解説していく。 まずは、適度なピアプレッシャーによって企業が享受するメリットから見ていこう。

1. 互いに長所を認めつつ、切磋琢磨でき、支え合える環境
ピアプレッシャーによる相互配慮という側面は、必要なときに支えることができ、共に働く仲間として良いところは自分に取り込める環境の実現を可能とする。

また、ピアプレッシャーの相互監視という側面では、互いにほど良い緊張感の中で業務にあたることになり、業務上のミスや重過失を、チームワークで未然に防ぐなどといったことが期待できよう。

適切なピアプレッシャーがある環境下では、競争意識も醸成することから、「お互いに頑張ろう」という意識を持ちつつ、必要な時は同僚の残業を自発的に助ける、といった支え合える職場が実現する。

2. チームワークと連帯感により、生産性を向上できる環境
切磋琢磨しつつも、いざという時に相互補完、相互幇助ができる職場環境には、強いチームワークを醸成する力がある。

周囲と健全な競争を行うことで、ほど良いプレッシャーから緊張感が生まれ、業務の能率や生産性を意識しながら業務にあたる従業員が増えることだろう。

これらの実現のため、管理職にあるマネージャーなどは、ピアプレッシャーの程度をコントロールしながら、従業員同士が協力して、業績向上のために高い生産性を発揮できるよう、部署や部門全体のモチベーション向上に努めることが望ましいといえよう。

次に、ピアプレッシャーを適切な度合いに保つため、働く個人ができる3つの取り組みポイントについて見ていこう。

1. 強い自分を確立させピアプレッシャーに打ち勝っていく
メンバーシップ型のキャリアパスなどの日本型雇用慣習が終焉しつつある現代、成果主義の普及などによって、キャリアビジョンの形成は企業によるジョブローテーションから、個人の裁量へと大きく変化を遂げつつある。 このため、確立されたキャリアビジョン、自身の強み、能力やスキルなどが、職場で求められる。

自分の強みを正しく理解し、周囲に存在感をアピールすることで、自己のスタンスを確立し、ピアプレッシャーに打ち勝つことが期待できよう。

2. 周りとの関係性を良好なものとして保っていく
近年では、人事評価制度に360度評価などを取り入れる企業も増えている。

従業員満足度にも影響してくるピアプレッシャーを上手く活用するため、働く個人として、職場での周囲からの承認や信頼を勝ち得つつ、自分に対する確たる自信を身につけていくことが求められており、この両面がバランスよく保たれていることで、適度な自己主張と周りへの協調が実現できるといえる。

3. ピアプレッシャーをモチベーションへと変えていく
職場でのピアプレッシャーを、自身の仕事へのやる気に変えていくことは、有用なスキルだ。

例えば、上長からの叱責という外部刺激があった場合、怒りの感情が生まれ、反抗的な態度を引き起こすという可能性がある。

このとき、外部からの刺激に対して、自身の思考や感情が関与する思考法を変えることが重要だ。

先の例であれば、叱責を受けたことを同僚と共有し、怒りの感情を解消しつつ、過失の繰り返しを防ぐ方法を考え、再発防止の対策を立てるなど、建設的な思考法を取り入れていくことが考えられる。

こうすることでピアプレッシャーを仕事のやる気へと結びつけることができるのだ。

まとめ

・ピアプレッシャーとは、同僚や仲間を意味する「peer」と、圧力や圧迫感を意味する「pressure」が組み合わされた英語で、語意のとおり共に働く同僚や上長などの監視や受ける圧力を指して用いられる用語である。「察すること」や「思いやる心」などの文化的背景を有する日本では、元来職場におけるピアプレッシャーが、海外と比べ多いとされている。

・近年、大手や外資を中心とした一部の企業では、グローバル化に伴う人事評価制度の改革や、雇用のあり方が変化しつつあること、あるいは働き方や価値観の多様化が許容され始めていることなどを背景として、ピアプレッシャーの作用について注目する動きが活発となっている。これにあわせて、日本企業でもマイナスの側面が強調されがちだったピアプレッシャーについて、見なおされる動きがある。

・ピアプレッシャーの持つ相互監視と相互配慮という側面が過度に作用する環境では、5つのデメリットが生じやすい。1.自身の業務が終わっていても残業を断りづらい環境、2.行き過ぎたチーム内の相互監視によるストレス増加、3.社員旅行や懇親会などの業務外の誘いを断りづらい環境、4.自己主張が行いづらい環境だ。

・ピアプレッシャーが不足する職場では、3つのデメリットを生じやすい環境下にあるといえる。まずは、緊張感が欠けており、業務上の過失や生産性の低下を招きやすいという点だ。次に、相互監視が不足することにより、企業活動で欠くことができない連帯感が不足するという点。最後に、過度な個人主義の横行が、チームとしての信頼関係を築くことを阻害してしまう点である。

・過不足ないピアプレッシャーは、企業活動に多くのメリットをもたらす。1つ目のメリットは、ピアプレッシャーの持つ相互配慮や相互監視といった側面が、従業員同士が互いに長所を認めつつ、切磋琢磨でき、支え合える環境の実現を可能とする点である。2つ目のメリットは、チームワークと連帯感により、企業として部署・部門での生産性を向上できる環境の実現が可能となる点だ。

・ピアプレッシャーを適切な度合いに保つため、働く個人ができる3つの取り組みは、強い自分を確立させピアプレッシャーに打ち勝っていくこと、適度な自己主張と周りへの協調を通して周囲との関係性を良好に維持すること、そして職場環境のピアプレッシャーを自身の仕事へのモチベーションへと転換していくマインドを醸成することだ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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