2021.7.7

人事が今押さえるべき!採用直結型のインターンシップに対する、学生の生の声や経団連の立場を解説

読了まで約 6

■日本におけるインターンシップとは

■変わりつつあるインターンシップの定義

■インターンシップ3つの実施期間とメリット

■インターンシップ3つの実施内容

■採用直結型に対する学生の声

最新のインターンシップ事情は?

新聞報道などによると、今年の4月より、経団連と大学側が採用・就職活動のあり方を話し合う協議会(産学協議会)において、インターンシップ(就業体験)の定義を見直す動きにあることが分かった。

同協議会がまとめた報告書によると、就業体験の実態を伴わない(実務体験がない)実施をインターンシップと呼称しないよう、加盟企業などへ求めていく方針であることが分かる。
その一方で、企業による採用選考を視野に入れた評価材料を得る目的での実施を認める見通しを示していることから、採用直結のインターンシップが今後より広がることを意味しているといえよう。
本稿では、企業側と学生側双方の視点から、インターンシップの今後のあり方を中心に考えていきたい。

まず、この項では最新のインターンシップ事情について見ていくことにする。
元来、インターンシップ制度が本格化したのは、日本経済がバブル崩壊を迎え、就職氷河期の真っただ中にあった1997年頃とされる。
目先の就職難と早期離職を改善することを目的とし、行政の強い後押しを背景に、経団連企業を中心として導入が進められていった。

就職会社マイナビによる2022年卒学生を対象としたインターンシップ参加率調査において、79.8%の学生がインターンシップへの参加経験があるという回答を行っていることからも、インターンシップがこの四半期の間に大きく普及したことが分かる。

では、インターンシップの現状はどのようになっているのか。
慢性化していた採用難と学生の就活(=企業による採用活動)の早期化の流れを受け、新型コロナウイルス感染症が拡大するまで、多くの企業が1 Dayや2 Daysインターンシップと称し、企業説明会を行っている状況であった。

これは、2017年に文部科学省が企業によるインターンシップ実施と企業の採用活動の直結を懸念する声明を出した後も、あるいはコロナ禍による急激な採用活動のオンライン化を迎えた後も、トレンドに大きな変化はないといえる。

コロナ禍による企業インターンシップ活動への影響やもたらされつつある変化については後段で詳述するとして、前述した産学協議会によるインターンシップの定義見直しについて詳しく見てみよう。
産学協議会では、「学生のキャリア形成のために産学が提供する活動」を、次の4つに分類している。

1. 企業や業界について説明し、学生の理解を促す場
2. キャリアや就業観を学ぶキャリア教育
3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
4. 高度専門型インターンシップ

このうち、産学協議会では、3と4のみをインターンシップとして見なし、3は学部生の高学年など、4は大学院生を想定するとしている。
しかし、企業にとっては学生と多く接触することが可能となり、学生にとっては様々な業界と企業を見る中で短期間のうちに企業を知るきっかけとなる、就業体験を伴わないインターンシップは、双方にとってメリットが大きいイベントであることも事実だ。

そもそも、企業が実施しているインターンシップには、どのような種類があり、どのような役割を担うものであるのか。
次項では、インターンシップの実施期間に応じた主な実施内容について、それぞれのメリットと共に見ていこう。

関連記事:コロナの影響でインターンシップはどうなる?2022年卒のインターンシップ最新動向

インターンシップの役割と種類

前項では、直近のインターンシップ事情について確認した。
ここからは今一度、インターンシップの基本的な種類や、それぞれの役割やメリットについて確認していこう。
インターンシップをその実施期間でみた場合、下記の3つの分けることができる。

1. 1day・2daysなどの短期インターンシップ

冒頭でも触れた通り、就業体験などの実務体験を伴わないイベントは、今後インターンシップという呼称を用いることが難しくなる可能性がある。1日や2日間などで行われるインターンシップのほとんどは、このような実務体験を伴わないものである。

企業にとっては、より多くの学生との接触機会を得ることができるという大きなメリットが存在し、学生にとっても限られた時間を有効的に使い、多くの企業イベントへ参加できることとなるため、企業と学生の双方にとり、一定のメリットが認められている実施期間といえる。

2. 数日~1ヶ月程度の中期インターンシップ

経済活動がそうであるように、企業も一人のみで業務が完結あるいは成立するものではない。このため、数日から1か月程度のインターンシップでは、企業と学生、あるいは学生同士のコラボレーションという形が最も多く見られることとなる。

コミュニケーション能力、発想力、論理的思考力など、様々な視点から学生を見定める機会を得ることになると同時に、それぞれの参加学生とのつながりをより深く持つことが可能となる。
このため、企業にとってより大きなメリットのある実施期間であるといえよう。

3. 数か月以上の長期インターンシップ

長期のインターンシップは、もともとインターンシップの発祥国であるアメリカやヨーロッパで実施されることが多いものであり、日本ではまだまだ普及しているとは言い難い実施期間である。
最大の要因は、学生にとって学業に差し障りが出かねないこと、そして企業の現場にとって負担が大きいことがある。

しかし、学生にとってはアルバイトに替わる有給インターンシップという選択肢があり、企業にとっても採用対象としてのみでなく、部分的戦力として活用できる可能性を期待できる。
このため、ある程度のメリットが考えられるインターンシップの実施期間であるといえよう。

また、上記で述べた企業インターンシップの実施期間を、その実施内容に鑑みてカテゴリ分けする場合、大まかに下記3つとなる。

1. 企業説明会や業界セミナーなどの受け身見学型

これまで述べてきた通り、企業説明会や業界セミナーなどで短時間だけ職業見学ができる受け身のインターンシップは、就業体験として見なされない可能性があり、今後インターンシップという枠組みで実施されるかどうか不透明な部分もある。

しかし、企業にとって多くの学生と接触していき、自社の認知度を上げる目的の下、採用ウェブサイトやパンフレットのみでは伝わらない自社の魅力についてアピールする機会である1 Dayや2 Daysの企業セミナーや業界研究セミナーなどは、依然メリットが大きい施策である。そのため、インターンシップとは定義されなくなっても呼称を変えて実施されていくと考えられる。

2. グループでの作業などを含むワークショップ型

グループ作業やワークショップ型、プロジェクト型としてインターンシップを運用していく場合、学生複数名の集客を行った上で、複数日程に分けて様々なテーマについて議論を行わせる、あるいは自社の業務内容に倣ったチュートリアル型の業務体験を行わせるなどの内容が考えられる。

1日や2日間では時間的制約が大きく実施が難しいが、数か月以上の長期にわたって行うには、あまりにも現場への負担が大きいという企業にとって、採用担当部署主導で実施が可能点からも、理想的なインターンシップといえるだろう。

3. 従業員と同じ職場での実務体験を伴う実践型

学生を有給インターンシップという形で数か月以上にわたる長期間、自社の従業員と共に働かせるという就業体験は、欧米では一般的だが、日本では現場への負担や学生の学業への影響を懸念する声があることなどから、未だ普及には至っていない。

しかし、企業にとっては現場の従業員に良い刺激となる、あるいは良い意味で部外者である学生からの新鮮な意見などがビジネスアイディアの素となる可能性など、プラスに働くメリットも期待できる施策だ。

人事部門で然るべき制度を整え、現場従業員との意思疎通や連携がスムーズに行われているといった条件の下では、学生を迎え入れることのメリットが出るインターンシップの形だといえよう。

採用直結型のインターンシップに対する学生の声は?

新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の採用戦線、2020年卒終盤、そして2021年卒の就職活動全体にわたり、大きな影響を及ぼした。
その中でも、最も大きな変化をもたらしたのは、オンサイト(=オフライン)イベントやセミナーの開催が難しくなったことを背景に、採用選考の急激なオンライン化が進んだことだ。
コロナ禍前からの傾向として、採用選考の短期集中化が加速していく中で、大規模就活イベントへの企業ブース出展や、多くの1 Dayインターンシップによる面の拡大による母集団形成を行っていた企業は、採用戦略の大幅な見直しを迫られることとなっている現状だ。
ITに明るく、機敏なフットワークで戦略を変えることができる企業は、オンラインイベントの開催などをコーディネイトできるかもしれないが、そのような企業は極めて限定的といえよう。

このため、奇しくも就業体験を伴わない1Dayや2 Daysなどのインターンシップに対して、産学協議会のメスが入ろうとしている今、インターンシップを活用した学生との接点の拡大が、例年以上に重要視されている結果となっている。

では、インターンシップが採用選考に繋がることに対して、当事者である学生たちはどのように考えているのだろうか?

HR総研と楽天みん就が共同で行った、「【HR総研×楽天みん就】2022年卒学生の就職活動動向調査」(有効回答数:595件/調査期間2021年3月8日~25日)によると、採用直結型に対して好意的な意見である様子が伺える。

実に8割近くの学生が「インターンシップからの選考」を肯定的であることを示しており、最も回答が多かったのは「通常の選考以外にもインターンシップからの選考もあっていい」で、文系が61%/理系が63%という結果だった。その次に多いものは「インターンシップからもっと採用選考すべきだ」で、文系・理系ともに18%という結果だった。(ProFuture株式会社/HR総研

表:採用直結型のインターンシップに対する学生の声は?

この調査から、採用直結型のインターンシップについて、学生側からは肯定的に思われている様子がわかる。しかし、学生が捉えているインターンシップが前述の「受け身型」である可能性も否定できない。そのためこの点については、今後さまざまな形でインターンシップを行っていく中で、見極めていく必要があるといえよう。

総じて、昨今の経団連などの動きと、調査データから読み取れることとして、次の3点が今後重要となるだろう。

1.産学協議会は「ワンデー・インターンシップ」というものは、就業体験を伴わないものであるため、今後はこの名称を認めない方針を進めようとしているということ。

2.しかし、1日での業界研究イベントなどは、学生に広く支持されている事実があるということ。

3.そして、今後は単純にこのイベントを違う形で存続させることで、企業の学生との接触の機会を絶やさず、学生にとっても企業研究や業界研究に資する機会を提供し続けることが肝心だということ。

いずれにしてもインターンシップという職業体験は、名称や形を変えながら実施され続けていく施策だといえるだろう。

まとめ

・バブル崩壊後の就職難を解決する糸口のひとつとして普及した日本のインターンシップ。
しかし、長引く採用難と、企業による就業体験の実態がない1 Dayイベントの乱立により、大きな曲がり角を迎えようとしている。経団連と大学機関で構成される、いわゆる産学協議会は、インターンシップの定義を見直す動きにあることを、その報告書で明らかにした。
日本で現状行われるインターンシップは、欧米のそれとは大きく異なり、就業体験を伴わないセミナー型が多数を占めている現状がある。

・産学協議会が分類する、産学が学生に提供するキャリア形成の機会とは、次の4つだ。
1. 企業や業界について説明し、学生の理解を促す場
2. キャリアや就業観を学ぶキャリア教育
3. 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
4. 高度専門型インターンシップ
この内で、インターンシップと称することができるのは、今後3と4に限られる可能性が高い。このため、イベント期間の長短に関わらず、就業体験の有無が大きな焦点となってくる。

・インターンシップは、その実施期間によって大まかに次の3つに分類可能だ。
1. 1 Dayや2 Daysなどの短期インターンシップ
2. 数日~1ヶ月程度の中期インターンシップ
3. 数か月以上の長期インターンシップ

・インターンシップは、その実施内容として、大きく次の3タイプに分かれる。
1. 企業説明会や業界セミナーなどの実施を中心とした、学生が受け身で受講するタイプの見学型
2. グループでの作業などを含む、企業側としては学生の様々な側面を観察する機会があるワークショップやプロジェクト型
3. 従業員と同じ職場にて、戦力として投入される、数か月から1年以上にわたって行われる有給の実践型

・採用直結型のインターンシップに対する学生の意見は、比較的好意的だといえる。
しかし今回の経団連の方針について、学生内に浸透しているとは言えない状況のため、早急に採用直結型に切り替えるのではなく、さまざまな形のインターンシップを開催していく中で、見極める必要がある。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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