2021.8.25

「ブラインド採用」とは?ダイバーシティ&インクルージョンにも関連する採用手法を解説

読了まで約 6

■ブラインド採用とは?

■ブラインド採用が求められるようになった背景

■ブラインド採用のメリット

■ブラインド採用のデメリット

■ブラインド採用を導入する際の注意点

ブラインド採用とは何か

会社の中を見渡すと、従業員のさまざまな共通点に気付くことがある。
特定の大学や研究室出身者が多かったり、運動部の経験者が多かったり、なかには、容姿やファッションが似ているといった共通点が見られる場合もある。
明確な採用要件ではなかったとしても、選考を進めていく過程で、「うちの社風に合いそうだ」と、つい似た人材を採用してしまうケースは多いと言われている。
しかし、似たような人材だけで集まっている集団から、新たな発想や意見、イノベーションは生まれにくい。

そもそも採用選考を行う際には、評価項目としてはいけない要素が存在する。
例えば、厚生労働省が示している「公正な採用選考の基本」では、応募者の性別や年齢で採用の可否を決めることを禁じている。また、家族や思想などに関する質問も不適切であるとされ、応募者の能力や適性とは関係ない部分で採用可否を判断してはいけないとしている。

もし違反した場合は、職業安定法違反として業務改善命令を受けるだけでなく、法的な罰則を受ける可能性まであるので注意が必要だ。

近年では「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉がトレンドとして注目されている。国も働き方改革の柱としてこの、ダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指しており、企業には性別や国籍にとらわれないさまざまな人材の採用と活用が求められている。
関連記事:インクルージョンとは?ダイバーシティとの関係や推進のためのポイント

このような状況下の中で、「ブラインド採用」を取り入れる企業が増えている。
ブラインド採用とは、氏名や性別、人種、年齢、学歴などの個人情報を取り除き、応募者の能力のみで選考することで、思い込みや先入観を排除して採用ができる手法のことである。

選考過程における採用者側のアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)を排除することで、公正な採用選考を行いながら、より多様な人材の採用、ひいてはダイバーシティを推進できるとして近年注目が集まっているのだ。
そこで本稿ではブラインド採用について、注目されるようになった理由やメリットとデメリット、注意点について解説をしていこう。

ブラインド採用がなぜ今注目されているのか

なぜ、ブラインド採用が注目されているのだろうか。
ブラインド採用が求められるようになった背景は、海外と日本とでは事情が異なる。
海外でブラインド採用が求められるようになったきっかけは、白人男性が社会システムの中でほぼすべてにおいて優位に扱われていたことが社会問題となっていたことにある。
代表的な一例として、1970年代から1980年代において、交響楽団のメンバーのほとんどが白人男性によって構成されていたことに対して問題提起がなされ、民族・人種差別撤廃と男女差是正の観点から、ブラインド採用が広く求められることとなった。

一方で日本の場合は、産業構造の変化が大きく関係している。
日本が高度経済成長期にあったころは、製造業を中心として時間をかけて生産すればするほど売り上げが上がるという産業構造の中で、組織に多様性があるかどうかは重要ではなかった。
組織に多様性を持たせることそもそもが考えとしなかったのもあるが、あえて組織の秩序を乱すとして、多様性を持った組織は選択されない傾向にあったと言ってよい。

しかし、物を作れば売れる時代は終わり、今はイノベーションが求められる時代だ。
従来のような同質化体質や近しい価値観を持つ人材ばかりを採用し続けると、新たな考えが生まれにくい。もちろんこれまでの採用用件に合った人材を採用し続けることとでイノベーションが全く生まれないわけではない。ただ、傾向として多いのが組織として思考が硬直化してしまうことで、結果としてイノベーションが生まれにくい状況が出来ていることもたしかである。
消費者のニーズや価値観が凄まじいスピードで多様化・複雑化している現代において、イノベーションが生まれやすい環境を作るためには、多角的な視点や多様な意見を取り入れることが必須であると言えるのだ。

こうした消費者の変化に対応するために、新たなアイデアを生み出し続けていくことが競争力に代わる状況にある中で、異なる価値観やバックグラウンドを持つ人材で組織化をすることが重要になってきた。
つまり、多様な人材の集まる組織が強い時代となったのだ。

また、少子高齢化による労働人口の減少や外国人労働者の流入、女性の社会進出が進められている、などといったさまざまな社会的な理由もあり、企業のダイバーシティ推進は求められている。
ブラインド採用は、応募者の能力のみを判断基準として採用の可否を行うため、ダイバーシティの推進につながると考えられているのだ。

ブラインド採用のメリットとデメリット、注意点

ブラインド採用を行う目的は、選考の過程において採用担当者の「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が入り込まないようにすることにある。
アンコンシャスバイアスとは、当然のことだと思い込んでいるため本人も気付かずにいる、先入観や偏見を意味する言葉だ。
こうした偏見を排除したブラインド採用を導入するメリットとしては以下のようなことがあげられる。

<ブラインド採用のメリット>
1. 公平な採用活動ができる
従来の採用方法では、求職者の学歴や性差、年齢などによって無意識に採用対象から外してしまうケースがあった。
ブラインド採用では、個人情報を排除することで、求職者の能力にのみ焦点を当てて自社とマッチするか評価をすることができるため、公平な採用活動を行うことができる。

2. 有秀な人材を採用できる
ブラインド採用であれば、能力への評価のみで採用の可否を判断することができるため、優秀な人材を獲得することができる。
偏見や思い込みをなくすことで、「なんとなくこの人はいいかもしれない」というような採用担当者の主観的で曖昧な採用基準に左右されることなく、実力主義での採用活動を行うことが可能となり、純粋に高いスキルを持っている優秀な人材を獲得することができる。

3. 新たなアイデアが生まれやすくなる
同じような価値観や性格、考え方をしている集団からは、斬新なアイデアやイノベーションは生まれにくく、それは事業発展を停滞させることにつながる。
ブラインド採用を行い、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人材を採用することで、価値観やスキル、知識に偏りがなくなり、組織に新しい風を吹かせることができる。

4. 多様な消費者のニーズに対応できる
消費者の価値観は日々、多様化しているため、ニーズもその分複雑化していると言える。
組織に多様な人材を確保できていれば、高い能力と個性を持った従業員がアイデアを出しあうことで、消費者のニーズに合わせた商品やサービスを生み出したり、時代の変化に対応したサービスを提供することができる。

このように、さまざまなメリットがあるブラインド採用であるが、その一方でいくつかのデメリットもある。
それは以下のとおりだ。

<ブラインド採用のデメリット>
1. 入社後にミスマッチが起こる場合がある
ブラインド採用では、求職者を能力のみで判断するため、組織の雰囲気や想いと求職者の価値観や性格がマッチするかどうかは事前に判断できない。
そのため、入社後にミスマッチが起きてしまい、早期離職の可能性を高めてしまう恐れがある。
ブラインド採用においてミスマッチを防ぐためには、どこまでの情報を隠すか?という点が重要になるだろう。
能力以外のすべてを隠すのではなく、仕事に対する価値観や譲れない想いなど、組織にマッチするかどうかの判断材料は残しておくことで、ミスマッチを防ぐことにつながる。
関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

2. 採用活動が長期化しやすくなる
個人情報によるフィルターを排除することで、採用対象が増えるため、応募者の絞り込みに時間を要し、採用活動が長期化してしまう傾向がある。
提出された書類を精査し、個人情報を取り除いて採用可否を検討する必要があるため、全体のスケジュールについてあらかじめ想定しておくべきだろう。

3. 従業員同士のトラブルが発生する可能性がある
採用方法を変えることで、入社する人材の性格や価値観に画一性がなくなるため、従来の採用基準で入社した従業員との間で衝突が起こることが考えられる。
ブラインド採用で入社した従業員は、これまでの方針や価値観に縛られない考え方を持っているため、新たなアイデアとこれまでのやり方、考え方の違いなどでぶつかる可能性があるのだ。
トラブルを防ぐためにも、既存の従業員にも採用基準の変更についてしっかりと説明をし、お互いの考えを理解・尊重しあう努力が必要となる。

最後に、ブラインド採用を取り入れるうえで注意しなければならないポイントについて見ていこう。

<ブラインド採用を導入する際の注意点>
1. 多様性を受け入れる組織風土を作る
多様性を受け入れるにあたって、組織の雰囲気や既存の従業員の価値観を変える必要がある。
人材採用に関わる担当者の意識改革はもちろん、従業員へも研修などを行い、ブラインド採用を取り入れることで組織がどう影響を受けるのか、メリット・デメリットを説明し、理解を得る。
また、コミュニケーションを活発にとれる環境を整備することも重要だ。
多様な価値観・考え方が混ざりあうため、コミュニケーションを密に取り合うことで、相互理解を深め、スムーズに連携を取れるようにするとよいだろう。

2. 採用基準を明確化する
個人情報を採用基準から取り除くため、求職者の持っているスキルをどのような基準で評価するのかを明確化する必要がある。
採用基準を明確にして、採用担当者はもちろん、最終的な決を出す上層部にまで共有し、認識を統一する。
すべての採用担当者が公平な判断をできるようにしておくことが重要だ。

3. 採用活動の効率化を図る
ブラインド採用のデメリットとして、求職者を絞り込む要素が限られているため、採用活動が長期化するということをあげたが、採用活動を効率化して、期間を短縮させられると良いだろう。
個人情報を全て隠してしまうのではなく、部分的に情報を開示することで採用基準を固めたり、求職者の持つ価値観や想いを履歴書に記載してもらい、判断するポイントを増やすことなどが工夫できるポイントだ。

ここまでブラインド採用について解説をしてきた。
ブラインド採用をうまく活用することで、組織に多様性をもたらし、ダイバーシティ推進につなげることができる。
さまざまなメリットが期待できる採用手法であるが、一方で、従来用いられてきた採用手法とは大きく異なるため、導入にあたっては、それぞれの組織に合ったかたちで取り入れることができるよう、慎重に計画をする必要があるだろう。

まとめ

・会社の中を見渡すと、従業員のさまざまな共通点に気が付くことがある。明確な採用要件ではなかったとしても、似た人材を採用してしまうケースは多いと言われている。しかし、似たような人材だけで集まっている集団から、新たな発想や意見、イノベーションは生まれにくい。そもそも採用選考を行う際には、評価項目としてはいけない要素が存在する。もし違反した場合は、職業安定法違反として業務改善命令を受けるだけでなく、法的な罰則を受ける可能性まであるので注意が必要だ。

・「ダイバーシティ(多様性)」という言葉が注目され、その重要性が認知されてきている中で、「ブラインド採用」を取り入れる企業が増えている。ブラインド採用とは、氏名や性別、人種、年齢、学歴などの個人情報を取り除き、応募者の能力のみで選考する採用手法のことである。採用者側のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)を排除することで、公正な採用選考を行いながら、より多様な人材の採用、ひいてはダイバーシティを推進できるとして近年注目が集まっているのだ。

・日本でブラインド採用が求められるようになった背景には、産業構造の変化が大きく関係している。高度経済成長期の日本は、製造業を中心として、時間をかけて生産すればするほど売り上げが上がるという産業構造にあったため、組織の多様性は重視されていなかった。しかし、ノベーションが求められる時代へ変わったことで、新たなアイデアを生み出すためにも、多様な人材との出会いが重要になってきた。ブラインド採用は、応募者の能力のみを判断基準として採用の可否を行うため、ダイバーシティの推進につながると考えられているのだ。

・ブラインド採用を行う目的は、選考の過程において採用担当者の「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が入り込まないようにすることにある。こうした偏見を排除したブラインド採用を導入するメリットとしては次のようなことがあげられる。1.公平な採用活動ができる、2.有秀な人材を採用できる、3.新たなアイデアが生まれやすくなる、4.多様な消費者のニーズに対応できる。一方で、デメリットには次のようなことがあげられる。1.入社後にミスマッチが起こる場合がある、2.採用活動が長期化しやすくなる、3.従業員同士のトラブルが発生する可能性がある。

・ブラインド採用を取り入れるうえで注意しなければならないポイントは次のとおりだ。1.多様性を受け入れる組織風土を作る、2.採用基準を明確化する、3.採用活動の効率化を図る。ブラインド採用は、さまざまなメリットなメリットを期待できる一方で、従来用いられてきた採用手法とは大きく異なるため、導入にあたっては、それぞれの組織に合ったかたちで取り入れることができるよう、慎重に計画をする必要がある。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

get_field('cf_general_profile_name', 39);

『MarkeTRUNK』編集部

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から
知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。
さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。
独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

関連記事 RELATED POSTS

関連資料ダウンロード RELATED POSTS

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら