2022.6.24

ジョブ・クラフティングの意味は?ワークエンゲージメントとの関係、研修プログラムを解説

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ジョブ・クラフティングとは、 仕事に対する従業員一人ひとりの向き合い方を見直すことである。今回はジョブ・クラフティングとはなにか、関連用語との関係や違い、企業が進めるメリットなどを紹介する。研修プログラムの進め方を考えるうえで重要な3つの視点も解説するため、併せてチェックしよう。

ジョブ・クラフティングとは?人材育成で注目される理由

ジョブ・クラフティングとは、 仕事に対する従業員一人ひとりの向き合い方を見直し、「やらされている」感覚を取り除くことである。「自らやっている」という意識を持ち、仕事に対して前向きに取り組むことで仕事にやりがいを感じるようになり、ワークエンゲージメントの向上につながる。

はじめに、ジョブ・クラフティングとはどのような考え方か、ワークエンゲージメントとの関係、人材育成で注目される理由、ジョブ・デザインとの違いについてチェックしていこう。

ジョブ・クラフティングとは

従業員一人ひとりが仕事を主体的にとらえ直すように修正するのがジョブ・クラフティングの理論である。これにより単なる作業を機械的にこなすのではなく、働きがいのある仕事だと認識を変容させ、自ら進んでやれるようになっていく。

ジョブ・クラフティングは、与えられた業務をただこなすだけの受け身の姿勢とは真逆の考え方だ。本質を理解するために、よくピーター・ドラッカーーの「3人の石工」という話が引き合いに出される。

3人の石工に何をしているのかと尋ねると、1人目は「親方からの指示でレンガを積んでいる」といい、2人目は「レンガで塀を造っている」といい、3人目は「人々がお祈りをするための大聖堂を造っている」といったという話だ。ジョブ・クラフティングの考え方においては、3人目の石工と同様に仕事の意義を理解して主体的に取り組むことを目指している。

ワークエンゲージメントとの関係

ジョブ・クラフティングは、ワークエンゲージメントの向上あるいは低下と関係がある。ワークエンゲージメントとは、従業員の精神的な健康度を示す概念のことだ。従業員が熱意をもって業務に没頭できるような活力に満ちた心理状態であることを、「ワークエンゲージメントが高い状態」だと定義されている。

ワークエンゲージメントを高めることによって得られるメリットは、業務上のストレスが少なくなって心身の健康状態がよくなること、より熱意をもって取り組めるようになること、パフォーマンスが改善されることなどだ。ジョブ・クラフティングを進めていくメリットとして、ワークエンゲージメントの向上が挙げられている。企業が推進していくうえでのメリットの詳細についてはまた後述する。

関連記事:ワークエンゲージメントとは?企業や従業員にとってのメリットや高めるために必要なこと

注目されている理由

ジョブ・クラフティングが注目されている背景と理由は、主に3つある。1つ目は、日本企業で一般的であったトップダウン方式が廃れてきていることだ。これにより、従来のような「上司からの指示に従ってこなせばいい」という考え方では、成果が認められにくくなってきた。

2つ目の理由は、従業員の持つ価値が多様化したことだ。作業効率のみを重視した組織の歯車としての働き方に否定的で、仕事にやりがいを求める人が増えたことにより、主体的なモチベーションアップが重要視されている。

関連記事:モチベーションとは?意味やアップさせる方法を分かりやすく解説

3つ目の理由は、新しいイノベーションやアイデアを創発するために、従業員の情熱が必要だと意識されるようになったことだ。これにより、新しいイノベーションを求める企業では、情熱をもって仕事に取り組めるようにと、ジョブ・クラフティングの考え方が重視されるようになった。

ジョブ・デザインとの違い

仕事に対するモチベーションについて類似する言葉には「ジョブ・デザイン」がある。ジョブ・デザインとは職務設計理論のことだ。ジョブ・クラフティングとジョブ・デザインとの違いは、主体がどのような人にあるのかという点である。

ジョブ・クラフティングの研究を行う東京都立大学(旧名称:首都大学東京)高尾教授によれば、「ジョブ・クラフティングとは、 働く個人が主観的・主体的に、仕事に新たな意味を見出したり、仕事内容の範囲を変えたりすること」、ジョブ・デザインは「マネジャーまたは組織が、働きがいのある仕事を設計し、それを各従業員に割り振っていくこと」だという。

参考:https://corp.en-japan.com/success/12055.html

ジョブ・クラフティングとジョブ・デザインの考え方では、従業員に対する考え方が異なる。ジョブ・デザインでは従業員を受け身な存在として見ているが、ジョブ・クラフティングにおいては主体的に仕事をこなす対象であり、またイノベーションを起こしていける存在として従業員を見ているのだ。

企業が推進するメリット

ジョブ・クラフティングを企業が推進することには、以下のメリットがある。

・ ワークエンゲージメントの向上
・ 個人のキャリア開発につながる
・ 生産性の向上が期待できる

それぞれのメリットについて、詳しくチェックしていこう。

ワークエンゲージメントの向上

ジョブ・クラフティングを推進することで、ワークエンゲージメントの向上が期待できる。先述のとおり、ワークエンゲージメントとは従業員の精神的な健康度を示す概念のことである。ジョブ・クラフティングを推進していくと、従業員がやりがいと熱意をもって業務に取り組めるような、モチベーションが高い状態にしていけるのだ。

ジョブ・クラフティングでは「やらされている」のではなく、「主体性があり、意義があるもの」というように従業員自身が仕事への考え方を改める。それによってワークエンゲージメントを向上させ、健全な充実感を得られるようになるのである。

個人のキャリア開発につながる

ジョブ・クラフティングの推進は、個人のキャリア開発につながるというメリットもある。仕事へのとらえ方が変化して主体的に行動するようになることで、従業員自らが努力し、人材の成長スピードが早くなると考えられている。

業務遂行に意欲的になるため、リーダーシップを発揮する従業員が出てきやすいというメリットもある。また、ジョブ・クラフティングによって生まれた主体性を活かせるような部署に配置されることで、創意工夫による独創的なアイデアが考えつきやすくなるなど、従業員の成長に役立つだろう。

生産性の向上が期待できる

生産性の向上も、ジョブ・クラフティングの推進で期待できる効果である。仕事に対する姿勢が変わり、モチベーションの向上がはかれることによって、従業員が良質なパフォーマンスを発揮しやすくなるのだ。難易度の高い仕事でも積極的に挑戦できるようになり、さらに生産性が向上するという好循環が期待できる。

ジョブ・クラフティングの進め方

最後に、ジョブ・クラフティングの進め方もチェックしていこう。ジョブ・クラフティングを推進するのであれば、以下の方法をとるのがおすすめだ。

・ 現状のタスクを洗い出す
・ 情熱や強み、価値を洗い出す
・ タスクと情熱や強み、価値のつながりを確認し、タスクのやり方や量を考え直す
・ 情熱や強み、価値を活かせるように関係者との交流を再検討する
・ 仕事にどのような意義があるのかをとらえ直す
・ 実現に向けた計画を検討する

それぞれのポイントごとに仕事への考え方や人とのかかわり方を再検討し、意識を変革していこう。

3つの視点から考える

企業でジョブ・クラフティングの考え方の導入を推進していくためには、重要となる3つの視点から考えることが大事である。ジョブ・クラフティングで重要視されている3つの視点とは、「仕事の意義(捉え方)」や「関係性(職場の人間関係)」、「タスク(仕事の内容)」だ。それぞれの内容をチェックし、ジョブ・クラフティングの進め方を考えていこう。

意義(捉え方)

1つ目の視点は、自分でおこなう作業や仕事に内在する意味や意義を見つめ直し、捉え方を変化させることである。その仕事が社会に与える意義を考えたり、やりがいを考え直したりするといいだろう。心地よく感じる程度の拡大解釈をして、より社会的に意義のあるものだと言葉で表現する。

関係性(職場の人間関係)

職場の人間関係を見つめ直し、周囲との関わり方を調整する視点も持とう。先輩に自ら相談するように変えるなど、より自分が働きやすくてやりがいを感じやすいように周囲との関係性を変化させていく。周囲との関係性の変化とは、親しくなったり相談したり教わったりするだけではなく、場合によっては縁を切るという選択肢もある。

タスク(仕事の内容)

タスクの視点では、作業そのものの改変をおこなっていく。自分の作業がしやすくなったり、中身が充実したりするように、やり方を工夫していこう。「このように変更するともっと効率的に仕事が進められるのではないか」など、いろいろと考えて創意工夫していくことが重要だ。

必要な作業を追加したり、不必要だと感じる作業を減らしたりして、自分が望ましいと感じるような仕事の中身や作業手順にしていこう。

まとめ

ジョブ・クラフティングとは、 仕事に対する従業員一人ひとりの向き合い方を見直し、「やらされている」感覚を取り除くことだ。仕事に対する向き合い方を見直し、「自らやっている」という意識に変えることで仕事にやりがいを感じるようになり、ワークエンゲージメントの向上につながっていくという理論である。

企業でジョブ・クラフティングを推進していくことによるメリットは、以下のとおりだ。

・ ワークエンゲージメントの向上
・ 個人のキャリア開発につながる
・ 生産性の向上が期待できる

ジョブ・クラフティングを進める際は、現状のタスクや仕事に関する情熱や強み、価値を洗い出し、それぞれのつながりを確認し、タスクのやり方や量を考え直すことから始める。そのうえで関係者との交流を再検討し、仕事の意義や実現に向けた計画を検討していこう。

推進するうえで、ジョブ・クラフティングで重要視されている「仕事の意義(捉え方)」や「関係性(職場の人間関係)」、「タスク(仕事の内容)」の視点の理解も必要だ。これらの3つの視点と要素ごとのポイントを理解したうえで、ジョブ・クラフティングを推進し、実際の業務に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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