2022.12.9

メンバーシップ型雇用とは?ジョブ型雇用との違いや、企業と従業員のメリット・デメリットを解説

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メンバーシップ型雇用は日本で広く普及している雇用システムであり、その独自性から日本型雇用とも呼ばれる。新卒者を一括採用し、定期的なジョブローテーションによって総合力の高いジェネラリストを育成するのが特徴だ。

しかし、メンバーシップ型雇用は「時代に合わない」と評されることが多く、ジョブ型雇用やタスク型雇用に移行すべきという意見も目立つようになった。そこでこの記事では、メンバーシップ型雇用にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、他の雇用システムとの違いなどを解説する。

メンバーシップ型雇用とは?

企業が採用する雇用システムにはいくつかの種類があり、メンバーシップ型雇用もその一種である。メンバーシップ型雇用は日本での定着率が高く、現在も多くの企業が取り入れている。

一方で、ジョブ型雇用やタスク型雇用といった新しい雇用システムに注目が集まる中、メンバーシップ型雇用のあり方を問う意見が増えているのも事実だろう。「時代に合わない」とも評されるメンバーシップ型雇用とはどのような雇用システムなのか、他の雇用システムとの相違点は何かを解説する。

メンバーシップ型雇用の特徴

メンバーシップ型雇用とは、新卒一括採用型の雇用システムである。総合職として新卒者を一括採用し、定期的なジョブローテーションを繰り返しながら、幅広い業務をこなせる人材を長期的に育成するのが特徴だ。

戦後の国内企業に広く普及した日本独特のシステムであり、別名「日本型雇用」とも呼ばれる。メンバーシップ型雇用では、採用時に業務内容や勤務地などが限定されない。新卒者は、人柄やポテンシャルを判断材料として採用されたのち、OJTや合同研修などの教育を受ける。その後は、会社の都合や人材計画に合わせて業務内容が決められる。

メンバーシップ型雇用が目指すのは、複数の業務を幅広くこなせるジェネラリストの育成だ。長期雇用を前提としており、将来的な幹部候補として総合力の高い人材を計画的に育成したいという狙いもある。

メンバーシップ型雇用では年功序列の仕組みが根付いており、年齢や勤続年数などの要素が報酬に影響を及ぼす。また、業務に必要なスキルより、組織への帰属意識が重視されるのも特徴である。

ジョブ型雇用との違い

ジョブ型雇用とは、仕事に関する様々な条件を明確に定めた上で雇用契約を結ぶシステムを指す。配置転換や転勤などの可能性があるメンバーシップ型雇用に対し、ジョブ型雇用では採用の段階で業務内容や勤務地、勤務時間などが確定している。

業務内容は職務陳述書(ジョブディスクリプション)によって定められ、従業員は契約の範囲内の仕事のみをこなす。転勤や異動がない代わりに、昇進や降格もないのが基本である。

総合力が問われるメンバーシップ型雇用とは異なり、ジョブ型雇用では専門性を重視されるのが特徴だ。業務内容は専門分野に特化しているケースが多く、ジェネラリストよりもスペシャリストが求められる。

新卒者を一括採用する仕組みではなく、通年採用を基本とするのもメンバーシップ型雇用との相違点だろう。また、集合研修よりも自己研鑽をベースとするなど、教育体制にも違いが見られる。

ジョブ型雇用は、欧米をはじめとする様々な国で採用されているシステムだ。国際競争力の向上や働き方の多様化といった観点から、日本企業でもジョブ型雇用を採用すべきという声が高まっている。

一方で、メンバーシップ型雇用にもメリットがある他、雇用システムの変更には大幅な制度改革が必要となることから、スムーズな移行が難しいのも事実である。

タスク型雇用との違い

タスク型雇用とは、発生した課題の解決を目的として、スポット的に人材を雇用する仕組みを指す。職務毎に人材を抱えるメンバーシップ型雇用やジョブ型雇用とは異なり、課題(タスク)やプロジェクト単位で採用するのが特徴だ。

例えば、新製品の開発プロジェクトの立ち上げにあたり、商品開発の経験者を一時的に雇用するケースが挙げられる。雇用期間はタスク完了までとなるため、場合によっては1日で契約が終了することもある。

タスク型雇用では、専門スキルに特化した人材を一時的に雇用できるため、新たなプロジェクトをスムーズに展開しやすい。優先的に解決すべき課題に対し、スピード感を持って取り組めるのは大きなメリットだろう。

タスク型雇用はすでに欧米で普及しており、その背景としてIT技術の発達が挙げられる。業務のIT化が発展したことにより、仕事をタスクとして細分化できるようになった。その結果、全ての業務を自社で内製するのではなく、一部をタスクとして外注する仕組みが広まったのだ。

タスク型雇用は、ジョブ型雇用に比べて採用面での柔軟性が高いことから、次世代の雇用システムとして注目を浴びている。一方で、求めるスキルが不明瞭だとミスマッチが起こりやすい点や、チームワークの醸成が難しい点には注意が必要だ。

また、一時的な雇用であることから、労働者にとって雇用状態が不安定になりやすい点も懸念される。

関連記事:ジョブ型雇用とは? メリットやデメリット、メンバーシップ型雇用との違いや企業事例を解説!

メンバーシップ型雇用のメリットとは?

日本独自の雇用システムともいわれるメンバーシップ型雇用を採用すると、どのような恩恵を受けられるのだろうか。ここでは企業側と従業員側に分けて、メンバーシップ型雇用のメリットを見ていく。

企業側のメリット

メンバーシップ型雇用を採用する企業側のメリットとして、以下の4つが挙げられる。

・ 柔軟に配置転換できる
・ 長期的かつ計画的な人材育成が可能となる
・ 従業員の帰属意識を高められる
・ 採用コストを削減できる

柔軟に配置転換できる

メンバーシップ型雇用を採用すると、従業員の配置転換をスムーズに行える。企業は従業員を長期間雇用する代わりに、経営方針や人材計画などの様々な事情から、従業員の勤務地や所属部署を柔軟に変更できるのだ。

配置転換の柔軟性は、特に欠員が出た際に大きな効果を発揮する。メンバーシップ型雇用はジェネラリストの育成を目指す仕組みであり、特定の業務に対して人材を採用しているわけではない。ある部署で欠員が出れば、他部署の従業員をすぐに異動させられる。

組織の状況変化に対応しやすく、会社の都合に合わせて人材の配置をコントロールできるのは、大きなメリットといえるだろう。

長期的かつ計画的な人材育成が可能となる

メンバーシップ型雇用のメリットとして、人材を長期的かつ計画的に育成できることが挙げられる。所属部署や職務を定期的に変更し、従業員に様々な業務を経験させられるのは、終身雇用を前提としているメンバーシップ型雇用ならではの利点だ。

長期的な人材育成により、将来の会社を背負う幹部候補として、多様な分野に精通するジェネラリストを計画的に育てられるだろう。

従業員の帰属意識を高められる

メンバーシップ型雇用の特徴である長期雇用には、従業員のエンゲージメント(帰属意識) を高める効果がある。同じ会社で長く働くと、従業員に「自分は会社の一員である」という自覚が芽生え、会社への忠誠心が高まりやすい。

企業と従業員の信頼関係が強まることから、帰属意識の向上は離職率の低下にも大きく貢献する。また、仕事へのモチベーションを維持しやすくなるため、生産性の向上やチームワークの醸成にもつながるだろう。

採用コストを削減できる

メンバーシップ型雇用を導入すると、採用コストの削減効果が期待できる。メンバーシップ型雇用は新卒一括採用が基本であり、短期間で多くの人材をまとめて採用するのが特徴だ。

一方で、ジョブ型雇用などに用いられる通年採用は、求人広告の掲載や説明会の開催を定期的に行う必要がある。両者を比較すると、短期集中で採用を行う新卒一括採用のほうがコストを抑えやすい。

また、卒業を控える学生をターゲットにすることで、採用コストを抑えながら若くて優秀な人材を確保できるのもメリットである。

従業員側のメリット

ここからは、従業員にとってメンバーシップ型雇用にはどのようなメリットがあるのかを見ていこう。

・ 解雇を心配せずに安心して働ける
・ 人材を育成する環境が整備されている

解雇を心配せずに安心して働ける

メンバーシップ型雇用の従業員側のメリットとして、雇用の安定性が挙げられる。メンバーシップ型雇用は終身雇用と年功序列を前提とした仕組みであり、多くの企業が労働組合を保有していることから、不当に解雇される心配が少ない。

従業員は突然解雇されるといった不安を抱えることなく、安定性の高い職場で長く働けるだろう。

人材を育成する環境が整備されている

メンバーシップ型雇用を導入する企業では、人材育成の場が整備されているケースが多い。なぜなら、優秀な人材や将来の幹部候補を長期的な視点で育成することは、企業の継続的な成長に欠かせないステップであるからだ。

人材育成の環境が整っている場合、従業員にとってはキャリアアップを実現しやすいというメリットがある。企業が実施する研修などを通して、従業員はさまざまな知識やスキルを習得でき、自己成長につなげられるだろう。

関連記事:ジョブ型雇用はアフターコロナでメンバーシップ型雇用にかわるモデルになるのか

メンバーシップ型雇用のデメリットとは?

メンバーシップ型雇用にはさまざまなメリットがあるが、批判的に評されることが多いのも事実である。ここからは、メンバーシップ型雇用のデメリットについて見ていこう。

企業側のデメリット

メンバーシップ型雇用を採用する場合、企業は以下のデメリットに注意が必要だ。

・ 専門スキルを持つ人材が育ちにくい
・ テレワークの導入が難しい
・ 人件費がかさみやすい

専門スキルを持つ人材が育ちにくい

総合力の高いジェネラリストを育成できる一方で、メンバーシップ型雇用では専門スキルに特化したスペシャリストが育ちにくい。業務に必要な知識を持つ従業員がいない場合は、部分的にジョブ型雇用を導入してスペシャリストを確保する必要があるだろう。

テレワークの導入が難しい

メンバーシップ型雇用のデメリットとして、テレワークとの相性の悪さが挙げられる。メンバーシップ型雇用では、仕事の範囲が明確に決まっておらず、密にコミュニケーションを取りながら業務を進めることも珍しくない。

その点、テレワークではコミュニケーションが画面越しとなるため、対面のようなスムーズなやり取りが難しい。また、在宅では仕事の進捗などが見えにくいことも、メンバーシップ型雇用を採用する企業でテレワークを導入しにくい要因と考えられる。

人件費がかさみやすい

メンバーシップ型雇用の報酬制度は、年功序列制が一般的だ。能力の有無ではなく、年齢や勤続年数によって給与が決まるため、従業員が高齢になるほど人件費がかさみやすい。

また、会社に対する貢献度が低い従業員の給与が高額になることも考えられる。人件費の適正化を図るためには、従業員の特性やスキルを考慮した上で、成果を出せそうな職務を割り当てるなどの対策が必要だろう。

従業員側のデメリット

メンバーシップ型雇用がもたらす従業員側のデメリットとして、以下の2つが挙げられる。

・ 働き方の条件が会社都合で変更される
・ モチベーションを維持しにくい

働き方の条件が会社都合で変更される

メンバーシップ型雇用では、業務内容や勤務地などの条件が限定されていない。会社都合で異動や転勤などが決まるため、従業員は自身の希望通りの仕事ができないこともある。また、配置転換の際に生活環境や労働環境が変化することで、仕事へのストレスを感じる人も少なくないだろう。

モチベーションを維持しにくい

メンバーシップ型雇用では年齢や勤続年数によって報酬が決まるため、若手の人材が評価されにくい仕組みとなっている。仕事で大きな成果を挙げても、若さが理由で給与が上がらなければ、モチベーションを維持するのは難しいだろう。

また、若手が良いポジションに就きにくいことも、会社への不満がたまる原因となり得る。

関連記事:メンバーシップ型雇用は薄れゆく?ジョブ型雇用への転換で企業が求められることとは

まとめ

メンバーシップ型雇用とは、新卒者を総合職として一括採用し、様々な業務を経験させて総合力の高い人材を育成する雇用システムだ。戦後に普及した日本独自の仕組みであり、現在も多くの企業が採用している。

主なメリットには、配置転換の柔軟性や帰属意識の向上などが挙げられる。一方で、専門知識に特化した人材が育ちにくい点や、年功序列による弊害が起こりやすい点などには注意が必要だ。

メンバーシップ型雇用は「時代に即さない」と批判を浴びることもある。時代の変化に適応するためには、メンバーシップ型雇用のメリットを活かしつつ、不足する部分をジョブ型雇用やタスク型雇用で補うなどの対策を講じるべきであろう。

各雇用システムの特徴を理解した上で、自社に合う仕組み作りを検討してみてはいかがだろうか。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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