2020.8.3

リファラル採用のメリットとデメリットとは?日本企業の今後の動きについて

読了まで約 6

・中途採用において約6割の企業が採用したことあるリファラル採用。
・リファラル採用と縁故採用との違いとは?
・採用市場に出ていない優秀な人材も獲得できるなど数多いリファラル採用のメリット。
・リファラル採用のデメリットと注意すべきポイントとは?
・リファラル採用を効果的に活用できる企業の特長とは?
・いきなりリファラル採用を導入してもうまくいかない企業もある。

リファラル採用とは? 縁故採用との違い

最近、採用活動や転職市場で耳にする機会が増えた「リファラル採用」。

リファラル(referral)は、「紹介・推薦」の意味であり、リファラル採用とは、社員による採用候補者の紹介・推薦ということになる。欧米では広く行われる手法であり、近年は日本企業でも導入が進んでいる。

リファラル採用は、自社の業務内容や社風を良く知る社員が、人柄や能力を良く知る知人を紹介するものであるため、マッチング精度が高くなり、定着率も高くなる傾向にある。

マイナビが2021年に1,333社を対象に行った「中途採用状況調査(2021年版)」によると、リファラル採用の導入企業は2020年実績で56.1%。コロナ禍による採用抑制の影響で導入企業は前年比6.8ポイント減少したものの、上場企業の導入率は77.2%と高く、主要な採用チャネルの一つとして定着してきているといえる。
参照:「中途採用状況調査(2021年版)」を発表(株式会社マイナビ)

最近ではトヨタ自動車がキャリア採用において、全面的にリファラル採用を取り入れたことがニュースになった。
同社のキャリア採用情報サイトにはリファラル採用の項目があり、

・応募者は同社にいる知人や友人を通じてリファラル採用制度を利用できること。

・「転職を検討している」「より活躍できるフィールドがあれば転職を検討したい」という求職者は同社社員を通じて、現在募集している求人や、社風などの企業情報を確認できること。

など、リファラル採用の概要が提示されている。

よく、縁故採用と混同されがちなリファラル採用だが、トヨタ自動車の当該ページを読むと、リファラル採用の特徴がよく現れている。
そこにはさらにこうある。

・応募に関しては自身の意思で行うこと。
・応募後の選考プロセスは通常のキャリア採用と同様であること。
・紹介者である社員が、選考プロセスに関与することはないこと。

つまり、リファラル採用は、会社の風土に合うのか、必要なスキルを持っているかなどの通常の選考過程を経て、人材を採用する制度であり、その選考過程に縁者である社員が関与することはない。

これに対して血縁などを通じて、役員や社員が自分に縁のある人物を推薦して入社させる縁故採用では、本人の適性やスキルに関わらず採用されることが多く、紹介という点では共通するものの、この二つは大きく異なる性質であることがわかる。

もちろん、トヨタ自動車はひとつの例であって、紹介者から候補者にアプローチしたり、紹介者が選考にある程度関わったり、リファラル採用からの応募者にはいくつかの選考過程を省いたりする企業もあるだろう。しかしいずれの場合も、会社と応募者のマッチングよりも、コネクションを持つ人物や企業との関係の強さが優先される縁故採用とは、性質が大きく異なるのである。

関連記事:採用マーケティングにおける採用手法の選び方。ダイレクトソーシングやリファラル採用の効果とは

リファラル採用のメリットとデメリット 導入のポイント

リファラル採用には、企業にとっては、既に自社で活躍している社員の紹介・推薦なので、ミスマッチが少ないとされ、内定承諾率が高いとする見方や、離職率が低い傾向にあるといったメリットがある。他に採用サイトへの掲載費用や人材会社に支払う紹介料が必要ないため採用コストを削減することができる上、採用市場に出ていない優秀な人材も獲得できるといったメリットもある。

代表的なメリットを少し詳しく見てみよう。

1. ミスマッチが少なく、内定承諾率が高い

リファラル採用では、多くの場合、まず候補者のことをよく知った紹介者が、企業が求める人材像と合致しているか、相応なスキルがあるどうかを判断してから話を持っていくことになる。自社にそぐわないと思われる人物にはそもそもアプローチをしないわけで、この段階である程度のマッチングが図られるのだ。 そして、次に紹介者は自社の企業風土や仕事の特長、やってほしい仕事の内容などについて詳しい情報を提示する。この際に知人同士で、正直に、率直に情報を交わし合って理解を深めることができるため、通常の選考では起こりがちな企業と候補者の間の誤解によるミスマッチが生まれにくくなるというメリットがある。 また、紹介者を通じて企業の魅力や仕事のやりがいなどが的確に伝えられるため、エンゲージメントが高まり、内定承諾率が向上することもメリットだ。

2. 早くから活躍しやすく、離職率も低下

リファラル採用で入社した社員は、入社までに紹介者を通して会社と仕事への理解を深めているため、仕事内容や社風に対するギャップを感じにくい状態にあり、紹介者という仲間がいるため早く職場に馴染みやすくパフォーマンス視点でも早い段階で活躍が期待できる。

またリファラル採用では、最初から求めるスキルに合った人材を候補に選ぶよう決めておけば、即戦力として早い段階からの活躍も期待できる。

リファラル採用を通じて入社前から会社へのエンゲージメントを高く持つことができるため、離職率の低下にもつながり、その後長く職場に定着して貢献し続ける人材へと成長する可能性も高まる。

3. 採用市場に出ていない優秀な人材が獲得できる

リファラル採用を活用すれば、採用市場に出ていない優秀な人材を発掘することが可能だ。転職理由をヒアリングすると、勤めていた会社に不満がなく、転職の意思もなかった優秀な人材が、知人の会社の事業内容や社風を聞いて興味を持ち、そこから初めて転職を考え始めたというケースも実は多いのだ。

また、「いい話があれば」「いつかは」という漠然とした転職希望はあるものの、具体的な行動を取っていない人材も多い。このような潜在的転職希望者は、転職エージェントへの相談など積極的な活動を行っていないため、採用側が採用市場から見つけ出すことは困難だ。

リファラル採用では、こうした転職意思のなかった人材や潜在的な転職希望者にもいち早くアプローチすることができるため、優秀な人材を獲得できる可能性が高まる。

4. 求職者は企業に対する判断ミスを回避できる

求職者側も、知人である紹介者を通じてその会社の雰囲気やカルチャーがよくわかるというメリットがある。 人事担当者の話や採用サイトではわからない「口コミ」で事前にリアルな情報が入手できるため、転職・入社時の判断ミスを回避できるのだ。

このように企業側にも求職者側にもメリットの多いリファラル採用だが、まったくデメリットがないわけではない。場合によっては組織に悪影響を与えることにもなるので、以下にあげる代表的なデメリットと注意すべきポイントを押さえておきたい。

1. 紹介者と対象者の人間関係が悪化すれば離職につながりかねない

友人や知人同士というつながりで採用するため、採用後に紹介者とリファラル採用によって入社した社員の人間関係が悪化してしまったら、会社での居心地が悪くなり生産性が下がる、どちらか、あるいは両方が離職する可能性が出てくる。

2. 偏った人材を集めがち

仕事以外でも関わりのある友人や知人を紹介するリファラル採用では、社員が同じタイプの人材を紹介し続けるというケースは多い。

同じ趣味の仲間や同じ大学、サークル出身者という偏りもあれば、企業のビジョンに共感する人材や、社風に合った人材を採用し続けて、同じタイプの人材ばかりを集めてしまうという偏りもある。

リファラル採用で、新しく多彩な人材を呼び込んで組織を活性化したいという場合は、どんなタイプを求めているのかを明確にし、同じタイプの人材ばかりにならないよう、慎重に選考を進める必要がある。

リファラル採用で成功する企業とうまくいかない企業

リファラル採用を行う目的は、採用活動を人材紹介会社や求人サイトといった既存のチャネルに頼ることなく、企業と社員もしくは社員と社員とのつながりを利用して、質の高い人材の確保、マッチングの精度向上を実現することにある。

採用コストを抑えて優秀な人材を獲得したい企業、離職率が高く従業員エンゲージメントを向上させたい企業において、リファラル採用を活用することは、特に高い効果が見込まれる。リファラル採用を成功させた2つの企業の例を紹介しよう。

博報堂DYグループ(株式会社博報堂/株式会社博報堂DYメディアパートナーズ/デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社)は、リファラル採用を導入し、自社の採用戦略に変革を起こした会社を表彰する「Japan Referral Recruiting Award 2022」大賞を受賞した。

同グループでは、特に獲得が困難とされるDX領域での採用数の確保が課題だった。DX人材の獲得市場はレッドオーシャンともいわれるほど困難さを増しており、安定的にDX人材を採用するために、業務や社風を熟知する社員に人材を紹介してもらうリファラル採用をグループ横断で導入。

同グループは、リファラル採用の応募者に対して最初にカジュアル面談を実施し、相互理解を高めることで、ミスマッチの解消や適切なポジションへの応募につなげるなどの工夫を行った。その結果、リファラル採用を導入してから9か月で25名を採用し、優秀な人材の獲得と採用コスト削減を両立している。

一方、すかいらーくでは、店舗で働くクルーの採用難に加え離職率の高さが課題だったことから、リファラル採用としての「友人紹介制度」を導入した。導入当初は社員の反応は鈍かったが、社長自身による社内への情報発信や、リファラル採用での紹介率が高い店舗の表彰など、地道な取り組みを継続し、制度の定着を図った。

また、紹介した人も、紹介された人も、グループ内で利用できる5,000円の食事券を進呈するなど制度内容も充実させ、現在ではクルーの5人に1人が友人紹介制度を通じて採用されている。

友人の紹介を通じて採用された社員は定着率が高く、居心地の良さを実感した社員がさらに新しい友人を紹介するといった好循環も生まれている。

反対に次のような企業は、いきなりリファラル採用を導入してもうまくいかない可能性が高い。

・社員のエンゲージメントが低く、友人を紹介したいと思えない
・社員が日々の業務に忙しく、リファラル活動する時間がない
・自社について語ることがほとんどない

このような状況にある企業は、リファラル採用を進める前に、会社のミッションの共有や従業員満足度の向上に取り組む必要がある。

リファラル採用を展開しようにも、会社のミッションや目指す価値観といった「柱」が明確になっていないと、なにも発信できないからだ

また、リファラル採用はこうした取り組みをしっかりと行ったとしても、社員に制度が浸透し、社員自らが活動を開始するまでは一定の時間を要することも知っておきたい。

事例に挙げた2社のように、これからのリファラル採用は、単なる採用活動の施策というよりも、人材に対する長期的な投資という観点から、腰を据えて取り組む企業が主流となっていくに違いない。

関連記事:リファラル採用が上手くいく会社といかない会社の違い

まとめ

・その企業と人材の両方のことをよく知った社員からの推薦であるため、求める人物像や適性に合った人材を集めやすいという理由で、リファラル採用は、日本企業でも導入が広がり始めている。

・リファラル採用は、会社の風土に合うのか、必要なスキルを持っているかなどの通常の選考過程を経て、人材を採用する制度。縁故採用は、血縁などを通じて、役員や社員が自分に縁のある人物を推薦して入社させる制度で、二つは大きく異なる性質である。

・リファラル採用のメリットは、ミスマッチが少なく、内定承諾率が高い、離職率が低いこと。採用サイトへの掲載費用や人材会社に支払う紹介料が必要ないため採用コストを削減できること、採用市場に出ていない優秀な人材も獲得できること。

・リファラル採用のデメリットは、紹介者と対象者の人間関係が悪化すれば離職につながりかねないこと。偏った人材を集めがちなこと。

・いきなりリファラル採用を導入してもうまくいかない可能性が高い企業は、リファラル採用を進める前に、会社のミッションの共有や従業員満足度の向上に取り組む必要がある。

・これからのリファラル採用は、単なる採用活動の施策というよりも、人材に対する長期的な投資という観点から、腰を据えて取り組んだ企業が成功する。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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