2022.12.5

タウンホールミーティングとは?目的や効果と日立、富士通など企業事例

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近年、日本でも「タウンホールミーティング」によって、企業の経営陣と社員との関わりを増やす取り組みを行う企業が増加傾向にある。

今回は、タウンホールミーティングの定義と共に、目的や重視される背景を紹介する。実際の取り組み事例も解説するため、併せてチェックしよう。

タウンホールミーティングとは?由来と意味

「タウンホールミーティング」とは、企業の経営陣と社員が様々なテーマについて、直接対話できる集会のことを指す。経営陣から直接展望や経営戦略を聞いたり、社員から率直な意見をもらったりする場である。

タウンホールミーティングは、アメリカで以前から広く実施されている方法だ。現場との距離感や経営のスピード感を重視していたため、取り組みが浸透していたようである。

ここでは、タウンホールミーティングとはどういったものなのか。また、由来とされる「タウンミーティング」と異なる点があるのかどうか、ポイント毎にチェックしていこう。

タウンホールミーティングとは

先述の通り、タウンホールミーティングとは、経営陣と社員が直接対話する集会を指す言葉で、「対話集会」とも呼ばれている。一般的に、組織が大きくなるほどに経営陣と現場の距離は遠くなってしまうものだ。

しかし、経営陣と現場の社員との距離感が遠い状態でいると、企業運営がうまくいかなくなる場合があり得る。例えば、トップによる経営方針の変更の発表があった場合に意思疎通できていないと、社員が反発する場合があるだろう。

経営層が現場の声を聞いていないことで、改善点の特定が困難になる場合もあり得る。そのため現場の声を経営に活かし、経営陣の思いも現場に直接届けるタウンホールミーティングが注目されているのだ。

タウンホールミーティングの開催形式は、企業によって様々である。よくある開催形式の例は、以下の通りだ。

・ 開催時間:30分~1時間程
・ 頻度:月1回や四半期に1回
・ 参加人数:社長などのトップ経営陣と社員全員、役員数名と各拠点のメンバーなど

従来は参加者を一堂に集めて行っていたものの、場所の制限や人数管理、シフト勤務者が集まれないことなどの問題点があった。近年は感染症対策もあり、各拠点をオンラインでつないだ上で、Web上でのタウンホールミーティングの実施が増えている。

タウンミーティングとは違う?

タウンホールミーティングと似た言葉に、タウンミーティングがある。タウンミーティングとは、国や自治体の行政、政治家、自治会の会長などが、住民と直接意見交換する対話型集会のことだ。集会で話し合う内容は、例えばゴミの出し方、公共の施設や設備の運営方法といった地域生活に関わるものである。

タウンホールミーティングも、タウンミーティングと構造的には同様の対話型集会だ。タウンミーティングとの違いは、どのような人と対話するかである。タウンホールミーティングとは民間企業の経営陣と従業員との間で行われる対話集会のことで、タウンミーティングとは区別して呼ばれている。

関連記事:1on1ミーティングとは?テレワーク・在宅勤務だからこその1on1の必要性とは

タウンホールミーティングの目的や重要性

タウンホールミーティングを行う目的や重要視されている理由は、以下の通りだ。

・ 現場の声を経営に活かす
・ MVVを浸透させる
エンゲージメントの向上につながる

先述の通り、企業が大きくなると経営陣と従業員の距離が遠くなってしまう。お互いの声が届きにくくなると様々な弊害があるため、直接的な対話の重要性が高まっているのだ。

社内コミュニケーションの方法には、タウンホールミーティング以外にも社内チャットやイントラネットなどがある。中でもタウンホールミーティングは、互いの温度が感じられるため、心的距離を近付けられると考えられている。

近年の日本では、市場のグローバル化やテクノロジーの進化などに伴い、社会や市場の激しい変化が起こっている。以前からの経営手法や事業が突然通用しなくなってしまうこともあり得るため、従来以上に素早い経営判断が求められているのが現状だ。

タウンホールミーティングを行うと、経営陣と従業員が相互理解を深め、重要な決定を一早く全社に浸透させられるようになる。また、現場の声を素早く経営陣に反映できることもあり、重要性が高まっているのだ。

それでは、タウンホールミーティングを行う目的を詳しくチェックしていこう。

現場の声を経営に活かす

タウンホールミーティングを行うと、従業員の上司などのフィルターをなくした状態で従業員の本音を聞ける。そのため、経営陣が現場の声を直接確認し、素早く経営に反映することができるのだ。

例えば、GE(ゼネラルエレクトリック)社のジャック・ウェルチ元会長が開発した「ワークアウト」のメソッドでも、タウンホールミーティングを重要視している。同社では従業員が組織改革案を考案し、直接経営陣にプレゼンすることによって、採用するかどうかを判断する取り組みとして活用しているのだ。

MVVの浸透

MVVの浸透も、タウンホールミーティングの目的の一つである。MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューの頭文字を取ったものだ。それぞれの意味は以下の通りである。

・ ミッション……企業の使命や目的
・ ビジョン……ミッションを実現させた将来像
・ バリュー……企業の価値や行動基準

MVVは、社会的正当性や企業の存在意義を示すために必要だと考えられている。経営陣のメッセージを、直接顔の見える状態で現場に届けて双方向的な対話をすることにより、トップの方針を信頼してもらいやすくなるため、MVVの浸透に効果的だ。

エンゲージメントの向上

タウンホールミーティングの目的には、社員のエンゲージメントの向上もある。直接的な対話により経営陣に対して親しみを持つことで、帰属意識やエンゲージメント、モチベーションの向上につながっていく。

エンゲージメントには、ワークエンゲージメントと従業員エンゲージメントの2つがある。

ワークエンゲージメント

ワークエンゲージメントとは「従業員のメンタル面での健康度を示す概念」のことで、学術的に発展してきた用語だ。

従業員エンゲージメント

従業員エンゲージメントとは企業と従業員の相互信頼を向上させるもので、企業側から見た場合には従業員の会社に対する信頼感や帰属意識の強さを表す。

タウンホールミーティングの重要性が増した理由には、終身雇用の崩壊と転職に対する意識の変化、労働観の多様化といった社会の変化も関係している。タウンホールミーティングによって自社に対する共感や信頼を得て、自社で働くことの意義を感じてもらうことで、エンゲージメントの向上につながる。

また、社員の声を聞くことでより多様性のある社風になり、人材の流動化の防止になると考えられるだろう。

関連記事:ワークエンゲージメントとは?企業や従業員にとってのメリットや高めるために必要なこと

タウンホールミーティングの事例

実際にタウンホールミーティングを実施している企業はどのように開催しているのか、事例を確認しておこう。今回紹介するのは、以下の企業の事例である。

・ 株式会社日立製作所
・ 富士通株式会社
・ 第一生命保険株式会社
・ 株式会社三菱UFJ銀行

日本では、この他にも三井物産やNECなどがタウンホールミーティングを実施している。それでは、タウンホールミーティングの事例を詳しくチェックしていこう。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、一人称意識や企業文化の醸成によるマインドセット変革を目的として、経営トップによるタウンホールミーティングを行っている。このようにタウンホールミーティングを効果的に実施することで社員の理解を深め、変革に向けた意識改革の促進につながったのだ。

富士通株式会社

富士通株式会社では、「古くて堅い会社」から「おもしろいことをする会社」へと、企業カルチャーを変えようとしている。タウンホールミーティングによって、社長がどのようなことを考えているかを社員に示すなど、トップと従業員との意識の隔たりをなくそうと取り組んでいる。

富士通株式会社のタウンホールミーティングでは、チャット上の質問や気になったキーワードなどを、うまく使いながら実施するという点が特徴だ。

第一生命保険株式会社

第一生命保険株式会社では、コロナ禍の影響によってリモートワークが続いたことで、社内コミュニケーションが減ってしまった。その課題を解決するため、またリモートを最大限に活用し、経営層と社員とが意見を交換し合える機会を作り、さらなる一体感を醸成することなどを目的に、タウンホールミーティングを開催した。

60,000人ほどの社員全員を対象に実施したため、開催は56回に分けて2ヶ月半ほどかかったという大規模なタウンホールミーティングである。忌憚のない質問や意見を引き出すことを目的に、社員からの発言は匿名性がある状態で集めているのが特徴だ。これらの工夫によって建設的な意見を集められ、有意義なタウンホールミーティングとなった。

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三菱UFJ銀行では、社員と経営との距離を近付けて共感を高め、働きがいを一層実感できるようにと、タウンホールミーティングを開催している。同社では、全従業員約30,000人を対象としたオンラインタウンホールミーティングと、グループの女性社員と社長とがオンライン対談した女性社員向けタウンホールミーティングを実施したのが特徴だ。

例えば、直近の全従業員タウンホールミーティングでは、Web会議システムを使って従業員に直接「今、経営が考えていること」を伝えた。さらに、従業員と経営陣が日々の課題認識や考えを共有できた。

関連記事:チームビルディングとは?その目的と効果、企業事例5選を解説

まとめ

タウンホールミーティングとは、経営陣と社員が直接対話する集会のことである。実施する目的は、以下の通りだ。

・ 現場の声を経営に活かす
・ MVVを浸透させる
・ エンゲージメントの向上につながる

企業が大きくなると、経営陣と従業員の距離が遠くなってしまいやすい。しかし、お互いの声が届きにくくなると様々な弊害がある。そのため、直接的な対話の重要性が高まったことで、タウンホールミーティングが注目されている。

日本でも、実際にタウンホールミーティングを実施している企業は多い。実施する目的やタウンホールミーティングの事例などをしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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