2024.2.5

リワークプログラム(職場復帰支援プログラム)とは?費用や内容、公務員は受けられるのかなどについて解説

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リワークプログラムとは、うつ病や精神的な不調によって休職している人が、復職を目指すためのサポート制度だ。制度の仕組みが良く分からない方や、復職に不安を覚える方は少なくないだろう。実施主体ごとにプログラムの特色があるため、自分に合った先のプログラムを利用すれば復職への不安も緩和しやすい。

今回はリワークプログラムに注目し、プログラムの仕組みや実施主体ごとの種類、費用のほか負担軽減に役立つ制度に関しても解説する。

リワークプログラムとは?

リワークは「Return to Work」の略で、精神的な不調によって休職している方が復職を目指すプログラムと位置づけられる。「再び働く」「仕事に戻る」という点を重視したプログラムで、毎日規則正しい時間に出勤することを想定している。

プログラムは実際の業務内容に近いような軽作業やオフィスワーク、再度精神的に体調を崩さないような疾病教育、認知行動療法などの心理療法が中心となる。対人コミュニケーションやロールプレイを通じ、復職に向けた不安を軽減したり、健康的なストレスへの対処方法を身につけられたりするプログラムとなる。なお、プログラムの呼び方は「復職支援プログラム」「職場復帰支援プログラム」と呼ばれる場合もある。

リワークプログラムの実施主体には種類があり、それぞれ費用は異なり、プログラム内容にも特徴がある。さらに、いつまでサポートを行うかという点もそれぞれ違うため、利用する際は候補となる実施主体のプログラムの詳細を比較、検討するとよいだろう。厚生労働省は職場復帰や復職に向けた考えに「職場復帰支援における専門的な助言や指導を必要とする場合には、それぞれの役割に応じた事業場外資源を活用することが望ましい」としている。

ここで言う「事業場外支援」には、リワークプログラム実施主体である医療機関や就労移行支援事業所、職場復帰支援サービスの一環として地域障害者職業センターが該当するのだ。また、企業の担当者向けのリワークプログラムを含む復職支援策に関して「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」で具体的な支援内容を実際の事例と共に紹介している。復職には本人の意志だけでなく企業側の配慮も不可欠だ。企業の人事担当者などはこちらの内容を鑑みた環境作りにも取り組まなければならない。

リワークプログラムの種類

リワークプログラムの実施主体にも種類があり、それぞれ独自のプログラム内容を用意している。ここでは実施主体ごとの主な特徴をまとめていく。

医療機関でのリワーク(医療リワーク)

医療機関でのリワークプログラムは、精神科リハビリテーションの一環として精神科や心療内科のクリニックで行われるプログラムだ。精神科での治療は薬物療法やカウンセリングが主軸となるが、休職によって低下した自信や身体の機能回復には、働くことに重点を置いたリハビリテーションも有効とされる。リワークプログラムと共に「精神科デイケア」が行われている医療機関もあるが、精神科デイケアとは「働くことに重点を置いた内容」という点で異なる位置づけとなる。

医療機関でのリワークプログラムは休職中で復職希望者の方が対象で、失業中の方や主治医に症状が重いと診断される方は受けられない。医療機関のリワークには、専門医を含む専門スタッフがプログラムを行っているというメリットが特徴的だ。スタッフには保健師や看護師、臨床心理士、精神保健福祉士や産業カウンセラーも加わるところもあり、一定の精神科臨床経験や社会人経験を積んだ方によるプログラムを受けることになる。プログラムを受ける期間も融通が利きやすく、2ヶ月~半年ほどの期間となるのが一般的だ。プログラムの内容自体は病状の回復を重視する傾向にあり、認知行動療法を受けられるのも特徴だ。

なお、医療機関のリワークプログラムは、その医療機関に主治医を持つ方が対象となる。実施している医療機関は限られるため、地域や通院先によっては転院しなければならないケースも発生する点に注意が必要だ。医療機関のホームページを見ると、その病院で行っているリワークプログラムに関する情報が掲載されている場合もあるため、こちらも参考にするとよいだろう。

地域障害者職業センターでのリワーク(職リハリワーク)

「地域障害者職業センター」は各都道府県に1~2ヶ所あり、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する公的機関として位置づけられる。障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供する施設で、精神福祉保健手帳や身体障害者手帳を持つ方、障害があると認められる方などが利用対象だ。本人だけでなく障害者雇用に関わる事業主や会社の人事担当者、医療や福祉分野で障害のある方の支援者もサービスの提供対象となる。

障害者職業センターでは「職リハリワーク」と呼ばれるリワークプログラムを実施しており、公務員以外は受けられるが無料で人気があり、利用までに数か月待ちというケースも少なくない。概ね12~16週間でプログラムを受ける期間が決定するが、受けるまでの待機時間や休職期間の残数によっては受けにくい状況も想定されるのを覚えておこう。障害者職業センターのプログラムはセンターの産業カウンセラーによって休職者本人と勤め先の雇用主、主治医の3者合意の上で行われ、職場への適応や雇用主への支援を重視しているのが特徴だ。また、心身の治療的側面の狙いは持たない点が、医療機関のプログラム内容と異なる。

企業内でのリワーク(職場リワーク)

実施しているのが一部の大企業に限られるが、休職している方が所属する企業が独自にリワークプログラムを導入している企業も存在する。企業内リワークの場合、料金は傷病手当金から充てられるため、プログラムを受ける方自身の支払いは不要となるのが特徴だ。費用は原則無料だが、一部の企業では料金が発生するケースもある。プログラムを検討している場合、まずは自社にリワーク制度があるか確認しよう。なお、傷病手当金の支給期間や対象に関する詳細は「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」を参考にされたい。

企業内リワークはEAPと呼ばれる復職支援プログラムに沿ってプログラムが実施される。EAPは厚生労働省が企業のメンタルヘルス対策として定める「事業場外資源によるケア」に該当するプログラムだ。また、内容はメンタルヘルスケアに関する専門家を招致したり、専門機関の行う支援サービスを利用したりするプログラムとなる。復職に向ける本人の意志だけでなく、安定して業務を行える程度に回復したか見極める狙いもある。なお、事業主に求められるメンタルヘルス対策に関しては「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも具体的な支援内容がまとめられている。企業の担当者の方はぜひ、こちらの内容も参考にするとよいだろう。

就労移行支援事業所でのリワーク(福祉リワーク)

就労移行支援事業所とは「一般就労等への移行に向けて、事業所内や企業における作業や実習、適正に合った職場探し、就労後の職場定着のための支援」を行う施設だ。標準利用期間は2年の定めがあり、障害者総合支援法による障害福祉サービスの1つと位置付けられる。リワークが復職だけでなく転職支援にも力を入れている点が、ほかの実施主体との主な違いだ。プログラムでは休職原因の分析や再発防止策の検討から安定した就労を目標としたり、セルフケアに関する実践的なスキルを身につけたりして、復職後も安定した生活が行える状態を目指す。なお、事業所によっては休職中の方を対象としない場合もあるので確認が必要となる。

企業内リワークは精神障害を有する方を対象とするが、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターのリワークは知的障害や身体障害といった障害全般を有する方も対象だ。対象が異なるため、ほかの実施主体とは利用する方の層が若干異なるのも特徴だろう。また、就労移行支援事業所を利用することになるため、どこかの医療機関を受診し精神障害を有すると診断されていることも条件だ。なお、利用料は前年度収入に応じて以下のように決定される。

区分 世帯の収入状況 負担上限額(月額)
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯  
一般1 市町村民税非課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
一般2 上記以外
20歳以上の入所施設利用者
グループホーム利用者
37,200円

地域差もあるが、各地に就労移行支援事業所は一定数存在する。事業所ごとにプログラムの特色や食事などのサポート状況が分かれている。検討する場合いくつかの事業所を見学に行き、担当者との相性や実際の事業所の雰囲気を確かめるとよいだろう。

リワークプログラムで行われる主な内容

リワークプログラムの実施主体は大きく4つに分類されるが、職場復帰(復職)を目指すという目的は共通だ。実施主体別でみると、リワークプログラムの主な内容は以下のようにまとめられる。

  主なプログラム内容
医療機関 オフィスワーク(個人作業)
グループワーク
ミーティング
内省(休職原因の振り返りなど)
心理教育
精神療法(認知行動療法・SST・アサーションなど)
リラクセーション(軽スポーツや筋弛緩法など)
作業療法
芸術療法など
※医療機関のプログラムは5つ(参考)に分類される
障害者職業センター 読書課題(職場復帰に必要なセルフケア、疾病管理方法関連)
事務作業(データ入力や伝票作業、作業日報集計、データベース検索作業)
軽作業(商品ピッキングなど)
協同作業(協同研究やプレゼンテーション)
講座(認知行動療法、アンガーコントロール、ライフキャリア関連など)
企業 EAPカウンセリング(対面、メール、電話、オンラインなど)
セルフケア研修(ヨガ、マインドフルネス、ストレス対処のワークショップ)
新入社員向けのストレスマネジメント教育
ストレスに対するレジリエンス教育
休職者への復帰サポート
管理職へのコンサルティング
障害者雇用者向け定着支援サービス(ジョブコーチ制度)
※原則EAP(従業員支援プログラム)に基づき決定
就労移行支援事業所 セルフケア 
ストレスコーピング
リフレーミング(物事の捉え方の幅を広げる)
アンガーマネジメント
アサーティブコミュニケーション
キャリアプランニング
目標設定、問題解決
コントロールフォーカス(理論的な問題分類と対応力)
傾聴
PC訓練
各種グループワーク
体力トレーニング

あくまでもプログラムの一例を紹介したが、リワークプログラムには選ぶポイントがある。選ぶ際は「自宅からの通いやすさ」「雰囲気が自分に合うか」「希望するプログラムを受けられるか」「職場定着支援やフォローアップ体制」の4点は慎重に見極めるのも必要だ。プログラムに通う距離が遠い場合は交通費や移動時間の負担も高まるため、どの程度の時間や交通費が発生するか確認しよう。また、地域やタイミングによっては、候補となる先の数や受入れ状況が異なるのも予想される。障害者職業センターの場合はどこも人気で、受講までに数ヶ月待たなければならない場合もあるのを覚えておこう。

リワークプログラムは公務員も受けられる?

リワークプログラムは、実施主体ごとに対象者が定められている点も注意したい。精神的な不調により復職を目指す方といっても、様々な身分の方が存在する。リワークプログラムの実施主体である障害者職業センターは公務員(国や地方公共団体、特定独立行政法人に勤務する方)を利用対象外とするので気をつけなければならない。そのため、公務員の場合、医療機関か福祉サービスの一環として就労移行支援事業所のリワークプログラムが候補となり、支払う費用はほかの方と同じ基準で決定する。また、リワークプログラムは実施主体ごとに対象者や必要なものが以下のように異なる。

  対象者 必要なもの
医療機関 医療機関に所属する主治医を持つ休職者(失業している方を除く) 診断書
企業内リワーク 休職者 企業がリワーク制度を導入していること
地域障害者職業センター 休職者 本人と事業主、主治医の合意
公務員は対象外のため注意
就労移行支援事業所 休職者
就職、転職希望者
診断書

リワークプログラムにかかる費用

リワークプログラムを受けられる先には種類があるが、どこのプログラムを受けるかで費用は異なる。休職中は、傷病手当(支給期間は最大1年6ヶ月)が生活費となるのが原則だ。傷病手当が受けられる期間内にプログラムを終了するのが理想的だが、休職中はなるべく出費を抑えたいところだろう。参考までに、費用の目安は以下にまとめる。

  費用
医療機関
(精神科デイケア)
1日あたり2,000~3,000円(3割負担の場合)
障害者職業センター 無料(公務員は利用不可)
企業内リワーク 無料(一部企業を除く)
就労移行支援事業所 生活保護世帯、市町村民税非課税世帯:0円
市町村民税課税世帯:9,300円
20歳以上の入所施設利用者、グループホーム利用者:37,200円
記以外:37,200円

リワークプログラムに月20日通うと考えた場合、医療機関の場合は3割負担で60,000円程度のほかに交通費が発生する。ただし、自立支援医療制度を申請していれば原則1割負担となるため、主治医に相談するとよいだろう。同時に、毎月の自己負担上限額(0~20,000円)も世帯年収や病状によって設定される。ただし、手続きには所定の診断書などの申請書類も必要で時間がかかるケースもある。自立支援医療制度は精神科や心療内科での病院代や薬代も1割に軽減されるため(一部対象外あり)、継続的に通院が必要な状況ならば早めに検討したい制度といえる。

また、自治体によって差があるが、医療機関ならばプログラムに参加しに通う交通費、就労移行支援事業所の場合は交通費に加え食事代の補助が受けられる可能性もある。リワークプログラムを受ける場合は、このような負担軽減制度を確認するとよいだろう。参考までに自立支援医療制度における所得区分ごとの上限額は、以下の通り規定される。所得区分に応じて毎月の負担上限額が決定し、実際に支払う額は1割負担分の費用から最大でも負担上限額内の間となる仕組みだ。

  所得区分 重度かつ継続に該当する場合の負担上限額(月額)
一定所得以上 市町村民税235,000円以上 20,000円
中間所得2 市町村民税33,000円以上235,000円未満 10,000円
中間所得1 市町村民税33,000円未満 5,000円
低所得2 市町村民税非課税
(低所得1を除く)
5,000円
低所得1 市町村民税非課税
(本人または障害児保護者年収80万円以下)
2,500円
生活保護 生活保護世帯 0円

まとめ

今回はリワークプログラムについて、実施主体ごとの特徴から利用を検討される方や休職者を抱える企業側に求められる体制作り、本人への配慮内容に関しても解説してきた。リワークプログラムは、精神的な不調によって休職した方の職場復帰や復職を支援する制度となる。精神的な不調は再発するケースも少なくないが、プログラムには再度体調を崩した際に症状がひどくなったり、再度休職しなければならなくなったりするのを防ぐ狙いもある。

どのような方にも精神的な不調によって休職するリスクがあるため、企業側としても従業員が安心して療養に専念し、復職できる環境を整備することが求められる。当事者の方は主治医の意見も参考にリワークプログラムの理解を深め、自らの働き方を見直すきっかけにするのもよいだろう。

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監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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