2023.3.1

メタ認知とは?能力が高い人・低い人の特徴やトレーニング方法をわかりやすく解説

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心理学の世界での専門用語であった「メタ認知」は、最近では経営や人材育成の分野でも重要視されている。そこで、今回はメタ認知の概要や重要性、分類、メリットとデメリットなどを紹介する。

さらに、能力が高い人と低い人の特徴やトレーニング法も解説するため、併せてチェックしよう。

メタ認知とは

そもそもメタ認知とは、自分が認知している物事を客観的に把握し、コントロールすることである。メタ認知能力が高いと、自分自身を客観的に認知できるようになる。

その結果、人との適切なコミュニケーションが取れる、仕事の効率が良くなるなど、ビジネスシーンにも私生活にも役立つ能力だ。

それでは、メタ認知とはどのようなものか、定義や起源を確認していこう。

メタ認知の定義

メタ認知は、アメリカの心理学者であるジョン・H・フラベル氏が定義した概念だ。もともとは心理学の専門用語であったが、脳科学や教育の分野でも使われるようになり、最近では経営や人材育成の分野でも重要視されるようになった。

メタ認知の「メタ」を直訳すると、「高次の」という意味である。メタ認知の直接的な意味は、記憶・思考・学習済みの内容など、自分の認知している内容を高次の視点から認知することだ。

自分が認知することを客観的に認知するためには、認知のきっかけから結果まで、自分自身で把握し自覚する必要がある。メタ認知とは、自分のことを冷静に見られるもう一人の自分がいるような状態で、冷静な自分のほうが自分の言動をコントロールできる能力のことなのだ。

メタ認知の起源

定義をしたのはジョン・H・フラベル氏だが、メタ認知の起源はさらに古いと言われている。そもそもの起源は、古代ギリシアの哲学者であるソクラテスの「無知の知」に始まると言われているのだ。

「無知の知」とは、「自分が何も知らないことを知っている」という知恵のことである。自分が知らないことを知っていることは、つまり自分の認識を正しく客観的に理解できている、メタ認知の状態だと言えるだろう。

また、「メタ認知の研究」としては、内観(introspection)が起源の1つだと言われている。内観は、自己の内面の意識過程を分析・言語化するもので、「なぜその考えになったのか」など、自分のことを内省する方法だ。

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メタ認知の重要性

メタ認知の重要性は、大きく分けると以下の通りである。

<自分の欠点の受け入れ>
メタ認知の能力が低いと、自分の欠点を受け入れられなくなると言われている。自分のことを知りたくないと思ってしまいやすく、アドバイスをもらっても聞き入れられないケースが多くなる。

<周囲との協働>
メタ認知の能力が低いと、思い込みによって周囲の認識とずれた言動となってしまい、自己中心的な人だと判断されてしまうことがある。また、自分のことを理解しないまま、周りの人間が理解してくれないから悪いと思ってしまうことがある。

俯瞰した視点で見られるようになると、周囲がどう感じているか理解でき、組織の中で働きやすくなる。

<問題・課題の設定>
メタ認知能力が低いと、問題となっていること自体が分からず、課題の設定ができなくなってしまう。メタ認知によって問題となる部分が理解でき、対処方法も考えられるようになるため、重要な能力である。

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メタ認知の分類

メタ認知は、「メタ認知的知識」と「メタ認知的技能」の2つに分類されている。メタ認知の能力は、初めから持っているものだけではなく、後から高めることも可能だ。能力を高めたいならば、構成要素を理解しておくと鍛えやすくなるだろう。

それでは、これらの分類について詳しくチェックしていこう。

メタ認知的知識

メタ認知的知識とは、メタ認知のために必要となる、自分自身に関して知っている知識のことである。さらに分けた場合、以下のような要素に分類されるのが一般的だ。

● 人に関わる知識
● 課題に関わる知識
● 方略に関わる知識

これらの要素のうち、人に関わる知識とは、話すのが苦手であることや考えやすい思考のクセなど、自分で把握し理解している人の認知特性である。

また、ずっと単純作業しているとミスが出やすいことなどの課題スキームに関する知識や、課題に対処するにはどうしたほうがいいのかといった解決策の知識も、メタ認知的知識だ。

メタ認知的技能

一方でメタ認知的技能とは、メタ認知的知識を理解した上で、現在の自分をモニタリングし、問題があれば対策を講じる能力のことである。メタ認知的技能の要素は、一般的に以下のように分類される。

● メタ認知的モニタリング
● メタ認知的コントロール

メタ認知的モニタリングとは、メタ認知的知識を基に今の自分の認知活動を客観視することだ。認知活動を監視し、最適な行動かどうか、知識の不足がないかなどを確認する。

また、メタ認知的コントロールは、モニタリングの状況を基に感情のコントロールや改善に向けて行動を変えることなどを指す。

メタ認知能力を高めるメリット・デメリット

メタ認知能力を高めることには、メリットとデメリットがある。ここでは、ビジネスシーンにおけるメリットとデメリットを見ていこう。

メリットは、大きく分けると以下の通りだ。

● 社内外での円滑なやり取りが期待できる
● 変化の激しい時代に適応しやすくなる
● 課題解決力が上がる
● 効率的に業務を遂行できる

一方、デメリットは以下の通りである。

● 相手の気持ちを考慮し過ぎてしまう
● プレッシャーを感じ、自分の力を発揮できない可能性がある
● 思考力を疲弊させてしまう可能性がある

それぞれチェックしていこう。

メタ認知能力を高めるメリット

メタ認知能力を高めるメリットは、「社内外での円滑なやり取りが期待できること」「変化の激しい時代に適応しやすくなること」などがある。また、「課題解決力が上がること」「効率的に業務を遂行できること」もメリットだ。

メタ認知を高めることで、他者と自分の考え方がそれぞれ異なっていても、客観的に捉えられることでより良いコミュニケーションが可能だ。

また、何かあった場合でも気持ちに振り回されずに冷静な判断ができるようになり、仕事がスムーズになるだろう。効率的に業務を進められ、社員自身の働きがいの向上にもつながると考えられる。

メタ認知能力を高めるデメリット

一方、「相手の気持ちを考慮し過ぎてしまうこと」がメタ認知能力を高めるデメリットである。自分の気持ちだけではなく、相手の気持ちまで考えて自分の心が空回りしてしまったり、話す言葉を考えることで返答が遅くなってしまったりすることがあるのだ。

また、「プレッシャーを感じ、自分の力を発揮できない」「思考力を疲弊させてしまう」などの可能性があることも、メタ認知能力を高めるデメリットだと言える。

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メタ認知能力が高い人・低い人の特徴

それでは、メタ認知能力が高い人と低い人の特徴を、それぞれ確認してみよう。

メタ認知能力が高い人の特徴は、以下の通りだ。

● 相手と適切な距離感を保ってコミュニケーションを取れる
● 自分の弱点を理解した上で計画的に仕事を進められる
● 行動の具体的な目的を設定できる

一方、メタ認知能力が低い人の特徴は、以下の通りである。

● 感情に任せた場当たり的な行動をしてしまう
● マイナス思考になりがちだが、自分を改めようとはしない
● 思い込みが激しい
● 自分を過大評価しやすい
● 課題の解決まで時間がかかってしまう

それぞれの特徴を確認していこう。

メタ認知能力が高い人の特徴

メタ認知能力が高い人は、以下のような特徴がある。

● 相手と適切な距離感を保ってコミュニケーションを取れる
● 自分の弱点を理解した上で計画的に仕事を進められる
● 行動の具体的な目的を設定できる

メタ認知能力が高いと、「なんとなく」何かをすることが減り、目標達成などに向けて適切に行動できるようになる。また、自分が何をどのレベルまでできるのかも明確に把握でき、足りない能力の見極めや集団での自分の立ち位置の把握などが上手いといった特徴がある。

メタ認知能力が低い人の特徴

メタ認知能力が低い人の特徴は、以下の通りだ。

● 感情に任せた場当たり的な行動をしてしまう
● マイナス思考になりがちだが、自分を改めようとはしない
● 思い込みが激しい
● 自分を過大評価しやすい
● 課題の解決まで時間がかかってしまう

メタ認知能力が低いと、自分の現状を俯瞰できず、自分のレベルやスキルも把握できない状態となる。自分を客観的に判断できないことで、一方的な言動や感情に任せた行動をとってしまったり、課題の解決まで時間がかかってしまったりすることなどが特徴だ。

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メタ認知能力を高めるトレーニング法

メタ認知能力が高いと、コミュニケーションや課題解決など、様々な面で役に立つ。トレーニングの際は、先述したメタ認知的モニタリングとメタ認知的コントロールの両面からアプローチすると良いだろう。

メタ認知能力を高める具体的なトレーニング法には、以下のようなものがある。

<メタ認知的モニタリング>
● 怒っているときに自分を分析する
● トラブルなどを思い返して状況や理由を分析する
● 日々の感情を言葉にする

<メタ認知的コントロール>
● 自身の感情が動いた要因への対処方法や目標などを考える
● 今までに感情のコントロールが成功した要因や失敗した要因を概念化し、成功パターンを理解する

例えば、話をしていて苛立ったときは、その要因が話の内容か相手の話し方かなどを考えよう。話し方が嫌だった場合には、話す内容のほうに意識を向けるようにすると、感情をコントロールしやすくなるだろう。日記を書く、瞑想をするなどでもメタ認知能力のトレーニングが可能だ。

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まとめ

メタ認知は、自分が認知する物事を客観的に把握し、コントロールすることである。メタ認知能力が高いと自分自身を客観的に認知でき、コミュニケーションが上手く図れるようになり仕事の効率が良くなるなど、ビジネスシーンにも私生活にも役立つ。

メタ認知能力は、初めから持っているものだけではなく、後から能力を高めることも可能だ。今回ご紹介したメタ認知能力の概要やメリットとデメリット、トレーニング法などをしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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