2020.7.6

リクルーティングからブランディングまで。オウンドメディア活用事例

読了まで約 5

・マーケティングのメディアは「トリプルメディア」から「PESOメディア」へ

・シェアードメディアをオウンドメディアで活用する。

・なぜいま、採用活動にオウンドメディアが欠かせないのか?

・RJPで採用オウンドメディアの必要性が高まった。

・採用にもブランディングにも活用できるオウンドメディア。

・採用オウンドメディアとしての成功例「メルカン」とブランディングの成功例「レッド・ブル」

 

そもそもオウンドメディアって?

人材の獲得競争がますます激化する中、企業は「求職者から選ばれるため」「エンゲージメントの高い人材を獲得するため」、採用マーケティングを取り入れ始めている。
中でも「オウンドメディア」を活用したリクルーティングは、今後採用の成否を大きく左右するとまでいわれている。

では、そもそもオウンドメディアとは何なのか、基本のところをおさらいしておきたい。

オウンドメディアとは、「トリプルメディア」と呼ばれるマーケティングにおける三大メディアの一つである。
トリプルメディアはそれぞれ「ペイドメディア」「アーンドメディア」「オウンドメディア」に区分され、その特徴をまとめると以下のとおりとなる。

ペイドメディア
出稿に金銭的コスト(ペイ)が発生するメディア。

企業が媒体側に広告料を支払って出稿する。メジャーなテレビ、新聞、雑誌、ラジオに加えインターネット(リスティング広告、バナー広告)なども含み、大規模なメディア戦略で情報のコントロールが可能な反面、実行するにはそれなりの予算が必要となる。

アーンドメディア
第三者の信頼をアーンド(獲得)して発信するメディア。

企業が主体的に発信するオウンドメディアとは異なり、第三者(報道機関やインフルエンサー、有名ブロガーなど外部の人間)が情報を取り上げて発信する。
第三者を通じるため企業側で情報をコントロールすることが困難である。

オウンドメディア
企業が独自にオウンド(所有)して運用するメディア。

一般的には自社のコーポレートサイト、ブログ記事などを指すが、最近注目されているのが採用活動への活用だ。
ターゲット設定から、コンテンツの企画、制作などまで自前で行えるので、戦略をコントロールしながら運営することが可能なうえ、他メディアと比べてコストパフォーマンスもよいので、採用にオウンドメディアを運用する企業が増えてきている。

以上、ざっと「トリプルメディア」を整理したが、ただし、この概念が流布しているのは日本だけで、海外のマーケティング業界ではこのトリプルメディアに「シェアードメディア」を加え、その頭文字をとって「PESOメディア」と捉えることが主流になりつつある。

・シェアードメディア
FacebookやTwitterなどのSNSを通じて一般の第三者が情報発信し、コミュニティ内で共有(シェア)・拡散するメディア。

著名な第三者が発信するという点で、これまではアーンドメディアに分類されていたが、最近では必ずしもインフルエンサーや著名なブロガーではない第三者から発信されることからシェアードメディアとして確立された。

こちらも情報発信は第三者であるため企業が情報をコントロールすることは難しいが、シェアードメディアの概念をオウンドメディアに取り入れ、同じ価値観や好きなジャンルを好む求職者に向けて社員が発信するSNSなどをオウンドメディアにリンクすれば、自然に自社の情報が共有・拡散されていくため採用活動へも活用可能となる。

 

採用活動にオウンドメディアを活用

前段で述べた通り、オウンドメディアは企業の採用活動にも貢献する。だが、自社のサイトを通じた情報発信なら、いままでどの企業も行ってきたことだ。
なぜいま、採用活動にオウンドメディアが必須とされているのか、それは大まかにいって、以下の二つの変化が背景にある。

・終身雇用が崩れ求職者の意識が大きく変化

日本の経済を支えてきた終身雇用・年功序列という基盤が失われて久しい。
なにがなんでも一つの会社で我慢して働いている理由はなくなり、転職が当たり前の時代になった。
労働力の自由化が進み、求職者は選択の自由を獲得した一方で、これまで企業任せにしていたキャリア形成には自分で取り組む必要も出てきた。

そうなると求職者は、職種や報酬、労働時間といったわかりやすい選択軸だけでなく、働きがい(何のために働くのか)、目的観(仕事を通じてどうなりたいのか)、社会貢献度(この会社で社会をよくしていけるのか)など多様な選択軸を持って求職活動を行うようになる。
こうして求職者の価値観が変化した結果、求職活動においては、これまでよりも「就業前に確認しておきたい事項」が大幅に増えてきたのだ。

そのため今の求職者は、フォーマットが決まった採用サイトや既存メディアではなく、むしろその会社のサイトや社員のSNSを直接読み込み、深掘りすることでその会社の実像に迫りたい、と考えている。ここに採用オウンドメディアのニーズがある。

・企業側の意識も変化
一方、企業側でも、RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)という概念が浸透することで採用オウンドメディアの必要性が高まってきた。
RJPは直訳すれば「現実的な仕事情報の事前開示」であり、採用活動において求職者に対して情報を開示する際、職務内容や組織、環境の実態に関する良い面だけでなく、悪い面も含めたリアリスティックな情報を与えるという考え方だ。
詳しい説明はここでは省くが、ホンネ採用ともいわれるとおり、企業にとって都合の良いことばかりを並べていたこれまでの求人広告とは対極にある考え方だ。

さらにメンバーシップ型からジョブ型雇用への転換という採用活動の急変のなかで、ジョブディスクリプションをはじめとした「明文化された」「正確な」情報発信が求められている。

こうしたことを背景に、従来のような建前と企業側の都合を優先した情報ではなく、自社の魅力も弱点も網羅したリアルな情報を求職者に対してよりダイレクトに、より具体的に伝えることができる採用オウンドメディアの重要性が高まっているのだ。

 

リクルーティングからブランディングまで。オウンドメディアの事例

オウンドメディアは採用だけでなく、ブランディングにも有効だ。オウンドメディアによる採用ブランディングが機能すれば、求める人物像を理解した上で求職者が応募してくる状態を作れるため、マッチ度が高くなり、離職率を下げることもできるし、採用コストの削減にもつながる。

採用にオウンドメディアを活用している事例として「メルカン」を、ブランディングの例として「レッド・ブル」を紹介する。

・メルカン
メルカリが運営するメルカン(mercan)は、いちはやく採用にオウンドメディアを活用した例である。
「メルカリの「人」を伝える」をコンセプトに、メルカリのメンバーやチームの紹介、社内での部署ごとの取り組みなどをほぼリアルタイムで発信している。

求職者に同社の魅力をわかるやすく伝えるとともに、採用のミスマッチを減らすことが狙いだが、技術部門では新卒よりも転職者がメインターゲットになっているのも特徴。

なかでも同社で働いているエンジニアやプログラマーが自分の言葉で、自身の転職の経緯や現在取り組んでいるプロジェクトについて語るというストーリー性のあるコンテンツは、求職者が入社後どのように働くのかを具体的にイメージできる内容となっている。
レイアウトや動線、カテゴリの分け方など2016年の創刊以来積み重ねてきたノウハウが隅々まで蓄積されているので、採用オウンドメディアとして、非常に参考になるサイトだ。

・レッド・ブル
レッド・ブル(Red Bull)はオウンドメディアを自社のブランディングに活用した成功例として名高い。サイトではモータースポーツや音楽はもちろん、マウンテンバイク、登山、スケートボードなど、同社が出資する幅広いエンターテインメントに関する情報や特集を数多く発信しているが、自社製品であるエナジードリンクについては驚くほど情報が少ない。

これがレッド・ブルのブランディング戦略の特徴で、競合が少なくエナジードリンクとの相性が良いジャンルのファンやアスリートをターゲットに、質の高いオリジナルコンテンツを配信することで、「アクティブでカッコいい飲み物」というイメージを定着させることに成功している。

採用への活用という面でも、このブランドに愛着を持ち、憧れて入社を希望する求職者が多いため、採用活動の効率化に貢献していると考えられる。

 

まとめ

・トリプルメディアと呼ばれるマーケティングにおける三大メディアの一つがオウンドメディアである。

・シェアードメディアはFacebookやTwitterなどのSNSを通じて一般の第三者が情報発信し、コミュニティ内で共有(シェア)・拡散するメディアである。

・採用活動にオウンドメディアが必須とされているのは、終身雇用が崩れ求職者の意識が大きく変化したことと、RJPの浸透により企業側の意識も変化したことが背景にある。

・求職者は、職種や報酬、労働時間といったわかりやすい選択軸だけでなく、働きがい、目的観、社会貢献度など多様な選択軸を持って求職活動を行うようになっている。

・メンバーシップ型からジョブ型雇用への転換という採用活動の急変のなかで、企業にはジョブディスクリプションをはじめとした「明文化された」「正確な」情報発信が求められている。

・オウンドメディアによる採用ブランディングが機能すれば、求める人物像を理解した上で求職者が応募してくる状態を作れるため、マッチ度が高くなり、離職率を下げることもできるし、採用コストの削減にもつながる。

 

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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