2022.2.14

母集団形成とは?新卒・中途採用を成功に導く入口を解説

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統計用語として用いられることが多い「母集団」という言葉だが、採用活動においても用いられることがある。なんとなく意味はわかるものの、採用活動における母集団とは具体的に何を指しているのか、どのように使われるのかがわからないという方も多いだろう。この記事では、新卒採用中途採用を成功に導く入口となる母集団形成について、なぜ重要なのか、具体的にどうすれば良いのかなどをわかりやすく説明する。

母集団形成とは?

母集団という用語は、統計学において用いられることが多い。統計学における母集団とは、調べたいデータを抽出するための全体を指す場合に用いる。

例えば、あるサービスの満足度を調べたい場合、母集団はそのサービスを利用した全員である。その母集団の中から、サービスに満足した人の割合を出すのが一般的な統計の考え方だ。

採用活動における母集団とは、採用に応募してくれる応募者全員の集まり、つまり「採用候補者の集団」のことを指す。

しかし、採用活動における母集団は、実際に求人に応募してきた人だけではない点に注意しなければならない。自社や自社の仕事に興味を持っている人で、今後求人に応募する可能性を持つ人も採用候補者として母集団に含まれるのだ。

そのため、採用活動における母集団形成とは、単に応募者を集めれば良いというものではない。入社後に活躍してくれる可能性のある、一定の水準を満たすような人を集めることが大切なのだ。

よって、採用活動における母集団を形成する際は、そのような採用ニーズに合った人材の集団を作ることを意識する必要があるといえるだろう。

関連記事:「4C分析」が採用候補者から応募を集めるカギ?母集団形成につなげる方法を解説!

母集団形成が重要な理由

先に述べたとおり、採用活動における母集団の形成には、必要な人材を効率よく集め、採用を成功に導くために意識的に行うことが重要である。

ここでは、採用活動を成功させるためにはなぜ母集団形成が重要であるのか、その理由についてさらに深く掘り下げて説明する。

自社にマッチする人材からの応募を増やすため

近年、特に新卒採用においては認知度がある企業への応募が集中しやすい傾向により、中堅・中小企業の採用活動が苦戦を強いられているのが現状だ。このような状況において、自社のニーズにマッチした人材を確保するためには、適切な母集団形成が不可欠だといえる。

コロナ禍からの回復が進むという見方もあるが、先が見通せない状態が想定される中、
必要な人材を確保するためには、まず採用活動の入口となる母集団形成から戦略を立てて行い、自社にマッチした人材からの応募を増やすことが重要なのである。

採用戦略を効果的に進めるため

母集団形成における重要なポイントは、「自社で働きたい」または「自社の仕事内容に興味を持っている」という求職者を集めることである。

採用の成功確率を高めるためにも、自社のニーズに合った母集団を形成し、採用戦略を効果的に進めることが大切だ。

採用活動の大まかな流れは、次のとおりである。

・採用計画を立てる
・求職者を集る
・採用する人材を選定する
・内定、採用

この流れに沿って、まず最終的に採用する人数から逆算し、どのような母集団を形成すべきかを戦略的に組み立てなければならない。母集団形成にはいくつかの方法があるが、それぞれの方法に合わせた母集団の算出と形成が必要となる。

労働市場は常に変化している。よって採用活動を効果的に進めるためにも、毎年同じではなく、母集団形成方法から見直して採用戦略に落とし込んでいくことが大切だといえる。

母集団を集めるための主な手段

自社が必要とする人材を獲得し、採用活動を成功させるためには、まず求職者の母集団形成が必要であることがわかった。次に問題となるのは、具体的にどのようにして母集団を集めれば良いかということである。

そこで、ここでは母集団を集めるための主な手段を紹介する。それぞれの方法に特徴やメリット、デメリットがあるため、採用活動の目的にマッチした母集団を集める手段を選んで活用し、採用活動の成功を目指していこう。

就職に特化したナビサイト

一般的に広く用いられている母集団の形成方法が、新卒や中途採用で求職中の人に向けて提供されている就職のナビサイトである。さまざまな職種や目的に応じたナビサイトが巷に多数あるため、求職者が気軽に登録したり、使ったりしやすくなっている点が特徴だ。

就職に特化したナビサイトを使って母集団を形成する主なメリットとデメリットは、次のとおりである。

【メリット】
・多くの人材確保が必要な場合や、地域を越えて広く募集したい場合に有効である
・募集条件を求職者側からも選択できるため、母集団を形成するターゲットが絞りやすい
・応募者を待っているだけでなく、サイトによっては企業側からスカウトすることもできる

【デメリット】
・応募者が集まらなかったり、採用者がいなかったりしても利用料金が発生する

ダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)

ダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)とはその名のとおり、求職している側の人があらかじめサービスにこれまでの経歴やスキルなどを登録しておき、人材を求めている企業側がその情報をチェックして直接スカウトする方法を指す。

このような逆求人型のダイレクトリクルーティングサービスを通したスカウトだけではなく、個人が公開しているSNSなどから情報を得て直接連絡するケースも、このダイレクトリクルーティングに含まれる。

優秀で即戦力となる人材をしっかりと選んで採用したい場合や、採用に必要となるノウハウを蓄積させたい場合に有効な方法だ。

2021年12月に行ったHR総研の調査によれば、2023年新卒採用で実施している「ダイレクトリクルーティング」は「実施していない」は44%と半数近くあるが、「逆求人サイトの活用」が最多の26%、次いで「社員からの紹介(リファラル採用)」が25パーセントだった。(ProFuture株式会社/HR総研

■2023年新卒採用で実施している「ダイレクトリクルーティング」

グラフ:2023年新卒採用で実施している「ダイレクトリクルーティング」

ダイレクトリクルーティングの主なメリットとデメリットは、次のとおりである。

【メリット】
・企業が求めている人材に、ピンポイントでスカウトすることができる
・採用に関するノウハウが蓄積されるため、採用スキルを高めることができる

【デメリット】
・実施してすぐに効果が発揮されるとは限らず、時間がかかる場合が多い
・人事担当者の負担が大きく、スカウトして口説く力量が問われる

関連記事:採用マーケティングにおける採用手法の選び方。ダイレクトソーシングやリファラル採用の効果とは

リファラル採用

リファラル採用とは、社内で働いている既存の社員から、新しい人材を紹介してもらう採用手法のことである。欧米では以前から重要な採用手段として取り入れられているものであり、近年は日本でも広まりつつある。

すでに企業をよく理解している社員からの紹介であるため、企業理念や社風にマッチした人材、つまりカルチャーフィット率の高い人材を募集できるという点が特徴だ。

先述のHR総研調査では、ターゲット層を採用するために実施・検討している施策について、大企業では「インターンシップの活用」38%、「先輩・リクルーターの活用」27%に続き「リファラル採用」が21%となっている。(ProFuture株式会社/HR総研

■企業規模別 ターゲット層を採用するために実施・検討している施策

グラフ:企業規模別 ターゲット層を採用するために実施・検討している施策

リファラル採用が取り入れられることが多くなってきた主な理由として、次の2点が挙げられる。

・人材が不足している
企業のニーズにマッチした人材の確保が困難になっている。そのため、母集団を闇雲に大きくするより、求めている人材を社員から紹介してもらい、一本釣りのように採用すると成功率が高いと考えられている。

・入社後の適性や環境の不一致が増えている
人手不足だけでなく、早期退職や生産性低下も採用の問題である。それらの対策として、就職ナビサイトや人材エージェントなどを用いず、社内のことがわかっている信頼できる社員からの紹介による手法が効果的であると注目を集めているのだ。

リファラル採用の主なメリットとデメリットは、次のとおりである。

【メリット】
・企業が求める人材のマッチング率が高くなる
・採用コストが削減できる
・転職市場に現れない人材を採用できる

【デメリット】
・採用後の人材配置に配慮が必要となる
・人材を紹介してもらう社員の理解と認知が必要となる

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採用イベント

採用イベントの代表的なものとして挙げられるのが、合同説明会や学内セミナーである。複数の企業が集まり、それぞれのブースで求職者と直接話したり説明をしたりして募集する手法だ。大規模なものから小規模なものまで、さまざまなタイプがある。

新卒と中途採用のどちらのケースでも使えるが、特に費用をかけずに新卒採用を行いたい場合や大学の専攻を重視して採用したい場合、あるいは企業の知名度が低いため認知を高めたい場合などに有効な手法である。

採用イベントを用いる主なメリットとデメリットは、次のとおりである。

【メリット】
・興味のなかった人材の関心を引き接点を持つことができる
・実際に働いている社員を知ってもらえる

【デメリット】
・どの程度の応募が来るのか予測がむずかしい
・知名度が高くない企業は、勧誘に力を入れる必要がある

オウンドメディア

採用オウンドメディアとは、自社で発行している広報誌やパンフレット、インターネット上の自社ホームページやブログなどのことを指す。これらを活用して採用関連コンテンツとし、母集団形成するのがオウンドメディアを用いた手法である。

新卒採用の場合だと、採用活動のときだけではなく、長期的に学生との関係を維持できるため、自社の雰囲気や様子をしっかりと伝えられる点が特徴だ。

オウンドメディアを用いる主なメリットとデメリットは、次のとおりである。

【メリット】
・企業の様子や雰囲気を視覚化して伝えることができる
・企業認知を高めることができる
・採用後のミスマッチを減らすことができる

【デメリット】
・オウンドメディアによる採用サイトだけでは母集団形成がむずかしい
・運用方法の検討が必要となる

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まとめ

採用活動の成功を目指すには、まず入口となる母集団形成の戦略的な実践が重要となる。効率良く必要な人材を確保するためには、ターゲットとなる人材を集めて母集団を作成しなければならない。

母集団形成は採用活動を成功させるためだけではなく、採用後の早期退職や職場の不適合を回避するために役立つ場合もある。そのため、採用活動の一環として、しっかりと検討しなければならない。

母集団形成には、就職ナビサイトやリファラル採用、オウンドメディアの利用などいくつかの方法がある。それぞれに特徴やメリット、デメリットがあるため、採用目的や予算などに応じて選ぶことが大切だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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