2022.4.8

リファラル採用における報酬の決め方・相場を解説!法律上、注意する点は?

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リファラル採用とは、知人や友人を社員から紹介してもらう採用手法だ。自社のニーズに合った人材を紹介してくれた社員に対して報酬を贈る場合があるが、違法と判断されるケースもあり注意が必要である。今回はリファラル採用の報酬が違法と判断されないか、報酬の決め方や相場などを解説する。

リファラル採用の概要

リファラル採用とは、自社で募集をかけている求人に合った知人や友人を社員から紹介してもらう採用手法で、リファラルリクルーティングとも呼ばれている。

現場を知る社員から人材を紹介してもらえるため、企業とのマッチ度や定着率が高いうえに、採用にかかるコストや採用フローを削減できるのが特徴である。また、転職市場にいない人材とマッチングできること、離職率が低い傾向になることなども魅力的だ。

欧米ではよくある採用手法のひとつであり、近年日本でも注目を集め、取り入れる企業が増えている。日本では、業界に関係なく人手不足だといわれるほど人材市場が売り手市場となっており、今後も生産年齢人口が減少すると予測されている。人材確保のためにも、リファラル採用などのダイレクトリクルーティング(ソーシング)の取り組みが活発化しているのである。

企業関係者からの人材紹介という点では、リファラル採用も縁故採用(コネ採用)も似たものと受け取られやすい。しかし、縁故採用の場合は紹介者のメンツのために企業のニーズに合わない人材を採用するケースがあるが、リファラル採用では採用基準を満たした候補者のみを採用するという点で大きな違いがある。

その分、採用に繋がらなかった場合に、紹介者と紹介された人材間の関係が気まずくならないようにする配慮が必要だ。また、知人同士でグループ化してしまわないよう、採用後の人員配置も考えるべきだろう。

社内の制度や認識があいまいなままでリファラル採用を実施してしまうことも、トラブルに発展してしまう要因になる。リファラル採用をおこなうと、人事の仕事の一部をほかの社員たちにもさせることとなるため、社員への負担が増してしまいやすい。積極的な協力を得るためにも簡単な紹介方法などを用意し、関連した制度設計をしっかりとおこなって周知することが重要である。

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報酬を決める前に把握するべき法律

リファラル採用を実施する場合には、促進させるために紹介してくれた社員に対してインセンティブ(報奨金)を支払うケースが多いだろう。しかし、リファラル採用の報酬に関連する法律があり、報酬の決定には注意が必要である。報酬を決定する前に把握しておくべき法律は、以下のとおりだ。

・ 職業安定法第30条/第40条
・ 2021年4月1日施行の『就職お祝い金』名目の金銭提供禁止

これらの法律を理解しておかないと、リファラル採用の報酬が違法となってしまう可能性がある。それぞれの法律について、詳しくチェックしていこう。

職業安定法第30条/第40条

人材紹介とは、厚生労働省の需給調整課が管轄する国の許認可事業である。

職業安定法第30条の規定では、「有料の職業紹介事業をおこなおうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない」とされている。つまり、職業紹介によって金銭を授与されるような場合には、厚生労働大臣の許可を受けていないと違法性を問われる可能性が考えられるのである。

しかし、リファラル採用を実施するために、従業員が事業として認可を受けることは現実的ではないだろう。そこで、職業安定法第40条の規定などが関係してくる。

職業安定法第40条の規定では、「労働者の募集をおこなう者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」とされている。つまり、リファラル採用の紹介そのものに対する報酬としてインセンティブを従業員に支払うことは、原則として違法であると定められているのだ。

しかし、業務の一要素に対する評価として賃金や給料として支払われるのであれば、例外として認められると考えられている。実際にリファラル採用の報酬額について、わざわざ厚生労働大臣の認可を得て実施することはレアケースだと思われるため、ほとんどの場合は賃金や給料に含めて支払う形が考えられるだろう。

ちなみに、もしも職業安定法第40条に違反する場合には、同法第65条の規定によって6か月以下の懲役、あるいは30万円以下の罰金が科せられることになるため、注意が必要である。

リファラル採用のインセンティブを従業員に渡すためには、法律に抵触しないように就業規則や雇用契約を見直し、あらかじめ賃金や給料として紹介料を支払える状態にしておくようにしよう。

参照元:職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)

2021年4月1日施行の『就職お祝い金』名目の金銭提供禁止

2021年4月1日に職業安定法に基づく指針が一部改正され、『就職お祝い金』名目の金銭提供が禁止となった。これにより、求職者に対して金銭などを提供し、求職の申し込みをするように勧奨することが禁止されたのである。

リファラル採用を実施する際にこの改正で関連するケースは、従業員へのインセンティブではなく、紹介される側への金銭提供だ。つまり、紹介される側の人材に対して「入社すると就職のお祝い金がもらえる」といって勧誘することができなくなったのである。

報酬の相場とは?

先述のとおり、リファラル採用を実施する際の報酬は、違法とされるケースが考えられるため慎重に設定する必要があるだろう。リファラル採用で従業員に対して支払う報酬を考える際に、検討しておきたいポイントは以下のとおりである。

・ リファラル採用で従業員に支払う報酬の相場
・ 金銭以外の報酬を贈る方法

報酬の金額が適当ではないことでも違法と判断される可能性があり、注意が必要だ。違法性が疑われないように、それぞれのポイントについて詳しくチェックしていこう。

相場

報酬額の相場観は、企業で異なるが、リファラル採用で従業員に支払う報酬は、1~30万円に設定している会社が多いようだ。企業によってはインセンティブという設計自体がなく、0円としている場合もある。

非正規社員を採用する場合だと相場は低めで、数千〜数万円ほどであったり、採用ポジションやスキルのある人かどうかや紹介した人数などで報酬が変わったりする場合もあるようだ。

ただし、リファラル採用で従業員に支払う報酬は、高ければいいというわけではない。高額過ぎる報酬は違法と判断される可能性があるうえ、社員が「お金を目的に紹介したと思われたくない」と考えて逆効果になってしまう恐れまである。

また高額過ぎると、報酬を目的として紹介人数を増やす人が出てくる。企業の求める人材以外を紹介された結果、入社してから活躍できない、あるいは定着しないといったミスマッチの問題が起こるケースもあるようだ。

関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

金銭以外の報酬も

リファラル採用で従業員に支払う報酬は、金銭以外で渡すケースもある。

たとえば、リファラル採用に対する貢献度合いをポイントにしている企業の場合で見てみよう。年間の合計ポイントなどに応じてランキングにして表彰していたり、ポイントに応じて何かと交換できるようになっていたりと、さまざまな工夫が見られる。

また休暇を与えたり、評価そのものに組み込んだりといったことを報酬としている場合もある。

報酬の決め方

報酬を決める際には、以下の2つのポイントをもとに考えられる。

・ 採用における課題や目的に応じて決めること
・ 主な報酬発生タイミングはいつか

先述のとおり、リファラル採用の報酬は、高ければ高いほどいいというわけではない。報酬のひとつの目安は、エージェント経由で採用した場合の支払い金額である。エージェントへの支払いは採用された社員の年収の30%程度が相場で、これ以上を支払うと「業」としての報酬となり、違法と判断されてしまいかねないため注意が必要だ。

採用における課題・目的に応じて決める

報酬をどうするのかは、採用における課題や目的に応じて決めるといいだろう。たとえば紹介応募数を増やしたい場合には、入社が決まってからの報酬ではなく、紹介によって応募してもらえた人数に応じた報酬にすると応募数を増やせる。

また、スキルの高い人材を紹介してもらいたい場合もあるだろう。採用ポジションに合わせて報酬額を設定し、採用難易度の高いポジションが決まったり資格要件を満たしたりする人材の場合には、報酬額を高く設定するなどの工夫ができる。このように、課題や目的に応じて報酬を決定するようにするといいだろう。

主な報酬発生タイミング

リファラル採用でインセンティブがあるケースでの報酬発生タイミングもチェックしてみよう。インセンティブがあるケースの主な報酬発生タイミングは、以下のとおりだ。

・初回面談に進んだタイミング
・選考に進んだタイミング
・採用に至ったタイミング
・入社から一定期間経過したタイミング

リファラル採用をおこなうために社内制度の規定を検討する際は、自社の課題となっている点をもとに報酬発生タイミングを考える必要がある。たとえば定着率が低いことが課題であれば、入社から一定期間経過したタイミングで報酬を出すようにするなど、自社にあった制度にしよう。

まとめ

リファラル採用とは、ニーズに合う知人や友人を自社社員から紹介してもらう採用手法のことである。理解度の深い社員からの紹介であるため、採用のミスマッチを防止できるうえに定着率が高く、採用にかかるコストも削減できるのが特徴だ。

報酬を決定する前に関連する法律を把握しておかないと、違法と判断されてしまうケースがあるため注意が必要である。リファラル採用で紹介してくれた社員に対してのインセンティブがある場合には、職業安定法第30条や第40条などの法律を理解して、報酬を決定するようにしよう。

リファラル採用で従業員に支払う報酬は、1~30万円に設定している会社が多いようだ。報酬が高すぎると、違法と判断されやすくなってしまうといった問題があるため注意が必要である。

報酬をどうするのかは、採用における課題や目的に応じて決めるのがいいだろう。自社における採用活動の課題を理解して、課題を解決できるような制度設計にしよう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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