2022.11.16

ポータブルスキルとは?概要とスキル一覧、テクニカルスキルとの違いを解説

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近年、耳にする機会の増えたポータブルスキルとは「幅広い分野で活かせて持ち運び可能なスキル」を表す言葉である。今回は、ポータブルスキルの概要と代表的なスキルの要素と一覧、注目を集める背景を紹介する。テクニカルスキルとの違いも解説するため、あわせてチェックしよう。

ポータブルスキルとは?

そもそもポータブルスキルとは「持ち運びが可能なスキル」を意味する。厚生労働省では、ポータブルスキルのことを「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」と定義する。

ポータブルという言葉には「どのような仕事をする場合でも大切なこと」という意味が込められている。職種や業種、時代によって変わらない、新たな環境への適応力に関する「論理的思考力」「プレゼンスキル」「コミュニケーション能力」などがポータブルスキルの例だ。

ポータブルスキルは、あらゆるビジネスパーソンにとって必要なもので、組織(チーム)として働く際にも重要性の高いスキルである。ポータブルスキルがあれば、どのような会社でも必要とされる「市場価値の高い人材」になれるといわれている。

また、新規事業を立ち上げる際や退職にともなう欠員で人員を補充したい企業にとっても、採用業務をおこなうための評価項目を明確化する際に重視されるスキルである。

求職者にはさまざまなバックグラウンドがあり、異なる経験をしているものだ。それらを正しく評価できるように、採用活動の際は企業ごとの基準が作られている。

採用活動の際に使われる評価基準には「テクニカルスキル」「スタンス」「ポータブルスキル」がある。これら3つの評価基準をもとに、求職者ごとのスペックやスキルを評価することが一般的だ。

3つの評価基準のうち、テクニカルスキルはとくに中途採用の際に重要視されるスキルで、業務に対する専門性の高さを見るものである。また、スタンスとは企業と価値観を共有できるかどうかに関する評価基準だ。

評価基準のひとつであるポータブルスキルは、資格や経験だけではわからないような、対象者の性格や人柄などに関するものである。ポータブルスキルに関する能力を大きく分けると「仕事の仕方」「専門知識・専門技術」「人との関わり方」の3つに分類される。

これらの能力が注目される理由には、豊富な経験を持つ35〜55歳のミドル層人材の有効活用ができるようになること、人材市場の活性化が期待できることがある。

反対に、持ち運びできないスキルのことを、アンポータブルスキルという。アンポータブルスキルとは、特定の企業や業種、職種だけに限定して活用できる知識やスキルだ。

アンポータブルスキルは、毎日の業務をおこなううえで重要なスキルである。しかし、今後のキャリアを考えていくうえでは、若いうちからポータブルスキルも身に付けるように意識するべきだろう。

関連記事:「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介

代表的なポータブルスキルの要素・一覧

次に、代表的なポータブルスキルの要素について一覧でチェックしていこう。

<仕事の仕方に関する要素>
仕事の仕方に関するポータブルスキルの要素には、以下の業務遂行能力が含まれている。

【課題を明らかにする】

現状の把握 取り組むべきテーマや課題の設定に必要となる情報収集の方法や情報分析など
課題の設定 取り組むべき課題の設定
(企業全体や事業、商品、仕事の進め方、組織など)

【計画を立てる】

計画の立案 業務や課題の遂行に必要となる具体的な計画の立案
(期間や関係者との調整、前例の有無)

【実行する】

課題の遂行 スケジュール管理や各種調整、業務を進めるうえでの障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方
状況への対応 予期せぬ状況への対応や責任の取り方

仕事の仕方に関するポータブルスキルの要素は、現状を理解したうえで業務に関する計画を立てて実行し、また現状を確認して取り組むべき課題を把握することだ。

つまり、いわゆる「PDCAサイクル」に関するスキルの要素である。PDCAサイクルを回してプロジェクトを完遂できるかどうかを理解することが、仕事の仕方に関するポータブルスキルの要素なのだ。

<人との関わり方に関する要素>
人との関わり方に関するポータブルスキルの要素には、コミュニケーションや教育に関する以下の能力が含まれている。

社内対応 経営層や上司、関係部署へのコミュニケーションや指示の獲得
(社内での役割や指示への対応、提案の求められ方)
社外対応 顧客や社外パートナーなどへの納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成
(関係の長さや対象者数、関係の難易度)
上司対応 上司への報告や課題改善に向けた意見の述べ方
部下マネジメント 動機付けや育成、持ち味を活かした業務の割り当て
(部下の人数や育成のポイント、部下への評価など)

人との関わり方に関する要素とは、仕事をする際に周囲にも良い影響をもたらすような振る舞いができるかどうかを理解することだ。

仕事を遂行する際には、前工程から後工程までの一連の流れがある。仕事の仕方に関するポータブルスキルの要素を確認することで「前工程から後工程までのどこが得意であるのか」が理解できるようになる。また、人との関わり方に関する要素を確認すると、経営層や上司、顧客、部下に対するマネジメントスキルなど、さまざまな相手への対人スキルが理解可能である。

そのため、人事採用の評価項目にポータブルスキルを採り入れることによって「対象の人材が組織においてどのようなポジションに適しているか」を検討できるようになるのだ。

関連記事:PDCAサイクルの具体例を徹底解説します!成功・失敗の要因を説明!

ポータブルスキルが注目を集める背景

近年、ポータブルスキルの必要性が高まり、注目を集めるようになった。ポータブルスキルが注目を集める背景には、さまざまな理由によって今までとはビジネス環境が変化し、将来の予測が困難になった状況がある。

現在では、かつて日本型企業の特徴であった終身雇用や年功序列などが崩壊しつつある。また、テクノロジーの急激な進化によって社会基盤の変化も激しくなっており、根本的なビジネスモデルの転換につながるケースも度々起きている。以前より会社の平均寿命が短くなったともいわれており、大企業が経営危機に陥っているという報道も珍しくない。以前に比べて社会の中で不確定的な要素が増えているといえるだろう。

また、新型コロナウイルスの流行によって多くの業界が打撃を受けており、少なくない数の人々にキャリアショックが起こるなど深刻な影響を与えている。

このような社会情勢を背景として、転職を希望する人はもちろん、現状では転職を希望していない人にとっても、将来的に転職しやすいように自分自身の市場価値をアップさせる必要性が高まっている。

また、ポータブルスキルが高いと、さまざまな分野の仕事について活躍しやすくなるため、キャリアの選択肢を広げられるというメリットもある。

採用する企業にとっても、ポータブルスキルが注目を集めている理由がある。ポータブルスキルを重視して採用することによって、前職の専門性にとらわれ過ぎずに求人募集ができるようになり、採用後のミスマッチの防止につながるのだ。ただし、ポータブルスキルは履歴書に記載できる能力ではないため、スキルを判断するには面接官がうまくヒアリングしなければならない。採用選考時の面接官の力量が問われるところである。

関連記事:中途採用の主な手法は?各手法のメリットやデメリットを解説

テクニカルスキルとの違い

採用活動をおこなうときに、とくに中途採用ではポータブルスキルよりもテクニカルスキルの高さのほうが重視されがちである。

テクニカルスキルとは「業務を遂行するためにかかせない専門的な知識や技術、能力、資格」のことを指す。テクニカルスキルを有する場合には、就職活動の際にアピールポイントとして自身が持つ能力の詳細を履歴書に記載できる。また、テクニカルスキルを持っていれば、特定の業務に関して、即戦力として現場の最前線での活躍が可能となる。

たとえば、専門的な資格を活かして営業を担当していた人は、その業務に関するテクニカルスキルを持っている。同じ専門知識に関連する営業の仕事に転職した場合には、専門的なスキルが役に立つ。しかし、異なる仕事に転職した場合は、専門知識に関するテクニカルスキルが役に立たなくなることがあるだろう。

とはいえ、営業の業務をしていたときに「相手に対する提案能力」や「仕事の段取りをスムーズにおこなうスキル」「課題を改善する能力」などを培っているかもしれない。これらの能力は、転職先が他業種であっても役立つポータブルスキルといえる。

つまり、ポータブルスキルとテクニカルスキルの違いは「業種や職種が変わっても活かせるスキルであるかどうか」が大きい。他にも両者の違いとしては「履歴書の記載をチェックすることでスキルの有無を理解できるかどうか」という点もある。

ポータブルスキルと比較されがちな言葉には、テクニカルスキル以外にも、トランスファラブルスキルや社会人基礎力などがある。

トランスファラブルスキルも「持ち運び可能な能力」のことだが、その対象は若手研究者である。トランスファラブルスキルが指す能力は「対課題スキル」「対人スキル」「対自己スキル」の3つだ。

社会人基礎力は「チームで働く力」「考え抜く力」「前に踏み出す力」の3つの力を指している。

関連記事:傾聴とは?ビジネスやマネジメントの技術で必要とされている理由

まとめ

ポータブルスキルとは、持ち運びが可能なスキルという意味の言葉である。厚生労働省の定義によると、ポータブルスキルとは「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」とされる。

採用活動の際に使われる評価基準には「テクニカルスキル」「スタンス」「ポータブルスキル」がある。これら3つの評価基準をもとに、求職者ごとのスペックやスキルを評価することが一般的だ。

ポータブルスキルが注目を集める背景には、さまざまな理由によって今までとはビジネス環境が大きく変化し、将来の予測が困難になった状況がある。働く人にとっては「転職しやすいように自分自身の市場価値をアップさせる必要性が高まったこと」が理由で、ポータブルスキルが注目を集めている。

また、採用する企業側にとっては「ポータブルスキル重視の採用によって、前職の専門性にとらわれ過ぎずに求人募集ができ、採用後のミスマッチの防止につながる」というメリットがある。

代表的なポータブルスキルの要素やテクニカルスキルなどとの違いについてもしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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