2021.6.21

「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介

読了まで約 6

■先入観から生まれる「確証バイアス」とは?

■確証バイアスが人事評価に与えている影響

■確証バイアスの問題点とは?

■確証バイアスに陥りやすい事例

■確証バイアスに陥らないための4つのポイント

確証バイアスとは何か? 企業に与える影響は?

人には、自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてそれを信じようとし、反証する情報は軽視したり集めようとしなかったりする傾向がある。
誰しもが持っているこのような心理的傾向は、心理学用語で「確証バイアス」と呼ばれるもので、認知バイアスの1種である。
確証バイアスの身近なたとえとして、血液型占いがあげられるだろう。
「A型は几帳面」、「B型はマイペース」など、血液型を使って個人の性格や気質、相性などを判断する血液型占いが日本では非常にポピュラーであるが、そもそも血液型と性格の関係性には科学的根拠はなく、まったく当てはまらないことも多い。
それなのにも関わらず、血液型占いを信じている人が多いのは、実際に「当たっている」と感じた経験があるからだと言える。
A型の人がロッカーを綺麗に使っている様子を見たときに、「やっぱりA型の人だな」と思った場合、これは「A型の人は几帳面である」という思い込みによって発生した典型的な確証バイアスである。
反対に、A型の人のロッカーが散らかっていても、それは血液型占いを反証する情報として見過ごされがちだ。
このように、思い込みがあることによって、多種多様な情報があったとしても最初に自分が正しいと思った考えを有利にできるような情報ばかりを重視してしまうのが確証バイアスだ。
ビジネスにおいては、新商品開発や新事業立ち上げなどで事前検証を行う際、確実にローンチするために都合の良い情報ばかり集めてしまうなど、成功を願う思いが確証バイアスを強めてしまう可能性があるが、採用活動や人事評価が行われる際にも確証バイアスが影響してしまうケースがある。
実際に、アデコグループの日本法人であるアデコ株式会社が20代~60代の働く人を対象に行った『「人事評価制度」に関する意識調査』[調査期間:2018年2月7日~2018年2月12日 有効回答:1532人 調査方法:インターネット調査(日経BPコンサルティング調べ)]の「あなたはお勤め先の人事評価制度に満足していますか。(単一選択)」という質問の結果を見ると、「どちらかというと不満」と「不満」の合計が62.3%と6割を超え、さらに「人事評価制度に不満を感じる理由を教えてください。(複数選択)」の回答では、「評価基準が不明確」が最多の62.8%、次いで「評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる」が45.2%と、評価制度への不満について、評価基準の不明瞭さや不公平さが多くあげられている。
しかし、部下やメンバーを評価する立場にある評価者を対象に行われた「自分が適切に評価を行えていると思いますか。(単一選択)」という質問では、「そう思う」と「どちらかというとそう思う」の合計が77.8%と、約8割の人が自身の評価が適切であると回答しており、評価をする側とされる側の間に大きなギャップがあることが伺える。

参考:アデコ株式会社『「人事評価制度」に関する意識調査』

自分では正しいと思って行動しているが他人からはそう思われていない、という認識の差が生まれる原因として指摘されているのが、まさに確証バイアスによる影響だ。
人事業務において起こりがちである確証バイアスとして、優秀なイメージのある部下に対しては良い部分を探すが、そうでないイメージのある部下に対しては劣っている部分を探してしまうことや、出身大学によるレッテル貼りなどがあげられる。
先述したように確証バイアスは誰もが持ち合わせている自然なものであるが、それを自覚せず矯正しないままでいると、組織運営にさまざまな悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで本稿では、確証バイアスの問題点やその事例、陥らないためのポイントについて解説していこう。

確証バイアスの何が問題なのか? 陥りやすい事例とは?

最もありがちで普遍的なバイアスと言われる確証バイアスは、誰しもが陥る可能性がある。
では、確証バイアスの何が問題なのだろうか、そして陥りやすい事例を紹介する。

確証バイアスの中でも最もありがちで注意が必要なのは「ステレオタイピング」、つまりあるカテゴリーに対してレッテルを貼ることだ。
たとえば、性別や世代、出身地や出身校、前職などを見てその人を判断するようなステレオタイピングは、誰しもが程度の差こそあれ持っているものである。
わかりやすい分け方がされていることで思考過程を短縮し、企業や事業の意思決定を速めるといったメリットを持つ一方で、その意思決定の内容の質を落としてしまうというリスクも存在する。
「Z世代だから保守的なのだろう」など、1度特定のステレオタイピングが生まれてしまうと、まさに確証バイアスが生じて、そのステレオタイプを強める情報ばかりに注目してしまい、逆の情報を無視したり軽視する、など公正な視点を妨げてしまうため、非常に危険だ。

では、確証バイアスに陥りやすい実際の状況としてどのような事例があげられるだろうか。
具体例をあげてみよう。

<確証バイアスに陥りやすい事例>
1. 採用面接
最も確証バイアスに陥りやすいと言えるのが「面接時」だ。
人は最初に感じた印象を確証バイアスとして引きずってしまい、無意識にその印象を追証する情報のみを集めてしまう傾向がある。
バイアスにかかってしまうことによって、たとえば「1つのことを努力して成し遂げた」というエピソードに対して、印象の良い求職者には「継続力がある」という評価がされる一方で、印象の悪い求職者には「柔軟性がない」というまったく異なる評価がされてしまうのだ。
面接に限らず人に会うときには良い印象を与える努力が必要であると言えるが、面接官として人を評価する際には第一印象に引きずられないように意識をすることが大切だ。
2. 人材育成
人事担当者は従業員の育成をする際に、自分が確証バイアスに陥らないよう常に意識をする必要がある。
採用者の出身校や経歴など過去は切り離して考え、先入観なく現在の当人と向き合うことで能力を最大限に引き出せることにもつながる。
また、「頼りになりそうな上司だ」という良い意味での確証バイアスを従業員に持ってもらうことができれば、安心して研修や業務に邁進してもらうことが期待できるだろう。

重要なことは、「自分の評価には確証バイアスがかかっている可能性がある」と常に意識することだ。
他人を評価する立場となった際には、自分がどのようなスキルや人格を高く評価する傾向があり、反対にどのようなことを低く評価する傾向があるのかを認識することから始めることが望ましいだろう。

確証バイアスに陥らないためのポイント

ここまで見てきたように、企業にも大きな影響を与えてしまう確証バイアスだが、いくつかのポイントを押さえることで回避することができるので紹介しよう。

<確証バイアスに陥らないための4つのポイント>
1. クリティカルシンキングをする
「クリティカルシンキング」は「批判的思考」と訳され、先入観にとらわれず客観的にものごとを吟味することで結論や判断の制度を高めていく思考プロセスだ。
自分の感覚に偏りがあることを認め、「自分の意見は本当に正しいのか?」、「他の視点から考えるとどうなるか?」などと反論や疑問を自分自身で考えることで、ものごとをさまざまな側面から見つめ直すことができるのだ。
ただし、確証バイアスにとらわれているとクリティカルシンキングをするという考えすら生まれなくなるため、常にものごとに対して適度に疑問を持つ癖をつけておくことが大切だ。
2. 確証バイアスを理解する
誰もが思い込みにとらわれる可能性があることや確証バイアスに陥るリスクなどについて、あらかじめ理解を深めておくことも有効な方法だ。
確証バイアスをよく知っておくことで、思い込みにとらわれる前に自分を客観視することも可能となるだろう。
また、自分だけでなく他人の考えを理解する助けにもなる。
相手が何かに固執しているとき、確証バイアスに影響を受けている可能性があると判断できれば、感情的にならず建設的な話し合いや前向きに対応する方法を考えることもできるだろう。
3. 信頼できる第3者の意見に触れる
自分が確証バイアスに陥ってしまっていると思うときやその危険性があるときには、正常な判断をすることが困難となるため、第3者の意見を聞くと良い。
バイアスの影響を受けていない第3者からなら、客観的で理性的なアドバイスをもらうことのできる可能性が高いからだ。
また、信頼できる人に意見を求めることによって耳を傾ける気持ちになりやすいため、自分の意見を見直すきっかけとなるだろう。
4. 先入観のきっかけを探す
人が何かの先入観を持っている場合、何かのきっかけがあるはずだ。
たとえば、とある大学の出身者の1人に対して苦手意識があったとしても、その大学の出身者全員に問題があるわけではないだろう。
それだけで嫌な目で見たり、距離を置くことはビジネスにおいても大きなマイナスとなる。
自分が何か先入観を持っていると感じた場合には、その原因はどこにあるのか、きっかけを考えてみることも有効な手段だ。

ここまで確証バイアスについて解説をしてきた。
確証バイアスは誰しもが陥る可能性があり、また自覚することも難しいため、「自分が確証バイアスにとらわれていないか」を常に意識しつつ、対策を行っていくことが大切だ。

まとめ

・人には、自分に都合の良い情報ばかりを集めてそれを信じようとする一方で、反証する情報は軽視したり無視しようとする傾向がある。このような心理的傾向は、認知バイアスの1種であり「確証バイアス」と呼ばれる。確証バイアスの身近な例としては「A型の人は几帳面だ」などというような思い込みを利用した血液型占いがあげられるだろう。思い込みがあることによって、多種多様な情報があったとしても最初に自分が正しいと思った考えを有利にできるような情報ばかりを重視してしまうのが確証バイアスだ。

・確証バイアスは、ビジネスや採用活動、人事評価などにも影響を与え、それはアデコ株式会社が行った『「人事評価制度」に関する意識調査』からも垣間見ることができる。人事業務において起こりがちである確証バイアスとして、優秀なイメージのある部下に対しては良い部分を探すが、そうでないイメージのある部下に対しては劣っている部分を探してしまうことや、出身大学によるレッテル貼りなどがあげられる。確証バイアスは誰もが持ち合わせている自然なものであるが、それを自覚せず矯正しないままでいると、組織運営にさまざまな悪影響を及ぼす可能性がある。

・確証バイアスの中でも最もありがちで注意が必要なのは、あるカテゴリーに対してレッテルを貼る「ステレオタイピング」だ。誰しもが程度の差こそあれ持っているものであり、わかいやすい分け方がされていることで、企業や事業の意思決定を速めるといったメリットを持つ一方で、1度特定のステレオタイピングが生まれてしまうと、そのステレオタイプを強める情報ばかりに注目してしまい、逆の情報を無視したり軽視する、など公正な視点を妨げてしまうため、非常に危険だ。

・確証バイアスに陥りやすい具体例として次のようなものがあげられる。1.採用面接、2.人材育成。これらの状況下で重要なことは、「自分の評価には確証バイアスがかかっている可能性がある」と常に意識することだ。他人を評価する立場となった際には、自分がどのようなスキルや人格を高く評価する傾向があり、反対にどのようなことを低く評価する傾向があるのかを認識することから始めることが望ましいだろう。

・企業にも大きな影響を与えてしまう確証バイアスだが、回避するためのポイントとして次の4つがあげられる。1. クリティカルシンキングをする、2.確証バイアスを理解する、3.信頼できる第3者の意見に触れる 、4.先入観のきっかけを探す。確証バイアスは誰しもが陥る可能性があり、また自覚することも難しいため、「自分が確証バイアスにとらわれていないか」を常に意識しつつ、対策を行っていくことが大切だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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