占いや血液型診断などで、自分のことを相手に伝えていないのに、言われたことが「当たっている」と感じた経験はありませんか?これらは実際に当たっているわけではなく、「バーナム効果」という心理現象が働いている可能性があります。
本記事では、バーナム効果の概要や由来、活用方法などを詳しく解説します。さらに、バーナム効果を実際に利用する際の注意点もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
バーナム効果は、マーケティングや人間関係構築など、様々な場面で応用できる興味深い心理現象です。この効果を理解し、適切に活用することで、コミュニケーションやビジネスの場面で大きな利点を得ることができるでしょう。
ただし、バーナム効果の過度な利用は逆効果になる可能性もあります。本記事では、効果的な活用方法と同時に、注意すべき点についても触れていきます。これらの知識を身につけることで、より洗練されたコミュニケーション戦略を立てることができるでしょう。
それでは、バーナム効果の詳細について、順を追って見ていきましょう。
目次
バーナム効果とは?
バーナム効果は、心理学の分野で知られる興味深い現象です。これは、一般的で曖昧な記述や発言を、自分に特別に当てはまると受け取ってしまう人間の傾向を指します。
例えば、「あなたは時々不安を感じることがありますね」という言葉を聞いたとき、多くの人はこれが自分のことを言い当てていると感じるでしょう。実際には、ほとんどの人が時々不安を感じるものですが、バーナム効果によって、この一般的な記述が自分に特別に当てはまると解釈してしまうのです。
この効果は、占い、性格診断、さらにはマーケティングの分野でも広く活用されています。特に、商品やサービスの宣伝において、「多くの人が抱える悩み」を提示し、それに対する解決策を提案する手法はバーナム効果を利用したものと言えます。
バーナム効果が起こる理由の一つとして、人間の自己認識の複雑さが挙げられます。私たちは自分自身について多面的な理解を持っているため、一般的な記述であっても、自分の経験や特性に照らし合わせて解釈する傾向があります。
重要なのは、バーナム効果を理解し、批判的思考を持つことです。これにより、一般的な記述を過度に個人化して解釈することを避け、より客観的な自己理解や情報の評価が可能になります。
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バーナム効果の由来
バーナム効果を名付けたのは、アメリカの心理学者であるポール・E・ミールです。「We’ve got something for everyone(誰にでも当てはまる要点というものがある)」という、P・T・バーナムが残した言葉に由来します。P・T・バーナムは19世紀のアメリカで活躍した興行師で、その言葉は多くの人々に影響を与えました。
また、バートラム・フォアラーというアメリカの心理学者の名前を取り、バーナム効果は「フォアラー効果」と呼ばれることもあります。これは、アメリカの心理学者バートラム・フォアラーの名前に由来しています。フォアラーは1940年代に、この現象に関する重要な研究を行い、人々の心理傾向を明らかにしました。
このように、バーナム効果という名称には、興行の世界と心理学の分野、両方からの影響が反映されています。
バーナム効果のメカニズム
バーナム効果の背景には、人間の心理に関する複雑なメカニズムが存在します。このメカニズムを理解することで、なぜ人々が曖昧な記述や一般的な説明を自分に当てはまると感じてしまうのかが明らかになります。
バーナム効果が機能する主な要因として、以下の2つが挙げられます。
確証バイアス:人間には、自分の既存の信念や考えに合致する情報を重視し、それに反する情報を軽視または無視する傾向があります。この心理的傾向により、一般的な記述であっても自分に当てはまると解釈しやすくなります。
プラシーボ効果:心理的な期待や信念が実際の結果に影響を与える現象です。バーナム効果においては、自分に当てはまると信じることで、その記述が本当に自分を表していると感じる効果をもたらします。
これらの心理メカニズムが組み合わさることで、バーナム効果は強力に作用します。人々は自分自身について深く知りたいという欲求を持っているため、一般的な記述であっても自分に当てはまると解釈しやすい傾向にあります。
また、バーナム効果は社会的な文脈や状況によっても強化されます。例えば、権威ある人物や信頼できる機関からの情報として提示されると、その効果はより顕著になります。
このように、バーナム効果は人間の認知バイアスと心理的期待が複雑に絡み合った結果として生じる現象であり、その理解は心理学や行動科学の分野で重要な研究テーマとなっています。
確証バイアス
上述したバーナム効果を自身が体感した場合、相手に対して好感や好意を抱くケースがあります。
初めて会った相手であっても心理的距離が縮んでいると感じるのは不思議かもしれませんが、これは確証バイアスが関係しています。確証バイアスとは、自身にとって不都合な情報は頭に入れずに、都合の良い情報だけを取得しようとする働きのことです。
バーナム効果ではこういった確証バイアスが利用されているため、自身が初めて会った人でも特徴や悩みを分かってくれていると感じ、相手に好意を抱きやすいとされています。
そもそもバイアスとは「偏り」といった意味となり、思い込みや自分の偏見で信じ込んでしまうことです。バイアスには様々な言い回しがあり、何らかの要因により偏りが生じている場合は「バイアスがかかっている」と表現します。
また、意図的に偏りを生じさせる場合は「バイアスをかける」と言います。さらに、偏りが徐々に大きくなっている場合は「バイアスが強くなっている」などと表現します。
確証バイアスはなぜ起こるのか
確証バイアスが起こる理由は、人間が本来持つ脳の特性や本能に起因しています。それが以下の内容です。
● 人間は直感を大事にする
● 人間は自分が好き
人間は直感を大事にする
人間は本能的に、自分の直感を大事にする傾向があります。
事実、こうだと思っていたことが実際その通りになったり、自分の判断が危険を回避することにつながったり、また数々の予想を的中させたりと、生活の中で自分の判断が正しかったと思う場面は何度もあります。
さらにビジネスにおいては、自分の直感しか頼りにしない経営者もいたり、直感を信じて進むほうが手っ取り早いし楽だという経営者もいたりします。
そういった独断や自分が絶対に正しいという思い込みなどから、確証バイアスが起こります。
人間は自分が好き
基本的に、人間は自分が好きな生き物です。他人よりも自分のほうが上だ、優れていると思いたいものですし、実際そうであれば優越感が生まれます。
また、自己評価などにおいても自分を守ろうとする防衛本能の働きから、他人よりも高くつける傾向にあります。このようにして、無意識のうちに防衛本能が発動され、自尊心が損なわれないようにしています。
しかし、これらの傾向が強い場合、時に自意識過剰になることがあります。そして、行き過ぎた自意識過剰は自信過剰にもつながり、自分に対して負の情報を受け付けなくなります。
そういった背景から、結果的に確証バイアスが起こることもあります。
プラシーボ効果
マーケティングにおいて「バーナム効果と関連性があるプラシーボ効果」とされていますが、プラシーボ効果はもともと医療の分野における「思い込み効果」のことです。
別名プラセボ効果とも呼ばれ、効果がないものを患者に与えて効果を出す治療法です。
例えば、薬として何の有効成分も含まれていない偽薬を、医者や薬剤師が「特効薬です」と言って患者に服用させると、本当に症状が改善してしまうことが稀にあります。
この現象がプラシーボ効果(プラセボ効果)と呼ばれるものです。いわゆる「思い込み」だけで、本当に症状が改善してしまうことがあるのです。
実際にプラシーボ効果は新薬を開発する現場でも導入されており、ある臨床試験では何の有効成分も含まれていない偽薬を治験者に服用させたところ、30%程度の人に鎮痛効果が認められたという結果も出ています。
プラシーボ効果は、人間の心理と身体の密接な関係を示す興味深い現象です。患者の期待や信念が、実際の生理的変化を引き起こす可能性があることを示唆しています。この効果は、医療だけでなく、心理学や行動科学の分野でも重要な研究対象となっています。
マーケティングにおけるプラシーボ効果
上述のようなプラシーボ効果を用いて、マーケティングに応用することもできます。とりわけ相性の良いマーケティングが「占いビジネス」です。
占いビジネスにおいて、占い師と顧客はすでに「上下関係」ができあがっており、顧客にとって占い師の言うことは絶対です。上述「プラシーボ効果」の項目で解説した事例を用いるならば、占い師は言わば医者や薬剤師、顧客は治験者という立場になります。
こういった上下関係がすでにできあがっている現場において、プラシーボ効果は非常に高い効果を発揮します。占い師の言葉を信じることで、顧客の中で実際に変化が起こり、占いの効果を実感することがあります。これは、顧客の「思い込み」が現実に影響を与える一種の自己暗示とも言えるでしょう。
また、占いビジネス以外でも、健康食品や美容製品などの分野でもプラシーボ効果を活用したマーケティングが行われています。製品の効果を強調することで、消費者の期待値を高め、実際の効果以上の満足感を得られるようにする手法が用いられています。
関連記事:「確証バイアス」とは?例と採用選考や人事評価の際に注意したいポイントをご紹介
バーナム効果の代表例
バーナム効果は、日常生活やビジネスの様々な場面で見られる現象です。多くの人が経験したことのある代表的な例として、以下の3つが挙げられます。
● 占い
● おみくじ
● 血液型診断
これらは、一見個人に特化した情報を提供しているように感じられますが、実際には多くの人に当てはまる一般的な内容を巧みに利用しています。その結果、受け手は自分のことを言い当てられたような錯覚に陥りやすくなります。
このような手法は、人々の好奇心や自己認識への欲求を巧みに利用しており、古くから様々な文化圏で見られる普遍的な現象といえるでしょう。バーナム効果の仕組みを理解することで、私たちは日常生活やビジネスシーンでのコミュニケーションをより深く洞察することができます。
占い
占いでは、頻繁にバーナム効果が利用されています。生年月日や血液型といった、自身に関係する質問を多く投げかけられるため、誰にでも当てはまるものであっても自身のことを当てていると思われやすくなることが特徴です。占い師は、この心理的効果を巧みに活用し、相談者に対して共感を示しながら、一般的な悩みや願望を織り交ぜた回答をすることで、的確な占いをしているという印象を与えます。また、占いの結果を曖昧に表現することで、相談者自身が自分の状況に当てはめて解釈しやすくなり、バーナム効果がより強く働くようになります。
おみくじ
おみくじも上記の占いと同様に、誰にでも当てはまる内容が書かれていることが多いです。また、おみくじは自身が番号や札を選んで引く仕組みとなっているため、よりバーナム効果が発揮されやすいとされています。このような仕組みにより、引いた人は自分の運勢や未来を占うという感覚を強く持ちやすくなります。さらに、おみくじの結果を見た後に、その内容が自分の状況に当てはまると感じやすくなる傾向があります。これは、人々が自分に関連する情報を積極的に受け入れようとする心理が働くためです。
血液型診断
コミュニケーションの一環として、A型の人に対して「やはり几帳面だね」などと伝えることはよくあるかと思います。
ただし、血液型から正しく性格を読み解ける科学的根拠はなく、同じ血液型であれば誰にでも当てはまる内容ではあるものの、自身の血液型のことを言われるとバーナム効果が発揮される傾向にあります。
この現象は、人々が自分の血液型に関連する性格特性を聞くと、それが自分に当てはまると感じやすいことを示しています。例えば、B型の人に「自由奔放で創造的ですね」と言えば、多くの場合、その人はその描写に同意するでしょう。
しかし、これは必ずしもその人の実際の性格を正確に反映しているわけではありません。むしろ、血液型診断の曖昧さと一般性が、バーナム効果を引き起こしているのです。
バーナム効果のメリット
ビジネスの現場において、バーナム効果を上手く活用すれば以下のようなメリットを享受できます。
●コミュニケーションの深化
●信頼を集め頼りにされる
●相手との心理的距離の縮小
●商品やサービスの魅力度向上
バーナム効果は、適切に用いることで様々な場面でポジティブな影響をもたらす可能性があります。例えば、営業やカスタマーサービスの場面では、顧客の潜在的なニーズや悩みを的確に把握しているような印象を与えることができます。これにより、顧客との関係性を深め、より効果的なコミュニケーションを図ることが可能となります。
また、チームリーダーや管理職の立場にある人にとっても、バーナム効果は有用なツールとなり得ます。部下や同僚の心情を理解し、適切なアドバイスや支援を提供できる上司として認識されることで、職場内での信頼関係を築きやすくなります。
さらに、マーケティングの観点からも、バーナム効果は商品やサービスの魅力を高める手段として活用できます。顧客の一般的な欲求や不安を巧みに言い当てることで、自社の提供する解決策がより魅力的に映るよう演出することが可能です。
ただし、これらのメリットを最大限に活かすためには、バーナム効果の適切な使用方法を理解し、過度な利用を避けることが重要です。相手の信頼を裏切らないよう、誠実さを保ちながら効果的に活用することが求められます。
コミュニケーションの深化
職場での人間関係のみならず、プライベートにおける友人知人との関係、親族との関係など、どのような人間関係においてもバーナム効果は高い効果を発揮します。
「私はあなたのことを理解していますよ」と相手に思わせることで、相手の警戒を解き自分に歩み寄らせることができます。これにより、相手との心理的距離が縮まり、より深いコミュニケーションが可能になります。
相手の悩みごとに触れたり、言い当てたりすることで、自分のことを理解してくれていると認識してもらえれば、それをきっかけにコミュケーションの深化を図ることもできます。例えば、「最近忙しそうですね」や「新しい挑戦をされているようですが、うまくいっていますか?」といった声かけから会話を始めることで、相手の本音を引き出しやすくなります。
このように、バーナム効果を活用することで、相手との信頼関係を築き、より深い対話や意見交換が可能になります。結果として、互いの理解が深まり、良好な人間関係の構築につながるでしょう。
信頼を集め頼りにされる
例えば、上司が部下に対し、バーナム効果を利用して仕事の悩みなど相談事に乗ってあげれば、部下からの信頼を集め頼りある上司としての地位を確立できる可能性も高まります。
嫌な上司の特徴として「1位:相手によって態度を変える」「2位:仕事を押し付ける」「3位:高圧的/偉そう」となっており、いずれもコミュニケーション不足が原因での結果となっています。
出典:PR TIMES 嫌いな上司の特徴ランキング!男女500人アンケート調査
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000041309.html)
嫌な上司として部下に嫌われないためにも、バーナム効果を上手く活用し、部下の信頼を積極的に獲得していきましょう。また、部下一人一人の特性や悩みを理解し、適切なアドバイスや支援を行うことで、より強固な信頼関係を築くことができます。さらに、自身の経験や知識を共有し、部下の成長を支援することで、真のメンターとしての役割を果たすことができるでしょう。
バーナム効果のデメリット
バーナム効果は、上手く活用すれば相手に好意を抱かせることができる可能性がある一方で、同じ人間に多用すると効果は徐々に薄れていきます。
抽象的な内容の話ばかりが目立つようになり、自身が発する言動の信憑性も薄れていきます。こうなると相手からは「なんか怪しい」「適当なこと言っているのでは」と、疑われるようになります。また、バーナム効果を過度に利用することで、相手との関係性が表面的なものに留まってしまう可能性があります。真の信頼関係を築くためには、具体的で誠実なコミュニケーションが不可欠です。
さらに、バーナム効果に頼りすぎると、相手の個別の事情や真のニーズを見逃してしまう危険性があります。特にビジネスの場面では、顧客一人一人の固有の課題に対応することが重要であり、バーナム効果の過剰な使用は適切な対応を妨げる可能性があります。
バーナム効果を多用する分かりやすい事例
バーナム効果を多用する非常に分かりやすい事例が「ネットビジネス」や「情報商材」の勧誘です。これらの勧誘では、「今の給料では将来が不安ではありませんか?」「副業で100万円稼げたら生活が楽になると思いませんか?」といった、抽象的で不安や希望を煽るような言葉がよく使われます。
このような手法は、多くの人々の共通の悩みや願望に訴えかけることで、顧客を引き付けようとするものです。しかし、商品の性質上、具体的な内容を事前に開示することができず、購入するまで詳細が分からないという特徴があります。
結果として、全体的な印象としては不透明で怪しげな内容に終始してしまいがちです。このようなバーナム効果の過剰な使用は、長期的な顧客との信頼関係構築を困難にする可能性があります。
そのため、ビジネスにおいてバーナム効果を活用する場合は、初対面時の導入部分など限定的な使用にとどめることが賢明です。その後は、具体的かつ明確な情報提供や説明を行い、商品やサービスの真の価値を伝えることで、より健全で持続可能なセールスアプローチを実現することができます。
マーケティングにおけるバーナム効果の活用方法
ここまで、バーナム効果の概要を解説してきました。ここからは、マーケティングにおけるバーナム効果の活用方法をご説明します。
バーナム効果は、マーケティング戦略において非常に有効なツールとなり得ます。特に以下の2つの分野での活用が注目されています。
● セールストーク
● 広告
これらの分野では、バーナム効果を巧みに利用することで、顧客との関係性を深め、商品やサービスの魅力を効果的に伝えることができます。それぞれの活用方法について、順を追って詳しく見ていきましょう。
セールストーク
バーナム効果はセールストークにおいて、多くの企業が関心を抱いていることや、担当者の悩みに幅広く当てはまることを伝え、それを解決できる手段として自社の商品を紹介したい場合に利用します。
相手の関心事や悩みを理解した上で商品を提案すれば、相手側の納得感が増し、購入に至る可能性が高まります。
例えば、相手側に「パスワードの管理に悩んでいませんか?」と質問をします。
仕事やビジネスを進める上で、パソコン等で複数のパスワードを管理するのは非常に手間であり、万が一ログインができなくなる可能性を考えると、下手に触ることはできません。
そこでセキュリティを強化しつつ、管理の手間がかからないソフトやツールを提案することで、自社のサービスを利用してもらえる可能性が高まるでしょう。
ここでご紹介したセールストークはあくまで一例であるため、自社のサービスや商品に置き換えて考えてみてください。また、バーナム効果を活用する際は、相手の状況や需要を十分に把握した上で、適切なタイミングで使用することが重要です。相手の反応を見ながら、柔軟に対応することで、より効果的なセールストークを展開できるでしょう。
セールストークでは自社はお客様の良き理解者
バーナム効果を利用したセールストークでは、自社がお客様の良き理解者であることを心がけるように話を進行させていきます。そして、相手の良い面と悪い面(問題点)の両方を伝えるようにします。
例えば「御社の商品は非常に精巧に作られており完成度は高いのですが、コストが少しかかり過ぎているように思います」といった具合に、前述で「良い面=精巧に作られた完成度の高い商品」を伝え、後述で「悪い面(問題点)=コストがかかりすぎる」ことを指摘します。
このように、問題点を事前に察知し先回りして指摘することにより「当社の事情をよく把握してくれている」といった印象を与えられます。
しかしながら、完成度が高く非常に精巧に作られた商品というのは、得てして「コストがかかる」ことは容易に想像できることであり、このような一般的な指摘だけでは真の理解者としての印象を与えるには不十分かもしれません。そのため、より具体的かつ独自の洞察を提供することが重要です。例えば、業界特有の課題や、競合他社との比較における独自の強みと弱みなどを指摘できれば、より深い理解を示すことができるでしょう。
また、単に問題点を指摘するだけでなく、その問題に対する解決策や改善案を提案することで、より建設的な対話を生み出すことができます。これにより、単なる理解者から、価値ある助言者としての地位を確立することが可能となります。
広告
リスティング広告やSNS広告、マス広告においてもバーナム効果は利用できます。上述したセールストークと同じように、誰にでも当てはまりやすい悩みを広告の冒頭に配置します。
例えば、ダイエット系のサプリメントであれば「お腹周りのお肉に悩んでいませんか?」といった文言を配置することで、自社の商品により興味を示してもらえるようになります。
また、ダイエットに失敗した人が「あなたが痩せられないのは遺伝によるものかも知れません」というキャッチコピーを見れば、「これって私のことかも」と感じます。
このように、まず冒頭で「自分のことかも」と思ってもらえるような文言を配置することが、広告においてバーナム効果を発揮するための1つの手法となります。
広告におけるバーナム効果の効果的な表現
バーナム効果は「自分だけに語りかけてくれている」と思わせる必要があります。そのため、広告においてバーナム効果をより発揮させるために「みなさん」という表現方法ではなく「あなた」を使用します。
「あなた」と特定することにより、相手に「私だけ」「自分だけ」という特別感を感じさせることができます。
以下「みなさんの場合」と「あなたの場合」の2つの事例について、違いを見てみましょう。
■事例:みなさんの場合
・「時間のないサラリーマンのみなさん!健康管理はしっかりできていますか?」
~解説~
あまりピンとこず、メッセージをスルーしてしまう人も多いことでしょう。メッセージ性が薄い印象があります。
■事例:あなたの場合
・「時間のないそこのあなた!そうあなたです!健康管理はしっかりできていますか?」
~解説~
このキャッチフレーズを見た瞬間、僅かながら自分の健康について少し考えてしまう時間が発生しそうです。そして、あなたと特定していることにより相手に「自分なんだ」としっかり認識させる効果があります。
広告におけるバーナム効果の比較
ここで、バーナム効果を活用した場合の文章と、活用しない場合の文章を比較してみます。
● バーナム効果を活用しない文章の場合
● バーナム効果を活用した文章の場合
バーナム効果を活用しない文章の場合
関節痛に悩まされているみなさん!関節痛改善に向けて何かしていますか?関節痛に効く当社のサプリメントがおすすめですよ!
~解説~
・関節痛に悩まされているみなさん!→あまり「自分だ!」とピンとこない
・関節痛改善に向けて何かしていますか?→しているが治らない、何もしていない、何をするか分からない
・当社のサプリメントがおすすめですよ!→またセールス?本当に効き目なんてあるの?
■全体として
全体的にメリハリがなく、メッセージ性も薄いと言えます。特段何かを勧めようという口調でもありません。最終的にセールス目的と捉えられて、CV(コンバージョン)に結び付く可能性は低いと言えます。
バーナム効果を活用した文章の場合
関節痛に悩まされているそこのあなた!関節痛改善に向け、日々努力をしていることでしょう!しかし、関節痛は加齢と共に関節の軟骨が減少することにより、自然と引き起こされてしまうものなのです。そこで、当社が開発したオリジナルサプリメントがオススメです!
~解説~
・関節痛に悩まされているそこのあなた!→「みなさん」ではなく「あなた」を使用していることにより「あなた限定」へのメッセージ感が出ている。
・関節痛改善に向け、日々努力をしていることでしょう!→関節痛の改善に向けて日々努力をしている人に「これは自分だ」と思わせている。
・しかし、関節痛は加齢と共に関節の軟骨が減少することにより、自然と引き起こされてしまうものなのです。→「そうか、自然と起こるものなのか!だから何をやっても治らないんだ!」と、関節痛の改善に向けて何もしていない人にも、自分に心当たりがあるような効果を出している。
・そこで、当社が開発したオリジナルサプリメントがオススメです!→心当たりがあるあなたへ、当社開発の限定商品をオススメしている。
■全体として
文章全体にバーナム効果が散りばめられていることにより、メリハリが生まれメッセージ性が強く出ています。所々に自分に当てはまるような要因も入っており「これは自分に向けて発信されているメッセージだ」と思ってもらえるようになっています。
最後に、そのような人たちに向けて「限定の解決策」を提示してあげることで「自分のことが分かっているな!」と思わせることができるようになっており、CVに結び付く可能性は飛躍的に高められています。
関連記事:面白いキャッチコピーの作り方とは?キャッチコピーの例や注意すべき点も徹底解説
バーナム効果を最大化させる5つのポイント
バーナム効果は、相手からの信頼を得たり、親近感を湧かせたりできるものですが、単に利用するだけでは効果を最大化できません。バーナム効果を最大化させるには、主に4つの点に注意することが大切です。
● 特定の相手のみに伝える
● ポジティブな内容を多く訴求する
● 発信者の権威性をできる限り高める
● 言葉選びを慎重に行う
● 幅広く解釈できる言葉を使う
それぞれ順番に見ていきましょう。
特定の相手にのみ伝える
バーナム効果は誰にでも当てはまることを伝えるものではありますが、受け手に「誰にでも当てはまること」だと気づかれてはいけません。そのため、特定の相手のみに絞って伝えることが重要です。
例えば、占いでは血液型や生年月日を確認します。これは、相手に自身のみに当てはまっていると思わせるためです。このように、誰にでも当てはまる内容を確認しながらも、相手に悟られないことが重要であると理解しておきましょう。
ポジティブな内容を多く訴求する
人間は、自身にとって都合の良い情報や言葉は、信用しやすく印象に残りやすい生き物です。そのため、マイナス要素は少なくし、ポジティブな内容を多く訴求するようにしましょう。
発信者の権威性をできる限り高める
バーナム効果をどれだけ活用できたとしても、発信者自体の信頼性がなければ、効果は最大化できません。なぜなら、人は信用のない相手の言葉や態度を信頼することはないためです。
そこで重要になるのが、発信者の権威性です。例えば、Webの業界であれば、Twitterのフォロワーが10,000人以上いたり、YouTubeのチャンネル登録者が10万人以上いたりしたら、相手からの信頼はより高まるでしょう。
また、Web以外の業界であったとしても、過去に100人以上の相談に乗ってきた、常に50社以上と取引をしているなど、権威性を高められる実績を語るようにしましょう。
言葉選びを慎重に行う
言葉選びを慎重に行うことも大切です。具体的には、どのようにでも解釈できる言葉を使うということです。
例えば「あなたは悩みがありますね」と大枠で伝えるよりも、「自身では気づいていない小さな悩みがあるかもしれませんね」と伝えたほうが、誰にでも当てはまる確率が高まります。
相手にとって当てはまらない言葉を使ってもバーナム効果は発揮できないため、言葉選びを慎重に行うことを心がけましょう。
幅広く解釈できる言葉を使う
バーナム効果ではいかに「自分に当てはまる」と思わせられるかがポイントとなります。そのためには、幅広く解釈できる言葉を使う必要があります。
特定に人にしか通じないような言葉やニュアンスを使用すると「自分に当てはまる」要素が減少し、バーナム効果が発揮される人間も限られてきます。いわゆる「ターゲット層」を縮めることになるのです。
例えば「そこのあなた!『C++』を覚えてフリーランスを目指しませんか?」よりも「そこのあなた!プログラミング言語を覚えてフリーランスを目指しませんか?」の方が、多くの人間が解釈できます。
プログラミング言語を知らない人でも、これからプログラミングをマスターしてフリーランスになりたい人にとっては、突き刺さるメッセージとなります。
しかし「C++」という特定の人にしか分からない言葉を使用すると「C++って何?」という人も出てきます。こうなった人に対しては、バーナム効果の対象から外れることになります。
このように、ターゲット層を縮めないためにも幅広く解釈できる言葉を使う必要があるのです。
関連記事:禁断のカリギュラ効果!マーケティングに活用する方法とは?
バーナム効果を使う際の注意点
ここまで、バーナム効果の活用方法等を解説してきました。最後に、バーナム効果を使う際の注意点をご説明します。
● 情報収集を適切に行う
● 悪用・使用しすぎない
● 誇大表現や煽り口調は避ける
それぞれ順番に見ていきましょう。
情報収集を適切に行う
例えば、独身の方に対して既婚者向けの話題を出してしまうと、気分を害してしまったり、そもそも当てはまらなかったりする可能性があります。それらを防ぐためには、事前に相手側の情報収集を適切に行うことが大切です。
悪用・使用しすぎない
バーナム効果はマーケティングにも使える心理学であり、悪用してしまうと相手側が「騙された」と感じてしまう可能性があります。バーナム効果は適切に使用してこそ良い効果を発揮するため、悪用するものではないことを理解しておきましょう。
また、同じ相手に対して何度もバーナム効果を使ってしまうと、「また同じようなことを言っている」と思われかねません。こういった事態になることを防ぐためにも、使用頻度は最小限に抑えつつ、効果を最大化させることが重要です。
誇大表現や煽り口調は避ける
バーナム効果を活用するにあたり、最も注意したい点が誇大表現や煽り口調です。
特に誇大表現においては、近年広告業界でも規制が厳しくなっており、行き過ぎた表現を多用すると景品表示法などに抵触する恐れがあります。
そして、誇大表現同様に煽り口調にも気をつける必要があります。煽り口調とは、相手を刺激したり不快にさせたりするような言い回しのことです。
相手を上から目線で罵ったり、高圧的な態度を取ったりすると恐怖感すら覚えられ、バーナム効果を期待することができなくなってしまいます。
また、煽り口調はトラブルの元となり、名誉毀損などにも発展しかねませんので、細心の注意を払う必要があります。
まとめ
本記事では、バーナム効果の概要やマーケティングでの活用方法、注意点等を解説してきました。
バーナム効果は自身にも当てはまっていると思わせる心理・テクニックのことであり、セールストークや広告で利用することで、成約率等を高めることができます。
バーナム効果を最大化させるためにも、まずは伝える相手の選定や、発信者の権威性を高めることなどから始めてみてはいかがでしょうか。