2023.6.20

ホワイト500とは?健康経営優良法人のメリットや認定基準、ブライト500との違いについて解説

読了まで約 8

「ホワイト500」とは、健康経営優良法人制度の大規模法人部門で、上位の500法人を指す通称だ。ホワイト500には認定基準があり、その基準を満たす取り組みをしなければならない。

認定されると、企業ブランドの向上をはじめとしたメリットがあり、近年注目を集めている。ただし、たとえ認定されなくても、健康経営優良法人を目指すこと自体にメリットがある。

この記事では、ホワイト500の意味や認定されるメリット、ブライト500との違いとともに、認定基準や取り組み事例について解説する。

ホワイト500とは

ホワイト500とは、健康経営優良法人制度における大規模法人部門で、上位の500法人を指す通称のことだ。経済産業省は2016年に、健康経営の普及と促進に向けて「健康経営優良法人認定制度」を創設した。

健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に対する取り組みや日本健康会議が推奨する取り組みを実施している企業を、優良企業として認定するものだ。認定されれば「健康経営優良法人」ロゴマークを使用でき、認知度が上がれば従業員や求職者、金融機関や関係する様々な企業などから社会的な評価を受けられる。

ホワイト500とブライト500の違い

健康経営優良法人の大規模法人部門に該当するのがホワイト500であるのに対し、中小規模法人部門に該当するのが「ブライト500」だ。中小規模法人部門の中でも、上位の500法人だけがブライト500として認定される。

元々はホワイト500しか存在しなかったが、2021年度から新たにブライト500が付加された。2023年度には、健康経営優良法人に認定された中小規模法人数が13,517となっている。

大規模法人数は2,174となっており、その差は約6.2倍だ。日本企業は、大規模法人よりも中小規模法人のほうが多い。そのため、必然的にブライト500のほうが難易度が高くなっている。

参考:ACTION!健康経営(日本経済新聞社)「健康経営優良法人2023一覧

健康経営とは

健康経営とは、アメリカの心理学者「ロバート・H・ローゼン」が提唱した概念だ。従業員の健康サポートを経営戦略の一つと捉え、健康増進に対する取り組みを推進する経営手法を指している。

企業にとって、従業員は重要な経営資源だ。従業員のパフォーマンスが生産性に大きく影響するため、従業員の健康を配慮して職場環境を整えれば、従業員のパフォーマンス向上にもつながる。パフォーマンスが上がれば、自ずと生産性も向上するという考え方だ。

この考え方は、2009年頃から日本でも広まってきている。

健康経営が注目されている背景

健康経営が注目されている理由として挙げられるのは、高齢化社会による人材不足だ。働き手の減少を理由とする人材不足の影響により、採用難が問題となっている。

近年、「人生100年時代」「生涯現役」という言葉を耳にするようになった。これは働き手の減少による定年の延長を意味している。65歳以降も戦力となって働いてもらうためには、従業員の健康や働き方に配慮する必要が出てきたのだ。

また、健康経営は働き方改革の影響を受けている。働き方改革に伴い、企業には労働時間の削減や業務効率化といった変革が求められているのだ。採用市場においても、健康や働き方に対する配慮は、一般的な取り組みとして認識されているといっても過言ではない。

つまり、健康経営は企業が存続するための取り組みとして欠かせないものになりつつあるのだ。

関連記事:ウェルビーイングとは?企業経営において関心が高まっている理由

ホワイト500、ブライト500に認定されるメリット

健康経営優良法人として、ホワイト500やブライト500に認定されるメリットには、企業ブランドの向上や離職率の低下、投資家の信頼獲得が挙げられる。また、健康経営優良法人を目指すことにより、従業員の健康維持や増進、生産性の向上といったメリットも享受できるだろう。

ここでは、それぞれのメリットについて解説する。

企業ブランドの向上

ホワイト500やブライト500に認定されるメリットに挙げられるのは、企業ブランドの向上だ。消費者がサービスを利用する際の判断材料の一つに、ブランド力がある。社会的に認知度が高い会社や評判が良い会社のサービスであれば、消費者が安心して利用できるのだ。

健康経営優良法人に認定された場合、経済産業省のホームページに企業名が公開される。健康経営に取り組んでいる企業として認知されれば、信頼できる企業のサービスとして認知され、利用促進につながるだろう。

また、健康経営優良法人には専用のロゴマークも付与される。ロゴマークは名刺やホームページ、看板などの様々な場面で使用できる。健康経営優良法人の認定によって企業ブランドが向上すれば、消費者からの信頼向上に効果があるのだ。

人材の獲得

2つ目のメリットは、離職率の低下だ。現代は、少子高齢化による人材不足の影響を受けて「売り手市場」となった。企業を選ぶ立場となった求職者は、働く条件に報酬だけではなく、労働環境や福利厚生も重要視している。

労働環境や福利厚生を重視する求職者に対し、健康経営優良法人としてホワイト500やブライト500に認定されることは、大きなアピールになる。労働環境を整える取り組みをしていると認識されるため、従業員を大事にする企業として応募者に評価されるのだ。応募者に評価されれば必然的に応募者数も増え、優秀な人材を獲得できる可能性も高くなるだろう。

また、健康経営優良法人に認定されることは、従業員に対しても有効だ。自社の労働環境が整い、従業員を大事にする風土が伝われば「自社に貢献したい」と考える従業員が出てくる。

そのような従業員が増加すれば、離職率低下にもつながる。その結果、人材流出を防ぐとともに、採用コストの削減にもつながるのだ。

投資家の信頼獲得

3つ目のメリットは、投資家の信頼獲得だ。健康経営優良企業に認定されれば、企業ブランドの向上につながることは前述した通りだ。これは顧客や従業員だけではなく、ステークホルダー全体からの信頼獲得にもつながる。

ステークホルダーには、企業に投資する投資家も含まれる。ホワイト500に認定されることにより、資金集めにも役立つ可能性があるのだ。

従業員の健康維持や増進

4つ目のメリットは、従業員の健康維持や増進だ。健康経営優良法人を目指す取り組みを推進すれば、従業員にとって働きやすい環境が整う。従業員が健康的に働ける環境が整えば、健康維持や増進効果だけではなく、メンタルヘルスの不調防止や長時間労働の抑制にもつながるだろう。

働きやすい環境が整うことにより、従業員の心身の健康維持につながるのだ。

生産性の向上

5つ目のメリットには、生産性向上が挙げられる。健康経営優良法人を目指す取り組みを推進すれば、働きやすい職場環境を整えられるのは前述した通りだ。心身の不調は、モチベーションやパフォーマンスに影響する。

従業員が心身ともに健康であれば、仕事に対するモチベーション向上につながる。働きやすい職場環境は、パフォーマンスの向上に直結するだろう。モチベーションやパフォーマンスが向上した従業員が増えれば、企業の生産性向上にもつながるのだ。

関連記事:コロナで変わった人事業務の最新情報。問われるリモートワークでの生産性向上

ホワイト500、ブライト500の申請方法

ホワイト500とブライト500の申請方法は、基本的に同様となってはいるものの、ブライト500を申請する場合は、健康宣言事業への参加が必要となっている。どちらも、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトにて申請可能だ。

ここでは、ホワイト500とブライト500の申請方法と、認定までの流れについて解説する。

ホワイト500の申請方法

ホワイト500に認定されるには、以下の手順を踏む必要がある。

1. 健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトより、経済産業省が実施する「健康経営度調査」に回答し、申請する
2. 認定委員会による審査
3. 調査内容を基に日本健康会議による選考

8月下旬〜10月中旬までが申請期間となっており、3月頃に認定法人が発表される。

健康経営度調査は、企業に対して取り組みのサポートも実施する。そのため、健康経営を導入したいものの取り組み方が分からない企業は、健康経営優良法人に申請し、ノウハウを身につけるのも一つの方法だ。

ブライト500の申請方法

ブライト500の認定手順は以下の通りだ。

1. 加入している保険者が実施している健康宣言事業に参加する(協会けんぽ、国保組合など)
2. 健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトより、健康経営優良法人認定申請書に回答し、申請する
3. 認定委員会による審査
4. 調査内容を基に日本健康会議による選考

基本的な流れはホワイト500と同様となっているものの、健康宣言事業への参加が必要だ。8月下旬〜10月下旬までが申請期間となっており、3月頃に認定法人が発表される。

ホワイト500、ブライト500の認定基準

ホワイト500とブライト500には、それぞれ認定基準が設けられている。要件は共通しているものの、項目や認定条件が異なるため、それぞれの認定基準を理解しておかなければならない。

ここでは、それぞれの認定基準について解説する。

ホワイト500の認定基準

ホワイト500の認定基準には、以下の認定要件が存在する。認定を目指す企業の経営者や人事担当者は、これらの認定要件や条件を把握しておく必要がある。

表:ホワイト500の認定基準

制度・施策実行については、定期健診受診率の実質100%や適切な働き方実現に向けた取り組み、食生活の改善といった評価項目が16個設けられている。ただし、認定基準は随時見直されており、定期的な確認が必要だ。

参考:経済産業省「健康経営の推進について

ブライト500の認定基準

ブライト500の認定基準も、基本的にはホワイト500と同様だ。ただし、評価盲目と認定要件については異なる箇所が存在する。

表:ブライト500の認定基準

制度・施策実行の選択項目となる14項目と、評価・改善のうち6項目以上の実施が条件となっているため、理解しておく必要がある。

参考:経済産業省「健康経営の推進について

関連記事
マインドフルネスとは?ビジネス環境のストレスを軽減する方法を解説
コーピングとは?ストレスを軽減するために企業で実践できる具体的な方法

認定企業の取り組み事例

健康経営優良法人に認定される取り組みは、睡眠の質向上や禁煙、食習慣の改善など多種多様だ。どの企業も、従業員の健康課題を把握した上で施策を講じている。ここでは、認定企業の取り組み事例について解説する。

アイデアル株式会社

情報通信会社であるアイデアル株式会社は、従業員の健康管理と、新卒採用や対外的なPRを目的として、健康経営への取り組みを開始した。そこで行った健康調査において、睡眠の質低下を感じる従業員が半数を超えたことにより、睡眠を健康課題と認識する。

睡眠の質に不満がある従業員の割合を半分以下にすることを目標に設定し、運動施策を決定した同社は、全従業員が参加する歩数チャレンジを実施したのだ。チーム対抗戦によって競争意欲を高めつつ運動を促進したところ、睡眠の質が向上する効果を得られた。

有限会社新郷運輸

運輸会社である有限会社新郷運輸は、一人の従業員の健康問題をきっかけとして健康経営への取り組みを開始した。脳内出血によって就労不能になったことを受け、喫煙による脳血管疾患や心臓血管疾患への対策が課題だと認識したのだ。

禁煙チャレンジに取り組んだ同社は積極的な支援を行い、禁煙パイポと禁煙パッチを購入して参加者に配布した。また、禁煙外来の受診費用一部負担や禁煙達成者への報奨金支給も実施し、禁煙を支援している。

数名が禁煙や卒煙に成功し、従業員の健康意識向上につながった事例だ。

株式会社エイジェントヴィレッジ

保険会社である株式会社エイジェントヴィレッジは、退職者の多さを問題と捉え、健康経営への取り組みを開始した。テレワークの導入によって、頭痛や肩こり、眼精疲労に悩む社員が増加したこともあり、フィットネスタイムの導入に踏み切ったのだ。

朝礼時のストレッチタイムや就業中のフィットネスタイムを設けたり、ウォーキングイベントを開催したりするなど、フィットネスの時間を確保した。その結果、眼精疲労に悩む人や体の痛みを訴える従業員が減少するとともに、ワークエンゲイジメントの向上につなげた。

大垣タクシー株式会社

タクシー会社である大垣タクシー株式会社は、従業員に対して実施した健康習慣アンケートの結果を受け、健康経営への取り組みを開始した。アンケートでは「食べ物に関して健康を意識しているか」という設問に対し、25%の従業員が「6ヵ月以内に健康作りを始める意思がない」と回答したのだ。

食生活の改善を課題と捉えた同社は、3ヵ月に1度は食生活に関する情報を全従業員に向けて配布し、食生活習慣の改善を促した。さらに、食事・栄養管理支援アプリを無償配布し、食生活と食習慣を継続的に改善できる取り組みを実施したのだ。

食生活に関する情報を提供することにより、食生活への関心を向上させ、食事・栄養管理支援アプリにより、食生活と食習慣の改善につながった。

取り組み開始から10ヵ月後に、同様の健康習慣アンケートを実施した。その結果「6ヵ月以内に健康作りを始める意思がない」と回答した従業員は、13%にまで減少している。食習慣の意識改善により、健康を意識する従業員の増加につなげたのだ。

株式会社エヌ・ケーエンジニアリング

産業廃棄物処理やクリーニング事業を営む株式会社エヌ・ケーエンジニアリングは、健康経営優良法人の認定制度を知ったことにより、健康経営への取り組みを始めた。従業員の声を聞いたところ、婦人科検診や健康関連セミナーの実施や参加補助を希望する声があった。

その声を受け、女性特有の病気や不調を抱えている従業員が、安心して働ける職場作りをするための取り組みを実施することになったのだ。婦人科検診の受診やセミナーの実施日を女子ロッカー室に掲示したり、卵巣がん・子宮がんの腫瘍マーカー検査を会社の費用負担で受けたりすることができる制度を設けた。婦人科検診を受診する場合は、勤務時間内に受診できる仕組みも作った。

また、女性特有の病気や不調に関するリーフレットを作成するとともに、困っていることをディスカッションする場も設けたのだ。このディスカッションも就業時間中の開催が可能だ。

その結果、婦人科腫瘍マーカー検査は目標の100%を達成した。リーフレットの配布とディスカッションは好評で、ディスカッションでは会社への希望や環境改善の意見が集まり、今後も継続できる取り組みとなっている。

株式会社アヤハ自動車教習所

株式会社アヤハ自動車教習所は、健康経営の推進組織として健康経営委員会を発足し、取り組みを開始した。季節によって閑散期と繁忙期があるものの、適正な労働時間を設定できていないことが課題となっていた。

そこで同社は、季節に応じて労働時間の適正化を図ることにより、年間の労働時間数削減を目指す取り組みを実施したのだ。労働時間を削減するために取り組んだ施策が、営業時間の短縮だ。閑散期である4月~7月と10月、11月の6ヵ月の教習枠を1時間削減した。閑散期の土日祝日は残業なしを基本とし、営業時間も10時間営業から9時間営業に短縮した。

それによって営業時間が5%削減され、年間営業時間数は目標の120時間削減を上回る149時間の削減に成功したのだ。教習枠の削減によって売上は減少したものの、従業員には時間的な余裕や心のゆとりが生まれたため、健康の維持・増進につなげられた。

まとめ

「ホワイト500」とは、健康経営優良法人制度の大規模法人部門に認定された法人のうち、上位の500法人を指す通称だ。一方、中小規模法人部門に該当するのが「ブライト500」である。健康経営優良法人に認定されれば「健康経営優良法人」ロゴマークを使用でき、社会的評価を受けられる。

健康経営とは、従業員の健康サポートを経営戦略の一つと捉え、健康増進に対する取り組みを推進する経営手法だ。健康経営優良法人に認定されると、企業ブランドの向上や離職率の低下、投資家の信頼獲得といったメリットがある。たとえ認定されなくても、健康経営優良法人を目指すことにより、従業員の健康維持や増進、生産性の向上といったメリットを享受できるだろう。

ホワイト500とブライト500は、健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトにて申請可能だ。申請方法は基本的に同様となっているものの、ブライト500を申請する場合は、健康宣言事業への参加が必要となっている。ホワイト500とブライト500には、共通した認定基準が設けられている。ただし、項目や認定条件が異なるため、それぞれの認定基準を理解しておかなければならない。

健康経営優良法人に認定された企業は、どの企業も従業員の健康課題を把握した上で施策を講じている。自社でホワイト500やブライト500の認定を目指すのであれば、まずは従業員の健康課題の調査から始めてみてはいかがだろうか。

関連記事:健康経営アドバイザーとは?従業員の資格取得で企業が得られるメリットも解説

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

get_field('cf_general_profile_name', 39);

『MarkeTRUNK』編集部

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から
知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。
さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。
独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

関連記事 RELATED POSTS

関連資料ダウンロード RELATED POSTS

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら