2023.1.11

新卒の通年採用を解説!メリット・デメリットや導入までの流れを紹介

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近年、新卒者の通年採用を採り入れる企業が増えている。そこで今回は、新卒の通年採用に関する基礎知識や、一括採用との違いなどを紹介する。

学生と企業それぞれのメリットやデメリット、通年採用を導入するまでの流れも解説しているため、併せてチェックしよう。

新卒の通年採用とは?

そもそも通年採用とは、期間を限定せずに1年間を通じて採用活動を行うことを指す。通年採用自体は、これまでも中途採用で広く実施されてきたものである。しかし、新卒については毎年同じ時期に一定数を採用する「一括採用」が主流であった。

現在は、新卒者の採用に対しても通年採用を採り入れる企業が増えている。また、通年採用を採り入れることによって、留学から帰国した日本人学生や日本に留学している外国人留学生、既卒者といった様々な人材を採用できるメリットがある。そのため、近年では新卒者を採用する難易度が高まっていることもあり、人材を獲得するために通年採用に力を入れる企業が増えた。

基本的に通年採用では、新卒か中途かを問わず、ポストが空いた場合に必要に応じて人材を募集していく。アメリカなど、海外の多くの国で主流の採用方式ではあるものの、日本ではまだ主流にはなっていない。

通年採用が注目を集めている背景には、以下のような理由がある。

● 新卒一括採用が時代に合わなくなっていること
● 就活に関するルールの廃止
● 就職活動の早期化
● 企業のグローバル化
● 転職する人が増えたこと
● 新卒就職後3年以内の離職率の高さ
● 少子化などによる人材確保の激化

新卒採用は長い期間、経団連が定める就活ルールに則って一括採用が実施されてきた。しかし、経団連が2018年に就活ルールの指針廃止を発表して以降、各企業が独自の採用活動を行うようになってきているのだ。

また、企業のグローバル化も関係が深い。海外と日本では大学の卒業時期が異なり、日本の大学に合わせた採用スケジュールだとグローバル人材を獲得しにくいため、通年採用が注目を集めているのである。

関連記事:通年採用とは?「新卒一括採用」との違いや近年広まる背景

通年採用と一括採用の違いとは?

通年採用と一括採用の大きな違いは、通年採用が年間を通じて新卒採用を行うのに対して、一括採用は新卒学生を同じ時期にまとめて採用するという点である。

そもそも一括採用とは、新卒者を同じ期間に毎年一定数採用するというもので、日本では主流の採用方法だった。日本では、学業と就職活動が両立できるように配慮して、経団連が一括採用のルールを定めてきた。

一括採用は決まったスケジュールであるため、帰国子女などはタイミングが合わずに採用しにくいことが課題だ。一方で通年採用ならば、採用の時期や期間が限定されないことにより、帰国子女や既卒者なども幅広く採用できる。

一括採用のスケジュールでは、企業による広報活動が3月に開始され、6月に本格的な採用活動がスタートするのが基本だ。

ただし先述の通り、経団連による就活ルールについては廃止が発表されている。そのため、2021年3月卒の新卒採用からは政府主導で一括採用における採用活動の開始時期が定められている。今のところ、2023年3月卒までは今まで通りのスケジュールで進められる。2024年3月卒以降からは、通年採用が本格化すると考えられている。

関連記事:新卒一括採用とは?日本特有の制度ができたきっかけやメリット、デメリット

通年採用のメリットとは?

通年採用とは、採り入れることによって企業側にも労働者側にもどちらにとってもメリットがあるシステムだ。新卒者にとってのメリットは、以下の通りである。

● 採用時期が限定されないため、ゆとりのあるスケジュールが組める
● 多くの企業を受けるチャンスが増える
● しっかりと事前準備を行った上で就職活動ができる

一方で、企業側にとってのメリットは以下の通りだ。

● 従来よりも丁寧な採用活動が可能
● 一括採用では出会えなかった層の人材にアプローチできる
内定を辞退した学生がいたとしても、また新たな人材の採用が可能

それぞれのメリットを詳しく確認しよう。

学生にとってのメリット

新卒者の通年採用が導入される際に学生にとってのメリットとなる点は、スケジュールに余裕ができることと、多くの企業を受けるチャンスが増えることなどだ。

一括採用では学生にとっても短期間で採用してもらう必要があるため、説明会や面接を毎日のように受けることとなり大変である。通年採用ならば採用時期が限定されなくなり、無理のないスケジュールを立てられるのだ。また、しっかりとした事前準備ができるようになるため、一社ずつ対策を立てながらの就職活動が可能となる。これにより、納得感のある就職活動になると言われている。

さらに、一括採用の際よりも期間が長い分、複数の企業の選考日が重なりにくくなるため、多くの企業を受けるチャンスがあると言えるだろう。

企業にとってのメリット

一方で新卒者の通年採用を導入することでの企業にとってのメリットは、多様な人材を確保できること、選考に時間をかけられること、内定辞退が生じても柔軟に対応できることなどだ。

先述の通り、新卒者の通年採用の導入によって、海外の大学に留学していた学生や外国人留学生などのグローバル人材を確保しやすくなる。さらに、一括採用ではスケジュールが煩雑すぎて応募できなかった学生も、各社の採用時期が分散することによって応募可能になり、様々な人材に出会えるだろう。

また、期間に縛られずに採用活動ができ、選考に時間をかけられるようになるため、本当に自社に合った人材なのかどうかをじっくり見極められる。

採用活動後、内定していた新卒者が辞退してしまうケースもある。この場合も、通年採用を導入していたならば、定められた時期以外でも代わりの新卒者を採用できるのだ。

関連記事:通年採用のメリットとは?関心が高まる通年採用の最新トレンド

通年採用のデメリットとは?

一方で、通年採用にはデメリットもある。学生にとってのデメリットは、以下の通りだ。

● 企業側の求めるレベルが高くなる可能性がある
● 自発的な就職活動を行う必要がある
● 情報やスケジュールの管理が難しくなる

また、企業にとってのデメリットは以下の通りである。

● 採用業務の通年化によって業務量が増加する
● 採用にかかるコストが増える
● 研修や教育の質を保ちにくくなる
● 仲間意識や帰属意識の醸成が難しくなる

それぞれ詳しくチェックしていこう。

学生にとってのデメリット

学生から見た際の通年採用によるデメリットは、企業側の要求レベルが高くなる可能性があること、情報収集やスケジュールの管理が難しくなること、自発的な就職活動の必要性が高まることだ。

通年採用を導入した企業は、時間をかけて選考できるようになる。つまり、人材への期待度と採用コストとのコストパフォーマンスなどをじっくりと考えられるため、求めるレベルが高くなる可能性があるのだ。

一括採用ではなくなることで、企業ごとに異なる採用スケジュールが決定されるようになる。そのため、自身でしっかりと情報を取得しないと、希望する企業に応募し損なってしまう恐れがあるだろう。情報収集と正確なスケジュール管理の必要性が高まると言える。

さらに、今までのように短期間での就職活動ではなくなることにより、学業との両立が困難になる可能性もあるだろう。

企業にとってのデメリット

企業にとっての通年採用のデメリットは、採用業務の通年化によって業務量が増加すること、採用コストの増加、研修や教育の質を保ちにくくなることなどがある。

期間に限らず採用活動を行えるようになるため、PR活動や採用試験などを同じ時期に実施することもあり得る。その結果、採用担当者への負担が増加する可能性があるだろう。

また、期間に限らずPR活動を行うことによる採用広告費の増加など、コスト面でのデメリットもある。一定の期間にまとめて採用していたときと比べると、多くの採用者に対して同時に研修や教育を実施できなくなるため、教育の質を一定に保ちにくくなる。

同時期に入社して切磋琢磨することでの仲間意識も育ちにくくなること、それによる帰属意識が醸成しにくくなることもデメリットだ。

関連記事:メンバーシップ型雇用とは?ジョブ型雇用との違いや、企業と従業員のメリット・デメリットを解説

通年採用導入までの流れ

このように、新卒者の通年採用の導入には様々なデメリットがあるものの、メリットは多いものである。一斉に採用活動が始まる方法では、どうしても有名な大手企業に学生の興味が集まりやすくなるため、通年採用は人材を確保するために有効な手段だ。

実際に企業で通年採用を導入するまでの一般的な流れは、大きく分けると以下の5つのステップがある。

● 採用計画の立案
● 人材要件の定義
● 採用チームの編成
● 選考方法の検討
● 研修体制の検討

まずは要員計画を基に、いつまでにどの部署に何人採用する必要があるのかを確認し、採用計画を立てる。次に必要な能力や活躍してほしい人物像を考えて求める人材を明確にし、採用するターゲットの解像度を高めていく。

続いて、採用活動を行うチームを編成する。先述の通り、通年採用を導入することで同時期に複数の採用活動を行う必要があるため、負担が集中しないように複数人で対応するのが望ましいだろう。

その後、求めるターゲット像に対してアプローチする方法と選考方法を検討する。アプローチする方法は、費用や工数、特徴、自社に合っているかどうかなどを総合的に判断するといいだろう。選考方法を検討する際は、短期間に集中してしまう新卒一括採用では有効でなかった選考方法であっても、通年採用であれば有効となる可能性があることを理解しておこう。

通年採用では入社時期にばらつきが出るため、研修体制の検討やそれぞれの部署での受け入れ体制の整備も必要である。新入社員がスムーズに馴染めるように、フォロー体制を構築しよう。

関連記事:欲しい人材を獲得したい。採用課題を解決するブランディングの必要性

まとめ

通年採用とは、期間を限定せずに年間を通じて採用活動を行うことだ。

通年採用が注目を集めている背景には、以下のような理由がある。

● 就活に関するルールの廃止
● 就職活動の早期化
● 企業のグローバル化
● 転職する人が増えたこと
● 新卒就職後3年以内の離職率の高さ
● 少子化などによる人材確保の激化

通年採用は、採り入れることによって企業側にも労働者側にもメリットがあるシステムだが、デメリットもある。通年採用導入までの流れなどの情報も参考にして、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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