2023.11.1

短期離職とは?メリットやデメリット、転職を成功させる方法を解説

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短期離職とは、2〜3年以内の離職を指す言葉だ。不本意就職の増加や価値観の変化などの理由で、近年短期離職の問題に直面する人が増えている。

ただし、短期離職は必ずしもネガティブなことだけではない。この記事では、短期離職のメリットや採用担当者の見解、転職を成功させる方法について解説する。

短期離職とは何か

短期離職は、2〜3年以内の離職を指す言葉だ。一般的に、短期離職は転職時に不利になると考えられている。ただし、企業や業種によって短期離職の捉え方は異なる。たとえば、ITや飲食など汎用的な経験やスキルを積める業界では、短期離職でも問題視されない傾向がある。また短期離職が一度だけなら、書類選考の段階で容認されることも多い。

厚生労働省が2019年に卒業した新規学卒就職者の離職状況を取りまとめた調査結果によると、就職後3年以内の離職率は高卒が35.9%、大卒が31.5%に上ることが報告されている。新規大学卒就職者に関しては、前年度と比較して0.3%増加する結果となった。調査結果から、新規学卒就職者の約3人に1人は短期離職していることがわかる。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します

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短期離職が増加した背景

短期離職が増加した背景には、以下のことが考えられる。

● 不本意就職の増加
● 産業構造の変化
● 日本型雇用の崩壊
● 価値観の変化

それぞれの項目について詳しく解説する。

不本意就職の増加

短期離職が増加した背景には、不本意就職の増加が考えられる。一般的に人材に投資できる好景気の時期は企業の採用人数が増え、採用ハードルも下がる傾向にある。求職者は希望条件や能力に見合う企業に就職しやすくなるため、離職率が低下するのだ。逆に、人材への投資が困難になる不況期は、求人が減るうえに企業の採用基準が引き上げられる。

求職者は就職するために、希望条件や能力に見合う企業に就職できる可能性が低下する。結果的に不本意就職が増え、入社後の早期離職につながるのだ。厚生労働省によると、正社員として働ける機会がない不本意非正規の割合は全体の18.4%に上ることが報告されている。

参考:厚生労働省「若年者雇用を取り巻く現状

産業構造の変化

早期離職の増加背景には、産業構造の変化も挙げられる。産業ごとで異なる雇用慣行が、早期退職の上昇に影響を与えていると考えられているのだ。日本はバブル崩壊後に製造業の就業者数が減少し、サービス業や小売業などに就職する若者が増えている。

長期安定雇用で人材育成が手厚い製造業は、一般的に離職率が低い。一方、サービス業や小売業は、労働時間が不規則、かつ接客によるストレスが溜まりやすいため、離職率が高い傾向にある。早期離職率の高い業界への就職者数が増えたことが、早期離職数全体の数字を押し上げていることが考えられる。

日本型雇用の崩壊

日本的雇用慣行が、早期離職率の上昇に影響を与えると考えられている。雇用慣行とは日本独自で発展した雇用システムのことで、終身雇用や年功序列などの特徴がある。

日本的雇用慣行は、2000年前後から崩壊しつつあり、近年は成果主義が台頭している。年齢や勤続年数に応じて賃金が上がることはなく、右肩上がりで昇給する明るい未来を描けないのだ。特定の企業に長期間留まる動機が弱まり、早期離職を選択する若者が増えている。

価値観の変化

早期離職が増えた背景には、仕事に対する価値観の変化も考えられる。公益財団法人日本生産性本部によると、2000年以降を境に新入社員の価値観が「会社重視」から「仕事重視」に変化したことが報告されている。企業を選ぶ際の基準が、入社後にスキルを伸ばしてくれる仕事であるかを重視する方向に変化しているのだ。

このような仕事に対する価値観の変化が、自分のスキルアップにつながらないのであれば会社を退職するという思考に結び付いている。若者にとって企業は将来を通して働く場所ではなく、自分を成長させるための止まり木と認識されているのだ。

参考:公益財団法人日本生産性本部「平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査結果
関連記事:早期退職制度とは?意義やメリット、デメリットなどを解説

短期離職のメリット

主なメリットには、以下のことが挙げられる。

● 多様な経験の獲得
● 適性やキャリアを見つけやすい
● 自由に働き方を選べる
● 新しい環境への適応力向上

それぞれのメリットについて詳しく解説する。

多様な経験の獲得

短期離職のメリットとして、多様な経験を獲得できることが挙げられる。短期間での退職は採用担当者に悪い印象を与えることもあるが、スキルや経験を積めない会社で働き続けるのは単なる時間の浪費につながることも多い。我慢して働き続けるより、一刻も早く今の会社に見切りをつけて自分が求めるスキルや経験をつける会社に転職したほうが得策だ。

とくに、複数の企業や業界での転職を経験している場合、その経験を通して高いスキルセットを習得できることは間違いない。近年は人材不足の課題を抱える企業が増えているため、多様な経験は生産性向上や業務効率化の実現につなげられる。多様な経験がある社員は、即戦力になる人材として転職先で重宝される可能性があるだろう。

適性やキャリアを見つけやすい

複数の企業や業界での転職を経験することで、適性やキャリアを見つけやすくなる。興味がある企業や業界でも、実際に入社して働いてみると自分に向いていないと感じることも少なくない。自分に合わない仕事を続けるより、短期退職して新しい環境で働いたほうが有意義な時間を過ごせるだろう。

自分に向いている仕事が見つかれば、今後のキャリアプランも設定しやすくなる。自分に向いていなくても、我慢して働き続けることで得られるスキルや経験もあるかもしれない。しかし、決断と行動が早ければ早いほど自分に合う仕事を見つけられる可能性は高くなる。

自由に働き方を選べる

短期離職のメリットとして、労働環境をリセットできることが挙げられる。転職を希望する理由は人によって異なるが、出産や育児、介護などを機に働き方を見直すことも少なくない。ほかにも、職場の人間関係や業務内容に不満を抱える人もいる。

自分が置かれた状況を改善したい場合には、転職が有効な手段となるのだ。短期離職であれば、ライフスタイルや家庭の事情に応じて職場を変えられる。仕事で感じる精神的なストレスも解消できるため、健康的に働き続けられるのも大きなメリットだ。

新しい環境への適応力向上

複数の企業を経験すると、新しい環境に迅速に適応する能力が養われる。企業によって仕事の進め方は異なるため、前職のやり方に固執すると職場に馴染めなくなることも多い。また変化の激しい時代において、競争優位性を維持するためにDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要度が増している。

DXとは、デジタル技術を用いて業務効率化やビジネスモデルの創出を実現させることだ。DXの取り組みにより、仕事の進め方や組織体制が大きく変わることもあるため、環境変化に対する適応力が求められている。このような流れを受けて、採用担当者も新しい環境への適応力を重視する傾向があるため、短期離職の経験は転職活動でプラスになるのだ。

関連記事:キャリア形成とは?重要性や社員のキャリア形成の進め方を人事視点で解説!

短期離職のデメリット

主なデメリットには、以下のことが挙げられる。

● 転職市場での評価が下がる
● キャリアが中断する
● 経済的に不安定になる
● 人間関係の構築が難しい

それぞれのデメリットについて詳しく解説する。

転職市場での評価が下がる

短期転職を繰り返すと、採用担当者の信頼が低くなることが考えられる。転職市場での評価が下がるため、提示される労働条件が悪くなることがあるのだ。納得できる労働条件での就職が難しくなり、結果的に不本意就職につながる場合もある。

近年は人材の流動化が進んでおり、短期離職する社員も少なくない。転職回数より在籍期間を気にする採用担当者も多く、短期間で転職を繰り返す人は採用リスクが高いと判断される。転職活動が思うように進まず、難航してしまう可能性があるのだ。

キャリアが中断する

短期転職を繰り返すことで、キャリア形成にも悪い影響を与える可能性がある。短期転職により専門性やスキルの継続的な向上が難しくなり、キャリアが中断されてしまうのだ。キャリア中断がマイナス要素となり、転職活動が難航する場合もある。

また、十分な経験を積めないまま転職すると、どの職場でも新人扱いになることも多い。就職できたとしても重要な仕事やマネジメントを任されるまでに時間を要する可能性がある。転職時は、異なる業界や職種でも通用する汎用的なスキルを強調することが重要だろう。

経済的に不安定になる

短期離職を繰り返すと、経済的に不安定になることが考えられる。短期間で転職を繰り返す人は採用担当者から採用リスクが高いと判断され、転職活動が難航する可能性がある。転職できないとその期間は収入を得られないため、経済的に厳しくなるのだ。

また、短期離職を繰り返す人は生涯年収が下がる傾向にある。管理職や優れた能力の持ち主でない限り、提示される労働条件が悪くなることも多い。とくに、未経験でのキャリアチェンジを目的とした転職では年収が上がることは期待できない。結果的に生涯年収が下がり、老後の生活資金に影響する可能性があるのだ。

人間関係の構築が難しい

短期間での離職を繰り返すと、深い人間関係を築くことが難しくなる。転職先でもどのように関係を深めればいいのかわからず、入社してもチーム内での役割や位置づけが不安定になることがあるのだ。職場での人間関係を構築できないと意思疎通がうまくいかず、円滑に業務を進められなくなることも多い。

それが精神的なストレスにつながり、短期離職の原因になることもあるのだ。ただし、どの企業に就職しても仕事をするには、上司や同僚、取引先とのコミュニケーションは欠かせない。自分から積極的に声をかけるなど人間関係を深めるための努力が必要になるだろう。

関連記事:終身雇用は崩壊したのか?背景と原因、転職市場で必要なスキルを解説

採用担当者の短期離職に対する見解

転職市場において、短期離職を繰り返す人は不利になることが多い。採用担当者から採用しても退職する可能性があると判断され、転職が難航することが恐れがあるのだ。日本型雇用の崩壊や仕事に対する価値観の変化により、人材の流動化が進んでいる。

こうした社会の流れは仕方ないと許容する一方、優秀な人材には少しでも長く働いてほしいと考えているのが企業の本音だ。とくに日本は、少子高齢化による人材不足の課題に直面する企業も多い。優秀な人材を獲得して生産性を上げ、業務を円滑に回したいのだ。

多くの採用担当者は、転職回数より在籍期間を重要視する傾向にある。転職回数が多くても在籍期間が長ければ採用価値があると判断され、採用してもらえる可能性があるのだ。転職活動を行う際は、短期離職に対する採用担当者の見解を理解しておくことが重要である。

短期離職後、転職を成功に導く方法

主な方法には、以下のことが挙げられる。

● 短期離職の課題を考える
● キャリアプランを明確にする
● 退職理由の伝え方を考える
● 希望条件に優先順位をつける
● 業界分析を徹底的に行う
● 転職エージェントを利用する

それぞれの方法について詳しく解説する

短期離職の課題を考える

短期離職を繰り返している場合は、課題を明確にすることが重要だ。業務内容の相違や家庭の事情による離職が理由なら、求人選びの基準を明確にすることが解決策になる。業務内容の相違は、自己分析や企業のリサーチ不足が原因であることも多いため改善が必要だ。

待遇面での不満や職場環境が悪いことが短期離職の理由なら、転職先でも同じことが起きないように改善策を考えることが重要になる。短期離職を繰り返す人は、転職先でも同じ理由で辞めることも少なくない。面接時に退職理由を聞かれたときは、採用担当者の懸念を払拭できる回答を用意しておくことが重要になる。

キャリアプランを明確にする

転職先とのミスマッチを防ぐには、自身のキャリアプランを明確にすることが重要だ。とくに、短期離職を繰り返している場合はキャリアの軸がなく、何をしたいのかわからない状態に陥る人も多い。これまで経験してきた仕事を振り返り、情報を整理したうえで自己分析やキャリアプランを設計することをおすすめする。

採用担当者は、応募者がどのようなキャリアプランを描いているのかを重要視している。たとえ短期離職を繰り返している人でも、今後のキャリアプランを明確に描けていれば、採用価値があると判断されることも多い。本格的に転職活動をはじめる前にまずは自分と向き合い、本当にやりたい仕事を見つけることが重要だ。

退職理由の伝え方を考える

少しでも長く働いてほしい企業にとって、短期離職を繰り返す応募者は採用リスクが高くなることがある。転職を成功させるには、採用担当者の納得を得られる退職理由を伝えることが重要だ。また退職理由は、ポジティブな内容にまとめることが求められる。

決して前職の不満ばかり挙げてはいけない。採用担当者から、「言い訳ばかりする」「嫌なことから逃げる」といったマイナスの印象を与える可能性がある。退職理由はあくまで客観的な事実を伝えると同時に、「自分の判断が甘かった」「慎重に行動すべきだった」など反省の姿勢を見せることが重要だ。

希望条件に優先順位をつける

転職活動をする前に、希望条件に優先順位をつけることが重要だ。希望条件の優先順位を明確にすることで、企業のミスマッチを防げる。とくに離職理由が「業務内容が違う」「残業が多い」である場合、企業の選び方に問題があることが考えられる。

希望条件に優先順位をつけて企業を選べば、前職と同じ間違いを繰り返すことはない。優先順位をつける際に重要なのは、「譲れない条件」と「譲れる条件」を明確にすることだ。希望条件を整理できれば判断基準が明確になり、求人探しや企業選びが楽になるだろう。

業界分析を徹底的に行う

後悔のない転職を目指すためには、業界分析を徹底的に行うことが重要である。転職する企業情報が不十分なまま転職するとミスマッチが起こり、短期離職を繰り返す可能性があるのだ。とくに、未経験の業界は知識や理解が不足していることも多い。知識や理解が不足した状態で企業分析をしても、深く理解することはできないだろう。

業界分析で知識や理解を深めたら、転職希望先の企業分析だ。企業分析は、企業概要や事業内容など基本的な情報収集を行うのが一般的だ。労働環境や職場の雰囲気について知りたい場合は、既存社員から直接話を聞くのが有効である。

転職エージェントを利用する

短期離職に悪い印象を持つ採用担当者もいる。特定業界における経験やスキルがあっても転職活動が思うように進まない場合は、転職エージェントに相談するのがおすすめだ。プロの視点から助言してくれるため、転職を成功させる解決策を見つけられる可能性がある。

また、応募時には転職エージェントから採用担当者に短期離職の事情を説明してもらえるため、企業側の懸念を取り除ける可能性があるのだ。採用担当者の納得を得られる説明ができれば、書類選考の通過率を上げられることも多い。自己分析や経歴書の添削、面接対策の支援もしてくれるため、効率的に転職活動を進められるだろう。

関連記事:希望退職とは?依願退職との違い、残った人のその後、退職金などについて解説

まとめ

人材の流動化が進む現代で、短期離職は珍しいことではない。多様な経験を得られたり自由な働き方を選べたりなど、決断と行動が早いことがメリットにつながることがあるのだ。

一方で、短期離職を繰り返す人は採用リスクが高いと考える採用担当者がいるのも事実である。転職活動を成功させるには、退職理由の伝え方を考えたり転職エージェントを利用したりするなどの対策が必要になるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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