2021.12.10

MECE(ミーシー)とは?ビジネスで使えるロジカルシンキングの基本を解説

読了まで約 5

MECE(ミーシー)とは、重複も漏れもない状態、あるいは重複も漏れもないように考えることを指す言葉だ。MECEを理解することはロジカルシンキングを実施するうえでも役に立つ。具体的にはどのような考え方なのか、また、どのように進めていくことができるのか解説する。

MECE(ミーシー)とは

より多くの人に受け入れられる企画を打ち出すためには、消費者が抱える課題やニーズを網羅的に理解することが必要だ。しかし、些細な要素も取りこぼすことなく理解することに集中するあまり、同じ要素を何度もカウントして物事を複雑化してしまうのでは効率性が落ちてしまう。
そこで意識したいのがMECE(ミーシー)の考え方だ。MECEを意識することで、網羅性と効率性を両立することが可能になる。

関連記事:フレームワークとは何か?思考を整理しビジネスを進めていくための枠組みを解説

MECE(ミーシー)とは

MECE(ミーシー)とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った言葉で、日本語では「漏れがなく重複もない」と訳される。また、ミッシーと発音されることもある。

例えば、あるコーヒーショップがモーニングのメニューを考えるとしよう。通勤する会社員だけを対象に考案すれば、学生や主婦のニーズを取りこぼしてしまうことになる。

また、会社員と男性を対象にすれば、男性の会社員については2回考慮することになり、効率性が落ちるだろう。通勤客と通学客、地元住民、旅行客の4つにターゲットを定めることで、ある程度漏れがなく重複もない状態を構築できるかもしれない。

ロジカルシンキングとは

ロジカルシンキングとは、根拠を積み重ねて論理的に破綻がないように思考し、結論を導く方法のことだ。ロジカルシンキングを実施するためには、物事を順序だてて考える必要があるが、その際に基本となるのがMECEである。MECEの考え方を習得しておけば、漏れがなく重複もない状態で根拠を積み重ねていくことができるため、結論にも破綻が生じにくくなるだろう。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチとは、全体を把握して枠組みを決定してから細部を作り上げるアプローチ方法のことだ。全体がすでにわかっている場合やゴールが明確に定まっている場合には、トップダウンアプローチが利用しやすく、また、結論を導くまでの時間を短縮できる。

ただし、全体がわかっていない場合や分類に漏れがある場合には、トップダウンアプローチを利用することは難しい。また、体系的に分類することが難しい事象について分析するときにも、トップダウンアプローチは利用しづらい可能性がある。

ボトムダウンアプローチ

ボトムダウンアプローチとは、細部から全体を導き出すときに用いられるアプローチ方法である。まずは考えられる要素を列挙し、何らかの共通点を見つけて分類し、体系を探り当てていく。

ボトムダウンアプローチは、全体像が見えていないときでも分析できるというメリットがある。だが、列挙する際に漏れが生じやすく、分類の方法によっては重複の可能性もある。

MECEの実施には、漏れや重複が生じにくいトップダウンアプローチが基本となる。しかし、全体像が見えていない場合にはボトムダウンアプローチで試し、全体像をつかみつつトップダウンアプローチで修正を加える方法も有効といえるだろう。

MECEのやり方を解説

思いつくままに要素を列挙するだけでは、MECEは実現できない。漏れが生じやすくなるだけでなく、分類の軸がないため重複する要素が生じることもある。次の3つのステップでMECEを実行していこう。

1. 要素を列挙する方針を定める
2. 階層に注意をして要素を洗い出す
3. 要素を因数分解し、漏れや重複がないかチェックする

MECEを実行するためには、まずは列挙する方針を決めることが必要だ。例えばドリンクについて考えるとき、コーヒー、紅茶、缶ジュース、ワイン、カフェオレ、オレンジジュースと思いつくままに列挙するのでは漏れや重複が生じる。

ドリンクを構成する要素(コーヒー、紅茶、ブドウ、オレンジなど)で分類するのか、それとも容器(缶、使い捨てカップ、マグカップなど)やアルコール飲料(ビール、ワインなど)だけでまとめるのか、最初に方針を決めておくことが必要になるだろう。

列挙する方針や枠組みを決めた後、階層に注意をして要素を洗い出す。例えばコーヒーと紅茶は、いずれもドリンクの構成要素という点では同階層に分類できる。しかし、コーヒーとミルクティーでは分類軸が判然としない。コーヒーと紅茶を別の枠組みで処理し、紅茶の枠組みの中にミルクティーを入れることで、同階層への分類が実現し、漏れや重複も回避しやすくなるだろう。

特定の要素を洗い出す際に、因数分解をして考えると漏れや重複を回避しやすくなることがある。例えば売上を決定する要素について考えるとき、売上を来店客の数×利用金額と因数分解し、さらに来店客と利用金額を決定する要素をそれぞれ因数分解すれば、売上向上に必要な要素や改善点が見えてくるだろう。

MECEの状態

MECEを利用してロジカルシンキングを実施するためには、MECEの状態について熟知している必要がある。MECE、つまり、漏れもなく重複もない状態とは具体的にどのような状態なのか見ていこう。

漏れもなく重複もない

例えば「年齢」は、漏れもなく重複もない状態で分類できる基軸となりうる。40代でありつつ、50代でもある人間は存在しないので、20歳未満、20代、30代、40代、50代、60代、70歳以上のように分類すればターゲットを取りこぼすことはない。

また、「居住地」もMECEを実現するための基軸とすることができる。「生活の中心となる場所」として分類すると、京都に住みつつ大阪で働いている人のようにダブる人が生じる可能性があるが、住民票のある「居住地」と限定すれば、重複や漏れは生じなくなるだろう。

MECEでない状態

MECEではない状態は、次のいずれかに分けられる。

・ 重複はないが漏れがある
・ 漏れはないが重複がある
・ 重複も漏れもある

それぞれ具体的にどのような状態なのか解説する。

重複はないが漏れがある

例えば年齢で分類する際に、20歳未満、20代、30代、40代、50代だけを選択肢とするならば、60歳以上の人を対象とすることができない。このように重複しない枠組みを使って分類する場合も、選択肢を十分に用意しないことで漏れが生じることがある。

また、カフェのメニューを考える際に、ターゲットを働く女性と男子学生だけに限定すると、対象が重複することはなくても、働く男性や女子学生、無職などを取りこぼす可能性がある。重複がないことで効率性は低下しないものの、漏れが生じていることで網羅性がなくなる恐れがあるといえるだろう。

漏れはないが重複がある

またカフェのメニューを考案する、というシーンを考えてみよう。ターゲットを通勤する会社員と学生、無職の3つに分類した場合、すべての人を網羅しているように見える。しかし、会社員でありながら学生でもある人を重複して考えることになり、解決すべき課題が複雑化する恐れがあるだろう。分類する要素を決定するときは、漏れがないようにチェックするだけでなく、重複が生じないか検討しておく必要があるといえる。

重複も漏れもある

こちらもカフェメニューを考える例で考えてみよう。ターゲットを働く女性と働く男性、女子学生、男子学生に定めると、学生でもなく労働者でもない人、例えば無職高齢者や専業主婦・主夫を漏らすことになる。

また、働きながら学校に通う人については重複がある状態だといえるだろう。網羅性が低いだけでなく効率性も低くなるので、ロジカルシンキングをしにくい状態ともいえる。

MECEで分類できないこともある

すべての要素をMECEで分類できるわけではない。例えば売上は来店客の数と利用金額の要素に分類できるが、立地や店舗の清潔さといった数字で示せない要素も売上に関わってくる。そのため、漏れも重複もない状態に分類したとしても、売上に関わるすべての要素を列挙したことにはならない可能性があるだろう。

また、MECEで分類できる内容であっても、現場を知らないなどの理由ですべての要素を列挙できない可能性がある。MECEについて理解するとともに、MECEを現実にするための経験を積み、想像力を働かせることも必要といえるだろう。

役立つフレームワーク例

MECEを実施するうえで、活用できるフレームワークがいくつかある。次の3つのフレームワークを紹介する。

・ 3C分析
・ 4P分析
・ SWOT分析

それぞれ具体的にどのようなフレームワークなのか見ていこう。

3C分析

3C分析とは、取り巻く環境から自社分析をするときに活用できるフレームワークだ。3CとはCustomer(市場)とCompetitor(競合他社)、Company(自社)を指し、それぞれの立場に立って環境を明確に書き出し、自社が持つ強みと弱みを分析していく。

例えば市場環境では市場の規模や成長性、市場に対する顧客のニーズや消費行動などの要素を挙げることができるだろう。また、競合他社の立場から各社のシェアや特徴、業界のポジション、今後の事業展開を理解していくことができる。そのうえで、自社の理念や現状、経営資本を分析し、強調する点や不足点を洗い出す。

関連記事:3C分析とは?やり方や手順、テンプレートも紹介

4P分析

4P分析とは、商品やサービスの分析に対して用いることが多いフレームワークだ。4PとはProduct(商品)とPrice(価格)、Promotion(販売促進)、Place(場所、流通)を指し、それぞれの要素で分析を進めていく。
まず商品やサービスに対してはブランド力や信頼性などをチェックすることができるだろう。次に価格が適切であるか、集客方法が適切かつ十分であるか、流通に問題がないかを確認し、商品やサービスが持つ総合力を分析する。

関連記事:4Cとは何か?4C分析の意味や活用方法、知っておきたい5Cや4P分析との違いも解説

SWOT分析

SWOT分析とは、Strength(強み)とWeakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの観点からプロジェクトや商品を分析し、戦略を立てるフレームワークだ。また、企業自体や市場を網羅的に分析する際にも用いる。

まとめ

MECEの概念を理解することは、ロジカルシンキングを実施するためにも不可欠なことだ。3C分析や4P分析などのフレームワークを活用すればMECEを実施しやすくなるだろう。企業課題を見つけるときや販売促進を進めていくときなど、状況に応じたフレームワークを活用して分析を実施してきたい。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

get_field('cf_general_profile_name', 39);

『MarkeTRUNK』編集部

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から
知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。
さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。
独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

関連記事 RELATED POSTS

関連資料ダウンロード RELATED POSTS

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら