2021.12.14

職務分掌とは?必要な理由やデメリットは何か

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職務分掌(しょくむぶんしょう)とは、役職や職務ごとに果たすべき役割を明確にすることを指す言葉だ。各人の責任が明確になり、働きやすくなるというメリットがある。なぜ職務分掌が必要とされているのか、また、どのようなデメリットがあるのか見ていこう。

職務分掌とは

業務を遂行していくうえで、責任を明確にする必要性が生じることも少なくない。責任の範囲が明らかになると職務に対する権限も明確化するため、役割分担ができ、業務効率が向上しやすくなるだろう。

業務における責任を明確にするための方法として、「職務分掌(しょくむぶんしょう)」を用いることがある。従業員が多く責任範囲が曖昧になりがちな大手企業だけでなく、少人数で業務を遂行するベンチャー企業でも職務分掌の実施は珍しくない。

職務分掌と業務分掌

職務分掌とは、社員各自がそれぞれの役割を明確にし、職務における責任のありかを配分することだ。責任のありかが明確になることで、それぞれの職務や役職が持つ権限も明らかになり、ストレスを抑えて仕事にまい進できるようになる。

なお、職務分掌と似た言葉に「業務分掌」がある。これは職務分掌により役割を明確にし、その役割が果たすべき業務を明らかにすることだ。つまり、業務分掌は職務分掌をしたうえで実施されることで、業務分掌により各人のすべきことが具体的に明らかになるといえる。簡単にまとめると以下のようになる。

・ 職務分掌:個人の業務や責任の範囲を明らかにする
・ 業務分掌:業務の具体的な内容を明らかにする

職務分掌とジョブディスクリプション

ジョブディスクリプション(職務記述書)とは、職務の内容について詳しく記した文書のことだ。ジョブディスクリプションの作成により、職務を遂行するうえで必要とされるスキルや成果を明らかにすることができる。

例えば、商品AをB社に届ける業務において、チームリーダーCは「正しい数量を正しい期限までにB社に届ける」という責任を与えられたとしよう。これは職務分掌に該当する。

また、業務分掌において、このチームリーダーCの具体的な業務は、自社工場の発送時とB社に届いたときに数量を確認すること、不良品がないか調べること、輸送した結果を本社に報告することと定めることができる。この場合、ジョブディスクリプションには、以下のような項目を記載しておくことができるだろう。

・ 外箱の数を確認し、表に記入
・ 開封して破損した内箱がないか確認する
・ 破損した内箱の個数を本社に伝える

細かくジョブディスクリプションを決めておけば、業務に漏れがないか確認するチェックシートとしても活用できる。また、ジョブディスクリプションを見れば、どのようなスキルが必要とされているか確認することもできるだろう。例えば上記の例であれば、詳細に確認する慎重さや緻密さが求められていることがわかる。

こうした業務を細分化し、担当する業務内容や範囲、難易度、必要なスキルなどをジョブディスクリプションにまとめ、どのような能力を持つ人が必要かということを明確にし、その能力にマッチした人を採用し、合意を取り、仕事に取り組むという雇用形態が「ジョブ型雇用」だ。

関連記事:メンバーシップ型雇用は薄れゆく?ジョブ型雇用への転換で企業が求められることとは

職務分掌が必要な理由

職務分掌を実施することで、各人の役割や業務の責任が明確になり、「この業務は誰の管轄か?」「誰が責任者か?」といったことに悩まされる状況がなくなるだろう。仕事を遂行するうえでのストレスも軽減され、働きやすくなるというメリットがある。

しかし、職務分掌のメリットはストレスの軽減や働きやすさの向上だけではない。次の3つを実現するという理由からも、職務分掌は組織構築のうえで欠かせないポイントであるといえる。

・ 内部統制
・ 人材育成
・ ジョブ型雇用

内部統制

内部統制とは組織内で統制を取り、トップが事業内容だけでなく業務の遂行方法や事業の安定性をチェックして管理することだ。また、事業活動を進めていくうえで、法令を守り、企業としてのコンプライアンスを保てているかなども、企業トップがチェックする。

内部統制が取れている企業は、リスクに対する管理や対応がスムーズに行われるというメリットがある。また、事業に関する情報を一元管理できるため、株主や取引先などの利害関係者に情報を公開しやすい点も内部統制のメリットだ。

内部統制を実現するためには、職務分掌を実施し、すべての従業員に対して職務内容や権限、責任について割り振る必要がある。職務分掌を実施していることでトップは企業内の業務の流れや責任のありかを理解でき、より効率よく企業管理を行えるようになるだろう。

なお、職務分掌を実施し、内部統制の取れた企業を実現するためには、職務分掌した内容について明文化しておくことが必要だ。例えば、ある業務の責任はチームリーダーDにあるということをチーム内のスタッフ全員が知っているだけでは、職務分掌を実現したとはいえないだろう。

実際に責任を負わなくてはいけない状況になったとき、チームリーダーDは「業務を行っていただけで、自分に責任があるとは知らなかった」というかもしれない。このようなことがないためにも、職務分掌を実施する際には、担当者や職務内容を明記して書類として保管しておく必要がある。

人材育成

職務分掌を実施することで、各人が自分の果たすべき業務が明らかになる。「何をすべきか」が明らかになると、自分が何を習得すべきか、何を訓練すべきかが明らかになり、一人ひとりが努力目標を立てやすくなるだろう。

つまり、特定の業務のプロフェッショナルを育成する際にも、職務分掌は優れた取り組みといえる。割り振られた業務以外を行う必要がないので、自分のすべきことに集中し、より高いクオリティに仕上げることができるようになるだろう。

また、職務分掌により権限を与えることで、自分の業務について責任を抱くようになる。より一層主体性を持って業務に取り組むようになるため、自分の頭で考え、自分の行為に対して責任を持つ人材を育てることにもつながるだろう。

ジョブ型雇用

ジョブ型雇用とは、業務に適した人材を雇用することを意味する言葉だ。一般的な採用活動においては、企業に合う人材を選び、雇用する。しかし、ジョブ型雇用においては、最初に仕事があり、その仕事に合う人材を選び、雇用する。

雇用する人材が担当する仕事が明らかなときは、ジョブ型雇用を実施することで、より即戦力のある人材を確保し、業務効率を上げることが可能になる。また、適材適所を実現することができるため、従業員が自分に合わない業務を任されて不満に感じるというケースが少なくなることも期待できるだろう。

職務分掌を実施し、どの業務を誰が行うか、誰の責任とするかということが明白であれば、新たに雇用する人材が担当する業務や責任も明白になる。つまり、ジョブ型雇用を実施しやすく、より効率よく生産性の高い業務体制を実現できるだろう。

なお、現代の日本では、ジョブ型雇用を実施している企業は多くはない。業務に必要と思われる人数を補填し、その人材を必要と思われる仕事に割り振る「メンバーシップ型雇用」が一般的だ。

しかし、メンバーシップ型雇用では、採用した人材が業務に適さないリスクがあり、人員数の不足は補えても即戦力の不足は補えない可能性がある。その場合は、採用したにも関わらず外部に人材を求めることになり、人件費が割高になる恐れもあるだろう。より効率のよい採用活動を実現するためにも、職務分掌を行ったうえでジョブ型雇用を実施する必要がある。

ただし、ジョブ型雇用にもデメリットがあるので、実施前に確認しておくことが必要だ。例えば特定の業務遂行のために人材を雇用する場合は、雇用した人材が担当する業務はすでに割り振られていることになるため、各自の裁量で新しい業務に挑戦することや、仕事量を増やして成果物の増加を実現することもできなくなる。そのため、雇用された人材の能力が適正に評価されず、昇進や昇給につながりにくくなる可能性もあるだろう。

ジョブ型雇用を実施する場合でも、従業員の裁量で判断できる部分を残し、各自のスキルを適切に評価できる体制を構築しておくことが望ましい。特にジョブ型雇用により採用した人材を長期的に雇用する場合には、自由度を高め、能力を発揮できる土壌を作っておく必要があるだろう。

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職務分掌のデメリット

職務分掌にはメリットも多いが、少なからぬデメリットもある。特に次の2点については、職務分掌を実施する前に対策を講じておく必要があるだろう。

・ 誰が担当するか不明瞭な業務が発生した際に上手く進まない恐れ
・ 生産性や従業員のモチベーション低下の恐れ

誰が担当するか不明瞭な業務が発生した際に上手く進まない恐れ

職務分掌を実施することで、「自分が担当する仕事以外はしなくてよい」という認識が従業員の間に生まれることがある。このような認識が広がると、自分以外の従業員が担当する業務は手伝わないことが当たり前になってしまう可能性がある。

また、誰が担当するか不明瞭な作業については、自発的に行おうとしなくなるだけでなく、仕事の押し付け合いになってしまうことも職務分掌の弊害といえるだろう。明瞭に割り振れない業務に対しては、どの従業員たちが協力してどのように遂行するのかについてあらかじめ話し合っておくことで、仕事の押し付け合いを回避できるかもしれない。

生産性や従業員のモチベーション低下の恐れ

職務分掌を実施することで従業員間の連携が取りにくくなり、生産性が落ちる可能性がある。また、いつも同じ作業ばかり、いわれたことだけを行うということが常態化し、従業員のモチベーションが低下する恐れもあるだろう。

通常の業務以外を割り振られたときも、自分でどうすべきか考えずに、上司の指示待ちをするようになるかもしれない。生産性やモチベーションの低下を回避するためには、従業員各自に目標を設定し、能力や成果物を評価できる仕組みを構築しておくことができるだろう。

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まとめ

職務分掌には指示系統が明確になり、内部統制が取れた組織が作りやすくなるというメリットがある。その反面、仕事の押し付け合いやモチベーション低下、生産性低下などのデメリットにつながる可能性があるため、実施する際には注意が必要だ。特定の概念や仕組みにこだわるのではなく、さまざまな要素を合わせて自社に合うスタイルを構築していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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