2021.12.15

トップマネジメントとは?ISOにおける定義、役割と責任

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トップマネジメントとは、組織の上層部が経営方針を決定して運営・管理を遂行することを指す言葉だ。また、上層部を指す言葉として用いられることもある。トップマネジメントにはどのような役割や責任があるのか、どんなスキルが求められるのか見ていこう。

トップマネジメントとは

トップマネジメントとは、トップ(上層部)がマネジメント(経営、管理)することを指す言葉として用いられる。組織運営を円滑化し、企業活動における責任を分散させるためにも、トップマネジメントを機能させる必要がある。

また、企業の上層部という意味でトップマネジメントという言葉を用いることがある。この場合、トップマネジメントは1人ではなく、複数の人数で構成されることが一般的だ。複数でマネジメントを行うことで、企業の透明性が保たれ、構成員の負担も軽減される。国際規格の普及のために設立された国際標準化機構(ISO)でのトップマネジメントの定義について見ていこう。

トップマネジメントとは?ISOの定義

トップマネジメントが企業の上層部を指す場合、どの役職までを上層部とするかという問題が生じる。小規模の企業では取締役だけが上層部と認識されている可能性もあるが、大企業などでは取締役以外の重役も上層部と認識していることが多いだろう。

ISOではトップマネジメントを「最高位で組織を指揮し、管理する個人あるいはグループ」と定義している。つまり、企業の最高位に位置し、指揮と管理を行う個人あるいはグループであれば、すべてトップマネジメントと考えることができるのだ。

マネジメントの3構造

トップマネジメントは企業の上層部であり、なおかつ指揮と管理を行う個人あるいはグループを指す。しかし、マネジメント自体はトップだけで行われるのではない。以下の3つの構造に分かれ、各担当を管理・指揮することで企業のマネジメントを遂行している。

・ トップマネジメント層(経営層)
・ ミドルマネジメント層(部長、課長クラス)
・ ロアマネジメント層(係長、主任クラス)

それぞれの層に含まれる役職や管轄範囲、役割について見ていこう。

トップマネジメント層(経営層)

トップマネジメント層は、企業の上層部に位置する経営層のことだ。ISOの分類によれば、組織の指揮や管理を担当する役職を指すことになる。例えば株式会社であれば、代表取締役社長や副社長、また、取締役会に参席する人々全員を含めることもあるだろう。

日本ではトップマネジメント層に該当する役職や人材を指して「経営層」と呼ぶこともある。また、経営層は企業経営に関する意思決定を行い、企業の方針を決めて動かしていく役割を果たすことが多い。

ミドルマネジメント層(部長、課長クラス)

組織系統図でトップマネジメント層の下位に位置する層を「ミドルマネジメント層」と呼ぶ。ミドルマネジメント層はトップマネジメント層が決定した方針を具体的な業務として落とし込み、各部署に割り振る。日本の企業では、中間管理職である部長や課長がミドルマネジメント層といえるだろう。

部長や課長は現場も知りつつ、経営層の意図も理解しているため、現場への指示に具体性と経営者目線をプラスすることが可能だ。経営者と現場の架け橋にもなり、企業を前進させていく。

ロアマネジメント層(係長、主任クラス)

ミドルマネジメント層の下位に位置する層が「ロアマネジメント層」だ。ミドルマネジメント層によって提示された業務を従業員に割り振り、指示どおりに遂行しているか管理する。日本の企業では、係長や主任などがロアマネジメント層といえるだろう。

ロアマネジメント層は現場の中で業務を行うため、より実務的な目線で業務遂行と管理を実施することが可能だ。ただし、業務遂行のために部署内やグループ内の方針を決めることはあるが、基本的には会社全体に関わるような方針や計画を立てることはない。

トップマネジメントが果たすべき役割

企業において、トップマネジメントには以下の4つの役割を果たすことが求められる。

・ 経営理念、事業戦略の決定
・ 組織運営
・ 人材開発、次世代リーダー育成
・ リスクマネジメント

それぞれ具体的にどのような役割を求められるのか、詳しく見ていこう。

経営理念、事業戦略の決定

企業の根幹となる経営理念を策定することは、トップマネジメントが行うべき仕事だ。企業活動を大局的に観察し、創業の思いなども反映しつつ、経営理念や行動指針(ミッションステートメント)、理念を構成するMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を策定する。
また、近年企業戦略やブランディングのキーワードとして用いられ、「存在意義」を意味するパーパス(Purpose)も明確にしたい。

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事業戦略の決定もトップマネジメントが果たすべき業務のひとつだ。経営の基幹となる事業分野を決定し、どのように業務を遂行していくか、資金や人材、他企業とのネットワークなどの経営資源が十分であるか確認する。

既存業務の遂行と管理に加え、新規業務についてもトップマネジメントが決定権を握ることが一般的だ。どの市場に参入するのか、すでに進出している企業があればどう差別化するのか、トップマネジメントが決定する。常に未来も視野に入れ、事業戦略を立てて企業が進むべき道を指し示すことがトップマネジメントには求められているといえるだろう。

組織運営

事業戦略を決定した後、戦略を実現するための組織を構築することが必要になる。業務遂行に適した組織構造を構築し、人事体制や人材育成のシステムを整えることも、トップマネジメントが果たすべき役割といえる。

また、整えた制度やシステムを管理し、組織が企業理念を実現する方向で機能しているか確認し、運営することもトップマネジメントが担う役割だ。

人材開発、次世代リーダー育成

企業成長には優秀な人材が不可欠だ。必要な人材を採用し、また、既存の人材を有効活用するだけでなく、より良い成果を上げるために能力を開発することも欠かせない要素といえるだろう。

トップマネジメントは人材開発を進める役割も担当する。従業員が本来持つ能力を十分に発揮し、さらに伸ばすことができるように、組織を構築し、評価制度を整え、必要に応じた教育も実施することができるだろう。

また、次世代のリーダーを育成することもトップマネジメントが果たすべき役割だ。従業員の能力や業務への取り組み方を公平に評価し、リーダーにふさわしい人材を見つけ、育成を行う。

リスクマネジメント

企業活動を遂行するにあたり、何らかの支障が生じることがある。また、特定の事象が企業存続を左右することもあるだろう。

トップマネジメントは起こりうるリスクを想定し、リスクを回避するための対策を取る必要がある。また、危機的な状況が生じたときにもスムーズに対応できるように、緊急時の指示系統や状況分析システム、対応における優先順位付けなどを行っておくことも必要だ。

リスクマネジメントを実施することで、被害を最小限に抑え、リスクを引き起こす原因を追求し、企業経営に生かすことができる。また、再発防止にもつながるだろう。

トップマネジメントに必要なスキル

トップマネジメントが果たすべき役割を遂行していくためには、次の3つのスキルを備えていることが求められる。

・ コンセプチュアルスキル
・ ヒューマンスキル
・ テクニカルスキル

それぞれのスキルが指す内容について、詳しく解説する。

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、状況を体系的に理解し、各状況が織りなす構造を見抜き、概念化したうえで具体的に対応するスキルのことだ。コンセプチュアルスキルがあれば、保有する知識を知識として認識するだけでなく、知識を別の知識や経験とつなぎ、目的を達成するための具体的な方策を立てることが可能になる。

また、コンセプチュアルスキルを身につけるには、状況を分析する能力やロジカルシンキング、批判的思考力、多角的な視野、先見性などの多岐にわたる能力も求められる。今まで蓄積してきた経験や知識を縦断して連動させ、状況に応じて活用することも必要になるだろう。

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ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは目的を達成するためにどのような人間関係が必要になるかを見抜き、必要に応じて人間関係を構築していくスキルのことだ。社内の人間関係だけでなく社外も巻き込み、経営をスムーズに進めていく際に発揮される。

ヒューマンスキルを身につけるには、バランス能力やリーダーシップ、業務管理スキルなども求められるだろう。また、時代の新しい流れを敏感に察知して取り入れていくことも求められる。

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テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、業務を遂行するために必要とされる能力のことだ。例えば業務に関する知識や技術などは、テクニカルスキルと呼べるだろう。

また、その場に応じた知識や技術を保有するだけでなく、適切な場面で適切に実施することもテクニカルスキルには求められる。自社製品やサービスに対して深く理解しているのはもちろんのこと、製品やサービスを生み出す現場で求められる知識や技術もある程度保有していることも求められるだろう。

テクニカルスキルには、業務を遂行するスキルも必要とされる。つまり、現場で何が必要かを具体的に考え、必要な行動を選択し、適切に構築した人間関係を活用しつつ、企業が掲げる目標を達成するために業務を遂行することも、トップマネジメントに求められるスキルのひとつなのだ。

まとめ

トップマネジメントは、ISOによれば「最高位で組織を指揮し、管理する個人あるいはグループ」と定義されている。日本の株式会社においては社長や取締役などが該当すると考えられるだろう。

トップマネジメントには、企業理念を策定するだけでなく、基幹業務や新規事業を考え、組織を運営し、人材を開発することが求められる。また、万が一に備えてリスクマネジメントを実施し、トラブルが生じたときに適切な対応を行い、被害を最小限に抑えることもトップマネジメントに求められる役割だ。

そのため、単に上層部の地位にあるだけでなく、物事を概念化し、人間関係を構築し、現場に求められる知識や技術をある程度獲得していることも求められる。上層部にふさわしい人物になるべく、必要なスキルを習得していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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