2022.9.7

アジャイル組織とは?概要や事例、組織開発を進めるポイント

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アジャイル組織とはソフトウェア開発などで使われていた概念を組織に当てはめたもので、柔軟性や適応力などがメリットである。今回はアジャイル組織の概要やティール組織、ホラクラシー組織、注目を集める背景を紹介する。実際の事例や組織開発を進めるポイントも解説するため、併せてチェックしよう。

アジャイル組織とは?

アジャイル組織とは、もともとソフトウェア開発方法の一種として、エンジニアが使っていた「アジャイル開発」の概念を組織全体に適応させたものである。そのため、とくにシステム開発をする方にとっては馴染みが深い言葉だ。新しい組織の形として注目を集めており、今ではIT企業のみならず、業種を問わずさまざまな企業においてビジネス用語として広く使われている。

はじめに、アジャイル組織とはどのようなものなのか、その概要と似た概念から解説していく。そもそも「アジャイル」とはなにを指すのか、アジャイル組織の特徴、ティール組織やホラクラシー組織との違いを詳しくチェックしていこう。

そもそもアジャイルとは

そもそもアジャイルとは「Agile」という英単語をカタカナで表記したものであり、言葉の意味には「俊敏」や「迅速」、「素早い」などがある。アジャイル組織でいう「アジャイル」は、もともとソフトウェア開発やシステム構築の際に使われていた用語である「アジャイル開発」という開発方法からきている。

ソフトウェア開発などの際にアジャイル開発とよく比較される開発方法には、「ウォーターフォール開発」がある。ウォーターフォール開発とは、開発に取り掛かる前に要件定義からリリースまでの全工程について緻密に計画を立て、その計画どおりに進めていく開発手法だ。比較的リリースまでの期間が長くなりやすく、企画してからリリースまでにニーズが変わった場合、変化への対応が苦手である。

一方、アジャイル開発は要件定義からリリースまでの期間を短縮できるもので、変化が激しい現代に合った開発方法だといわれている。アジャイル開発では綿密な計画を立てずに設計に余白を残し、短いサイクルで繰り返し試行錯誤をしながら開発を進めていく。提供してからフィードバックを受け、再度開発してリリースするといったサイクルを素早く進めていける方法で、顧客の要望に柔軟に対応できること、トラブル発生時に強いことなどの特徴がある。

アジャイル組織とは

アジャイル組織とは、このアジャイル開発の概念を組織全体に当てはめたものだ。もともとIT業界においては、「オープンで俊敏性のある組織」のことをアジャイル型組織やアジャイル組織と呼んでいた。新しい組織の形として注目されたことにより、近年ではさまざまな業界でビジネス用語として取り入れられている。

日本では、トップの権限が強い「中央集権型」や「ピラミッド型」と呼ばれるような組織が主流であった。この組織のあり方は軍隊からきていて、多くの人材を管理したうえでトップの考えたとおりの方向性へと戦略的に進めていきやすい組織づくりである。

しかし、近年になって自動化やデジタル化が進められたことで変化があった。たくさんの人をまとめて同じ方向に向かわせるのではなく、デジタル技術で対応できない部分を人がおこなうようになったのである。これにより、組織のあり方自体も変わっていったのだ。

アジャイル組織がうまく機能すれば、これまで縦割り組織としてバラバラになっていた異なる部門を混成してチームを作ったとしても、メンバーを機動的かつ効果的に動かしていけるようになるだろう。

アジャイル組織の特徴は、大きく分けると以下のとおりである。

・ 権限と責任が分散されつつ備わっている、フラットな組織であること
・ 従業員が心から共感でき、素早く意思決定しても組織としての一貫性を保てるような行動の指針となるものがあること
・ 短期間でPDCAサイクルを回せ、フィードバックをもらってから改善を重ねていけること
・ リーダーは従来の組織のようなマネジメントをするのではなく、メンバーを信頼したうえで牽引していくこと
・ 時代の変化に合わせて柔軟かつ積極的にカスタマイズしていくこと

これらの特徴から、アジャイル組織のメリットとして「柔軟性と適応力があること」や「パフォーマンスの向上」、「エンゲージメントの向上」、「組織の健康状態の向上」などが挙げられる。またメンバーに一定の権限を与えることから、「メンバーのモチベーションアップ」もアジャイル組織によるメリットのひとつである。

一方で、アジャイル組織のデメリットは「マネジメントの難しさ」や「最終的なゴールが見えにくくなること」、「積極性や自立感のあるメンバーでなければアジャイル化が向いていないこと」だ。メリットとデメリットそれぞれを理解して、組織運営につなげていこう。

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ティール組織との違い

アジャイル組織のように次世代型の組織として注目を集めている概念には、「ティール組織」と「ホラクラシー組織」がある。このうちのティール組織とは、フレデリック・ラルー氏が著書のなかで提唱したものだ。「自主経営」や「全体性の発揮」、「組織の存在目的」といった3つの要素を備えた組織理論で、決定権が個人にある自律分散型の「進化する組織」のことである。

ティール組織は進化した組織の形だといわれており、一人ひとりのメンバーが経営の視点や所感を持ち、経営者に等しい自立した個としてつながっている状態だ。つまり、個々人が十分な情報と業務遂行に要する権限を持ち、組織として進化を繰り返していく理論である。

ティール組織もアジャイル組織も、どちらも「組織の自律性」や「自己組織化」が概念として含まれており、似かよった部分のある考えだといえるだろう。

関連記事:ティール組織(進化型組織)とは?次世代型の組織づくりの考え方

ホラクラシー組織との違い

ホラクラシー組織とは、役職や上司、部下という関係性が一切存在しないフラットな組織のことである。中央集権型から分散権限型へと組織を移行する際、仕事を体系化するための組織概念として使われている。

ホラクラシー組織は、「ティール実現のための一形態」として紹介されたり、または「ティール組織と対比する組織」として紹介されたりすることがある。ホラクラシー組織もティール組織も非常に似た概念を実現させるための組織体制であるものの、明確な違いがあるものだ。

ホラクラシー組織で権限を持つのは個人ではなく、グループに権限が委ねられている。権限が組織の一部に集中しない点ではティール組織やアジャイル組織と同じであるものの、権限のもち方やルールにのっとって運営することなどに違いがあるのだ。

関連記事:ホラクラシー組織のメリット・デメリットとは?VUCA時代におけるティール組織との違いについて

アジャイル組織が注目を集める背景

先述したように、アジャイル組織が注目を集める背景には、近代化によって自動化やデジタル化が進められたことが挙げられる。また、SNSなどの普及や世の中のニーズが「モノ」から「コト」へと変わったことなどから、変化が激しい競争環境になった。これにより、時代の変化に合わせて柔軟かつ積極的にカスタマイズしていく必要性が高まったことも、アジャイル組織が注目を集める背景だ。

近年の競争環境の急激な変化によって、変化に適応できない企業は生き残りが困難になったといわれる。組織の柔軟性や変化への適応力を高めるために、もともと主流であった中央集権型の組織からアジャイル組織へと変化させる企業が増えているのだ。

アジャイル組織を推進している事例

アジャイル組織は、日本においてここ数年で急速に普及している組織のあり方である。とくに、大手企業の間でアジャイル組織の概念を取り入れようとする動きが活発だといわれている。アジャイル組織を推進している事例として、「KDDI」と「Spotify」がおこなったアジャイルに関する取り組みと成果についてチェックしていこう。

KDDI

KDDIでは、2013年というかなり早い段階からアジャイルの取り組みをおこなってきた。もともとは法人向けクラウドサービスの企画開発の際、1つの開発チームでアジャイル開発を取り入れ、そこから広く浸透していったという流れである。スクラムを適切に回していくために、スクラムのトレーナーを育成する「アジャイル開発センター」という組織を立ち上げ、アジャイル定着に取り組んだ。

先述のとおり、アジャイルによるメリットにはさまざまなものがある。しかし、アジャイルの成果や取り組みについては外部から見えづらいため、取り組みの内容を見える化して意図的にアピールし、価値を周囲に理解してもらうことが重要だというのが取り組んだ実感であるようだ。

Spotify

音楽配信サービスであるSpotify(スポティファイ)は、アジャイル型の独特な組織運営をする企業として有名である。「分隊」「部隊」「支部」「ギルド」という4つのチームから成り立つ「Spotifyモデル」と呼ばれる組織構造を導入していることが特徴だ。

組織の最小単位である分隊が意思決定権を持つ独立したチームとして実務に当たり、分隊がいくつか集まって部隊となる。支部は同じスキルを持つ人材を集めたもので、ギルドは同じ知識を共有したいコミュニティだ。

音楽配信サービスの分野で世界最大手と呼ばれるほどにSpotifyが急成長を遂げられたのは、アジャイル型の組織運営によるものだといわれている。業務効率と生産性を最大化し、社会のニーズを素早く捉えられたことが、この急成長につながったようだ。

組織開発を進めるポイント

アジャイルに適した組織開発を進めるポイントは、以下のとおりである。

・ アジャイル組織への理解度と向上心を高めること
・ 明確なビジョンや細かな変更点を記し、アジャイル組織に移行するための計画を立てること
・ まずは小規模メンバーによるパイロットチームを作って運用し、成果を検証してみること
・ アジャイル型人材を育て、適した職場環境を構築すること
・ e-ラーニング環境の構築や研修など、学習環境を整えること

これらのポイントをおさえて、アジャイルに適した組織開発を進めていこう。

まとめ

アジャイル組織とは、もともとソフトウェア開発方法の一種として、エンジニアが使っていた「アジャイル開発」の概念を組織全体に適応させたものである。新しい組織の形として注目を集めており、今ではIT企業のみならず、業種を問わないさまざまな企業でビジネス用語として広く使われている。

アジャイル組織が注目を集める背景には、近代化によって自動化やデジタル化が進められたことや、SNSなどの普及や世の中のニーズが変わって変化の激しい競争環境になったことなどが挙げられるだろう。これにより、時代の変化に合わせて柔軟かつ積極的にカスタマイズしていく必要性が高まり、アジャイル組織が注目を集めることになったのだ。

アジャイル組織を推進している事例や組織開発を進めるポイントなどの情報も理解して、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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