2022.11.7

ユニコーン企業の定義・国内外の代表的な10社を解説!日本で今後増える?

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スタートアップ企業の中でも、成長度が高い企業を「ユニコーン企業」と呼ぶ。ユニコーン企業は世界的に増加傾向にある一方、日本においては増加しているとは言えない状況だ。

この記事では、ユニコーン企業の定義や代表的な企業、日本におけるユニコーン企業の状況と今後の対策について解説する。

ユニコーン企業とは

ユニコーン企業とは、2013年にベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏によって名付けられた用語だ。スタートアップ企業は成長度が高く、希少な存在であることから、伝説の幻獣「ユニコーン」になぞらえて命名された。

ここでは、ユニコーン企業の定義や、似た意味を持つ用語との違いについて解説する。

定義と条件

ユニコーン企業とは、以下の条件を満たす企業のことだ。

・ 評価額(企業価値)が10億ドル以上
・ 起業から10年以内
・ 未上場

ユニコーン企業の傾向としてテクノロジー関連企業が多い。このため、テクノロジー関連企業であることもユニコーン企業の定義に含まれるケースがある。

ユニコーン企業の数は、2022年7月時点で1,100を超えた。有名な企業で言えばGoogleやメタ・プラットフォームズ(旧Facebook)が挙げられる。ユニコーン企業の中でもさらに評価額が高い企業は「デカコーン企業」や「ヘクトコーン企業」と呼ばれる。次項では、デカコーン企業やヘクトコーン企業、ゼブラ企業との違いについて解説する。

デカコーン企業・ヘクトコーン企業・ゼブラ企業との違い

デカコーン企業とヘクトコーン企業は、ユニコーン企業の中でも評価額が高い企業を指す。評価額の基準は以下のとおりだ。

・ ユニコーン:10億ドル以上
・ デカコーン:100億ドル以上
・ ヘクトコーン:1,000億ドル以上

1,000以上存在するユニコーン企業の中で、デカコーン企業は47社、ヘクトコーン企業にいたっては2社しか存在しない。この数だけでも希少性が理解できるだろう。

一方、ユニコーン企業の対極といえる存在がゼブラ企業だ。ゼブラ企業は「共存性」に価値を置く企業で、ユニコーン企業のアンチテーゼとして登場した。ユニコーン企業が利益を追求するのに対して、ゼブラ企業は社会貢献を追求している。目的の違いが、ゼブラ企業とユニコーン企業との大きな違いといえるだろう。

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国内外の代表的なユニコーン企業10社

ここでは、国内外の代表的なユニコーン企業を紹介する。海外では、テクノロジーを使って独自のサービスを提供している企業が目立つ一方、国内では、ソフトウェアを中心としたサービス展開が目立っている。

海外

海外の代表的なユニコーン企業として以下の5つが挙げられる。

企業名 評価額 業種
Bytedance 1,400億ドル 中国 AI/SNS
SpaceX 1,000億ドル アメリカ 宇宙
Klarna 450億ドル スウェーデン フィンテック
Epic Games 420億ドル アメリカ ゲーム
Canva 40億ドル オーストラリア デザイン/ソフトウェア

2022年現在で最も評価額が高い企業は、TikTokを提供している中国の企業Bytedance社だ。その評価額は1,400億ドル。次に宇宙開発事業を手がけるアメリカのSpaceX社が続き、評価額は1,000億ドルだ。2021年には、世界初となる民間人だけの宇宙旅行を成功させた。現在はこの2社だけがヘクトコーン企業である。

Klarna社は、オンライン決済サービスを提供する企業だ。消費者には利息が発生しない「後払い決済サービス」を提供したことで注目を集めている。

ゲーム会社のEpic Gamesは、大人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」の開発を手がけ、2021年には約10億ドルの資金調達をして話題になった。出資した企業のひとつは、日本のソニーであることも注目される理由のひとつである。

Canvaは、オンライン上でのデザインツールを提供している企業だ。専用のソフトウェアを使用せず、ブラウザで精度の高いデザインを作成できることから利用者が増加している。

どの企業も、テクノロジーを使って独自のサービスを提供しているところが共通点だ。

国内

国内の代表的なユニコーン企業としては以下の5つが挙げられる。

企業名 評価額 業種
株式会社Preferred Networks 3,539億円 機械学習/ソフトウェア
スマートニュース株式会社 1,981億円 Webメディア
株式会社SmartHR 1,731億円 人事労務/ソフトウェア
株式会社Mobility Technologies 1,244億円 タクシー配車サービス/ソフトウェア
株式会社アンドパッド 786億円 ソフトウェア

機械学習を活用したディープラーニングの研究と実用化に取り組んでいるPreferred Networksの評価額は、日本トップの3539億円だ。交通システムと製造業、バイオ・ヘルスケアの3つを重点事業領域とし、幅広い分野でイノベーションを起こすことを目標にしている。

スマートニュースは、スマートフォン用のニュースアプリ「スマートニュース」を提供している企業だ。全国紙をはじめとしたニュースメディアと提携することで、話題となっているニュースをタイムリーに配信している。

SmartHRは、クラウド型の人事労務ソフト「SmartHR」を提供している企業だ。勤怠や給与システムと連携し、労務手続きをペーパーレス化することで、人事や労務の業務効率化を実現している。

タクシーの配車専用アプリ「GO」を提供するMobility Technologiesは、位置情報と独自の配車ロジックにより、効率的なタクシー配車を実現した。タクシーの後部座席に設置されているデジタルサイネージメディア「Tokyo Prime」や決済機能付きタブレット「JapanTaxiタブレット」も提供するなど、快適にタクシーを利用できるサービスも特徴である。

アンドパッドは、施工管理アプリ「ANDPAD」を提供する企業だ。建築業界のDX化を実現し、2022年5月時点での利用者数は33万人を超えている。2022年には、令和3年度 i-Construction大賞の、i-Construction推進コンソーシアム会員の取組部門で「国土交通大臣賞」を受賞した。

日本のユニコーン企業の傾向として、ソフトウェア事業を展開する会社が目立つことが挙げられる。また、海外の会社と比べて、評価額が高いとはいえないのも現状である。

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日本でユニコーン企業の数は増えるか?

イノベーションを生み出すユニコーン企業は、国の産業競争力の強化において大きな役割を担っている。革新的なサービスが世界を変える影響力を持っていることは、過去のカラーテレビやパソコン、インターネットを考えれば想像しやすいだろう。

これまで日本は、技術力を活かし経済大国としての地位を築いてきた。GDP(国内総生産)ランキングでも世界3位だ。しかし、ユニコーン企業の数では世界13位と大きく後れを取っている。

隣国の韓国や、発展途上国であるインドネシアよりも少ない状況は、国家的な課題として認識する必要があるだろう。ここでは、日本でユニコーン企業が少ない理由と、今後の施策について解説する。

現在の日本でユニコーン企業が少ない理由

日本のユニコーン企業が少ない理由として、以下の2つが挙げられる。

・ 調達資金が他国に比べて不足
・ 起業家となる人材が不足

調達資金が不足する理由として、日本ではアメリカや中国と比べて未上場株式に対する規制が厳しいことが挙げられる。アメリカにはオンラインでの取引市場があり、中国にはスタートアップ企業を対象とした「新三板」が存在している一方、日本にはこのような市場が存在しない。

高額の資金調達が困難になるため、上場を選択する企業も少なくないのだ。つまり、資金調達の面で、スタートアップ企業を育てる環境が構築されていないといえる。

起業家となる人材が不足する理由としては、起業しやすい環境が整っていないことが挙げられる。安定志向が強い日本では、優秀な人材は企業に就職することが第一選択だ。

経済産業省が委託したみずほ情報総研の調査結果によると、将来の起業活動計画や起業活動の浸透に関する項目で下位となっている。この結果からも、起業に対する意識の低さが見て取れるだろう。国内のユニコーン企業を増やすには、国として環境構築に取り組む必要がある。

今後、ユニコーン企業は増える?

日本では、少子高齢化による労働人口減少や生産性の低迷といった課題を抱えている。イノベーションを起こすユニコーン企業の増加は、課題解決の鍵を握っている。

ユニコーン企業増加に向け、国としても動きが出てきた。2021年6月には、日本証券業協会が「非上場株式の発行・流通市場の活性化に関する検討懇談会」の報告書を公表。日本経済団体連合会は、政府に対しスタートアップ庁の創設を提言した。

岸田文雄首相は、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け「スタートアップ5ヵ年計画」を宣言している。2022年6月に公表された「経済財政運営と改革の基本方針2022」では、スタートアップを重点投資分野として設定し、今後5年でスタートアップ企業への投資額を10倍に増やす目標を掲げた。

スタートアップ企業に対し、研究開発を支援する補助金を拡大することで、ユニコーン企業が少ない理由である資金不足が解消されるだろう。政策として、スタートアップ企業への環境構築に取り組むことで、ユニコーン企業が増加することも期待される。

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まとめ

ユニコーン企業とは、評価額が10億ドル以上で未上場のスタートアップ企業を指す用語だ。海外では独自のサービスを提供している企業が目立つ一方、国内ではソフトウェアを中心としたサービス展開が目立っている。

これまでの日本は、高い技術力により経済大国としての地位を築いてきた。しかし、ユニコーン企業の数では、世界13位と大きく後れを取っている。その理由として、資金調達環境の不足や、起業家となる人材の不足が挙げられる。

課題解決にむけ、政府は「スタートアップ5ヵ年計画」を宣言。今後5年間でスタートアップ企業への投資額を10倍に増やす目標を掲げている。スタートアップ企業に対する環境を構築し、イノベーションを起こせるユニコーン企業を育てることが、日本経済の将来に大きく影響するだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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