2023.2.7

レピュテーションリスクとは?意味や原因、事例を分かりやすく解説

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レピュテーションリスクとは悪評により、企業の評価が下がるリスクのことだ。ITの発展と共に、注目が集まっている。レピュテーションリスクが高い場合、企業に大きな損失を与えるどころか、廃業に追いやられるケースも存在する。

そのため、リスクが発生する原因を理解し、対策を打つことが必要だ。この記事では、レピュテーションリスクの意味や発生する原因、対策について、事例と共に解説する。

レピュテーションリスクとは?

レピュテーションリスクとは、企業に対するネガティブな評判により、企業の評価が下がるリスクのことだ。ITの発展に伴い、顕在化するようになった。ここでは、その意味や注目される背景、似た用語との違いについて解説する。

レピュテーションリスクの意味

レピュテーションリスクとは、ネガティブな評判や風評によって、企業の評価が下がるリスクを意味する言葉だ。ネガティブな評判は、消費者からの信頼を失墜し、顧客満足度や顧客の維持、利益に悪影響を及ぼす。

レピュテーションリスクが顕在化している場合、損失を被るだけではなく、企業の存続も脅かされる可能性があるのだ。

レピュテーションリスクが注目される背景

レピュテーションリスクが注目される背景には、SNSの浸透が挙げられる。インターネット上に個人の意見や情報が発信できるSNSは、善し悪しを問わず様々な内容を発信できるプラットフォームだ。

SNSは企業に対する不満や批判も容易に投稿でき、投稿は拡散できる。近年では、SNSで話題となっている情報を、メディアが取り上げることが一般的になった。1人が投稿した悪評が、社会全体に広がってしまう可能性もあるのだ。

些細な出来事や、これまでは明るみに出なかった情報が広がり、企業に損失を与えるケースが増えてきた。それにより、レピュテーションリスクが注目されるようになったのだ。

オペレーショナルリスク・ブランドとの違い

レピュテーションリスクと似た言葉に、「オペレーショナルリスク」や「ブランド」がある。オペレーショナルリスクとは、業務を遂行する上で発生し得る全てのリスクのことだ。企業におけるリスク全般を指し、レピュテーションリスクもオペレーショナルリスクの1つである。

ブランドは、レピュテーションに似た意味を持つものの、主体となる側が異なる。ブランドとは、企業側が競合と差別化した「強み」を演出し、消費者側がその価値を受け入れたものだ。

ブランドが「企業側から発生するもの」であるのに対し、レピュテーションは「消費者側から発生するもの」と区別できる。

レピュテーションリスクの種類

レピュテーションリスクは以下の7つに分類される。

No 種類 概要
1 製品・サービス 「価値や質が高い製品やサービスを提供している企業」という信頼を失うリスク
2 革新 「新しい製品やサービスを生み出す企業」という信頼を失うリスク
3 職場 「従業員が働きやすい企業」という信頼を失うリスク
4 ガバナンス 「オープンかつ公正に事業を行っている企業」という信頼を失うリスク
5 市民 「地域社会とのつながりや環境に配慮した活動を行っている企業」という信頼を失うリスク
6 リーダーシップ 「経営理念とビジョンを持ち、組織的な企業」という信頼を失うリスク
7 パフォーマンス 「収益性が高く将来性がある企業」という信頼を失うリスク

どのリスクも、企業に大きな損害をもたらす恐れがある。特に、規模が大きな企業や知名度が高い企業は、多くの人から見られている。そのため、それぞれのリスクに対する原因を理解した上で対策を立てる必要があるのだ。

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レピュテーションリスクが発生する主な原因

レピュテーションリスクが発生する主な原因には、以下の4つが挙げられる。

● 内部告発
● 根拠のない風評被害
● 従業員の不祥事
● 品質低下

これらの原因が発生した場合のリスクを理解し、対策を打つことが必要だ。ここでは、4つの原因について解説する。

内部告発

レピュテーションリスクが発生する原因として、内部告発が挙げられる。長時間労働やハラスメント、不正といった問題がある企業の場合、従業員が外部の監督機関や報道機関に告発する可能性がある。近年ではSNSに投稿し、それが拡散されるといったケースも少なくない。

食品偽装や建築基準法違反といった問題は聞き覚えがあるだろう。悪質な労働環境や不正が明るみに出た場合、企業のイメージが低下し、人材採用にも影響を及ぼしかねない。リスクを抑えるためには、不正をしない組織風土の醸成や監視体制の強化、労働環境の整備が有効だ。

根拠のない風評被害

2つ目の原因は、根拠のない風評被害だ。SNSや掲示板サイトは個人が自由に発信できる反面、根拠のない事実と異なる情報も発信できてしまう。特に、誹謗中傷は事実かどうかにかかわらず、短期間で拡散される。

また、同業他社の業績悪化により、同業自体が危険と思われるケースも少なくない。根拠のない風評被害を回避するためには、誠実な経営と共に積極的に自社の情報を発信することが大切だ。

従業員の不祥事

3つ目の原因は従業員による不祥事だ。不祥事が発覚すれば、例えそれを起こした人物が正社員ではないとしても、企業が責任を問われる。1人の不祥事により、消費者離れや取引先との取引停止といった問題にまで発展する可能性を秘めているのだ。

しかし、規模が大きな企業であれば、経営陣が現場を監視することは困難だろう。リスクを回避するためには、アルバイトや派遣社員といった、正社員ではない従業員も含めた教育を強化する必要がある。

品質低下

4つ目の原因は製品やサービスの品質低下だ。SNSが浸透している現代では、消費者が購入した製品や利用したサービスの品質が悪い場合、瞬く間に悪評が広まる。特に、他の消費者も同様の感想を持った場合、さらに共感を生み拡散されることも考えられるだろう。

品質低下の原因は、技術不足以外にミスによるものが存在する。ミスが発生する原因として考えられるのは労働環境の悪化だ。長時間労働による疲弊や、意見を言えない職場風土の場合、ミスによる品質不良が発生する可能性がある。

ミスによる品質不良を回避するためにも、労働環境の改善に取り組む必要がある。

関連記事:パワハラ防止法の中小企業への義務化を解説!

レピュテーションリスクを防ぐ対策

企業の悪評は誤解から発生するケースもあるため、レピュテーションリスクをゼロにするのは難しい。しかし、情報発信や従業員教育といった対策を打つことで、リスクを抑えられる。ここでは、レピュテーションリスクを防ぐ対策について解説する。

情報発信

レピュテーションリスクを防ぐ対策方法として挙げられるのは、情報発信だ。SNSでは、誰もが商品やサービスに対する評価を発信できる。中には、個人的な意見や情報不足による誤解で悪い評価をするケースもある。それに対し、企業からの情報がなければ、他の消費者は悪評を信じてしまう。

企業側から積極的に情報を発信していれば、消費者もSNSの情報だけでは信用せず、正しい情報を探すだろう。誤解によるレピュテーションリスクを減らすためにも、積極的な情報発信が必要だ。

従業員教育

2つ目の対策は従業員教育だ。情報漏えいや不正行為、ハラスメントといった問題は、従業員の理解不足により発生する。コンプライアンスや情報セキュリティ、ネットリテラシーなどの教育を定期的に開催すると共に、問題を起こした際の処遇を明確にしておくことも大切だ。

また、PCや文書といった情報の取り扱い方法についてルールを定め、周知することも教育の1つだ。管理職や役員は「職務上、ハラスメントをする立場になる可能性が高い」「情報を持ち出す機会が多い」といったリスクを抱えている。

そのため、管理職や役員については特に重点的に教育する必要がある。

監視体制の強化

3つ目の対策は監視体制の強化だ。どんなに教育をしていても、内部の圧力によって不正を見逃したり、気付かなかったりする可能性がある。監視体制の強化により、不正行為やコンプライアンス違反の防止につながるのだ。

内部監査だけではなく、専門機関や監視事業を展開している第三者を活用し、外部からの監視を入れると、より効果が上がる。

労働環境の改善

4つ目の対策は労働環境の改善だ。品質低下や従業員の不祥事、退職した従業員からの被害報告といった問題は、長時間労働やコミュニケーション不足といった労働環境の悪化から発生する。

人員配置や業務改善により、長時間労働の是正につながる。コミュニケーションを取る機会や場所を提供すれば、従業員同士の考え方や意見を理解できるだろう。従業員の声を聞き、どうすれば労働環境が改善されるのかを理解した上で取り組むことが大切だ。

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レピュテーションリスクの事例

レピュテーションリスクの事例には、コンプライアンス違反やアルバイト店員による不祥事、サービスへの不満による悪評拡散といったものがある。どのケースも、リスク対策をしていれば回避できた事例だ。ここでは、3つの事例について解説する。

コンプライアンス違反

コンプライアンス違反の事例として、料亭の不祥事が挙げられる。売れ残った食品の賞味期限偽装や、食べ残しの再利用といったコンプライアンス違反をしていたことが発覚。

さらに、経営陣が発覚時に「偽装は納入業者の責任」「食べ残しの再利用はパート社員の責任」と回答したことにより、その料亭は社会的な信用も失った。仮に経営陣の指示がなかったとしても、責任は企業側にある。

この事例は、発覚時の対応の悪さも信頼が失墜する原因となり、この料亭は廃業に追いやられた。この事件は、コンプライアンスに対する理解度と、誠意のある対応をしていれば、回避できた事例だ。

アルバイト店員による不祥事

近年では、アルバイトが不適切な行動を起こした事例も存在する。コンビニのアルバイト店員が店内の冷蔵庫内で寝転がった写真を撮影し、SNSに投稿した事件は有名なケースの1つだ。

似たようなケースが「バイトテロ」とも名付けられるほど多くの場所で発生しており、「不衛生」「お店としてあってはならない行為」と問題となった。事件があったコンビニは、FC契約を解除する結果となっている。

店内で不適切な行動をしただけでなく、その行為をSNSに投稿してしまう行動は、ネットリテラシーの低さを感じる。また、そのような行為をしてしまう労働環境にも問題があるだろう。この事件は、アルバイトも含めた従業員教育と労働環境の改善を徹底していれば、回避できた事例だ。

サービスへの不満による悪評拡散

サービスへの不満から悪評が拡散された事例も存在する。カタログのイメージ図と実際に提供されたものとの乖離の激しさに不満を感じた消費者がSNSに投稿し、炎上したのだ。

このようなケースは日常でも少なくない。SNSに投稿されるほどではなくても、小さな不満の積み重ねが消費者離れにつながることも考えられる。このような問題は、顧客目線でのサービス提供を意識した情報発信により、回避できた事例だ。

関連記事:ネットリテラシーとは!意味を分かりやすく解説!

まとめ

レピュテーションリスクとは、企業に対する悪評により、企業の評価が下がるリスクのことだ。SNSの浸透により、注目度が高まってきた。

レピュテーションリスクが発生する原因には、内部告発や根拠のない風評被害、従業員の不祥事、品質低下が挙げられる。それぞれの原因を理解した上で対策を打つことが必要だ。

関連記事:マッチング精度を上げたい!オウンドメディアでの情報発信のコツ

レピュテーションリスクをゼロにするのは簡単ではない。しかし、情報発信や従業員教育と共に、監視体制の強化や労働環境の改善にも取り組むことにより、リスクを抑えられる。

自社の評判を落とさないためにも、日頃からレピュテーションリスクを想定した取り組みを続けることが大切だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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