Wevoxが目指すのは「組織の自走」—単なるエンゲージメントサーベイに留まらない独自の価値
――まずは会社概要と担当業務について教えてください。
河合 弊社は求人メディアGreen(グリーン)を中心に「テクノロジーによって人の可能性を拡げる」People Tech(※)という事業領域でサービスを展開しています。その組織の中で、私自身は会社全体のPR業務と、Wevox(ウィボックス)のマーケティングを担当しています。
※ 株式会社アトラエ | Atrae, Inc.(「事業内容」にて定義)
――Wevoxとはどのようなサービスですか?
河合 Wevoxは、目に見えない従業員の心理状態や特性、スキル、組織のカルチャー等を可視化し、継続的な改善サイクルを生み出すためのプラットフォームです。エンゲージメントサーベイを中心に、組織の現状や従業員の意識を把握しやすくします。
まず、学術的な裏付けに基づいたアンケートが、数分で回答できる形で従業員に配信されます。これによって、エンゲージメントや組織の課題を定量的に把握することが可能です。アンケートの結果はリアルタイムで集計され、組織の状態が一目でわかるように可視化されます。
また、「Wevox Board」というデジタルホワイトボード機能を活用することで、従業員同士が自由に意見交換できる場も提供しています。付箋やスタンプ、質問カードなどを使いながら対話を活性化し、現場の声を反映した改善活動が進みやすくなります。
さらに、国内最大級のエンゲージメントや組織開発の知見を体系化した多様な学習コンテンツも用意しています。動画やワークショップ形式のプログラムを通じて、現場で実践しやすい知識やスキルを身につけることができるものです。
以上のようなプロセスを経て、組織力向上のための行動変容へとつなげてもらうのがWevoxの仕組みです。
――ほかの競合サービスなどと比較して、差別化ポイントや強みはどこにありますか?
河合 Wevoxは「組織が自走すること」をもっとも重視しています。組織力の向上や、働きがいの創出は、最終的には当事者自身が取り組まなければ実現できません。弊社はそのプロセスを支援する立場に徹しており、組織の中にいる人たちが自ら課題を認識し、主体的に行動できるよう後押しすることを大切にしています。
こうした「自走」を、調査から対話、行動の変容まで、一貫して支援できる点がWevoxの大きな強みです。単なるエンゲージメントサーベイの提供に留まらず、組織が自ら変化を生み出すための仕組みや学びのきっかけを提供していることが、ほかのサービスとの明確な違いといえます。
――もともと求人メディアGreenを主軸としていた御社が、どのような経緯・背景でWevoxを開発することになったのでしょうか?
河合 弊社は2003年の設立当初から「どうしたら一人ひとりが活き活きと働きがいを持って仕事ができるのか」を考え、結果的に今は自律分散型の組織を運営しています。常に理想の組織を追求し続ける中で、やはり大切だと感じているのは 、「組織づくりのベースは、現場にいる一人ひとりの声や行動から生まれる」という考えであり、そのために必要なプラットフォームとして開発したのがWevoxだったのです。
「同じ悩みを抱えている企業様がほかにもいるはず」「活き活きと働く人を一人でも多く増やしたい」――そんな想いからWevoxの開発・運営に当たっています。
――サービスの主なターゲットについて聞かせてください。
河合 現在、金融・医療・飲食など幅広い業界・業種の企業様に加え、スポーツチームや自治体など多岐にわたって導入していただいています。そういう意味では、ターゲットを特定の領域に絞っていませんが、強いて挙げるとすると、やはり組織づくりに難しさを感じていらっしゃったり、真剣に向き合っていらっしゃったりする人事の方々を支援していきたいですね。
育成・定着クラウド分野の出荷社数 5年連続でNO.1を獲得
――エンゲージメント関連サービスの市場は、現在どのような状況でしょうか?
河合 近年の人的資本経営、ウェルビーイング、DX推進などを背景に、強い追い風が吹いていると実感しています。そんな中、Wevoxは導入数が3,810を超える(2025年5月時点)など順調にシェアを拡大中です。
おかげさまで、育成・定着クラウド分野の出荷社数においては、2020年度から5年連続でNO.1を獲得しています(※)。
※デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望」(2021年度・2023年度・2024年度版)において、2020年から2024年(見込)にかけて、「育成・定着クラウド」分野の出荷社数5年連続No.1 https://mic-r.co.jp/mr/03350/
※出荷社数は、デロイト トーマツ ミック経済研究所が独自に企業への取材を行い、得られた情報をもとに推定した数値に基づいて算出されたものです。
※「育成・定着クラウド」は、デロイト トーマツ ミック経済研究所の独自定義による分類で、企業における従業員の業務習熟や育成課題に応じた研修機能、またコミュニケーション支援を通じて、仕事や組織に対する満足度の向上を支援するクラウド型システムを指します。
――マーケットが拡大し、競合も増えている中で、マーケティング活動の重要度はますます高まっているかと思います。御社では、マーケティングの重要性や位置づけをどのようにとらえていますか?
河合 おっしゃるとおり、マーケティングは非常に重要です。とくに弊社の場合、従業員数100名強という少数体制のため、最初からアウトバウンドで営業をかけていくというよりも、まずはプロダクトそのものの価値を高めることに注力してきました。その上で、マーケティング活動を通じてしっかりと認知度を高め、入口を広く取っておかなければなりません。
またエンゲージメントサーベイはその特性上、一度導入したら別のサービスに変更しづらい傾向にあるため、“最初の導入ツール”としていかに選んでもらえるかが重要です。これらを実現するためには、やはり効果的なマーケティング施策が欠かせないでしょう。
――具体的にWevoxではどのようなマーケティング施策を実施していますか?また、とくに注力している点についても聞かせてください。
河合 多様な施策を常に検証しているところですが、直近では2025年6月から東京エリアでタクシー広告の配信を開始しました。また、導入企業様のインタビュー動画や記事制作にも力を入れています。自社で運営しているWebメディア「DIO」や外部メディアも活用し、数多くの導入事例を配信・掲載中です。
私たちがこれらのコンテンツを通じてお伝えしたいのは、「組織は自分たちで変えるもの」だということ、そして「それは決して不可能なことではない」ということです。組織改革と聞くと「ハードルが高い」と感じる方も少なくないでしょう。しかし実際にWevoxを導入している企業様の多くは、弊社のカスタマーサクセスのメンバーと共に、試行錯誤しながらも前向きな気持ちで大なり小なり様々な施策を一つずつ実践されています。
広告や記事コンテンツなどで、Wevoxを通じた組織改革のお困りや成功など、各社様のリアルなチャレンジをお伝えしながら認知を広げていくこと。それが私たちマーケティング部門の使命であり、もっとも注力しているポイントです。
――現在マーケティング業務はどのような体制で行っていますか?
河合 マーケティングチームは数名ですが、その数名もほとんどがほかの業務と兼任しています。ただ、ありがたいことに社内外様々な方が協力してくれ、ユニークなチャレンジがたくさんできている状況です。
たとえば、Wevoxを導入した架空企業「アニマル商事」のマンガや、Wevoxの公式キャラクターも、マーケチームに限らず、いろんな人のアイデアと議論の中から生まれてきました。
HRプロで切り拓く人事とのコネクション—効果的な情報発信でWevoxの認知と信頼を向上
――ここからはマーケティング施策の一環として活用されている当社の「HRプロ」について伺います。まずは活用状況を聞かせてください。
河合 HRプロさんは4年前に導入して以来、様々な形で活用しています。基本的には弊社のサービス資料や、定期的に作成しているホワイトペーパー、セミナーの告知などを掲載し、資料ダウンロードやセミナー参加を促進する形です。そして1年前からは毎月メルマガを配信しています。
――実際に、どのような成果やメリットがありましたか?
河合 Wevoxの導入検討は企業の人事の方が担当されるケースが多いのですが、弊社は人事の方々とのコネクションを十分に持てていませんでした。そのため、人事向けメディアに掲載することが接点を作る一番の近道になると考え、HRプロさんの活用を決めました。実際に利用してみたところ、想像以上に多くの方にリーチできたと実感しています。
たとえば月1回配信しているメルマガに関しても、多いときには100人くらいの人事、もしくは人事領域に関心のある方々に閲覧され、これまでもちにくかった接点が生み出されています。資料掲載だけでこれほど多くの方とつながれることに、正直驚きました。これは非常に大きな成果だととらえています。
――競合サービスと比較して、HRプロの強みはどこにあると思いますか?またProFutureからの提案内容やスタッフに対する印象なども聞かせてください。
河合 HRプロさんの会員様は、ほかの出稿媒体と比較し、資料のダウンロード率やセミナーへの参加率が格段に高いという印象です。これは、会員の方々の「学ぶ意欲」と「情報感度の高さ」の証明だと思っています。実際、専門性の高さなどから「この資料は難しすぎるかな?」「ハードルが高いかな?」と危惧した資料でさえ、HRプロさん経由でのダウンロード数の多さには目を見張るものがありました。
また、カスタマーサクセスについても大変ありがたく、いつもHR領域の動向や実践的な知見をプロフェッショナルな視点でご提供いただき、弊社のマーケティング戦略策定においても、心強い指針となっています。
――お褒めいただきありがとうございます!最後に、マーケティング全般における今後の目標やビジョンを聞かせてください。
河合 組織課題の解決への道のりは、本当に終わりがないですし、「これが正解」という明確なものもなく、すごく難しいことだと感じています。「組織改革しましょう!」と言われても、「ちょっと大変そう…」と躊躇してしまう気持ちは、非常によくわかります。そんな風に悩んだり、不安を感じたりしている方々の背中をそっと押してあげるのが、私たちWevoxのマーケティング担当者の役割です。
たとえばタクシーCMなどを見て「WevoxのCM、ちょっと面白くて気になるな」、アニマル商事を見て「ほのぼのとして、かわいいな」「言ってることが、なんか心に響くな」といった風に、まずはちょっとしたきっかけからWevoxに興味を持ってもらえたらうれしいですね。
今後も少人数の体制が続くと思っていますので、その分、一人ひとりがアイデアを出し合い、お客様の心にすっと入っていくような、記憶に残る広告や表現を追求していきたいと思っています。
聞き手:ProFuture株式会社 マーケティングソリューション部 営業グループ ディレクター 石垣 麗央菜