2020.7.2

オンボーディングとは?組織の生産性向上と離職防止のためにできること

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オンボーディングとは

新卒、中途採用者のどちらの場合も、「新しく入ったメンバーが組織になじめず、なかなか能力が発揮できない」「チームから浮いた存在のまま早期に離職してしまう」という事態は人事担当者の悩みのタネだ。
こうした事態を防ぐために、新しく入ったメンバーが早期に力を発揮できるように組織がメンバーをサポートする仕組みづくりを「オンボーディング」という。

オンボーディングは、アメリカで生まれた造語で、船や飛行機に乗り込んでいる状態を示す「on-board」からの連想で生まれた、教育・育成プログラムの1つである。
「新入社員の即戦力化と離職防止を行うための仕組みの整備」であり、日本では外資系企業を中心に、新入社員の受け入れ体制として採用されてきた。

意識してオンボーディングを実施していない企業でも、「メンターがついて会社のルールを教える」、「飲み会や食事会などで交流を深める」など新メンバーとのコミュニケーションを深め、会社に馴染ませようというアプローチはオンボーディングの一部である。

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ただし、多くの日本企業では、新卒入社を基本にした一括受け入れの仕組みを前提としてため、新卒採用にはオンボーディング的な仕組みがあったが、随時の中途採用者には明確な施策がなかった企業も多い。しかし、オンボーディングは「新卒入社者と中途入社者を区別しない共通の枠組み」である点が従来の施策とは異なっている。

また、オンボーディングの目的は、「新しく入ったメンバーが早期から実力を発揮して企業に貢献できるようにすること」だが、新規採用した本人だけに「慣れてもらう」という一方通行の施策ではない。

上司や同僚も対象として、職場全体で新規採用者を受け入れ、既存メンバーと新メンバーを短期間で統合させていくための施策だ。
つまり既存メンバーの側も新メンバーの個性や能力を知り、尊重することでお互いに歩み寄り、新しいチームワークを育てて組織の生産性を向上させることがオンボーディングの真の目的である。

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オンボーディングのメリット

オンボーディングを上手に機能させることができれば、組織の生産性を向上させるという企業側のメリットはもちろん、従業員の側からも職場に慣れるための時間を短縮することができるので、早期に高いモチベーションで仕事に取り組むことができるなどメリットが多い。
では、具体的に企業側、従業員側それぞれにどのようなメリットがあるのか、代表的なものをあげてみよう。

企業側にもたらすメリット

企業側のメリットとして新規メンバーの戦力化が早まれば、短期間での生産性向上が見込める。
またオンボーディングによって人材が定着し、離職者が減少すれば採用活動にかかるコストはもちろん、新人教育に関わるコストの削減と人的リソースの削減につながる。

オンボーディングを機能させるには、縦割りの組織ではなく部署を横断した横の連携が不可欠となるため、新規メンバーが投入された部署だけでなく全社的な連携体制が強化される。これによって既存従業員も含めた社員全体のエンゲージメントを強化することができる。

従業員側にもたらすメリット

従業員にとっても、オンボーディングによって早期に能力を発揮することができれば、自信を持って仕事にあたることができるので、モチベーションが高くなり、さらに力を発揮することができるという好循環となる。
また、オンボーディングによって社員同士が交流を深め、信頼関係を築くことによって、新入社員も自分が企業に期待されていることを実感することができ、強いエンゲージメントをもって業務を遂行することができる。

オンボーディングを実施するためには部署を横断した横の連携が不可欠なので、全社的な情報共有が促進される。この結果、チームワークが向上して、より働きやすい職場作りが可能となる。

オンボーディング施策を成功させる5つのポイント

オンボーディングの背景にあるのは、「採用した人材が職場で成果を出せるようになったとき、その採用が初めて意味を持つ」という考え方だ。実際に考えられる施策は多様だが、次のポイントで自社に合った施策を実施すると良い。

入社前から信頼関係を築く

株式会社リクルートキャリアによる「中途⼊社後活躍調査」(対象:従業員300名以上の企業に中途⼊社後1〜3年の社員 回答数:946名 2019年4月発表)の回答を見ると、入社前に人事担当者とコミュニケーションを取っていたと回答する社員の方が、そうでない社員に比べて、よりパフォーマンス(現在、周りと⽐べて、⾼い評価を受けている⽅だと思いますか。という設問について、「⾮常にそう思う」または「どちらかといえばそう思う」と回答)を発揮しているという傾向が見られた。

その差は、パフォーマンスを発揮した社員のうち約8割が入社前に人事担当者とコミュニケーションを取った、と回答しているのに対して、パフォーマンスが不十分であった社員は50%弱しかコミュニケーションを取っていなかったという数字からも明らかだ。

つまり、入社前にできるだけ新人と接触を図り、コミュニケーションを取っておくことが入社後のパフォーマンスに大きく関わっているのだ。
会社側からの積極的なコミュニケーションを通じて、受け入れる前段階でしっかりと信頼関係を築いておくことが重要だ。
(参照元:株式会社リクルートキャリア「中途入社後活躍調査」第2弾

人間関係のフォローシステムを整える

新メンバーにとって、職場の人間関係は不安を感じる大きな要素であり、職場の雰囲気に馴染めなければそのまま離職へとつながってしまいかねない。

そのため、新メンバーへのフォローを所属部署に丸投げするのではなく、会社全体として体制を整え、フォローシステムを確立しておく必要がある。例えば誰をメンターにするのか、どの段階でどのような既存メンバーとの交流機会を設けるかなどを計画的に設定しておくと良い。

また、システムとしてフォロー体制を確立するのはもちろん、組織側から折に触れて積極的にフォローする姿勢を見せることも重要だ。所属部署やメンターなど、直接関わらない既存社員からのフォローがあることで、新メンバーは会社側からの歩み寄りを感じて、人間関係に対する不安を払拭することができるのだ。

関連記事:内定者フォローのポイントとは?コロナ禍でもオンラインで内定者との接点を強める方法

期待値・ビジョンの共有

人は自分の役割が明確になっていないと心理的不安を抱えてしまう。そのため新メンバーに対しては、組織やチームが何を求めているのかという「期待値」を明確に示すことが大切だ。

また、新メンバー自身がどうなりたいか、という「ビジョン」を聞き出して共有し、組織やチームとの認識をすり合わせておくことも必要だ。
この2つに乖離があると、お互いに間違った方向に努力してしまう恐れがあるからだ。
互いに考えていることを言語化することで、組織と新メンバーが同じ方向を向いてゴールを目指すことができるようになる。

関連記事:ミッションとは?ビジョンとの違いやなぜ必要なのかを解説

教育・研修体制の整備

新メンバーが入社後に混乱しないよう、企業の業務内容や流れ、各種手続きなどについてスムーズに学べるような教育・研修体制を整備しておきたい。

一度作っておしまいではなく、定期的に見直し、研修内容や体制の改善を図り続けることも忘れないでおきたい。

目標設定を工夫する

期待値を設定したりミッションを与える場合でも、新メンバーにいきなり大きな目標を設定しても失敗に終わることが多い。手が届く細かい目標を設定し、少しずつ仕事を習得していきながら最終目標へ近づいていくという方法が、結果的に大きな成功へと結びつく。
お互いに納得した期待値を積み重ねることで、達成感を与えながら望むべきビジョンへと成長させることが望ましい。

そして新メンバーが目標を達成するごとに、チームや部署から数多くのフィードバックを受けることができる環境を整えることが重要だ。チーム一体で新メンバーとともに成長していくことが、まさにオンボーディング(on-boarding)といえる。

まとめ

・オンボーディングは、アメリカで生まれた造語で、船や飛行機に乗り込んでいる状態を示す「on-board」からの連想で生まれた、教育・育成プログラムの1つである。

・オンボーディングは「新卒入社者と中途入社者を区別しない共通の枠組み」である点が従来の教育施策とは異なっている。

・既存メンバーの側も新メンバーの個性や能力を知り、尊重することでお互いに歩み寄り、新しいチームワークを育てて組織の生産性を向上させることがオンボーディングの真の目的である。

・オンボーディングには、企業の業績向上へ貢献するだけでなく、従業員の側からもオンボーディングによって早期に馴染むことができれば力を発揮できるし、モチベーションも向上するというメリットがある。

・オンボーディングの背景にあるのは、「採用した人材が職場で成果を出せるようになったとき、その採用が初めて意味を持つ」という考え方である。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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