2021.11.10

メンターとメンティーとは?制度として導入する目的や注意点

読了まで約 7

■メンターとメンティーとは?

■メンターの由来

■メンター制度の目的

■メンター制度のメリット

■メンター制度導入のステップ

■メンター制度を有効に機能させるためのポイント

メンター、メンティーとは

メンター、あるいはメンティーという言葉を聞いたことがあるだろうか。
今日本では、過去のバブル経済崩壊後の採用差し控えやその後の終身雇用制の崩壊、早期離職者の増加などの要因によって、多くの企業で人材の連続性が失われ、せっかく新入社員を獲得しても、その社員の相談に乗り、育成や指導をすることができる年の近い先輩社員がいない、という状況となっている。
そういった状況を打開するための制度として注目を集めているのがメンター制度だ。
メンター制度とは、所属する部門の上司とは別に、新入社員に対して年齢の近い先輩社員や、転入社員に対して社歴が近い先輩社員などが相談を受けたりサポートをしたりする制度だ。
この相談やサポートをする先輩社員のことを「メンター」、サポートされる側の後輩社員のことを「メンティー」と呼ぶ。
「メンター( Mentor )」は日本語で「助言者」という意味を持ち、その由来は、古代ギリシャの詩人ホメロスが書いたといわれる叙事詩『オデュッセイア』に登場するメントルという人物の名前から来ている。
オデュッセウス王がトロイ戦争に出陣する際、王の息子テレマコスの教育をメントルに託した。
メントルは、テレマコスが将来立派な王になれるよう、政治学や帝王学などの学問だけでなく、人格的な成長も促すように教育し、立派に育て上げたといわれている。

メンター制度は現在、新入社員の支援体制として多くの企業で活用されている。
メンターは新入社員からすると相談しやすい兄や姉のような存在であり、直属の上長には相談しにくいことも打ち明けることができ、若手社員が自然に仕事を覚え社風を学べる有効な制度として導入する企業も増えているからだ。
制度をうまく活用していくためにも、今回はメンター制度について目的やメリット、導入のステップやポイントについて解説をしていこう。

メンター制度の目的

従来の日本企業では、新卒一括採用、年功序列、終身雇用が一般的であったことから、そのなかで自然と先輩・後輩の関係が生まれ、先輩社員が後輩社員の悩みや相談を聞いたり、アドバイスをしていた。
そして、その後輩社員がやがて先輩社員となった際に、自分の後輩に同じようなことをしてあげる、といった流れができたため、わざわざ制度を作らなくても、先輩が後輩をフォローしやすい環境ができていた。
しかし、先程述べた通り、バブル崩壊後に人材採用を見送っていた企業や、それまでの企業風土や人事制度が大幅に変更された企業などでは人材の連続性が失われ、新たに雇用した若手社員の面倒を見られる世代の先輩社員が身近にいないという現象が起きている。
このため「部内に仕事の悩みを気軽に相談できるような先輩社員がいない」「上長と年が離れているため頻繁に質問しにくい」などの理由から若手社員が離職してしまうということも多く起こっているのだ。
こうした事態を防ぐことがメンター制度導入の目的の1つだ。
中途も含む新入社員や若手社員であるメンティーに、「何でも気軽に相談できる」メンターをセッティングすることで、安心できる環境を社内に作り出す。

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一般的にメンターはメンティーが話しやすく、身近なロールモデルとなりやすい2〜5歳ほど上の先輩社員が務めることが多く、メンタル面の不安や業務上の悩み、また人間関係での悩みなどの相談に乗り、アドバイスを行う。

また、メンター制度を導入することで次のようなメリットがある。

1. 新入社員の早期離職を防ぐことができる
困ったことがあっても、すぐに相談できるメンターがいることで、1人で抱え込むことなく、早期解決をすることができるため、新入社員は社内において安心感を持つことができ、ストレスがかかりにくい。
また社内に気軽にコミュニケーションをとれる先輩社員がいることは、職場へのなじみやすさにもつながるため、早いうちから周囲に溶け込むことができ、早期離職の防止が期待できる。

2. 新入社員の自立を促す
メンターが、メンティーの実務面だけでなくメンタル面もフォローすることで、メンティーは悩みや不安を小さなうちに解消することができ、自信を持って仕事に望めるようになる。
また、メンターである先輩社員が身近なロールモデルとなっていることから、その姿を見て、自分がこれからどのように考え、行動すればいいのかがわかりやすくなり、新入社員が早期に自立する手助けとなるだろう。

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3. 目標達成への道筋が見える
入社したばかりのメンティーに達成すべき目標を提示しても、自分がどのように目標へ向かえばいいのかわからない、という場合も多い。
メンターは、メンティーの目標達成のために、いつ、何をするべきなのか、その道順をアドバイスすることも重要な役割のひとつだ。やるべきことが具体化されることで、メンティーは仕事へのモチベーションを保ちながら目標達成に確実に向かうことができる。

4. 社内のコミュニケーションが活性化する
全社的にメンター制度を導入すると、当事者であるメンターとメンティーだけでなく、普段の業務では直接的な関わりがない部署などともコミュニケーションを取る場面が多くなってくる。
メンティーの育成という共通の目標について情報交換することで、社内のコミュニケーションが活性化し、社員同士の関係構築も図れるという副産物が生まれる。
また、メンター制度ではメンター自身も成長することができるので、制度が定着してメンター経験者が増加すればより丁寧なマネジメントと意思疎通が共通認識となり、社内コミュニケーションはさらに円滑化していくだろう。

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導入のステップとポイント

メンター制度の目的とメリットを理解したところで、実際に導入して実行するにあたり、どのようにしていけばいいのだろうか。
実は実施すべきことは多岐にわたり、メンターとメンティーのペアをセッティングしてあとは本人たちに任せる、ではメンター制度を導入したとはいえない。
そこで、実際にメンターを導入するまでのステップとポイントを紹介しよう。

STEP1:全社的な協力体制
新たにメンター制度を導入する際には、人事部のみならず、経営層から現場で働く社員まで、社内全体で協力してもらえるよう、理解と合意を得た上で体制を構築することが最優先となる。
また、制度の導入にあたって、経営層から単に「許可を得る」というだけでは不十分で、経営層から社内全体へのメッセージとして、メンター制度の導入を「宣言」してもらうことで発信力は高まり、制度は効率的に浸透していく。
制度を定着させるためには、部課長など現場の責任者の理解と合意が不可欠なのは言うまでもないが、育成をメンターとメンティーだけの関係性に限定するのではなく、関わる周囲の社員が折にふれて声をかけるなど、社内全体で育成していくという雰囲気の醸成も大切なポイントだ。

STEP2:明確な目標の設定
制度を導入するにあたっては、何をゴールとするのかその目標を明確にすると同時に効果測定の方法も決めておく必要がある。
数値目標の例としては、「新入社員の離職率X%以下」や「入社3年未満の若手のメンタル不調数ゼロ」などが考えられるが、こうした目標は、短期間で達成できるものではなく、メンター制度だけで改善されるものでもないので、他の施策と上手に組み合わせて運用するといいだろう。
短期間なKPIとしては、メンター制度に対する満足度調査など、単純でわかりやすい指標を示せるかどうかもポイントとなる。

STEP3:運用ルールの明確化
制度を運用しているうちには様々なことが発生するが、その時にメンター・メンティーやその周囲の関係者が迷ったり、判断を誤ったりしないよう、運用ルールは明確化・明文化し、これを徹底しておきたい。
まず、以下の3つのポイントは必ず押さえておこう。

ポイント1:守秘義務
当然のことながら、メンターはメンティーとの会話の中で知った情報や、話した内容などを同意なく第三者に口外してならない。メンターの手に余る情報を知った場合は3.の相談窓口に伝える場合があることなどをメンティー合意のもとに規定しておくとよい。

ポイント2. ポイント2:実施の時間帯
基本的に就業時間内とすることが望ましい。時間外とする場合、手当の有無などを決める必要があるうえに、メンター、メンティー双方のモチベーション低下にもつながりかねないからだ。

ポイント3:相談窓口
メンターとメンティー間でのトラブルや、抱えきれない問題が発生した際の相談窓口はどこにするかを決めておくことは重要だ。特に健康やメンタル関連での相談が専門分野に及ぶ時は産業医や保健師にアドバイスを仰ぐなど、細部まで規定しておくとよい。

以下にルールを設定しておいたほうが良い代表的な項目を紹介しよう。

1. 実施期間と頻度:制度上の関係はどのくらい続くのかを決めておく。一般的には半年~1年程度とされている。頻度は月1回、2週間に1回、など最初のうちは定期的に行い、実施時間も1回30分~1時間などと決めておき、定着してからは本人たちに任せればよい。

2. 内容:会話の内容に困るメンター・メンティーも少なくないため、あらかじめいくつかのテーマを用意しておくとよい。半年後にはこの質問、など育成度に合わせたテーマを設定することも有効だ。また、メンターを集めた情報交換会の場を設けるなど、内容を充実させるための工夫を取り入れておくといいだろう。

3. 手段と場所:リモートワークが定着しているので、電話やWEB会議システム、チャットなどをどう活用するのか、事業場内に適当な場所があるのか、などを確認しておく。

4. 進捗確認方法:一般的には報告用のフォーマットを用意するが、守秘義務に違反することは記入しないよう注意する必要がある。最近では社内イントラネットやメールで行う場合もあるが、セキュリティには十分注意を払いたい。また、原則として報告すべき上司は限定しておき、現場の責任者はスケジュールのみ把握できるようにしておき、その内容や方法には関与しないことが望ましい。

STEP4:メンターを選定する
次にメンターを選定し、メンティーとのマッチングを行う。
これには、人事部がメンターとメンティーの年齢や経験などの要素を考慮して組み合わせを指定する「アサインメント方式」と、人事部が提示したメンター候補からメンティが希望者をあげ、人事部側が最終決定をする「ドラフト方式」がある。
また、メンターに適している人物の特徴として、聞き上手や受容力がある、などがあげられるが、メンターとメンティの相性もとても重要となる。
しかし、完璧なメンターの育成は容易なことではなく、メンティーの要望に100%マッチするようなメンターを設定することは困難だ。
そこで、マッチングミスを少なくする1つの手法として、メンターとメンティーを1対1とするのではなく、メンターを複数人選出し、相談内容に応じて、参考にしたい人物をメンティーが選んで相談しに行く、といったアプローチもある。
自社の実情に即してマッチングすることが重要なポイントだ。

STEP5:事前研修を実施する
メンターとメンティー両者に対して、制度の目的やルール、心構えなどを伝えるための事前研修を行う。内容は、メンターとメンティーそれぞれの組織における指標をあらかじめ明確にして、それに沿ったものにすると良いだろう。

STEP6:運用開始
ここまでのステップで運用開始となるが、開始後はメンター・メンティー任せにせず、人事担当が適度にフォローを行うことが望ましい。メンター、メンティーを交えたフォローの場面を作ることで現場の問題点を知り、改善につなげることができるからだ。

また、制度を効果的に継続させていくには、メンターのケアをしっかりと行うことも重要だ。
責任感があるメンターは、自分がメンターとしてきちんとできているか、このままで大丈夫か、などと思い悩んでしまう傾向にある。定期的にメンターと上司や人事部が面談をするなど、メンターが安心して取り組める環境を整えることがメンター制度定着へのカギを握っていると言えるだろう。

まとめ

・現在の日本では、多くの企業で人材の連続性が失われ、新入社員の相談に乗り、育成や指導をすることができる年の近い先輩社員がいない、という状況に陥っており、そういった状況を打開するための制度としてメンター制度が注目されている。メンター制度とは、所属する部署の上司とは別に、新入社員や転入社員に対して年齢や社歴の近い先輩社員などが相談を受けたりサポートをしたりする制度だ。この相談やサポートをする先輩社員のことを「メンター」、サポートされる側の後輩社員のことを「メンティー」と呼ぶ。

・「メンター( Mentor )」は日本語で「助言者」という意味を持つ。その由来は、古代ギリシャの詩人ホメロスが書いたといわれる叙事詩『オデュッセイア』に登場するメントルという人物の名前から来ている。メンターは新入社員からすると相談しやすい兄や姉のような存在であり、直属の上長には相談しにくいことも打ち明けることができ、若手社員が自然に仕事を覚え社風を学べる有効な制度として導入する企業が増えている。

・新卒一括採用、年功序列、終身雇用が一般的であった従来の日本企業では、そのなかで自然と先輩・後輩の関係が生まれ、わざわざ制度を作らなくても、先輩が後輩をフォローしやすい環境ができていた。しかし、人材の連続性が失われた現在では、新入社員の面倒を見られる世代の先輩社員が身近にいないために、新入社員が早期退職してしまうケースが多くなっている。これを防ぐことがメンター制度導入の目的の1つだ。新入社員や若手社員であるメンティーに、「何でも気軽に相談できる」メンターをセッティングすることで、安心できる環境を社内に作り出す。

・メンター制度を導入することで次のようなメリットがある。1.新入社員の早期離職を防ぐことができる、2. 新入社員の自立を促す、3. 目標達成への道筋が見える、4. 社内のコミュニケーションが活性化する。

・実際にメンターを導入するまでのステップは次のとおりだ。STEP1:全社的な協力体制、STEP2:明確な目標の設定、STEP3:運用ルールの明確化、STEP4:メンターを選定する、STEP5:運用開始。また、制度を効果的に継続させていくには、メンターのケアをしっかりと行うことも重要なポイントだ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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