2020.10.20

コロナの影響でオンライン採用がますます加速。企業の採用広報が気を付けるべきポイント

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・新型コロナウイルスの感染防止策の一貫として導入が普及したオンライン採用。
・オンライン面接を実施、あるいは実施した企業は全体の6割以上。
・オンライン採用を実施して良かった点、悪かった点とは?
・採用広報の充実がオンライン採用開始の大前提。
・オンライン採用のメリットとデメリットとは?
・オンライン採用に成功するためのポイントとは?

加速するオンライン採用の背景

依然拡大を続ける新型コロナウイルスの感染防止策としての外出自粛を背景として、オンライン採用の導入が普及している。

HR総研が7月に発表した「2021年卒&2022年卒採用動向に関する調査」の結果(調査期間:2020年6月22日~7月2日 調査対象:上場企業・未上場企業の採用担当者 回答数240件)によると、「現在の面接選考の実施状況」という設問に対して、企業全体では「オンライン面接の他、対面でも実施」が34%で最多、次いで「対面での面接のみを実施」が27%、「オンライン面接のみを実施」が19%などとなっている。(ProFuture株式会社/HR総研

これを事業規模別に見ると、社員数1001名以上の大企業では、対面と併用した場合を含め何らかの形でオンライン面接を実施したと回答する企業数は84%にのぼり、301~1000名の中堅企業でも76%と高い水準にあることがわかる。一方で300人未満の中小企業では47%と半数に届かず、オンラインを活用した面接は中堅から大企業で普及し、中小企業ではまだまだこれから、というのが実態ではあるが、全体の数字を見ればオンライン面接はここに来てかなり普及してきているといえる。

▼企業規模別 現在の面接選考の実施状況

もちろん、オンライン面接の導入は今に始まったことではなく、遠方や海外に住んでいる求職者や現業が忙しくて時間をつくることができない転職希望者などへの対応策として、オンライン面接を実施する企業の事例は数年前から紹介されていた。

しかし、最終面接までオンラインで行なう企業は少なく、一次面接をオンラインで、二次面接以降や最終面接は対面(オフライン)で行なうというケースが大半だった。

しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために緊急事態宣言が発令されたことで、不要不急の外出を自粛する動きは企業の採用活動にも大きな影響を及ぼした。採用活動を一時中断する企業もある中で、採用活動を継続するために、今までオンライン採用を実施したことがない企業も含め、多くの企業がオンライン採用へとシフトを始め、最終面接までオンラインで実施する企業が増加していると考えられる。

この傾向は「最終面接までオンラインで実施する可能性」という設問からも伺える。「すでにオンラインのみで実施した」という回答が全体で57%あり、「オンライン面接のみで実施予定」とする6%を加えると6割以上がオンラインのみで面接を実施することになる。

これを企業規模別に見ると、大企業では67%と7割近くが「すでにオンライン面接のみで実施した」としており、中堅企業では63%、中小企業では44%と、企業規模が大きいほど最終面接までオンラインのみで実施していたことが分かる。

▼最終面接までオンラインで実施する可能性

また、「オンライン面接を実施して良かった点と悪かった点」を聞く設問(自由回答)からオンライン採用が普及しはじめている理由をうかがい知ることができる。

「良かった点」では、新型コロナ感染への心配がないことはもちろん、「業務効率化につながった」「対面での面接が可能になるまで待っていたら採用ができていなかった」(どちらも1001名以上)、「学生がリラックス」「日程調整がしやすく遠方の学生も昨年より多く集まった」(どちらも300名以下)など、「採用スケジュールの遅延回避策」としての一面と、「時間的・経済的な負担低減」、「学生の精神的負担の軽減」などが実施して良かったことにあげられている。

一方、「オンライン面接を実施して悪かった点」としては、「学生の本音がつかみづらい」「人柄やストレス耐性などの見極めが難しい」(どちらも1001名以上)、「回線にタイムラグがあること、お互い表情が見えにくいこと」「実際の働く環境を見せづらい」(どちらも300名以下)など、オンラインでは「熱意・雰囲気」などを推し量りづらい点、「通信回線の品質」に関する点などが問題点として浮き彫りとなった。

企業は、こうした経験をもとにして、オンラインの良い点と悪い点を適切に把握した上で効果的に活用することを模索しながら、今後もオンライン採用は普及し続けていくと考えられる。

オンライン採用時代における採用広報のポイント

コロナ禍をきっかけに普及が広がるオンライン採用だが、求職者と直接対面することができないため、コミュニケーションが深まらずにミスマッチが生じてしまったり、発信すべき情報がまとまらずに活動が行き詰まってしまう、というケースも多い。

特に、まだ手探り状態の企業においては、「オンラインでの情報発信で、何を発信していけばいいのかわからない」、「対面ではできたコミュニケーションがオンラインでは成り立たないかもしれない」、「来社させずに職場の雰囲気を伝えるには、どうしたらいいのか」など、採用担当の悩みは尽きない。

このようなことを防ぐためにも、ウイズコロナ時代のオンライン採用ではしっかりとした採用広報を実施する必要がある。採用広報とは、企業が求める人材に対して、自分の会社を候補のひとつとして検討してもらうための活動だ。自社が求める人物像を明確に定義し、その人物が何を求めているのかを調査・分析し、その人物に届く方法で信頼性を持った自社の情報を発信することが活動の中心となる。

オンライン採用に切り替える企業が増加し、応募から入社まですべてオンラインで完結するといった企業も出ている現在の状況は、通年の採用広報を継続するのではなく、見直しを行い、採用戦略を練り直していく良いタイミングであるともいえる。

これまで、リアルな企業説明会や面接で伝えられていた職場の雰囲気や、そこで働く社員の活気などをオンラインでも十分に伝えていくには、例えば、職場の環境を紹介するコンテンツを増やす、面接担当者をオウンドメディアに登場させるなどといった施策が必要となる。

また、住んでいる地域にとらわれずに幅広く採用対象を拡大できるオンライン採用では、選考対象が飛躍的に増大することも考慮しなければならない。こうしたオンライン採用の特色を活かし、これをベースに据えた採用広報活動が不可欠となってきている。オンライン採用を実施するにあたっては、いままで以上にしっかりとした採用広報を策定したうえで運用を開始したい。

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オンライン採用のメリットとデメリット

では、こうした前提のもとに運用するオンライン採用のメリットにはどのようなものがあるのか。その代表的なものを以下にピックアップした。なお、以下では面接を中心にメリットを紹介するが、ウェビナーなどによるオンラインセミナーでも同様のメリットが見込める。

関連記事:ウェビナー(Webinar)の意味を解説!いまさら聞けない概念を含め解説します

1.事前準備が楽になる

対面の面接では、面接会場を確保する、面接担当者のスケジュールを調整する、履歴書などの資料を担当者の人数分数コピーするといった事前準備が必要となる。応募者に対しても、会場までの地図や企業から提供する資料を送ったり、控室を用意したり、会場によっては建物内の誘導が必要なケースもある。

オンライン面接では、リアルの会場がない。最低限、面接担当者1人分のスペースがあれば成立するため、小さな会議室や打合せスペースで十分だ。会場を押さえる手間がなくなるだけでなく、社外の会場の場合には、会場の下見、会場担当者との打ち合わせ、会場代など、時間とコストが大幅に節約できる。応募者に対する事務作業も、会場までの地図や誘導が不要となるメリットがある。

また、オンラインであれば、複数の面接担当者がそれぞれ別の場所から参加するという方法も可能であり、スケジュールも調整しやすくなる。資料の共有についても、メール送付やオンライン会議システムの画面共有などで足り、紙での用意は必須ではなくなることから、業務効率がアップする。

2.当日の運営が楽になる

リアルの会場がないということは、事前準備だけでなく、当日の運営も省力化できる。まず、会場までの移動がなくなる。対面の場合は、会場が社内であっても、離れた場所から赴く担当者がいれば、移動が発生するし、社外の会場であれば、面接担当者全員の往復時間が業務時間となる。オンライン面接では、その分の時間とコストがカットできる。

会場設営についても、オンライン面接では、面接担当者1人分の適切なスペース確保とパソコン・タブレットのインターネット接続で完了するため、リアルの会場と比較して大幅に業務負担が小さくなる。

また、面接内容の詳細なやりとりを把握するには、対面の面接では、その日その場所に居合わせる必要がある。オンライン面接では、録画機能が備わっているオンライン会議システムが多いため、録画機能を活用して終了後に共有することが可能だ。

3.遠方の応募者に接触できる

複数回の会場面接となれば移動時間と交通費がかさむ。求職者からすれば、よほどその企業に熱意がなければ、遠方というだけでエントリー自体に慎重になる。オンライン面接であれば移動時間と交通費がかからないため、遠方にいる優秀な人材に接触するチャンスが大きくなる。

また、遠方の応募者に配慮して、面接の際に交通費を負担する企業もあるが、オンライン面接であればその費用負担もない。

反対にオンライン面接のデメリットとしては、先の調査結果からも分かる通り、
1.直接会えないため応募者の人柄や熱意を見極めにくい
2.職場の雰囲気を伝えにくい
3.通信が不安定になるリスクがある
などがある。

オンライン採用に成功するためには

さまざまなメリットを持つオンライン採用にも、おさえておきたい注意点がいくつかある。 オンライン採用で注意すべきことを以下に紹介しよう。

1.オンライン採用の流れ(フロー)を確立してPDCAを回す

オフライン採用とオンライン採用とでは、企業側が求職者側に提供する情報や、情報の提供の仕方などに違いが生じてくる。そのため、これまで通りの選考プロセスではなく、オンライン採用に適した選考プロセスを考え、設計する必要がある。中でもウェビナーやオンライン面接などでは、対面とはやり方や進め方が大きく異なってくるため、採用広報の一環としてそれぞれのイベントを整理し、オンライン採用としての流れを確立することが第一歩となる。もちろん、この流れとは「オンライン面接を実施して終了」ではなく、実施(DO)後の振り返り(CHECK)、改善(ACTION)をしっかりと行い、次回の計画(PLAN)へと活かしていくというPDCAサイクルを回すことで、採用活動の精度向上に直結するように設計しておくことが重要だ。

・関連記事:採用フローとは?作る目的・方法、流れを解説!【採用フロー図の例付き】

2.回線の安定や容量などインフラの整備とルーツの選択

採用活動に限らず、企業がオンラインで仕事をする場合に最も気をつけたいのが回線の容量や通信状態だ。特にオンライン面接では、回線のダウンはもちろん、速度低下により状態が不安定になるとコミュニケーションに支障をきたすので、忘れずに容量や速度のチェックをしておきたい。

この時、企業側の準備以上に配慮しておきたいのが応募者側の通信状況だ。住んでいる地域によってはインフラが整っていない場合や、スマートフォンの契約で通信容量を超過すると追加料金が課金される場合などがあるので、事前に状況をヒアリングしておいて、場合によっては一部を音声だけで行うなど、個別の事情に合わせた配慮も必要となる。

また、最近はコロナ禍対策でテレワークが脚光を浴び、それに伴いZoom、Skype、Google Meetなど無料で使える会議ツールも種類が多くなっているので、自社ですでに使っているツールはもちろん、OSやデジタル環境にあわせるなどして最適なものを選択しておきたい。そしてツールを選択する際も、応募者側がソフトウェアをダウンロードしてインストール、IDやパスワードを登録するといった手間がネックになり、離脱につながりかねないことも考慮しておきたい。

3.面接を行う場所を吟味する

オンライン面接は、時間と場所に縛られることなく実施できるのが大きなメリットだが、面接する場所はどこでもいいというわけにはいかない。なぜなら、広角レンズが使用されているWebカメラは、思った以上にまわりの環境を映し出してしまうからだ。これは映像だけでなく、音声に関しても同様の問題がある。社員が動き回っていたり、後ろで打ち合わせをしていたりするオフィスなどで面接を行えば、その様子や環境音がすべて相手に伝わってしまう。まわりの環境音を遮断できる会議室で行うなど、場所は吟味する必要がある。

ただし、社内の活気をそのまま届けたいという場合は、面接の邪魔にならない程度の音量であれば効果的に活用することも可能だ。

4.面接を行うときの服装、態度は会社のカラーに合わせて

気軽に行えるオンライン面接であっても、採用面接であることには変わりはない。対面面接と同様、面接にふさわしい服装や髪型、マナーを心がけ、面接に臨む態度にも気を配るべきだ。カメラ越しとはいえ、油断した身だしなみや態度は相手に伝わってしまうもの。応募者に対して失礼のない服装とマナーで面接に臨む姿勢が求められる。

そうはいっても、例えばスタートアップ企業であれば、若くていきいきとしたイメージを前面に出したいという場合もある。そのようなケースでは明るい色のシャツを着用するなど自社のカラーに合った服装でのぞむことがベターだろう。

・関連記事:オンライン採用を成功させるポイントとは?ミスマッチを防ぐためのポイント

まとめ

・調査によると、オンライン面接を実施した企業は全体の53%で、半数以上に上る。ここにオンライン利用での面接が終了した企業を加えると63%となり、全体の6割以上がオンライン面接を実施している、あるいはオンライン面接を実施したことになる。

・オンライン面接を実施して良かった点は、新型コロナ感染への心配がないこと、業務効率化につながったこと、学生がリラックスできたこと、日程調整がしやすく遠方の学生も昨年より多く集まったことなどが挙げられている。

・オンライン採用に切り替える企業が増加し、応募から入社まですべてオンラインで完結するといった企業も出ている現在の状況は、通年の採用広報を継続するのではなく、見直しを行い、採用戦略を練り直していく良いタイミングである。

・オンライン採用のメリットとしては、1.事前準備が楽になる、2.当日の運営が楽になる、3.遠方の応募者に接触できる、などがある。

・オンライン面接のデメリットとしては、1.直接会えないため応募者の人柄や熱意を見極めにくい、2.職場の雰囲気を伝えにくい、3.通信が不安定になるリスクがある、などがある。

・オンライン採用に成功するためのポイントは、1.オンライン採用の流れ(フロー)を確立してPDCAを回すこと、2.回線の安定や容量などインフラの整備とルーツの選択をすること、3.面接を行う場所を吟味すること、4.面接を行うときの服装、態度を会社のカラーに合わせること、などがある。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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