2021.5.28

フィードバックを効果的に行うには?オンラインやリモート、テレワーク時代の重要なポイント

読了まで約 7

■フィードバックが注目される背景

■フィードバックとは?

■目標達成と人材育成の両方を実現するフィードバック

■従業員のやる気とパフォーマンスを高めるフィードバック

■フィードバックを実践する上での3つのポイント

■コロナに負けないフィードバックを行う3つのコツ

フィードバックの意味と役割

企業にとって、採用した人材の早期離職が大きな懸念となっている。
新卒として採用しても、入社後3年働いた後に転職、あるいは5年以内の離職などが発生すると、自社に根付かせるための従業員教育に課題を感じ、頭を悩ませる人事部門担当は多い。
また、マネージャー層から見れば、いかにしてチームメンバーのやる気を最大限に引き出して、業務の効率化と業績の向上に資するマネジメントを行っていくかというのは、永遠の課題であるといってよい。
そもそも、長きにわたり日本企業における従業員教育やマネジメント手法は、「上手くいったら褒め、だめだったら𠮟る」といった、いわゆる飴と鞭の考え方に基づくものであった。
しかし、変わりゆく時代と多様化していく価値観の中で、必ずしもこのようなマネジメント手法が上手く機能しているとはいえず、結果として従業員の早期離職などの問題につながっている可能性が指摘されている。
現代は、むしろマネージャー層が感情に任せて部下の叱責を行うことがなく、部下が失敗をしたときには的確なアドバイスや指示を行うことができるという上司像が求められている時代だといえよう。
さらに、しっかりと改善するべきポイントを伝え、どのように改善していくことができるかという点に踏み込んでマネジメントを行うことも求められる。
そこで、注目されるマネジメント手法こそ、「フィードバック」だ。
本稿では、フィードバックの意味するところや、その役割、期待されているメリット、そして昨今のコロナ禍では不可避であるオンラインでのフィードバックを行う際に気を付けたいポイントについて解説していこう。
ここでは、まずフィードバックとは何なのかについて、その役割を中心におさらいしておこう。
もともと電子工学などの分野で用いられていた「フィードバック」という用語だが、ビジネスシーンでは専ら「行動したことによる結果を伝える行為」を指して使われる。
そのほかのビジネスシーンでは、例えば部門を跨ぐ従業員同士が関わるプロジェクトにおいて、迅速な課題解決を意図したフィードバックや、消費者からの意見、あるいは取引先からの指摘や要望なども、広義におけるフィードバックということができる。
本稿では、主に上司から部下へ行われる、チームコミュニケーションを促進することを意図したフィードバックについて解説する。
フィードバックというマネジメントを通じて、チーム内のコミュニケーションを促進するということは、「業務において設定していた何らかの目標設定などの結果を伝えること」、そして、「部下の成長を促進すること」を目的として行われ、マネジメントにおける不可欠な要素を構成している。
客観的な視点からすると、設定した目標に対する行動の結果を伝える行為を通じて、部下の業務改善とチーム全体の業績向上を目指す狙いがあり、まさに自身の感情に頼るのではなく、上述した目的と狙いに基づきフィードバックを行うことで、部下のやる気を損なわずに改善点を伝え、実行に移していくことが期待できるのだ。
そんなフィードバックには、ポジティブなものとネガティブなものという2タイプが存在する。
ポジティブフィードバックは、評価対象である従業員に対して、否定的な言い回しを一切せず、相手を褒めることで前向きな気持ちの中でフィードバックを行うことだ。

関連記事:新卒・新人社員の意欲向上につながる「ポジティブフィードバック」とは?効果的に活用するポイント

対するネガティブフィードバックとは、部下が起こした行動の問題点を具体的に指摘していくことで、問題行動がもたらした好ましくない結果について振り返りを行い、同じ問題をくり返さないように指導していくためのフィードバックだ。
次項では、フィードバックがもたらすメリットについて、見ていこう。

フィードバックで期待される効果とは?

前述のとおり、フィードバックを通したチーム内でのマネージャー層とチームメンバーのコミュニケーション促進による業績向上を目指す動きは、企業にとって好材料だ。
ここでは、マネジメント層が自身のチームメンバーへフィードバックを実践していくメリットについてより詳しく見ていこう。
フィードバックは、主に「ミスが生じる状況の確認」、「原因特定」、「再発防止法の検討」の3点へフォーカスした上で行われることが多い。
これらを実践するメリットは次の4つだといえる。

1. 従業員の目標の達成に向けた足掛かりが作れること
多くの場合、マネージャー層から行われるフィードバックは、評価対象者だけではなく、チーム全体の目標達成や、具体的な成果を挙げるためといった観点も含まれることが多い。
このことから、チームとしての目標達成や業績向上を目指して、チームメンバーのパフォーマンスに対して、都度アジャイルな軌道修正が行えるよう、フィードバックが用いられることが多い。
このように、小回りの利くマネジメント手法であるフィードバックは、評価対象者ひとりだけではなく、チーム全体の目標達成に向けたロードマップを最も効率化するために用いられることから、企業にとってメリットが大きいといえよう。

2. 企業にとって優れた人材が育まれること
時によって、企業にとって従業員に与えた目標を達成させることよりも、フィードバックなどを通じて従業員の人材育成を目的とする方が重要な場合がある。
マネージャー層は部下に対して、フィードバックを通じて最終的に従業員自ら問題に気づくこと、そして改善案や解決方法などを思いつくことを目的としつつ、人材育成の観点を常に持ちながらフィードバックを行うことで、部下が内省の習慣と自己解決力を身につけることを期待できる。
最終的に、フィードバックによって自社の業績をけん引する人材へと育て上げていくことが期待でき、短期的な業績や目標のみならず、腰を据えて長期的に人材育成することにも資するマネジメント手法としてメリットが多いといえよう。

3. 働く個人のモチベーションが高まること
前項でも述べた通り、特にポジティブフィードバックを行うことで、従業員のモチベーション向上に対して大きくプラスの働きかけが可能である。
これはマネージャー層がフィードバックを行う最大のメリットといってよい。
「どうせ私なんて」や「自分には難しいだろう」といった誤った先入観に基づくネガティブな感情を、フィードバックを通じて「自分ならできる」というポジティブな決意表明へ転換していくことこそ、フィードバックを行う最大の目的であり、マネージャー層に求められる人材管理だ。
このように、否定的な言い回しを避けつつ、従業員のやる気を最大限に引き出していけることこそ、フィードバックを行う大きなメリットである。

4. 働く個人のパフォーマンス向上が期待できること
マネジメント層が定期的に、パフォーマンス・レビューというかたちでフィードバックを行うことで、より適切なかたちで業務管理を行うことを可能にする。
例えば、効果のあった業務上の取り組みは評価され、効果が薄かった取り組みは更なる改善あるいは場合によって廃止といった決断を行うことで、チームメンバーに対して、成果から逆算された次の行動を取ることを促す効果が期待できる。
また、高いパフォーマンスを発揮した取り組みについては、他のチームメンバーにも広く共有することで、結果としてチーム一丸となってより高いパフォーマンスを発揮していくことが可能となる。

オンラインでフィードバックを行うポイント

企業にとって、自社従業員の早期離職防止、効果的な人材育成、そして企業業績の向上には、マネジメント手法としてのフィードバックが欠かせないことについて、ここまで確認してきた。
本項では、フィードバックを効果的に行うためのポイントを3つ、そしてコロナ禍において急激に進んだリモートワークなどのオンライン環境でのフィードバックを行う際のポイントについて3つ紹介していく。
まずは、全般的なフィードバックを行う上でのポイントについてから見ていこう。

1. 業務上の評価は、具体的に、客観的に行うこと
良し悪しや、頑張っている、素晴らしい等といったマネージャー層の主観的な言葉では、結果としてチームメンバーを目指す方向へ指導していくことは難しい。
フィードバックを行う際は、より踏み込んだ内容で、感情を抜きにした客観性のある評価を行うべきである。
このため、ただ褒めるだけ、あるいは責め立てる言葉を浴びせることも避けるべきだといえよう。

2. 結果の視点と、過程の視点を持って評価すること
フィードバックを行う際は、業務への取り組んだ成果から行うフィードバックと、業務へ取り組んできた過程を重視するフィードバックの双方を行うべきである。
これは、前者が一つの業務が完結あるいは失敗したときにふり返りとして行うもので、後者は進捗などの状況に応じて、業務遂行の方法などについて考える機会を設け、適宜行っていくものだ。

3. 継続的に、絶やさずフィードバックすること
フィードバックは、まさしく継続していくことで効果を発揮するマネジメント手法だ。
一度フィードバックしたら、「はい、おしまい。」ということでは、行う意味がない。
持続的にフィードバックの場を設けることで、前回からの進捗、改善、更なる課題などを可視化していくことで、従業員のモチベーションやパフォーマンスを管理することが可能となる。

次に、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションで進む業務のリモート化やオンライン化の中で、フィードバックを適切に継続していくためのコツについて、3つのポイントから見ていこう。

1. 離れていても、スピード感をもつこと
リモートワーク環境でもフィードバックは重要なマネジメント手法となる。
それぞれのチームメンバーが自宅などからの遠隔勤務となるが、マネージャー層は適宜ビデオ機能をオンにした通話などを通じて、頻繁に、そして課題に直面した際にスピーディーなフィードバックを行うことができるよう、部下の意識づけとチーム体制を整えることが重要だ。

2. 臆することなく、積極的に評価の場を設けること
リモートワークでは、オフィスにいる時に比べてコミュニケーションが少なくなりがちである。
また、すぐ近くにいないためか、連絡を取ることが億劫となる部下も多い。
このため、フィードバックに限らず、上司から積極的にコンタクトを取ることや、遠慮せずに何でも相談するように日頃から促していくことが大切だといえよう。

3. 適切な言葉づかいや立ち振る舞いを見せること
リモート環境では、どうしてもオフサイト時に比べて、仕草や息づかいなど、いわゆる「場の空気」といった非言語的コミュニケーションが欠落しやすい傾向にある。
このため、マネージャー層としては、相手に伝わりやすい言葉を選んだり、ビデオ会議の場合であれば、対面時と比べて少し伝わりやすいように表情を見せたり、身動きを大きくとったりといった取り組みが効果的といえる。

まとめ

・早期離職、企業と学生とのミスマッチなどが大きな問題となっている新卒採用。
自社に根付かせるための従業員教育に課題を感じ、頭を悩ませる人事部門担当は多い。
そこで今、採用選考時から入社してからの数年に至るまで、活かすことのできるマネジメント手法として、「フィードバック」というものが注目されている。

・ビジネスにおけるフィードバックとは、「行動したことによる結果を伝える行為」を指す。
「業務において設定していた何らかの目標設定などの結果を伝えること」、そして、「部下の成長を促進すること」を目的として行われ、マネジメントにおける不可欠な要素を構成する。
「部下の業務改善」、「チーム全体の業績向上」、そして「長期的な人材育成」が最も大きな狙いとなる。

・企業においてマネジメント手法としてのフィードバックを取り入れていくメリットは多い。
例えば、従業員の目標達成と、優れた人材の育成という、企業にとってメリットの大きい2つを両立できる点が挙げられる。
企業の業績にもかかわる各従業員の業務目標達成に向けたフィードバックを行うという側面と、業務目標以上に長期的な視野に立ち、長い目で見た場合、自社にとって優秀な人材に育て上げていくという視点からフィードバックを行うことも可能なため、企業にとってメリットが大きい。

・ポジティブフィードバックを中心とした評価を行っていくことは、従業員のやる気と取り組み内容や成果に好影響を与えるだろう。
これは、誤った先入観や諦めなどネガティブな感情を、フィードバックを通じてポジティブな自己決意に昇華させていくことを意味する。
同時に、日々の業務への取り組みについて、定期的なパフォーマンス・レビューを行うことで、効果の高かった取り組みなどを他のチームメンバーにも共有できるため、結果として、チーム全体で高パフォーマンスを発揮できるなど、メリットが大きいといえよう。

・全般的なフィードバックを行う上でのポイントは、次の3つだ。
1つ目に、業務上の評価は、より具体的に踏み込んだ内容で伝え、評価対象者への感情は抜きにした、客観的な内容を伝えること。
2つ目に、「結果」と「過程」の別個の視点をもつことで、業務終結時のフィードバックと、業務遂行中の状況に応じて適宜行フィードバックを可能とすること。
3つ目に、単発的に終わらせず、持続的なフィードバックの場を設けていくことで、前回からの進捗や更なる改善点などを見出していくことだ。

・コロナ禍において急激に進んだリモートワークなどのオンライン環境でのフィードバックを行う際のポイントは、主に次の3つだ。
1つ目に、リモート環境においても部下の状況をよく把握し、スピーディーにフィードバックを行っていくこと。
2つ目に、リモート環境で希薄になりがちなチーム内のコミュニケーションを活発化させ、臆することなく積極的にフィードバックなどを行うこと。
3つ目に、対面時と比べて非言語的コミュニケーションが欠落しやすいため、ビデオ通話などを通じてより分かりやすい言葉づかいや、仕草などを見せていくことだ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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